ゲイダー: Gaydar)は、ゲイレーダーかばん語(合成語)であり、ある人の性的指向がゲイであるかバイセクシャルであるか異性愛者であるかを直感的に評価する能力のことであるとされている。ゲイダーの機能は通常は非言語的な感覚や直感に依存すると言われている。これらには、社会的行動や癖、例えばこれ見よがしな癖や公然と伝統的な性役割を拒否すること、職業や服飾の習慣等に敏感に気づくこと等が含まれる。

外見や癖のみによって性的指向を割り当てることでは、ステレオタイプなゲイファッションをしていないゲイや、型通りの都会のゲイに近いライフスタイルや習慣を持つメトロセクシャルな男性を区別することはできない[1][2][3][4]アメリカン・ブロードキャスティング・カンパニーのニュース20/20では、ゲイダーは存在するが、性的指向への問題意識を持っているゲイに対しては、彼ら自身が誰がゲイであるかに関心があるため、より有効に働くと報じた[5]

科学的な研究 編集

論文誌『ジャーナル・オブ・サイコロジカル・サイエンス英語版』に掲載されたフィラデルフィアモネル化学感覚研究所英語版で行われた研究では、「ゲイは他のゲイのジャコウ臭を非常に良く検出できる」という結論が得られている[6][7]

ウィリアム・リー・アダムス(William Lee Adams)は、師であるナリーニ・アンバディー英語版の以前の研究の再現を行った。1999年に発表されたアンバディーの元々の研究では、ゲイは異性愛の人物よりも正確に、無音ビデオや写真の人物の性的指向を判定したという結果が得られている。2004年に始められたアダムスの研究では、ほとんどの社会交流の接点である顔に焦点を当てて行われた[8][9][10]。この発見は、2003年にロン・スミス(Ron Smyth)らによってなされたものである[11]。2007年、アダムスらの研究によると、人々は1枚の目の写真だけを見せられただけで、ランダムよりも高確率にゲイを選ぶことができたということである。正確さは、ヘアスタイルまで写った写真を見せた時の正確さと考えられる値に近かった[12]。2009年の研究では、同じような方法で女性の性的指向を判別するには、意識的に熟考するよりも即座の判断の方が正確性が高いことが分かった[13] [14]

現代文化での言及 編集

ゲイダーの能力を持っている(または欠いている)ことに関する現代文化での言及は以下のとおり。

  • ラリー・サンダーズ・ショーにおいて、スコット・トンプソンの演じるゲイのアシスタントが「ゲイダーは嘘をつかない」と発言した。
  • Modern Family のエピソード "Fifteen Percent" において、ミッチェルは彼のゲイダーが非常に正確であると述べた。
  • Ellen のエピソード "The Puppy Episode" の中で、エレン・デジェネレスはゲイダーの概念について学ぶ。
  • フレンズのエピソード "The One Where Nana Dies Twice" の中で、Chandler はゲイの同僚に「全てのゲイはある種のレーダーのようなものを持っている」と言われる。その同僚は、Chandler が本物のゲイではないことを見抜いていた。
  • リアリティショー Gay, Straight or Taken? の中で、1人の女性出場者が3人の男性とデートする。1人はゲイ、1人はノンケで、1人には女性の恋人がいる。彼女の目的は、独り身のノンケを見つけることだった。そのために彼女は自身のゲイダーを使う必要があった。
  • リアリティショー Playing It Straight のオーストラリア版で、牧場の犬はゲイダーと名付けられていた。
  • スピン・シティのエピソード"The Thirty Year Itch"(邦題「30年目の浮気」)の中で、ウィンストン市長がゲイの部下であるカーターに対し、市長の甥のスティーブンがゲイかどうかを見極めて欲しいと依頼し、それに対してカーターが「レーダーならぬゲイダーで探れということですね?」と応じる場面がある。結局スティーブンは、家族から早く結婚するように催促されることを煩わしく思い、ゲイならば家族もそうしたことを言って来なくなるだろうと考えてゲイを装っていたことが明らかになる。

出典 編集

  1. ^ McFedries, Paul (2003年12月12日). “Metrosexual”. Logophilia Limited. 2007年12月17日閲覧。
  2. ^ Simpson, Mark (1994年11月15日). “Here Come The Mirror Men”. The Independent. 2007年12月17日閲覧。
  3. ^ Simpson, Mark (2002年7月22日). “Meet The Metrosexual”. Salon.com. 2007年12月17日閲覧。
  4. ^ Hackbarth, Alexa (2003年11月17日). “Vanity, Thy Name Is Metrosexual”. The Washington Post. 2007年12月17日閲覧。
  5. ^ Stossel, John (2005年11月1日). “Test Your Gaydar: Can You Tell If Someone's Gay?”. ABC News 20/20. 2007年12月17日閲覧。
  6. ^ Yolanda Martin; George Preti (2005年9月9日). “Preference for Human Body Odors Is Influenced by Gender and Sexual Orientation”. Psychological Science. 2007年10月24日閲覧。
  7. ^ Randolph E. Schmid (2005年5月10日). “Gay Men Respond Differently to Pheromones”. Associated Press. 2010年9月20日閲覧。
  8. ^ Willow Lawson. Nov/Dec 2005. "Queer Eyes: Blips on the Gaydar". Psychology Today Magazine.
  9. ^ William Lee Adams. "Finely Tuned Gaydar." New York Times : New York Times.
  10. ^ Gaudio, Rudolph (1994) “Sounding Gay: Pitch Properties in the Speech of Gay and Straight Men”. American Speech 69: 30–57.
  11. ^ Ron Smyth, Greg Jacobs, Henry Rogers. 2003-10-03. Male voices and perceived sexual orientation: An experimental and theoretical approach. Cambridge University Press.
  12. ^ "Accuracy and Awareness in the Perception and Categorization of Male Sexual Orientation". Nicholas O. Rulea, Nalini Ambady, Reginald B. Adams Jr., and C. Neil Macrae. Journal of Personality and Social Psychology, Volume 95, Issue 5, November 2008, Pages 1019–1028 doi:10.1037/a0013194
  13. ^ "Female sexual orientation is perceived accurately, rapidly, and automatically from the face and its features". Nicholas O. Rule, Nalini Ambady and Katherine C. Hallett. Journal of Experimental Social Psychology (prepress, Sep 2009). doi:10.1016/j.jesp.2009.07.010
  14. ^ Popular press summary of Ambady studies: "There's Something Queer about That Face: Without being aware of it, most people can accurately identify gay men by face alone", by Jesse Bering, Scientific American, February 23, 2009

参考文献 編集

関連項目 編集