ザック・ブリットン
ザカリー・グラント・"ザック"・ブリットン(Zackary Grant "Zack" Britton, 1987年12月22日 - )は、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス市パノラマシティ地区出身のプロ野球選手(投手)。左投左打。MLB・ニューヨーク・ヤンキース所属。
ニューヨーク・ヤンキース #53 | |
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![]() ニューヨーク・ヤンキース時代 (2018年8月25日) | |
基本情報 | |
国籍 |
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出身地 | カリフォルニア州ロサンゼルス |
生年月日 | 1987年12月22日(31歳) |
身長 体重 |
6' 3" =約190.5 cm 195 lb =約88.5 kg |
選手情報 | |
投球・打席 | 左投左打 |
ポジション | 投手 |
プロ入り | 2006年 MLBドラフト3巡目 |
初出場 | 2011年4月3日 タンパベイ・レイズ戦 |
年俸 | $13,000,000(2019年)[1] |
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度) | |
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この表について
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愛称はブリット(Brit)[2]。
経歴編集
プロ入りとオリオールズ時代編集
2006年のMLBドラフト3巡目(全体85位)でボルチモア・オリオールズから指名を受け、契約を結んだ。ベースボール・アメリカ誌の有望株ランキング2010年版では、メジャー全体で63位にランクされた。
2011年4月3日のタンパベイ・レイズ戦でメジャーデビューを果たした。6回を1失点に抑え、初登板を初勝利で飾った。その後も5月までは防御率2.00台をキープして好調を維持したが、調子を落としてマイナー降格した時期もあった[3]。だが全体としては、ほぼ先発ローテーション通りに登板。最終的に28試合に先発し、ルーキーながらチーム最多の11勝をマークした。
2012年は肩の故障により故障者リストでシーズン開幕を迎えた[4]。7月中旬に復帰したが、調子が上がらないままシーズンを終え、5勝3敗と勝ち越したものの、防御率は5.00台まで上昇した。このように、全体としては低調な成績に終わったが、シーズン終盤には5試合に投げて3失点と好投を見せた期間もあり、翌年の飛躍を期待された[4]。
2013年は登板機会が減少し、8試合に投げただけで終わった。防御率は5.00未満に留めたものの、メジャー定着はならなかった。
2014年3月11日にオリオールズと1年契約に合意した[5]。この年からリリーフに転向すると、シーズン途中からは抑えを任された。この配置転換は成功となり、ブリットンは71試合にリリーフ登板して防御率1.65・37セーブという好成績を残した。
2015年も安定したピッチングを見せ、アメリカンリーグのオールスターに選出された。オールスターでは5番手としてマウンドに登り、0.2イニングで被安打1・1奪三振という内容だった[6]。前半戦に対し、後半戦は多少調子を落としたが(前半戦は防御率1.72、後半戦は2.17)[7]、それでも抑えとしての役割を全うした。最終的には64試合に登板。防御率は2年連続1.00台となる1.92を記録し、ア・リーグ3位の36セーブをマークした。また、与四球率・奪三振率のどちらでも、自己ベストの数値を叩き出した。
2016年も開幕から快調なピッチングを見せ、前半戦で27セーブをマーク[8]。2年連続でオールスターに選出され、9回表を無失点に抑えてセーブを記録した。チームがプレーオフ争いをする後半戦は、31試合・29.1イニングに投げて僅かに1失点だった[8]。5月5日から8月22日にかけて43試合連続自責点なしを記録し、MLB記録を更新した[9][10]。通年では69試合に登板し、防御率0.54 (7失点・4自責点、シーズン65イニング以上投げた投手としてはMLB最高記録[11]) ・リーグ1位の47セーブ、史上4人目となるセーブ失敗なしでの40セーブ以上を記録[12]するなど、MLB史上に残る大活躍を見せたシーズンとなった。前年から続く連続セーブ成功記録は、歴代5位タイ[13]の49試合で継続中である。オフの12月7日に第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のアメリカ合衆国代表への不参加の意思を表明した[14]。
2017年は4月15日に故障者リスト入り。5月2日に復帰した。そこから2試合に登板したが、腕の張りにより5月5日から再度故障者リスト入り。7月4日に復帰した。復帰後は暫くの間セーブ機会ではない場面での登板を続けたが、7月23日のヒューストン・アストロズ戦でシーズン6セーブ目を挙げ、55連続セーブ成功のリーグ記録を樹立した。以降はクローザーに復帰し、そこからも連続セーブ記録を積み重ねたが、記録更新から1ヶ月後となる8月23日のオークランド・アスレチックス戦で、2点リードの9回に同点に追いつかれたことでセーブに失敗。連続セーブ記録は60でストップした。[15]シーズントータルでは38試合の登板で2勝1敗防御率2.89、15セーブ(失敗2回)という成績に終わった。特にイニング数は昨シーズンの半分ほどだったが、被安打数は昨年よりも多く、与四球数も同じだった。WHIPも倍近く悪化するなど成績以上に不安定なシーズンだった。
2018年も前年オフに受けたアキレス腱手術の影響で出遅れ、シーズン初登板は6月となった[16]。7月までに16試合に投げ、防御率3.45・WHIP1.34を記録していた。
ヤンキース時代編集
2018年7月24日にディロン・テイト、コディ・キャロル、ジョシュ・ロジャースとのトレードで、ニューヨーク・ヤンキースへ移籍した[17]。移籍後は主にセットアッパーとして25試合に投げ、防御率2.88、WHIP1.16を記録した。結局この年は41試合登板で2勝無敗7セーブ、防御率3.10、WHIP1.23と前年に引き続き今ひとつの成績に終わった。オフにFAとなったが、2019年1月11日に3年総額3900万ドル(2022年は1400万ドルのオプション、2020年オフにオプトアウトの権利を持つ)で再契約した[18]。
2019年2月7日に、自身のツイッターで名前の表記をこれまでの「Zach」から「Zack」に変えたことを明らかにした[19]。同年は年間通じてセットアッパーとして起用され、3年ぶりの60試合超えとなる66試合に登板。3勝1敗3セーブ、防御率1.91、チームトップの29ホールドという好成績を挙げた。
投球スタイル編集
救援投手としては、最速99.3mph(約160km/h)・平均95.7mph(約154km/h)の鋭く落ち曲がるシンカーが全投球中の約9割を占め、残り1割は平均82.8mph(約133km/h)のスラーブを投げる[20]。
シンカーでゴロを量産しつつ三振を奪うピッチングスタイルで、被本塁打率が2014年以降0.34と低く、グラウンドボールの割合は約8割と非常に高い[21]。
2011年にメジャーデビューしてから3シーズンは先発投手として起用されていたが、2014年に救援投手(クローザー)に転向してからは、ファストボールの平均球速が92.0mph(約148km/h)から約6km/h上昇した[20]。
詳細情報編集
年度別投手成績編集
年 度 |
球 団 |
登 板 |
先 発 |
完 投 |
完 封 |
無 四 球 |
勝 利 |
敗 戦 |
セ 丨 ブ |
ホ 丨 ル ド |
勝 率 |
打 者 |
投 球 回 |
被 安 打 |
被 本 塁 打 |
与 四 球 |
敬 遠 |
与 死 球 |
奪 三 振 |
暴 投 |
ボ 丨 ク |
失 点 |
自 責 点 |
防 御 率 |
W H I P |
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2011 | BAL | 28 | 28 | 0 | 0 | 0 | 11 | 11 | 0 | 0 | .500 | 666 | 154.1 | 162 | 12 | 62 | 3 | 1 | 97 | 7 | 0 | 93 | 79 | 4.61 | 1.45 |
2012 | 12 | 11 | 0 | 0 | 0 | 5 | 3 | 0 | 0 | .625 | 270 | 60.1 | 61 | 6 | 32 | 3 | 2 | 53 | 4 | 0 | 37 | 34 | 5.07 | 1.54 | |
2013 | 8 | 7 | 0 | 0 | 0 | 2 | 3 | 0 | 0 | .400 | 182 | 40.0 | 52 | 4 | 17 | 1 | 1 | 18 | 1 | 0 | 23 | 22 | 4.95 | 1.73 | |
2014 | 71 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 2 | 37 | 7 | .600 | 285 | 76.1 | 46 | 4 | 23 | 0 | 1 | 62 | 0 | 0 | 17 | 14 | 1.65 | 0.90 | |
2015 | 64 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 1 | 36 | 0 | .800 | 253 | 65.2 | 51 | 3 | 14 | 1 | 1 | 79 | 5 | 0 | 16 | 14 | 1.92 | 0.99 | |
2016 | 69 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 47 | 0 | .667 | 254 | 67.0 | 38 | 1 | 18 | 3 | 0 | 74 | 10 | 0 | 7 | 4 | 0.54 | 0.84 | |
2017 | 38 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 15 | 0 | .667 | 161 | 37.1 | 39 | 1 | 18 | 1 | 0 | 29 | 4 | 0 | 12 | 12 | 2.89 | 1.53 | |
2018 | 16 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 4 | 1 | 1.000 | 63 | 15.2 | 11 | 1 | 10 | 0 | 1 | 13 | 2 | 0 | 6 | 6 | 3.45 | 1.34 | |
NYY | 25 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 3 | 8 | 1.000 | 106 | 25.0 | 18 | 2 | 11 | 0 | 2 | 21 | 5 | 0 | 10 | 8 | 2.88 | 1.16 | |
'18計 | 41 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 7 | 9 | 1.000 | 169 | 40.2 | 29 | 3 | 21 | 0 | 3 | 34 | 7 | 0 | 16 | 14 | 3.10 | 1.23 | |
2019 | 66 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | 3 | 29 | .750 | 245 | 61.1 | 38 | 3 | 32 | 1 | 1 | 53 | 3 | 0 | 13 | 13 | 1.91 | 1.14 | |
MLB:9年 | 397 | 46 | 0 | 0 | 0 | 34 | 23 | 145 | 45 | .596 | 2240 | 603.0 | 516 | 37 | 237 | 13 | 10 | 499 | 41 | 0 | 234 | 206 | 3.07 | 1.25 |
- 2019年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
タイトル編集
- 最多セーブ投手:1回(2016年)
表彰編集
- マリアノ・リベラ賞:1回(2016年)
記録編集
- MiLB
- オールスター・フューチャーズゲーム選出:1回(2010年)
- MLB
- MLBオールスターゲーム選出:2回(2015年 - 2016年)
- 連続試合セーブ成功:60(2015年10月1日~2017年8月21日、歴代2位)
背番号編集
- 53(2011年 - )
脚注編集
- ^ “Zack Britton Contract Details, Salaries, & Earnings” (英語). Spotrac. 2019年3月10日閲覧。
- ^ Orioles Players Weekend nicknames explained MLB.com (英語) (2017年8月24日) 2017年9月4日閲覧
- ^ 友成那智、村上雅則『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑2012』廣済堂出版、2012年、102頁。ISBN 978-4-331-51612-6。
- ^ a b 友成那智、村上雅則『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑2013』廣済堂出版、2013年、54頁。ISBN 978-4-331-51711-6。
- ^ “Orioles agree to terms with 19 players on one year contracts”. MLB.com Orioles Press Release (2014年3月11日). 2014年3月12日閲覧。
- ^ July 14, 2015 All-Star Game Play-By-Play and Box Score - Baseball-Reference.com (英語) . 2015年10月5日閲覧。
- ^ Zach Britton 2015 Pitching Gamelogs - Baseball-Reference.com (英語) . 2015年10月5日閲覧。
- ^ a b Zach Britton 2016 Pitching Gamelogs - Baseball-Reference.com (英語) . 2016年10月8日閲覧。
- ^ 従来の記録はクレイグ・キンブレルとブレット・セシルの38試合
- ^ “Zach Britton hasn't allowed an earned run in 43 straight games, but here are his closest calls” (英語). MLB.com (2016年8月24日). 2016年10月23日閲覧。
- ^ Dominant Britton gives O's one clear Wild Card edge - MLB-com (英語) . 2016年10月8日閲覧。
- ^ “Six Things Orioles Fans Should Know Before The AL Wild Card Game” (英語). www.pressboxonline.com (2016年10月3日). 2016年10月23日閲覧。
- ^ 上位5人はエリック・ガニエ(84試合)、トム・ゴードン(54試合)、ジェウリス・ファミリア(52試合)、ホセ・バルベルデ(51試合)、ジョン・アックスフォード(49試合)
- ^ Zach Britton declines WBC invitation (and other notes) MASN (英語) (2016年12月7日) 2016年12月15日閲覧
- ^ http://www.sanspo.com/baseball/news/20170824/mlb17082410250004-n1.html
- ^ オリオールズ、守護神ブリットンが手術から復帰 日刊スポーツ (2018年6月12日) 2018年10月2日閲覧
- ^ Manny Randhawa (2018年7月25日). “Yanks acquire reliever Britton from Orioles” (英語). MLB.com. 2018年7月26日閲覧。
- ^ Bryan Hoch (2019年1月11日). “Britton: Yanks 'could win year-in and year-out'” (英語). MLB.com. 2019年1月13日閲覧。
- ^ “ザック・ブリットンがザック・ブリットンに改名? ”K”の文字に投手ならではのこだわり” (日本語). ベースボールチャンネル (2019年2月8日). 2019年10月2日閲覧。
- ^ a b 友成那智、村上雅則『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑2015』廣済堂出版、2015年、32頁。ISBN 978-4-331-51921-9。
- ^ “FanGraphs Zach Britton PITCHf/x”. Fangraphs.com. 2016年3月11日閲覧。
関連項目編集
外部リンク編集
- 選手の通算成績と情報 MLB、ESPN、Baseball-Reference、Fangraphs、The Baseball Cube、Baseball-Reference (Register)
- Zach Britton stats MiLB.com (英語)
- Zach Britton (@zbritton) - Twitter