システマティック・レビュー
システマティック・レビュー(英語: systematic review)または系統的レビューとは、文献をくまなく調査し、ランダム化比較試験(RCT)のような質の高い研究のデータを、出版バイアスのようなデータの偏りを限りなく除き、分析を行うことである[2]。根拠に基づく医療(EBM)で用いるための情報の収集と、吟味の部分を担う調査である[3]。世界大学ランキングで5位にランクされているカロリンスカ研究所[4]によると、系統的レビューは研究者と博士課程向けであり、構造的文献レビューは修士と大学向けである。系統的レビューは2人以上で取り組む必要があるため、1人だと構造化文献レビューや系統的文献レビューを行うしかない[5]。系統的レビューは複雑な質問への回答を探す代わりに、有効性に焦点を合わせている[6]。
メタアナリシスという言葉は、情報の収集から吟味解析までのシステマティック・レビューと同様に用いられることがある[2]。システマティック・レビューの手法は、イギリスで1992年に国民保健サービス(NHS)から始まったコクラン共同計画から発展してきたもので、アメリカ合衆国では、あまり用いられない言葉である[2]。システマティック・レビューの手順には、データの解析であるメタアナリシスが含まれるが、コクラン共同計画では、これを厳密に区別する[2]。
2003年には、世界にシステマティック・レビューが4,600件あり、そのうちコクラン共同計画は1,600件であるとされる[2]。
コクラン共同計画編集
コクラン共同計画におけるシステマティック・レビューは、主題ごとに定期的に手入れされ、情報にアクセスできることも意図されている[3]。コクラン共同計画を冠しているアーチボルド・コクラン(英語: Archie Cochrane)の提唱したことの一部は、正しいデータを導くランダム化比較試験(RCT)を重視し、また各々のランダム化比較試験を定期的に批判的吟味することである[3]。システマティック・レビューの作業以外に、こうした調査を必要な人々に遅れなく「伝える」ことを加えた全体の機能が、コクラン共同計画の目的である[3]。
1993年7月に、イギリスのコクランセンターがBMJ(イギリス医師会雑誌, British Medical Journal)と共同で会議を開き、1994年に論文となったものが、『システマティック・レビュー』(Systematic Reviews)として出版されている[7]。それはシステマティック・レビューとメタアナリシスに関する章で構成されており、システマティック・レビューに関しては、バイアスとエラーを最小にする方法が議論されている[8]。
副作用の省略編集
システマティック・レビューでは、副作用については省略されていることが多く、統合が困難であったり、計測方法が統一されていないなどの理由によってである[9]。
脚注編集
- ^ “SUNY Downstate EBM Tutorial”. library.downstate.edu. 2015年9月3日閲覧。
- ^ a b c d e 津谷喜一郎 2003.
- ^ a b c d 津谷喜一郎 2000, pp. 315–317.
- ^ “World University Rankings”. roundranking.com. 2022年6月26日閲覧。
- ^ “Systematic reviews | Karolinska Institutet University Library” (英語). kib.ki.se. 2022年6月26日閲覧。
- ^ Grant, Maria J.; Booth, Andrew (2009-06). “A typology of reviews: an analysis of 14 review types and associated methodologies: A typology of reviews, Maria J. Grant & Andrew Booth” (英語). Health Information & Libraries Journal 26 (2): 91–108. doi:10.1111/j.1471-1842.2009.00848.x .
- ^ イアイン・チャーマーズ、ダグラス・G.アルトマン 2000, p. vi.
- ^ イアイン・チャーマーズ、ダグラス・G.アルトマン 2000, pp. vi–vii.
- ^ Evidence-Based Medicine Working Group, (edit)Gordon Guyatt, Drummond Rennie, Maureen O. Meade, Deborah J. Cook、(監訳)相原守夫、池田正行、三原華子、村山隆之 『医学文献ユーザーズガイド : 根拠に基づく診療のマニュアル』凸版メディア、2010年、499頁。ISBN 978-4990442217。
参考文献編集
- イアイン・チャーマーズ、ダグラス・G.アルトマン 著、津谷喜一郎、浜六郎、別府宏圀監 訳 『システマティック・レビュー―エビデンスをまとめてつたえる』サイエンティスト社、2000年。ISBN 978-4914903626。、Systematic Reviews, 1995, BMJ
- 津谷喜一郎「コクラン共同計画とシステマティック・レビュー EBMにおける位置付け」(pdf)『公衆衛生研究』第49巻第4号、2000年12月、313-319頁、NAID 40004928021。
- 津谷喜一郎「EBMにおけるエビデンスの吟味」『Therapeutic Research』第24巻第8号、2003年、1415-22頁、NAID 50000285052。
外部リンク編集
- The Cochrane Library (英語)