コモチシダ(子持ち羊歯、学名: Woodwardia orientalis)とは、シダ植物のひとつである。葉の面に苗が出来ることからこの名がある。

コモチシダ
分類
: 植物界 Plantae
: シダ植物門 Pteridophyta
: シダ綱 Pteridopsida
: ウラボシ目 Polypodiales
: シシガシラ科 Blechnaceae
: コモチシダ属 Woodwardia
: コモチシダ Woodwardia orientalis
学名
Woodwardia orientalis Sw. (1800)[1]

特徴 編集

コモチシダは、シダ植物門シシガシラ科コモチシダ属の植物で、常緑性多年草である。大柄で厚みのある葉をつけるシダである。

根茎は太くて短く、多少横に這い、その表面は大きな鱗片で覆われている。鱗片は長さ3cm程になり、明るい褐色で光沢がある。

葉柄は長さ30-60cm、葉身は30cmから2mに達することもある。葉柄は太くて丈夫で、基部には鱗片が多い。葉身は全体の形は広卵形、粗く二回羽状に裂ける。ほぼ完全に裂けてはいるが、なんとなく互いにつながっているような感じである。それぞれの葉先は少しとがっている。葉質は厚みのある革質で、表面には強いつやがあり、葉全体が表面に向かって反り返り、縁が少し内に巻いたようになる。葉の縁には細かい鋸歯があり、裂片の先端はとがる。

 
葉の裏側

ソーラス(胞子嚢群)は細長く、それぞれの裂片の主脈に沿い、先端が少し曲がって離れて終わる。

葉が古くなると、その表面のあちこちから無性芽が出て、小さな葉を広げる。子持ち羊歯の名は、この芽を子供に見立てたものである。

 
"子供"が出ている様子

生育環境など 編集

かなり明るいところによく生育し、海岸線に多い。根元は湿ったところが良いようである。湿った岩の上などにもよく生え、大きな葉を垂れ下がるように伸ばす。

東北地方南部以南の本州から四国九州琉球諸島小笠原諸島に分布し、ヒマラヤから中国台湾フィリピンにわたる。

近縁種 編集

ハチジョウカグマ(別名: タイワンコモチシダ、学名: Woodwardia prolifera[2]シノニム: W. o. var. formosana[3])は、暖地に生育する大型の常緑シダ植物で[4]、本種の変種として扱われることも、別種とされることもある。本州南部以南(千葉県以南・四国・九州南部[4])に分布し、山地の日当たりの良い崖地に生える[4]。根茎は太くて短く這い、褐色の鱗片に覆われている[4]。葉全体の長さは2メートルを超える1回羽状複葉で、垂れている[4]。葉の羽片は深く切れ込んでおり、羽片の軸まで達するものもあり、2回羽状複葉のようにも見える[4]。コモチシダより一回り大きくなること、新芽が赤みを帯びること、下部の羽片が完全に裂けること、裂片の先端がより長く尖ること、羽片の基部には裂片を欠く場合が多い、葉脈の網目が本種のほうが小さいなどが異なる[4]。両種とも葉面に多くの無性芽をつけている[4]。新芽は食用にでき、芽を覆う鱗片を取り除いて茹でて、お浸しなどにする[4]

脚注 編集

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Woodwardia orientalis Sw. コモチシダ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月6日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Woodwardia prolifera Hook. et Arn. ハチジョウカグマ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月6日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Woodwardia orientalis Sw. var. formosana Rosenst. ハチジョウカグマ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月6日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i 川原勝征 2015, p. 12.

参考文献 編集

  • 川原勝征「タイワンコモチシダ」『食べる野草と薬草』南方新社、2015年11月10日、12頁。ISBN 978-4-86124-327-1