コーヴ・ガーディアンズ

コーヴ・ガーディアンズとは、海洋保護団体「シーシェパード」の下部組織で、日本のイルカ追い込み漁に反対する「無限の忍耐作戦」を実行するための組織である。反イルカ漁・反捕鯨の映画『ザ・コーヴ』が公開された2010年に活動を開始した。日本では和歌山県東牟婁郡太地町で毎シーズン9月から翌年2月までの漁期の間、漁を阻止するための嫌がらせ(自称)を行う。

コーヴ・ガーディアンズ
設立 2010年
主要人物 スコット・ウエスト
メリッサ・セーガル
デヴィッド・ハンス
活動地域 日本の旗 日本
活動内容 動物解放運動(イルカのみ対象)
活動手段 直接行動
標語 Operation Infinite Patience
Operation Henkaku
那智勝浦町に拠点を設け、太地町に通う
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背景と歴史編集

シーシェパードは、2003年に太地町に一時滞在したが、その後、2010年までなりをひそめた。2009年に和歌山県太地町のイルカ追い込み漁を批判的に描いた映画『ザ・コーヴ』が公開されると、映画により、国内外の世論が喚起された。満を持して、シーシェパードは太地町でのイルカの殺戮を止めさせるという名目で、キャンペーンに世界中が参加するように呼びかけ、2010年から「コーヴ・ガーディアンズ」(「入り江の番人」という意味)を組織し、太地町に集めた活動家を送り込んだ[1]

その後、シーシェパードはこの作戦を「Operation Infinite Patience」(無限の忍耐作戦)と名付けた。この作戦は、シーシェパードの創設者ポール・ワトソンによれば、「嫌がらせ」と説明された[2]。一方、エコテロリストについて著作のある産経新聞記者の佐々木正明によれば、支持者や寄付金収入を増やすためのシーシェパードの営業活動の一つだと説明された[1]

佐々木は、2010年以後は、「当初は、伝統的なイルカ漁を一方的な編集で批判した米アカデミー賞の『ザ・コーヴ』に触発されて、日本旅行のついでといった物見遊山的な参加者が多かったが、次第に、ワトソン代表の国際的な知名度やシーシェパードの勢力を利用して、素性のうかがいしれない世界各国の活動家が集う最前線と化した」と説明した[1]。更に「シーシェパードは活動家を太地町に常駐させ、妨害するためのノウハウや漁師たちの情報などを蓄積」していると指摘し、「先輩活動家が 1 人いれば、長期滞在の衣服を詰め込んだカバン 1 つで日本にやってきて、初日から妨害に参加できる」と、コーヴ・ガーディアンズが行う作戦を解説した[1]

2014年に、スコット・ウエストやメリッサ・セーガルが上陸拒否となり、キャンペーンのリーダー格の人物が日本国内に不在となった。

2015年秋からは、作戦名が「Operation Henkaku」に改められた[3]

主要構成員編集

  • スコット・ウエスト (Scott West) - キャンペーン・ディレクター[4]。2010年から太地町に滞在し、映画『Behind "the cove"』(2015年、監督・八木景子)、映画『the whale movie(仮称)』(2016年予定、監督・佐々木芽生)、NHKスペシャル『クジラと生きる』(2010年、NHK総合テレビジョン)などに出演した。2014年2月に法務省が上陸拒否[4]
  • マーティン・スチュアート (Martyn Stewart) - 英国放送協会 の映像制作者でもある。太地の映像を作った。2014年2月に法務省が上陸拒否[5]
  • メリッサ・セーガル (Melissa Sehgal) - キャンペーン・コーディネーター[6]、キャンペーン・リーダー[7]。アメリカ合衆国で逮捕歴がある。マスメディアの取材を受ける[6]。2014年12月に法務省が上陸拒否。
  • デヴィッド・ハンス (David Hance) - メリッサ後のキャンペーンリーダー。2014年9月ごろから11月まで日本滞在[8]。映画「ビハインド・ザ・コーヴ」など出演。
  • カレン・ハーゲン (Karen Hagen) - 2014年9月ごろから12月までの現地リーダー[9]
  • ブロンウィン (Bronwyn) - 2014年12月から2015年2月までの現地リーダー[10]
  • クリストフ (Kristof) - 2015年1月から3月までの現地リーダー[10]
  • メアリー・ギブソン (Mary Gibson) - 2015年9月ごろから11月まで現地リーダー[11]

評価編集

名古屋大学准教授の野村康は、NHKスペシャルクジラと生きる』などに映し出されたシーシェパードの活動家は、違法性が高い行為を日常的に繰り返しているとし、例として、Killer(殺し屋)などの様々な罵倒を長時間執拗に浴びせて挑発する行為や、漁業者の車両の前に座り込んだり、立ちふさがったりして、移動を妨げる業務妨害を挙げている[12]

野村は、太地町の漁業への被害、漁師への違法行為などの例を挙げながら、「個々の被害は大きくないものの、数日から数週間の短期滞在で次から次へと入れ替わりでやってくる活動家は、常時10人前後が漁の期間太地に滞在し、一年間に延べで100人以上にも達するため、積み重なるとその被害は深刻」とする旨を考察した[12]

主な逮捕編集

画像外部リンク
  2012年に起きた古式捕鯨の羽指(はざし)の像の槍を折り曲げた事件
朝日新聞英語版 公表[13]

和歌山県警は2011年9月から2012年1月の間に軽犯罪法違反・和歌山県迷惑防止条例違反の疑いで、活動家に対して約25件の指導警告を行った[14]

  • アレックス・コーネリソンとアリソン・ワトソン - 2003年11月、漁網を切断し、器物損壊容疑で逮捕[15]
  • アーウィン・フェルミューレン - 2011年12月、太地町で警備の男性の胸をついたとして暴行容疑で逮捕。2012年2月無罪判決[16]
  • ニルス・グレスキーズ - 太地町の公園で、2012年10月にモニュメントにぶら下がって壊した器物損壊罪で罰金刑[17]

主な入国拒否編集

2013年 - 2014年
スコット・ウエスト[4]、マーティン・スチュアート[5]
2014年1月から10月に、日本国政府はシーシェパードの幹部など8名を上陸拒否した。法務省入国管理局は、(渡航者の過去の訪日で)「国内での予定を正確に申告しなかったため」と理由を説明した[18]
2014年 - 2015年
メリッサ・セーガル[19]
2015年 - 2016年
カレン・ハーゲン[3]、リンダ・トラップ[20]

出典編集

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d 佐々木, 正明 (2012年3月28日). “環境テロリスト 日本に続々上陸中(後篇)”. Wedge. https://wedge.ismedia.jp/articles/-/1771 2021年8月20日閲覧。 
  2. ^ Captain Paul Watson on the Cove Guardians Campaign - YouTube2011-11-22にシーシェパードが公表した映像, 2015-8-31閲覧
  3. ^ a b Sea Shepherd Cove Guardian Leader Denied Entry to Japan August 27, 2015 , Sea Shepherd Conservation Society
  4. ^ a b c Cove Guardian Campaign Director Scott West Denied Entry Into Japan February 16, 2014 , Sea Shepherd Conservation Society
  5. ^ a b BBC filmmaker Martyn Stewart locked up in Japan accused of being ‘eco-terrorist’ by Kate Nelson、13 February, 2014、London 24
  6. ^ a b Dolphins killed as Taiji's controversial hunting season resumes in Japan September 25, 2014 , By Tim Hume and Junko Ogura , CNN
  7. ^ Livestream - Cove Guardians(archive 2015-2-17)
  8. ^ Livestream - Cove Guardians(archive 2014-9-14)
  9. ^ “Rare albino dolphin WON'T be slaughtered after being captured by Japanese fishermen (but it will be sold for £300,000 and spend the rest of its life in captivity)”. Mailonline (Associated Newspapers Ltd). (2014年11月28日). http://www.dailymail.co.uk/news/article-2852284/Rare-albino-dolphin-captured-Japanese-fishermen-set-fetch-500-000-bounty.html 2015年12月6日閲覧。 
  10. ^ a b Livestream”. Cove Guardians. Sea Shepherd Conservation Society. 2015年12月6日閲覧。
  11. ^ Paul Watson: “Tres mujeres Guardianas de la Cala desafían a los matones nacionalistas japoneses””. Verde Periódico Ecológico (2015年11月6日). 2015年12月6日閲覧。
  12. ^ a b 野村康、「【原著】民主政と越境的直接行動 太地町における反捕鯨活動の批判的考察」 『人間環境学研究』 2013年 11巻 2号 p.91-105, doi:10.4189/shes.11.91
  13. ^ Anti-whaling activists refused entry into Japan for most of 2014 January 06, 2015 , THE ASAHI SHIMBUN
  14. ^ 田中, 俊之 (2012年1月27日). “脅迫状、暴行…「暴力活動家」に悩める捕鯨の町”. 産経新聞. オリジナルの2012年7月18日時点におけるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20120718233817/https://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/543637/ 2021年8月20日閲覧。 
  15. ^ ‘Secret’ dolphin slaughter defies protests by Boyd Harnell。 Nov 30, 2005。 ジャパンタイムズ
  16. ^ 佐々木, 正明 (2012年3月27日). “環境テロリスト 日本に続々上陸中(前篇)”. Wedge: p. 1. https://wedge.ismedia.jp/articles/-/1769 2021年8月20日閲覧。 
  17. ^ “モニュメント壊したシー・シェパード関係者に罰金10万円 和歌山”. MSN産経ニュース. (2012年10月26日). オリジナルの2014年4月17日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140417145735/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121026/crm12102619410029-n1.htm 2021年8月20日閲覧。 
  18. ^ “反捕鯨団体幹部らの入国拒否 「正確に予定申告せず」”. 朝日新聞. (2015年1月5日). オリジナルの2015年12月15日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20151215132052/http://www.asahi.com/articles/ASH155H5MH15UTIL01T.html 
  19. ^ Cove Guardian Campaign Leader Melissa Sehgal Denied Entry to Japan December 8, 2014 , Sea Shepherd Conservation Society
  20. ^ Another Veteran Sea Shepherd Cove Guardian Denied Entry to Japan August 30, 2015 , Sea Shepherd Conservation Society

関連項目編集