サスペリア』(Suspiria)は、1977年制作のイタリアホラー映画ダリオ・アルジェント監督。

サスペリア
Suspiria
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監督 ダリオ・アルジェント
脚本 ダリオ・アルジェント
ダリア・ニコロディ
製作 クラウディオ・アルジェント
製作総指揮 サルヴァトーレ・アルジェント
出演者 ジェシカ・ハーパー
アリダ・ヴァリ
ジョーン・ベネット
ウド・キア
音楽 ゴブリン
ダリオ・アルジェント
撮影 ルチアーノ・トヴォリ
編集 フランコ・フラティチェリ
配給 日本の旗 東宝東和
公開 イタリアの旗 1977年2月1日
日本の旗 1977年6月25日
上映時間 99分
製作国 イタリアの旗 イタリア
言語 イタリア語
配給収入 10億9000万円[1] 日本の旗
次作 インフェルノ
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ゴブリンが奏でる恐怖の音楽が音響立体移動装置(サーカム・サウンド・システム)により増幅され一世を風靡した。「魔女3部作」の1作目とされる。

2018年にリメイクされた。

概要編集

トマス・ド・クインシーの小説『深き淵よりの嘆息』をモチーフに、ダリオ・アルジェントダリア・ニコロディが脚本化した。主人公を演じたのはジェシカ・ハーパー。1977年公開。ドイツのバレエ名門校に入学した若い娘を襲う恐怖を描き、大ヒットした。

ストーリー編集

バレリーナ志望のスージーは、ドイツにあるバレエの名門校に入学するために、ニューヨークからやって来た。空港でようやく拾うことができたタクシーに乗ってスージーは学校に向かう。激しい雨の中到着したバレエ学院は赤い館。そしてその建物の玄関では、若い生徒であるパットが何者かに追われているかのように怯え、何かを叫んでいる。「秘密のドア、アイリス、青いの……。」

恐怖に顔をひきつらせたパットは、雷鳴の中をずぶ濡れになって走っていく。この奇妙な光景を見たスージーは、すぐに玄関に走り寄って、ドアを開けるように頼むが、インターホンからはなぜか冷たい拒絶の言葉が返ってくるだけであった。途方に暮れたスージーは仕方なく出直すことにする。

友人のアパートにたどり着いたパットの身に、奇怪なことが起こる。部屋に入った時、この世のものとは思えない呻き声を耳にしたパットは、その直後、窓の外の闇の中から、突然現われた毛むくじゃらの腕に締めつけられ、何度も何度も胸や腹をナイフで突き刺されてしまう。そのパットの悲鳴を聞きつけて駆けつけた友人も、不運な惨死の道づれとなって鮮血に染まる。

翌日、再び学校を訪れたスージーは、ようやく入学することができる。そこには、海外旅行中という女理事長の代理のマダム・ブランク、厳格な主任教師のタナー女史、盲導犬に引かれる盲目のピアニストのダニエル、ルーマニア人の下男パブロ、マダムの甥で9歳になるアルバート少年らがいた。レッスン中、突然身体が不調となったスージーは、途中で床に倒れこむ。校医の診察を受けたスージーは、増血のためとして葡萄酒を食事に加えられるが、この葡萄酒を飲むとスージーはいつもなぜか眠ってしまう。

スージーはサラという少女と仲良くなり、学院の様子をこと細かく知るようになる。その夜、寄宿舎の天井から白い蛆虫が落ちてくるという事件が起こる。学院はパニック状態になるが、屋根裏に保存してあったハムやソーセージに寄生したものだったと判明する。そこで当分の間、生徒たちは全員、バレエ練習用の大ホールにベッドを移して寝起きすることになる。

真夜中、ベッドに入っても眠れないスージーとサラは、大きな仕切り用のカーテンの向こうから漏れてくる不気味な呻き声にひどく怯え、またその呻き声の周辺からどこかへ立ち去っていく奇妙な足音を耳にする。サラは、呻き声の主が海外旅行中の理事長ではないかとスージーに告げるが、翌朝それをタナー女史に尋ねると、冷たい否定が返ってくる。

次の日、アルバートがダニエルの盲導犬に噛みつかれるという事件が起きる。タナーは烈火のごとく怒り、ダニエルを首にしてしまう。ダニエルは「私は目が不自由でも耳は良いんだ。こんな呪われたところ出て行ってやる」と捨て台詞を吐きながらその場を立ち去る。こうした事件の起こる中、スージーとサラは、夜ごとタナーたちの靴音に好奇心をかきたてられる。なぜ教師たちの靴音が響き、突然それが消えてしまうのか。サラはその靴音を追って廊下に忍び出る。その夜、ビアホールからの帰り道に、ダニエルは自分の盲導犬に噛み殺される。

次の夜、スージーの寝室に来たサラは、最初に変死したパットから、死の直前に奇妙な話を聞かされ、謎めいたメモを預けられたことを告げる。しかしスージーは睡魔に襲われる。仕方がなく自室に戻ったサラは、恐怖心に襲われ、廊下に逃げ出す。何者かが追いかけてくる気配を感じ、屋根裏へ逃げ込むが、高い窓から工具室に転倒する。そこにあった無数の細い針金がサラの白い肌にからみつく。まるで蜘蛛の巣にかかったかのように身動きができないサラの腹部を、何者かの手がナイフで突き刺す。最後に喉を掻き切られたサラは惨死する。

翌朝、サラの姿が見えないことを不審に思うスージーに、サラが荷物をまとめて退学していったとタナーが告げる。奇妙に思ったスージーは、サラの友人の精神科医フランクを訪ね、学院についての奇妙な出来事を相談する。フランクは学院の歴史と魔女についての話をする。より詳しいミリウス教授の話もその場で聞くことになる。

その夜、誰もいない寄宿舎に戻ったスージーは意を決して、葡萄酒を捨て、秘密を暴こうとする。足音の数だけ廊下を歩くと、スージーは校長室にたどり着いた。そこでスージーは、学院に到着した日に会った女学生(パット)の言葉を思い出す。「アイリスが3つ。青いのを回すのよ……。」壁を見ると、アイリスの飾りがあり、青いアイリスを回すと秘密のドアが開いた。奥の部屋では教師たちがスージーを呪う儀式をしている。この学院は魔女たちの館であり、バレエ教室はもともと魔女の儀式の踊りから派生したものだったのだ。姿を見られたスージーは、別の部屋に逃げ込む。そこには長老のエレナ・マルコス(溜息の母)がカーテン越しのベッドにいる。スージーはカーテンを開けるが、そこには誰もいない。エレナの嘲笑と共に突然、サラの死体が動きだし、スージーに向かって襲いかかってくる。絶体絶命のピンチ、雷の光がエレナ・マルコスの透明な身体を光で浮かび上がらせる。スージーは全力を振り絞り、ガラス製の孔雀の置物の羽根を取って、マルコスの喉を突き刺す。彼女の死とともに館が崩れはじめる。教師たちの阿鼻叫喚の中、やっとのことで館の外に逃げ出すスージー。激しい雨のなか、スージーは笑みを浮かべる。

スタッフ編集

監督:ダリオ・アルジェント
製作総指揮:サルヴァトーレ・アルジェント
製作:クラウディオ・アルジェント
脚本:ダリオ・アルジェント、ダリア・ニコロディ
撮影:ルチアーノ・トヴォリ
音楽:ゴブリン、ダリオ・アルジェント

日本語版製作スタッフ編集

  • 本編日本語字幕:落合寿和
  • TBS系「月曜ロードショー」版
吹替翻訳:磯村愛子
吹替演出:早坂仁
  • テレビ東京系「木曜洋画劇場」版
吹替翻訳:磯村愛子
吹替演出:田島荘三
  • 1998年発売旧DVD収録版
吹替翻訳:蘭光太郎
吹替演出:多部博之

キャスト編集

役名 俳優 日本語吹替
TBS テレビ東京 DVD
スージー・バニヨン ジェシカ・ハーパー 岡本茉利 勝生真沙子 内川藍維
ミス・タナー アリダ・ヴァリ 高橋和枝 谷育子 紗ゆり
ブランク夫人 ジョーン・ベネット 公卿敬子 京田尚子 西宏子
サラ ステファニア・カッシーニ 山田礼子 高島雅羅 深水由美
ミリウス教授 ルドルフ・シュンドラー 千葉耕市 大木民夫 青山穣
マーク ミゲル・ボセ 伊藤淳一 川道信介 吉田孝
ダニエル フラヴィオ・ブッチ 市東昭秀 速水奨 樫井笙人
パット・ヒングル エヴァ・アクセン 矢野陽子 山田栄子 中村千絵
オルガ バーバラ・マグノルフィ 有馬瑞香 市川まゆ美
フランク・マンデル ウド・キア 市東昭秀 井上和彦 樫井笙人
ナレーター(イタリア語版) ダリオ・アルジェント 千葉耕市 大木民夫 青山穣
その他 菊池紘子 浅井淑子
安達忍
山岡葉子
後藤真寿美
朝戸鉄也

桑島美由生
西敦子
演出 早坂仁 田島荘三 多部博之
翻訳 磯村愛子 蘭光太郎
制作 TBS
ニュージャパンフィルム
テレビ東京
コスモプロモーション
コスモプロモーション
初回放送 1979年10月1日
月曜ロードショー
21:02-22:55
1986年5月1日
木曜洋画劇場
21:00-22:54
1998年発売

その他編集

  • 主人公のスージー役には脚本を担当したダリア・ニコロディが当初予定されていたが、米国の配給業者が米国で売りやすくするためアメリカ人の俳優を推薦し、ジェシカ・ハーパーを起用した。ニコロディにはスージーの友人サラ役が割り当てられたが、彼女はそれを拒否、オープニングの空港の1シーンのみカメオ出演している。当時の公式発表ではダリア・ニコロディはバレエ・シーンのリハーサル時にかかとを痛めて降板したと説明されてきたが、それは弁解に過ぎなかったようだ。
  • イタリア本国版では、冒頭のナレーションはダリオ・アルジェント本人が務めている。
  • 最初にスージーがタクシーに乗り、運転手に行き先を伝えるシーンで、雷光に照らされた車内隔壁ガラスの運転手の首元に一瞬、叫ぶような青い顔が映る。日本では当時、本物の幽霊が映っていると話題となり、たびたび心霊・怪奇番組で映画に映ってしまった怪奇現象として紹介されることがあるが、実際はアルジェント本人が意図的に演出したものである。
  • 序盤でパットが殺害されるシーンでは、その足元の血だまりにほうきに乗った魔女が描かれている。
  • 物語の終盤、スージーがエレナを刺殺するのに使用するガラスの羽であるが、アルジェントの初監督作『歓びの毒牙』の原題(水晶の羽を持つ鳥)のメタファーとなっている。
  • 日本でも「決して、ひとりでは見ないでください」というキャッチフレーズと、あまりにも激烈な恐怖・残酷表現のため、1000万円のショック保険をつけ大ヒットした。また、『8時だョ!全員集合』で、志村けんいかりや長介を指して「決して、ひとりでは見ないでください」というコントを披露している。
  • その影響を受け、同配給会社が同監督の前作でサスペリアとは無関係の作品 Profondo Rosso(1975年)に『サスペリアPART2』の題をつけて公開した。この作品は現在販売されているDVDでは「紅い深淵」という副題がつけられ、『サスペリア』と同梱のDVD-BOXとして本数限定で販売された。
  • 『サスペリア2000』という邦題のサスペンス映画は、『サスペリア』とは全く無関係である。
  • 本作はフランク・ヴェーデキントの『ミネハハ』をモチーフにしたとの説があるが、これは映画『エコール』の監督ルシール・アザリロヴィックの、勘違いによりインタビューで話した内容が宣伝材料とされて一人歩きしたものである。実際には『ミネハハ』は『サスペリア』の原作ではない。
  • 本作のテーマ曲は、後に日本の刑事ドラマ『相棒』Season 5の第16話「イエスタデイ」で、林泰文扮する人物が記憶を取り戻すシーンで使用された。
  • 映画の後半で太った婦人(調理人)が「ダレダ?」と聞こえる言葉を発しているが、これはロシア語で「そこにいるのは誰? 誰なの?」(Кто эта там? Кто там?〔クトー エータ ターム? クトー ターム?〕)と言っている。
  • 『サスぺリア』のストーリーは一部の批評家からは単純であるとか、論理性がないなどと批判されている。アルジェントの映画はすべてが謎解き風の構成になっているのがネックだともいえる。『サスぺリア』はスーパーナチュラルな存在を描いた作品であるにもかかわらず、アルジェントの初期の作品と同様に、犯人探しにポイントがおかれている。観客に犯人探しをさせようとするのはアルジェントが根っからのジャーロ作家で、このような展開にしないと気が済まないからかもしれない。『オーメン』や『エクソシスト』など、米国のオカルト映画は最初から悪魔の存在を観客に示しており、犯人探しの要素はない。そのために奇怪な殺人事件が次々に発生しても観客は納得する。しかし、『サスぺリア』や『インフェルノ』では映画の途中で次々と発生する殺人事件の犯人が分からないばかりか、そもそも殺人が何のために行われているのかさえも不明である。映画の最後になって事件の背後には魔女がいたと分かる構成になっているため、映画の途中では観客にとって訳の分からない場面が続出するということになる。また『サスぺリア』でも『インフェルノ』でも、殺人シーンは魔女自身の手で行われておらず、これがアルジェント作品の批判者からは論理性がない、分かり難いと批判される原因のひとつになっている。

リメイク編集

2016年にリメイクされ、2018年に公開された。監督はルカ・グァダニーノ[2][3]、出演はダコタ・ジョンソン[4]クロエ・グレース・モレッツティルダ・スウィントン[5]で、オリジナル版の主演女優であるジェシカ・ハーパーも出演する[6]

脚注編集

[脚注の使い方]

関連項目編集

外部リンク編集