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コルディア・アフリカーナ

コルディア・アフリカーナ[7]あるいはコルディア・アフリカナCordia africana Lam.)とはムラサキ科カキバチシャノキ属高木落葉広葉樹の一種である。主に木材や薬として利用されるが、木材としては他の近縁種2種と共にアフリカンコーディアの名で流通している(参照: #利用)。ケニア由来の名称(参照: #諸言語における呼称)の一つをとってムクマリ(mukumari)とも呼ばれる[8]

コルディア・アフリカーナ
Cordia africana02.jpg
Cordia africana
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : pentapetalae
階級なし : キク上群 superasterids
階級なし : キク類 asterids
階級なし : シソ類 lamiids
: ムラサキ目 Boraginales
: ムラサキ科 Boraginaceae
: カキバチシャノキ属 Cordia
: コルディア・アフリカーナ Cordia africana Lam.
シノニム
  • 本文参照
英名
East African cordia[1][2][3]、large-leafed cordia[4][2]、large-leaved cordia[5][6]、large-leaf cordia[3]、Sudan teak[2]

シノニム編集

シノニムには以下のようなものがある。

このほかに Cordia ubanghensis A. Chev.[2][3]Varronia abyssinica (R. Br.) DC.[3] も本種のシノニムとして挙げられている場合があるが、The Plant List (2013) は前者を未解決状態、後者をムラサキ科の独立した種であるとしている。また Quattrocchi (2012) においては Calyptrocardia abyssinica (R. Br.) Friesen も本種のシノニムとされているが、これは The Plant List (2013) には掲載がなく、代わりに見られる Calyptracordia abyssinica (R. Br.) Friesen は未解決状態であるとされている。

分布編集

本種のシノニムの一つである C. abyssinica の種小名 abyssinica とは〈アビシニアの〉、つまり〈現在のエチオピア地域の〉という意味である。主にアフリカに分布し、西アフリカセネガルから東は先述のシノニムの種小名にも見られるエチオピア、南は南アフリカにかけて見られる[10]。またアラビア半島にも分布する[10]

東アフリカにおいては高度1200-2100メートルの草原森林河岸地域に広く見られる[4]

特徴編集

丸い樹冠となる落葉性高木であり、はしばしばねじ曲がる[1]樹高は15メートルにまでなる[4]

樹皮は灰色がかった茶色から濃い茶色で[2]細かい溝が見られるが、樹齢を重ねるとともに粗くなる[1]

互生単葉、卵形で長さ7.5-17.5センチメートルの幅3.5-10.2センチメートル[2]、大きく長円形で、基部が丸く、下部の葉脈ははっきりとしている[1]若枝の葉や葉柄(長さ2.5-7.6センチメートル[2])、葉の下面は柔らかい茶色の毛で覆われる[1]

両性花[2]直径2.5センチメートル[6]、目立つ漏斗状であり、細く白い花弁をつけ、著しい量の蜜を出して[2]甘く香り、ミツバチを惹きつける[1]

果実は球形の核果で、なめらかな表皮は熟するにつれて黄橙色になり[2]、直径約1センチメートル、毛の生えた状の(長さ1センチメートル未満[2])に納まる形で実り[4]、果肉には粘り気があり、1つの実につき4-6個の種子が見られる[1]が、これら種子には胚乳がない[2]

利用編集

コルディア・アフリカーナは主に木材や薬としての利用法が知られている。特に、木材としては国際的な取引の対象となっている。

ウガンダエチオピアエリトリアケニアタンザニアにおいて知られている用途には以下のようなものがある[11][5][6][10][1]。○印はその国においてその用途が見られるという意味である。

コルディア・アフリカーナのアフリカ5ヶ国における用途
  ウガンダ   エチオピア   エリトリア   ケニア   タンザニア
材木 家具
屋根板 - - -
養蜂箱
-
教会のドラム - - - -
果実を食用に - -
薬(樹皮と根を使用)
飼料 ○(乾期に葉を) ○(葉を) ○(乾期に) ○(乾期に葉を)
ミツバチの餌
木陰作り ○(コーヒー用) ○(コーヒー用)
マルチング
土壌の保全
観賞植物 - -
繊維 - - - [注 1] -
接着剤 - - - -
境界の目印 - - [注 2]

木材編集

ケニアのキクユ人はこの木を「モリンガ」[12]キクユ語: mũringa)と呼び、伝統的に養蜂用の筒[注 3]腰掛けをはじめとして[15]を作るのに用いてきた[16]。樹皮はを作るのにも用いられた[15][16]

国際的には、コルディア・アフリカーナから得られる木材は同じムラサキ科カキバチシャノキ属の C. millenii (svC. platythyrsa (en と一まとめに「アフリカンコーディア」として取り扱われる[17](3種まとめての特性などについてはカキバチシャノキ属#アフリカンコーディアを参照)。コルディア・アフリカーナの心材は堅く黄土色であったり[6]赤茶色であったりし[4]、つやが出るため家具用の材木として評価されているが、ねじ曲がることがあるので鋸断する際には困難を伴う[1]。材木はまた耐久性に優れ、シロアリにも強く、高級家具ドアキャビネット作りや指物細工内装工事に用いられる[2]

薬用編集

アフリカにおいて、コルディア・アフリカーナは薬用目的でも用いられてきた。

キクユ人の場合、特に根の皮をシソ科プレクトランサス属英語版コレウス・フォルスコリPlectranthus barbatus; キクユ語: mũigoya)やキョウチクトウ科クロバナカズラ属英語版ペリプロカ・リネアリフォリアスウェーデン語版Periploca linearifolia; キクユ語: mũimba-igũrũ)の根と共に煮沸した煮汁でモロコシ粉の薄いを作り、これにパピルスの茎を燃やして得られる塩の代替物を加えたものを、気管支炎ではない胸部風邪キクユ語: rũhayo)の患者に対して適量与えていた[18]。そのほか根の皮をが出る際やが痛む際、喉に潰瘍ができている時などに噛むという使い方も存在していた[19]。近年のニエリ県においても、樹皮が煎じ薬として腸チフス高血圧、胸部の感染症に対して使用されたり、抗腫瘍薬や強心剤として用いられたりすることが報告されている[20]

東アフリカではほかにも樹皮の搾り汁を骨折した箇所に塗るという利用法もある[4]Quattrocchi (2012) では地域や民族は明示されていないものの、住血吸虫病の際に根の煎じ汁が飲まれる、乾燥させて粉末にした葉が生傷の上にのせられる、樹皮や果実から刺激を与える強壮剤が得られるといった記述が見られる。

諸言語における呼称編集

ウガンダ:

エチオピア:

ケニア:

タンザニア:

南アフリカ共和国など:

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ Leakey (1977:III:1306) によると、かつてキクユ人は急に必要が生じた場合に樹皮を粗い紐としていた。
  2. ^ Leakey (1977:III:1306) によると、かつてのキクユ人もコルディア・アフリカーナを境界を示す植木として用いていた。
  3. ^ Benson (1964:389) では hives、Leakey (1977:III:1306) では beehives とされている。hivebeehive と英訳される語にはムワト(キクユ語: mwatũ)やイホゴ(キクユ語: ihũgũ)が存在する[13]が、このうちムワトの方は縦に割った木の幹の中をくり抜いてから再度合わせたものを木のまたに設置したり枝に吊り下げたりして、その中でミツバチに巣を作らせるというものである[14]
  4. ^ ただしこの名称は同属の C. millenii のことも指す[21]
  5. ^ a b ケニアのメル語もタンザニアのメル語もいずれも Meru と綴られるバントゥー諸語に属する言語であるが、その下の細かい分類には隔たりが見られる。Lewis et al. (2015a, b) や Hammarström et al. (2018a, b) ではケニアのメル語(別名: Kimîîru)はキクユ語と、タンザニアのメル語(別名: Rwa)はチャガ語と近い分類とされている。
  6. ^ a b ウォーカー (2006) はケニアにおける本種の呼称として mukumari を示しているが、Maundu & Tengnäs (2005:169) におけるケニアの諸言語による呼称一覧に厳密に同じ形のものは見られない。
  7. ^ a b ウォーカー (2006) には単にタンザニアにおける本種の呼称としてこれが示されている。

出典編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k Mbuya et al. (1994:196).
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o Paull (2008:186).
  3. ^ a b c d e f g h i Quattrocchi (2012).
  4. ^ a b c d e f g h Dharani (2002).
  5. ^ a b c d Bekele-Tesemma (2007:196).
  6. ^ a b c d e Katende et al. (2000:202).
  7. ^ a b 高岡 (2005).
  8. ^ 熱帯植物研究会 (1991).
  9. ^ a b c d e Cordia africana Lam. The Plant List (2013). Version 1.1. Published on the Internet; (accessed 12th May 2018).
  10. ^ a b c d e f g h i Maundu & Tengnäs (2005:169).
  11. ^ Bein et al. (1996:150).
  12. ^ a b ナポリ (2011).
  13. ^ Barlow (1975).
  14. ^ 杜 (2015:242, 288).
  15. ^ a b c Benson (1964:389).
  16. ^ a b c Leakey (1977:III:1306).
  17. ^ ウォーカー (2006).
  18. ^ Leakey (1977:II:914, III:1304,1306,1323,1349).
  19. ^ Leakey (1977:II:914–5).
  20. ^ Kamau et al. (2016).
  21. ^ Katende et al. (2000:204).
  22. ^ Massaja (1867:336).
  23. ^ 川瀬 (2016:44,75).
  24. ^ Bekele-Tesemma, Useful trees and shrubs for Ethiopia, 2007 - PlantUse English” (英語). uses.plantnet-project.org. 2018年6月10日閲覧。
  25. ^ a b c d 佐藤 (2014:19).
  26. ^ a b c d e f g Beentje (1994).
  27. ^ Creider & Creider (2001).

参考文献編集

英語:

日本語:

  • エイダン・ウォーカー 編 (2006).『世界木材図鑑』乙須敏紀 訳、産調出版、78頁。4-88282-470-1(原書: The Encyclopedia of Wood, Quarto, 1989 & 2005.)
  • 川瀬慈 (2016).「エチオピアの音楽職能集団アズマリの職能機能についての考察」 『国立民族学博物館研究報告』41(1): 37-78. doi:10.15021/00006114
  • 佐藤廉也「エチオピア南西部の森林農耕民マジャンギルの植物利用と認知」『地球社会統合科学』21 (1/2), pp.1-28, 2014-12-25. 九州大学大学院地球社会統合科学府 doi:10.15017/1477905
  • 高岡貞夫「1997-98年のエルニーニョの長雨がケニア山の新旧の農村に与えた影響」 日本地理学会発表要旨集 = Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers (67), 88, 2005-03-10. doi:10.14866/ajg.2005s.0.95.0
  • ドナ・ジョー・ナポリ英語版 作、カディール・ネルソン英語版 絵 (2011).『ワンガリ・マータイさんとケニアの木々』千葉茂樹 訳、鈴木出版。978-4-7902-5223-8 (原書: Mama Miti: Wangari Maathai and the Trees of Kenya, Simon & Schuster, 2010.)
  • 熱帯植物研究会『熱帯植物要覧』第3版、養賢堂、1991年、431頁。4-924395-03-X
  • 杜由木 (2015).『夜には、夜のけものがあるき 昼には、昼のできごとがゆく―東アフリカの天界・地上・生きもの・人の世―』東京図書出版。ISBN 978-4-86223-828-3

関連項目編集