コリン・パウエル

コリン・ルーサー・パウエル(Colin Luther Powell, 1937年4月5日[1] - )は、アメリカ合衆国政治家軍人(退役陸軍大将)。アメリカのニューヨーク州ニューヨーク市サウス・ブロンクス地区出身。在米ジャマイカ人2世。学位は経営学修士ジョージ・ワシントン大学)。ジョージ・W・ブッシュ政権1期目で65代目アメリカ合衆国国務長官を務めた。

コリン・パウエル
Colin Powell
Colin powell (official portrait).png
生年月日 (1937-04-05) 1937年4月5日(83歳)
出生地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
Flag of New York City.svg ニューヨーク州ニューヨーク
出身校 ニューヨーク市立大学シティカレッジ
ジョージ・ワシントン大学大学院
所属政党 共和党
称号 大統領自由勲章
ディフェンス・ディスティングシュドサービスメダル
経営学修士(ジョージ・ワシントン大学
配偶者 アルマ・ジョンソン
サイン Colin Powell Signature.svg

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
65代目国務長官
在任期間 2001年1月20日 - 2005年1月26日
大統領 ジョージ・W・ブッシュ

Flag of the Chairman of the U.S. Joint Chiefs of Staff.svg アメリカ統合参謀本部
12代目議長
在任期間 1989年10月1日 - 1993年9月30日
大統領 ジョージ・H・W・ブッシュ
ビル・クリントン

在任期間 1987年11月23日 - 1989年1月20日
大統領 ロナルド・レーガン

その他の職歴
Flag of the United States Army.svg アメリカ陸軍 最終階級大将
(1958 - 1993)
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来歴編集

ニューヨーク州ニューヨーク市ハーレムにて、ジャマイカ系移民の息子として生まれた[1]。サウス・ブロンクス地区にて育ち、ニューヨーク市立大学シティカレッジ地学を専攻する傍ら、予備役将校訓練課程(ROTC)を受講した[1]

1958年にニューヨーク市立大学シティカレッジを卒業すると、少尉としてアメリカ陸軍に任官する[1]。それはトルーマン大統領が1948年に大統領令9981号で、米軍における「人種、肌の色、宗教または出身国に基づく」差別を撤廃したちょうど10年後のことであった。ドイツ韓国での勤務を含め、ベトナム戦争に2度従軍し、2度負傷した(ベトナムでの従軍は、1962-1963、1968-1969)。まだ南部では厳しい人種隔離政策があった時代に、アフリカ系アメリカ人として異例の出世をとげる。1971年にはジョージ・ワシントン大学大学院経営学修士課程を修了している。1989年に米陸軍司令官となる。ニクソン政権時代には「ホワイトハウス・フェロー」に選ばれた。レーガン政権では国家安全保障問題担当大統領補佐官1987年 - 1989年)を務めた。ジョージ・H・W・ブッシュ政権下の1989年に、アフリカ系アメリカ人初のアメリカ軍制服組トップである統合参謀本部議長(1989年 - 1993年)に就任し[1]パナマ侵攻湾岸戦争の指揮を執った。

1992年アメリカ合衆国大統領選挙では、支持率低迷にあえぐ共和党現職のジョージ・H・W・ブッシュ大統領副大統領候補として指名を模索したが、結局断念している。[要出典]

バラク・オバマが大統領になった時は「アフリカ系アメリカ人の歴史を考えれば、非常に感動した」と涙を目に浮かべた[2]

国務長官職編集

1993年に退役後、自伝「マイ・アメリカン・ジャーニー」を出版した。1996年アメリカ合衆国大統領選挙に向けての世論調査では幅広い層からの圧倒的な支持を示したが、「黒人が大統領になったら暗殺される」とする妻の反対もあり出馬しなかった。

2000年アメリカ合衆国大統領選挙ではジョージ・W・ブッシュ陣営の外交問題アドバイザーを務めた。ブッシュの当選後、アフリカ系アメリカ人初の国務長官に任命された(上院では全会一致で承認)。同政権では、息子のマイク・パウエルが1997年11月から2005年1月までの間連邦通信委員会 (FCC) 委員長を務めた。国務副長官に任命されたレーガン政権からの盟友リチャード・アーミテージと共にブッシュ政権での穏健派を形成していた。2004年11月に国務長官辞任の意思を表明し、2005年に職を辞した。中道派で対国連協調路線であったため、有志連合指向の右派が主導する政権内での孤立が原因と考えられている。

国務長官在任時、国際連合安全保障理事会で「イラク大量破壊兵器を開発している証拠」を列挙した[3]。しかしCBS60 Minutesなどによると、イラクからドイツに出国した男性エージェントコードネーム癖玉英語版」が永住権を得るためにドイツの情報機関に話した虚偽の話(例:生物兵器製造中に事故で12名が死亡した)をCIAが事実と誤認したものだった。長官退任後にパウエルはこの発言を間違いだったと認め[4]、自らの著書である「リーダーを目指す人の心得」において「人生最大の汚点」と述べている。

政治的立場編集

 
陸軍大将時代

共和党員だがリベラルや中道にも理解を示すことがある。人工妊娠中絶積極的差別是正措置を容認[5]、合理的範囲の銃規制にも賛成している。著書「マイ・アメリカン・ジャーニー A case of the munchies」によると、ベトナム戦争の経験から軍隊の抑制的使用という意見を持つようになった。ただし、軍事力の行使は、やるからには国際的協調を得た上で圧倒的な規模で行うべきという意見である。

2004年イギリスジャック・ストロー外相との電話会談でネオコンのことを「狂った連中(fucking crazies)」と述べた[6]。2004年の共和党全国大会を欠席するなど、共和党内で台頭するネオコンと距離を置いているとされる。そのため反対派からは「ロックフェラー・リパブリカン」というレッテルを貼られることがある。

2008年アメリカ合衆国大統領選挙では、マケイン選挙陣営にも許容最大限の寄付をし、マケインの副大統領候補として名前があがっていたにもかかわらず、大統領選挙2週間前の10月19日に、NBCの「ミート・ザ・プレス」に出演し、民主党候補バラク・オバマへの支持を表明した。声明では共和党候補のジョン・マケインへの不支持は容易な決断では無かったとし、マケイン陣営のネガティブ・キャンペーンが行き過ぎであり、金融危機への対処能力においてオバマがマケインを上回ると述べた[7][8]。またマケインが経験の浅いサラ・ペイリンを副大統領候補に据えたことを無責任であるとした[9]。また、「共和党の中にはオバマ議員がムスリムではないかと問う者がいる。正しい答えはノーであり、彼はずっとキリスト教徒であった。だが、もっと正しい答えは、『もし彼がムスリムだったとして、それが一体何の問題があるというのか?』というものだ。この国ではムスリムであることがいけないのか。もちろんノーだ、アメリカではそんなことは問題ではない。7歳のムスリムのアメリカ人たる子供が将来大統領になろうと思ったとして、一体どこに問題があるのか」と、語った[10]。一連のパウエル発言に、共和党内の右派は反発を示し、パウエルを「裏切り者」と一斉に批判。ディック・チェイニー元副大統領は、NBCテレビの番組収録でパウエルに離党を迫ったが、本人は同テレビの番組で一連の発言を撤回せず、逆にチェイニーを批判した。

2012年アメリカ合衆国大統領選挙では、10月25日にCBSのインタビューで、再選を目指すオバマの支持を表明した[11][12]。政界引退後はブルームエナジー英語版の社外取締役を務めている[13][14]

2016年、パウエルがジャーナリストあてに送った電子メールが流出。2016年アメリカ合衆国大統領選挙の有力候補であったドナルド・トランプ(共和党)やヒラリー・クリントン(民主党)の双方を批判する内容が公開された[15]

2020年、ジョージ・フロイドの死と一連の抗議運動に対して軍の投入をも辞さないとしたトランプ大統領の対応に対して、憲法から逸脱していると強く批判した[16]。元海兵隊大将でトランプ政権の元国務長官も務めたジェームス・マティスら多くの元軍幹部や外交官がトランプ大統領への批判を表明していることに誇りに思うと語り、2020年アメリカ大統領選挙では民主党ジョー・バイデンを支持すると表明[17]。8月18日の民主党党大会では、故マケイン上院議員のシンディ夫人に続きビデオで登場、バイデン支持を訴えた[18]

その他編集

軍人としての最終階級陸軍大将。政治家としての最高位はジョージ・W・ブッシュ政権第1期目の国務長官。軍人としての栄誉にはディフェンス・ディスティングシュドサービスメダル・陸軍最高殊勲章・国防省第1等殊勲章・青銅章・多数の名誉負傷章・軍人殊勲章・勇猛戦士章・国防長官賞などがある。文民としての栄誉には2度の大統領自由勲章・大統領国民栄誉賞・連邦議会栄誉賞・国務長官栄誉賞などがある。またイギリス女王からバス勲章ナイト・コマンダー(KCB)に叙されている。

勲章編集

ディフェンス・ディスティングシュドサービスメダル銅製樫葉三枚付
ディスティングシュドサービスメダル英語版銅製樫葉付
  ディフェンス・スーピアリアサービスメダル
レジオン・オブ・メリット銅製樫葉付
  ソルジャーズメダル
  ブロンズスター
  パープルハート
  エア・メダル
  ジョイントサービス・コメンデーションメダル英語版
アーミー・コメンデーションメダル英語版銅製樫葉二枚付
  大統領自由勲章 (1991年受勲)
  大統領自由勲章 (1993年受勲)
  大統領市民勲章英語版
ナショナル・ディフェンス・サービスメダル英語版サービススター付
ベトナム戦争従軍章英語版サービススター付
  陸軍従軍リボン英語版
   陸軍海外従軍リボン英語版

著書編集

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e United States Department of State. “Biographies of the Secretaries of State: Colin Luther Powell (1937–)”. 2016年8月7日閲覧。
  2. ^ “オバマ大統領誕生に黒人の名士たちは涙”. 日刊スポーツ. (2008年11月6日). http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp1-20081106-426759.html 2014年6月22日閲覧。 
  3. ^ “Transcript of Powell's U.N. presentation” (英語). CNN. (2003年2月6日). http://edition.cnn.com/2003/US/02/05/sprj.irq.powell.transcript/ 2014年6月22日閲覧。 
  4. ^ “Powell admits Iraq evidence mistake” (英語). BBC. (2004年4月3日). http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/3596033.stm 2014年6月22日閲覧。 
  5. ^ Barbara Frankel (2000年8月1日). “Colin Powell Lauds Bush, Rebukes GOP on Affirmative Action” (英語). AAD project. 2011年5月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年6月22日閲覧。
  6. ^ Martin Bright (2014年6月22日). “Colin Powell in four-letter neo-con 'crazies' row” (英語). The Guardian. http://www.theguardian.com/media/2004/sep/12/Iraqandthemedia.politicsphilosophyandsociety 2014年6月22日閲覧。 
  7. ^ “Colin Powell endorses Obama” (英語). CNN. (2008年10月20日). http://edition.cnn.com/2008/POLITICS/10/19/colin.powell/index.html 2014年6月22日閲覧。 
  8. ^ “Colin Powell backs Barack Obama” (英語). BBC. (2008年10月19日). http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/7678788.stm 2014年6月22日閲覧。 
  9. ^ Alex Johnson (2008年10月19日). “Powell endorses Obama for president” (英語). MSNBC. http://www.nbcnews.com/id/27265369/#.U6XvIvl_s-I 2014年6月22日閲覧。 
  10. ^ Colin Powell on NBC Meet the Press, Sunday October 19, 2008. (Archived). also, Juliane Hammer, Omid Safi, ed. The Cambridge Companion to American Islam; Cambridge University Press, August 2013, p. 3.
  11. ^ October 25, CBS News. “Colin Powell endorses Barack Obama for president” (英語). www.cbsnews.com. 2020年9月12日閲覧。
  12. ^ 久留信一 (2012年10月27日). “パウエル氏がオバマ支持表明 党を超え再び”. 東京新聞 (はてな). オリジナルの2012年10月27日時点におけるアーカイブ。. http://b.hatena.ne.jp/entry/www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2012102602000231.html 20102-10-29閲覧。 
  13. ^ Board of Directors” (英語). Bloom energy. 2014年6月22日閲覧。
  14. ^ “「Bloomエナジーサーバー」国内初号機を福岡M-TOWERで運転開始” (プレスリリース), SoftBank, (2013年11月25日), http://www.softbank.jp/corp/news/press/sb/2013/20131125_01/ 2014年6月22日閲覧。 
  15. ^ 【米大統領選2016】パウエル元国務長官、トランプ氏を「国家の恥」と批判”. BBC (2016年9月15日). 2020年6月6日閲覧。
  16. ^ パウエル元国務長官、トランプ大統領は憲法から「逸脱」” (日本語). CNN.co.jp. 2020年8月27日閲覧。
  17. ^ “パウエル元国務長官、トランプ氏は憲法を「逸脱」 不支持表明”. BBC News. BBC. (2020年6月8日). https://www.bbc.com/japanese/52961138 2020年6月10日閲覧。 
  18. ^ Alexandra Jaffe (2020年8月18日). “Republicans at the DNC: Colin Powell, Cindy McCain give remarks; Some progressives feel overlooked | WATCH” (英語). ABC13 Houston. 2020年8月27日閲覧。

関連項目編集


公職
先代:
マデレーン・オルブライト
  アメリカ合衆国国務長官
政権: ジョージ・W・ブッシュ

2001年1月20日 - 2005年1月26日
次代:
コンドリーザ・ライス
先代:
フランク・カールッチ
  アメリカ合衆国国家安全保障問題担当
大統領補佐官

第16代:1987 – 1989
次代:
ブレント・スコウクロフト
軍職
先代:
ウィリアム・J・クロウ (en)
  アメリカ合衆国統合参謀本部議長
第12代:1989 – 1993
次代:
デヴィッド・E・ジェレマイア (en)
受賞
先代:
ミハイル・ゴルバチョフ
ロナルド・レーガン自由賞
1993
次代:
イツハク・ラビン