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コクラン共同計画

コクラン共同計画(Cochrane Collaboration、略称CC)は、治療と予防に関する医療情報を定期的に吟味し人々に伝えるために、世界展開している組織である[3]。1992年にイギリスの国民保健サービス (NHS) による根拠に基づく医療政策と実践、またその定量的な評価の一環として活動を開始した[3]

The Cochrane Collaboration
標語 Working together to provide the best evidence for health care
設立年 1993年 (1993)
種類 国際NPO
目的 ヘルスケア情報
本部 オックスフォード
貢献地域 Worldwide
公用語 英語
Steering Group Co-Chairs Jeremy Grimshaw,
Jonathan Craig[1]
ボランティア Over 28,000 as of 2011[2]
ウェブサイト www.cochrane.org

ランダム化比較試験 (RCT) を中心として、臨床試験をくまなく収集し、評価し、分析するシステマティック・レビュー (sytematic review) を行い、その結果を、医療関係者や医療政策決定者、さらには消費者に届け、合理的な意思決定に供することを目的としている。

コクラン共同計画の日本支部は、2014年に設立された[4]

目次

設立編集

コクラン共同計画を冠すアーチボルド・コクラン英語版は、根拠に基づく医療 (EBM) の3人の父のうち1人と言われ、以下のことを提唱した[5]。イギリスの無料の社会保健には有効な治療のみ無料とすること、イギリスではじめて行われたランダム化比較試験を重視すること、そうしたデータを批判的に吟味し遅れることなく必要とする人に届けることの提唱である[5]

コクランの弟子で、イギリスの産婦人科医のイアイン・チャーマーズは、周産期領域で行っていたシステマティック・レビューを1992年にすべての領域で開始し[6]、国民保健サービスの研究開発プログラムをサポートするために設立されたイギリスコクランセンターのセンター長となった[7]

コクラン25年目の半数の理事の辞任編集

北欧コクランのピーター・ゲッチェは、製薬産業は組織犯罪として無益な医療を告発してきており、別のコクランの著者による2018年5月のヒトパピローマウイルスワクチンについてのレビューについての論文について、7月に議論を起こしていた[8]。そのBMJ Evidence Basedに掲載された「コクランHPVワクチンのレビューは不完全かつバイアスについての重要な証拠を無視している」では、ピーターらの1月の調査で既に46件のランダム化試験が完了しているのに、26件の試験を使ったしその他の副作用についての情報をいくつかの点で見落としていると指摘していた[9]

9月14日[10]、ピーターの追放について12人の理事の6人が賛成、5人が反対し、追放の決定後にこのような追放はコクランの精神に反するとして4人の理事が辞任を表明した[8]。続いて2人が辞任を求め、コクランは理事の半分を失うことにつながった[11]

ゲッチェは倫理統制の危機だという声明を発し、サイエンスマガジンの取材に対して、コクランへの出資者が圧力をかけたのではないかと漏らした。2012年にマーク・ウィルソンがコクランのCEOとなってから、商業に対して友好的になってきており、追放はこうした動きの一部だと述べている。[8]

システマティック・レビュー編集

1993年7月にイギリスのコクランセンターがBMJ(イギリス医師会雑誌, British Medical Journal)と共同で会議を開き、1994年に論文となったものが、『システマティック・レビュー』(Systematic Reviews) として出版されている[12]。それはシステマティック・レビューとメタアナリシスに関する章で構成されており、システマティック・レビューに関しては、バイアスとエラーを最小にする方法が議論されている[13]。バイアスを避けた試験であるランダム化比較試験を、バイアスを避けるために未公表試験を含めてメタアナリシスすることで、根拠に基づく医療で用いるための良質の根拠を得ようとしているわけである[14]。そして、そのようにして得られたシステマティック・レビューは、遅れることなく情報を必要とする人々へ届けられなければならない[15]

声明編集

抗うつ薬パロキセチン(パキシル)における、否定的な試験結果のグラクソ・スミスクラインによる隠蔽は、出版バイアスの議論から、アメリカ合衆国連邦政府の法改正や、世界保健機関による試験の登録制度の構築など、試験の事前登録の制度の構築へと繋がっていった[16]。2011年10月5日に、コクラン共同計画も、試験の登録とデータの透明性を求める声明を行った[17]。声明の内容は、選択的な出版によるデータの隠蔽が有効性や有害性の誤った認識をもたらし、危険な臨床的な実践に繋がり、そしてデータの公開は多大な利益をもたらすために、データが公開されること、およびそのための司法制度の導入を求めるものである[17]

コクラン・ライブラリ編集

コクラン・ライブラリ (Cochrane Library) は、コクラン・コラボレーションによって編纂された文書集である。四半期に一度更新され、全文(フルテキスト)はCD-ROM、またはインターネットを通じたオンライン購読の形で販売されている[18]日本では多くの大学や病院等が法人契約を結んでいる。それぞれのレビュー記事の概要 (abstract) については、コクラン・コラボレーションのサイトやPubMedを通じ、広く一般に無料で開放されている。

コクラン・ライブラリは、EBMの手法について検証したThe Cochrane Database of Methodology Reviews、適切にデザインされた臨床試験についてのリファレンスを集積したThe Cochrane Central Register of Controlled Trialsなど、いくつかの文書データベースの集積である。その中でも、The Cochrane Database of Systematic Reviewsと呼ばれるデータベースは、EBMの考え方に基づき、過去の多くの臨床試験などの論文からエビデンスレベルの高いものを集めて吟味する「システマティックレビュー」(systematic review) の手法を使い、その時点での最良の治療法のエビデンスを提示する記事の集合として、コクラン・ライブラリの中核を成している。

The Cochrane Database of Systematic Reviewsにおける典型的なEBM記事の評価においては、まず、対象となっている具体的な疑問を挙げたあと、該当分野の"Working Group"から、独立して通常複数のレビュアーが任命される。レビュアーはそれぞれ独立に、コクラン・ライブラリ自身のThe Cochrane Central Register of Controlled TrialsやMedlineから、適切にランダム化された試験を検索・抽出し、その試験の妥当性や有効性を評価し、統計的な手法を用いることで、疑問について回答を導き出す。

EBMの考えに厳格に基づこうとする文献データベースとして、2004年現在、コクラン・ライブラリは世界最大規模のものであり、多くの医療従事者が信頼を置いている。

邦訳されたものは部分的に、日本医療機能評価機構のMINDS[19]にて公開されている[20]

インパクトファクター編集

コクランデータベースのインパクトファクターは以下の通り[21]

2015年
6.103
2014年
6.035
2013年
5.939
2012年
5.785

日本支部編集

コクラン共同計画の日本支部が設立されたことが、2014年5月30日に発表された[4]。日本の臨床研究環境の改善につなげたいとコメントされた[4]。2014年は、『ネイチャー』におけるSTAP細胞の論文不正や、『ランセット』におけるディオバン事件といった、一流論文誌における科学における不正行為への疑惑解明が相次いだ。

関連項目編集

脚注編集

  1. ^ The Cochrane Collaboration Steering Group & Subgroups. Retrieved 2011-01-28.
  2. ^ The Cochrane Collaboration - Newcomers' Guide. Retrieved 2011-01-28.
  3. ^ a b 津谷喜一郎、正木朋也 2006.
  4. ^ a b c “コクラン日本支部が始動‐根拠に基づく医療推進へ”. 薬事日報. (2014年6月2日). http://www.yakuji.co.jp/entry36530.html 2014年6月4日閲覧。 
  5. ^ a b 津谷喜一郎 2000, pp. 316-317.
  6. ^ 津谷喜一郎、正木朋也 2006, pp. 317-318.
  7. ^ イアイン・チャーマーズ、ダグラス・G.アルトマン 2000, pp. ix.
  8. ^ a b c Enserink, Martin (2018年). “Evidence-based medicine group in turmoil after expulsion of co-founder”. Science. doi:10.1126/science.aav4490. 
  9. ^ Jørgensen L, Gøtzsche PC, Jefferson T (2018年7月). “The Cochrane HPV vaccine review was incomplete and ignored important evidence of bias”. BMJ Evid Based Med. doi:10.1136/bmjebm-2018-111012. PMID 30054374. https://doi.org/10.1136/bmjebm-2018-111012. 
  10. ^ Vesper, Inga (2018年). “Mass resignation guts board of prestigious Cochrane Collaboration”. Nature. doi:10.1038/d41586-018-06727-0. https://doi.org/10.1038/d41586-018-06727-0. 
  11. ^ Trish Greenhalgh (2018年9月17日). “Trish Greenhalgh: The Cochrane Collaboration—what crisis?”. 2018年9月20日閲覧。
  12. ^ イアイン・チャーマーズ、ダグラス・G.アルトマン 2000, p. vi.
  13. ^ イアイン・チャーマーズ、ダグラス・G.アルトマン 2000, pp. vi-vii.
  14. ^ 津谷喜一郎 2003.
  15. ^ 津谷喜一郎、正木朋也 2006, p. 6.
  16. ^ Bian, Zhao-Xiang; Wu, Tai-Xiang (2010年). “Legislation for trial registration and data transparency”. Trials 11 (1): 64. doi:10.1186/1745-6215-11-64. PMC 2882906. PMID 20504337. http://www.trialsjournal.com/content/11/1/64. 
  17. ^ a b Peter C Gøtzsche (2011年10月4日). “We need access to all data from all clinical trials”. The Cochrane Collaboration. http://www.thecochranelibrary.com/details/editorial/1359903/We-need-access-to-all-data-from-all-clinical-trials.html 2013年1月30日閲覧。 
  18. ^ 津谷喜一郎、正木朋也 2006, p. 7.
  19. ^ http://minds.jcqhc.or.jp/ Minds医療情報サービス
  20. ^ 津谷喜一郎、正木朋也 2006, p. 8.
  21. ^ Cochrane Database of Systematic Reviews - Impact factor”. The Cochrane Collaboration (2016年). 2016年8月21日閲覧。

参考文献編集

外部リンク編集