メインメニューを開く
愛馬ブケパロスに騎乗したアレクサンドロス。鎧にメドゥーサの首(拡大図)
紀元前660年頃の貯蔵用の大甕ピトスの表面に描かれたレリーフルーヴル美術館所蔵。

ゴルゴン古希: Γοργών, Gorgōn)、またはゴーゴン古希: Γοργώ, Gorgō)は、ギリシア神話に登場する醜い女の怪物である[1][2]。その名は「恐ろしいもの」の意。

日本語では長母音記号を省略し、ゴルゴン[1]ゴーゴンとも表記する。英語読みはゴーゴンGorgon)。

目次

概要編集

ヘシオドスの『神統記』やアポロドロスによると、ゴルゴンは海神ポルキュースとその妻ケートーの娘で、ステンノーエウリュアレーメドゥーサの3人からなる姉妹である。またグライアイとも姉妹である[3][4][5]エウリピデスの奇妙な伝承によると、ゴルゴンはギガントマキアの際にガイアギガース族の味方として生み出したとある[6]。さらにヒュギヌスはゴルゴンとケトからステンノ、エウリュアレ、メドゥーサが生まれたとしている。この伝承ではゴルゴンは男の怪物となっている[7]

髪の毛の代わりに生きているが生えており[1]黄金の翼、青銅イノシシのようなを持つとされ、自らの翼で空を飛び、ゴルゴンの顔を見た者を石化することができる[5]ボイオティア地方から発見されルーブル美術館に所蔵されている大甕ピトスでは、下半身がになっているケンタウロス族のような姿(ただし足は二本)で描かれているが、ゴルゴンの首に剣を向けているペルセウスはゴルゴンを見ないように顔を背けている。その住処はヘシオドスによると、オケアノスの流れや「ヘスペリデスの園」の近くの世界の西の果ての地である[8]

神話編集

神話によると3姉妹のうちメドゥーサだけが不死ではなく、後にメドゥーサはペルセウスによって首を切られて退治された。その際、傷口からメドゥーサとポセイドンの子クリュサオルペガサスが生まれた[9][10]。その後、ペルセウスはメドゥーサの首を使ってアンドロメダや母ダナエーを救い出したと伝えられている。ペルセウスがキビシスからメドゥーサの首を取り出し、その首を向けられた者は何者であっても石と化した[11]。一説によるとメドゥーサはアテナと美を競ったために、アテナによって首を切られた[11]。さらにメドゥーサはアテナの怒りに触れて醜い姿にされたとする説も唱えられた[12]。ペルセウスは冒険が終わるとメドゥーサの首をアテナに捧げ、アテナは自らのアイギスにその首を取り付けたという[11]

ホメロスは『イリアス』の中で、ゼウスの盾アイギスに固定されているゴルゴンの首について描写している[13]。アイギスは『イリアス』においてはゼウスの持ち物であり[14]へパイストスがゼウスのために制作したものである[15]。アイギスについては諸説あり、後世の神話ではアテナのアイギスは女神自身がゴルゴンを倒した際に、その皮を剥いで作ったものだと語られている[16]

一方、『オデュッセイア』ではゴルゴンの首は冥府の王ハーデスが所持する魔物であるかのように描かれている[17]

魔除けとしてのゴルゴン編集

ゴルゴンの首は古代ギリシャにおいてはしばしば魔除けゴルゴネイオン、Gorgoneion)に用いられた[18]

ギリシア美術では「真正面を向いた」人物描写は少ないが、ゴルゴンに限ってはほとんどが真正面を向いた形で描かれている。同様に「真正面」の描写が少ないメソポタミア・エジプト美術において常に真正面を向いて描かれるフンババ(同じく魔除けに使われた)やエジプトの神ベスとの共通点も指摘されている。正面を向いているのはゴルゴーンの持つ邪眼を機能させるためだとされている。

脚注編集

  1. ^ a b c ギリシア・ローマ神話事典』 260、261頁。
  2. ^ ギリシア神話』 290頁。
  3. ^ ヘシオドス、270行-276行。
  4. ^ アポロドロス、1巻2・6。
  5. ^ a b アポロドロス、2巻4・2。
  6. ^ エウリピデス『イオン』987行-990行。
  7. ^ ヒュギーヌス、序文。
  8. ^ ヘシオドス、274行-276行。
  9. ^ ヘシオドス、277行-281行。
  10. ^ アポロドロス、2巻4・2-4・3。
  11. ^ a b c アポロドロス、2巻4・3。
  12. ^ 幻想世界の住人たち』96頁。
  13. ^ 『イーリアス』5巻741行-742行。
  14. ^ 『イリアス』5巻733行以下。
  15. ^ 『イリアス』15巻309行-310行。
  16. ^ エウリピデス『イオン』991行-996行。
  17. ^ 『オデュッセイア』11巻634行-635行。
  18. ^ 古代ギリシアがんちく図鑑』44頁。

参考文献編集

  • アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
  • 『ギリシア悲劇III エウリピデス(上)』、ちくま文庫(1986年)
  • ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫(2005年)
  • ヘシオドス神統記廣川洋一訳、岩波文庫(1984年)
  • ホメロスオデュッセイア(上)』松平千秋訳、岩波文庫(1994年)
  • ギラン, フェリックス『ギリシア神話』中島健訳、青土社、1991年8月、新装版。ISBN 978-4-7917-5144-0
  • グラント, マイケル、ヘイゼル, ジョン『ギリシア・ローマ神話事典西田実ほか訳、大修館書店、1988年7月。ISBN 978-4-469-01221-7
  • 芝崎みゆき『古代ギリシアがんちく図鑑』バジリコ、2006年12月。ISBN 978-4-86238-031-9
  • 健部伸明怪兵隊『幻想世界の住人たち』新紀元社Truth In Fantasy 1〉、1988年10月。ISBN 978-4-915146-85-5

外部リンク編集