シキミ酸経路
シキミ酸経路(シキミさんけいろ、英: shikimic acid pathway)は芳香族アミノ酸(チロシン、フェニルアラニンおよびトリプトファン)の生合成反応経路である。間接的にフラボノイドやアルカロイド(モルヒネ(チロシン由来)、キニーネ(トリプトファン由来)等)などの生合成にも必要。微生物や植物の大半は有しているが動物には見られない。
出発反応は解糖系のホスホエノールピルビン酸とペントースリン酸経路のエリトロース-4-リン酸の縮合反応で始まる。反応はコリスミ酸で各アミノ酸への反応に分岐するので、ここまでをシキミ酸経路としている場合もある。
シキミ酸経路の反応
編集シキミ酸経路の反応は以下の通りである。
- ホスホエノールピルビン酸 + エリトロース 4-リン酸 → 7-ホスホ-2-デヒドロ-3-デオキシアラビノヘプトン酸 + リン酸
- 7-ホスホ-2-デヒドロ-3-デオキシアラビノヘプトン酸 + NADH → 3-デヒドロキナ酸 + リン酸 + NAD+
- 3-デヒドロキナ酸 → 3-デヒドロシキミ酸 + H2O
- 3-デヒドロシキミ酸 + NADPH → シキミ酸 + NADP+
- シキミ酸 + ATP → 3-ホスホシキミ酸 + ADP
- 3-ホスホシキミ酸 + ホスホエノールピルビン酸 → 3-ホスホ-5-エノイルピルビルシキミ酸 + リン酸
- 3-ホスホ-5-エノイルピルビルシキミ酸 → コリスミ酸 + リン酸
- コリスミ酸 → プレフェン酸
これらの反応は全て以下の一連の酵素群により触媒されておこる。
- 7-ホスホ-2-デヒドロ-3-デオキシアラビノヘプトン酸アルドラーゼ →EC番号
- 3-デヒドロキナ酸シンターゼ(EC 4.2.3.4)
- 3-デヒドロキナ酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.10)
- シキミ酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.25)
- シキミ酸キナーゼ(EC 2.7.1.71)
- 3-ホスホシキミ酸1-カルボキシビニルトランスフェラーゼ(5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ、EC 2.5.1.19)
- コリスミ酸シンターゼ(EC 4.2.3.5)
- コリスミ酸ムターゼ(EC 5.4.99.5)
フェニルアラニンの合成
編集これらの反応は全て以下の一連の酵素群により触媒されておこる。
- プレフェン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.3.1.12)
- チロシンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.5)
チロシンの合成
編集- プレフェン酸 + NAD+ → 4-ヒドロキシフェニルピルビン酸 + CO2 + NADH
- 4-ヒドロキシフェニルピルビン酸 + グルタミン酸 → チロシン + 2-オキソグルタル酸
これらの反応は全て以下の一連の酵素群により触媒されておこる。
- プレフェン酸デヒドラターゼ(EC 4.2.1.51)
- チロシンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.5)
トリプトファンの合成
編集- コリスミ酸 + グルタミン → アントラニル酸 + グルタミン酸 + ピルビン酸
- アントラニル酸 + 5-ホスホリボシル-α-二リン酸 → ピロリン酸 + N-(5'-ホスホリボシル)-アントラニル酸
- N-(5'-ホスホリボシル)-アントラニル酸 → エノール1-o-カルボキシフェニルアミノ-1-デオキシリブロース-5-リン酸
- エノール-1-o-カルボキシフェニルアミノ-1-デオキシリブロース5リン酸 → インドール3グリセロールリン酸 + CO2 + H2O
- インドール-3-グリセロールリン酸 → インドール + グリセルアルデヒド-3-リン酸
- インドール + セリン → トリプトファン + H2O
これらの反応は全て以下の一連の酵素群により触媒されておこる。
- アントラニル酸シンターゼ(EC4.1.3.27)
- アントラニル酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.2.18)
- N-(5'-ホスホリボシル)-アントラニル酸イソメラーゼ
- インドール-3-グリセロールリン酸シンターゼ(EC 4.1.1.48)
- トリプトファンシンターゼ(EC 4.2.1.20)
- トリプトファンシンターゼ(EC 4.2.1.20)