サトウキビ(砂糖黍、学名:Saccharum officinarum)は、イネ科サトウキビ属植物

サトウキビ
Saccharum officinarum - Köhler–s Medizinal-Pflanzen-125.jpg
サトウキビ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉植物 Monocots
: イネ目 Poales
: イネ科 Poaceae
: サトウキビ属 Saccharum
: サトウキビ S. officinarum
学名
Saccharum officinarum
和名
サトウキビ(砂糖黍)
英名
Sugarcane
Starr 030523-0142 Saccharum officinarum.jpg

目次

呼称編集

日本語の別名は甘蔗(かんしゃ、かんしょ)である[1]。ただし、「かんしょ」の発音は「甘藷」(サツマイモ)と同音であり、サトウキビの産地とサツマイモの産地が重複していることもあり、紛らわしいので好まれない。中国語では甘蔗拼音: gānzhè ガンジャ)と呼ぶ。

種子島では おうぎ、奄美群島の徳之島では うぎ沖縄方言では ウージ と呼ばれている。これらはオギ(荻)が訛ったものであるが[2]、オギはイネ科ススキ属であり属が異なる植物である。新聞見出しなどでは、単に「キビ」と書かれることもある[3]

学名”Saccharum officinarum”は「薬局の砂糖」を意味し、製糖が伝播しカナリア諸島などの栽培が行われていた15世紀のヨーロッパで、薬局が砂糖を甘味料や薬として扱っていたことに由来する。[4]

特徴編集

テンサイと並んで砂糖(蔗糖)の原料となる農作物である。栽培種の起源はニューギニア島とその近くの島々と言われ、世界各地の熱帯亜熱帯地域で広く栽培される。

のように木化し、がある。茎の節間の内部は竹とは異なり空洞ではなく、糖分を含んだとなっている。茎は高さ3 mにもなる。トウモロコシのように幅広い線形である。秋には茎の先端からススキのようなを出す。

産地・栽培編集

サトウキビ発祥の地は、現在のニューギニア島あたりで、紀元前6000年前後に現在のインド、さらに東南アジアに広まったといわれている[5]。また、インドを原産とする文献もある[6]。古代サンスクリット語による古文書の記載から、砂糖の精製は北インドが発祥ではないかとされている。

2002年時点の世界生産量は12億9000万トンという膨大な量に及ぶ(小麦は同年5億7000万トン)。ブラジル (28.0%)、インド (21.7%)、中国 (6.4%) の順であるが、地域別に集計するとアジア州 (43.5%)、南アメリカ州北アメリカ州の順となる[7]

サトウキビはC4型光合成と呼ばれるタイプの光合成を行う植物であり、栽培には十分な日照と、豊富な水源が必要である。

日本では、主に沖縄県奄美群島を中心に栽培されている。また、九州四国地方高知県黒潮町など)愛媛県(四国中央市など)でも栽培されている。香川県東かがわ市など)や徳島県上板町など)では、和三盆という砂糖の原料として竹糖(ちくとう、たけとう)と呼ばれる茎が細いサトウキビが栽培されている。世界におけるサトウキビの商業栽培の最北限は、四国から伝播した遠州横須賀地区(静岡県西部)とみられる。(尚、竹糖はシネンセ種 (S. sinense) の為、一般的なオフィシナルム種 (S. officinarum) を使って和三盆と同じ製法で砂糖を製造しても同じ味にはならない)

九州・四国等の温暖な地域で栽培されるサトウキビは製糖の歩留まりが低い為、農研機構(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構)は早生系のサトウキビの品種改良を行って2011年10月31日に本土向けサトウキビ育成品種として「黒海道(くろかいどう)」を発表している[8](品種登録出願番号:第25823号)。

作型は春に植えてその年の冬に収穫する春植え栽培と、夏に植えて翌年の冬に収穫する夏植え栽培、そして収穫後の地下株から再び出る芽から栽培し収穫する株出し栽培がある。 海外では植え付けを行なうと、刈り入れまでほとんど人手が入らないが、日本国内では植付けから収穫までの間は、雑草防除や発根を促進し地上部の倒伏を防ぎ養水分の吸収を盛んにする為、1、2回培土を行う。収穫の際は、まず斧に似た農具で生え際で切り倒し、別人が鎌を用いて茎に巻き付いている枯れ葉を除去し先端部分を切り離す(先端部分は苗として利用する)。茎は適当に集めて置いておき、作業の終わり頃に搬送に適した量に結わえ付けて運搬車に載せる。そこまではほとんど人力で行なわれる。台湾キューバブラジルなど規模の大きい外国の生産地では専用の大型収穫機が使われるが、日本でも小型の収穫機械による収穫が広まっている。

生産量編集

上位10カ国 - 2005年集計
国名 単位:1000 t
  ブラジル 422,926
  インド 232,300
  中華人民共和国 87,768
  パキスタン 47,244
  メキシコ 45,195
  タイ 43,665
  コロンビア 39,849
  オーストラリア 37,822
  インドネシア 29,505
  アメリカ合衆国 25,307
世界の総生産量 1,011,581
出典:
国際連合食糧農業機関 (FAO)
[9]


利用編集

茎の隨を生食したり、搾った汁を製糖その他食品化学工業や工業用エタノール製造の原料とするなど多様な利用方法がある。沖縄県などで作られる黒糖のほか、四国地方で作られる白下糖と呼ばれる粗糖や、それを精製した上質の砂糖和三盆の原料もサトウキビである。

21世紀初頭以来の原油価格高騰により燃料用エタノールの需要急増で、砂糖も高騰傾向にある。

食用編集

搾汁の一例

生産地では茎の髄をそのまま噛んで食べたり、機械で汁を搾って飲んだりする。食べる時は外側の硬い皮を歯で剥き、中の白く糖分に富んだ部分(髄)を咬んで汁を啜り、カスを吐き出す。

汁を搾って飲む場合は、同様に皮を剥いたあと手動や電動の搾汁機に差し込んで汁を搾る。搾ったままの汁はやや青臭いが、冷やしたりレモン汁を加えたりするとより美味しくなる。東南アジアからインドにかけてのメジャーな飲料である。

ベトナム料理などでは、茎の皮を剥いた髄にエビなどの練り物を付けて揚げたり焼いたりした料理がある。

中国四川料理には、サトウキビの髄を細く切り、魚などと共に辛い汁で煮る料理がある。

燃料編集

砂糖やラム製造時にサトウキビの絞りかす(バガス)が濃縮・蒸留の燃料としても利用されてきたが、廃糖蜜や搾りかすを原料にバイオ燃料開発も行われている。

サトウキビを絞った汁から砂糖を取除いた液体は「廃糖蜜」(モラセス)と呼ばれ、これを発酵させていわゆるバイオマスエタノールを取り出し、自動車燃料の一部として使う研究が行なわれている。

ブラジルでは1980年代から自動車燃料等のアルコールへの転換が政府主導で進められており、燃料用のサトウキビを政府が一定価格で買い上げるため、それまで栽培されなかった地方でも栽培が増えている(ポルトガル語版の表を参照)。

日本でもバイオマスのひとつとして、アサヒビールが研究を行い、品種改良された「モンスターケーン」と呼ばれる分蘖(ぶんげつ)数が多く従来の二倍の収穫量があるとされているサトウキビの栽培が行なわれており、小規模のアルコール製造工場を沖縄に建設し、試験生産と自動車への試験運用を行っている。
現在、日本では法令上、自動車燃料での利用は、ガソリンに3%の混合が限界であり、それ以上の混合率やアルコール単体の自動車での利用が認められていないが、宮古島市伊江村においてバイオマス燃料に対する実証実験が行われており、この実験結果次第で、自動車用燃料におけるアルコール比率の規制緩和が期待される。

酒類原料編集

絞り汁や廃糖蜜が蒸留酒の原料として用いられる。世界的にはカリブ海周辺諸国発祥のラム酒が著名であり、原料を糖蜜とする蒸留酒をラム酒と総称することもある。他にはブラジルカシャッサ(ピンガ)、タイタイ・ウイスキー、日本の黒糖焼酎奄美群島限定生産)や焼酎甲類の原料として用いられる。フィリピンでは、醸造酒バシの原料として用いられる。

搾りかすの利用編集

サトウキビの絞りかすをバガス英語: bagasse)という。製糖、蒸留の燃料にされる他、バガスからは、製紙用パルプフルフラールの製造原料としての工業利用がなされているほか、(サトウキビロウ)を採ることができ、オクタコサノールの分離も行われている。キクラゲ類の栽培用培地の原料として使用する場合も有る。

さとうきびに関連する作品編集

参考文献編集

関連項目編集

脚注編集

  1. ^ サトウキビ(国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス)
  2. ^ ヲゥージ:沖縄言語研究センター首里・那覇方言音声データベース
  3. ^ “与那国、キビに枯れあがり 7月の雨、平年の4分の1”. 八重山毎日新聞. (2014年8月27日). http://www.y-mainichi.co.jp/news/25687/ 2014年8月30日閲覧。 
  4. ^ ラム酒大全 - ISBN 4416516134
  5. ^ 『砂糖のイスラーム生活史』 佐藤次高 岩波書店 P17-40
  6. ^ 牧野富太郎 『原色牧野植物大図鑑』、1982年、p666。
  7. ^ FAO Production Yearbook 2002
  8. ^ 本邦初の本土向けサトウキビ育成品種「黒海道(くろかいどう)」
  9. ^ faostat.fao.org