シティランナー(Cityrunner)は、鉄道車両メーカーのボンバルディア・トランスポーテーションが開発した路面電車車両のブランド名。車内全体がバリアフリーに適した低床構造となっている超低床電車で、2017年現在は「フレキシティ・アウトルックC(Flexity Outlook C)」と言うブランド名で展開が行われている[1][2][3][4][6]

シティランナー
Cityrunner
フレキシティ・アウトルック C
Flexity Outlook C
Cityrunner graz.jpg
最初の導入先となったグラーツ市電ドイツ語版のシティランナー(2005年撮影)
USTRAB Linz Hbf 4.JPG
車軸付き台車を初めて導入したリンツ市電のシティランナー2(2011年撮影)
基本情報
製造所 ボンバルディア・トランスポーテーション
製造年 2001年 -
主要諸元
編成 3車体・5車体・7車体連接車
軌間 900 mm1,000 mm1,435 mm1,495 mm
備考 主要数値は[1][2][3][4][5][6][7]に基づく。
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概要編集

フレキシティボンバルディア・トランスポーテーションが手掛ける路面電車ライトレール路線向けの電車ブランドで、世界各地の路面電車事業者の需要に応じた多彩な車種が展開されている。このブランドが成立した当初、その多くはアドトランツを始めボンバルディアが買収した各企業から継承した車種であったが、「フレキシティ・アウトルック」ブランドに吸収された「シティランナー」についてはそれ以前からボンバルディアが独自に開発・展開していた超低床電車である[1][2]

シティランナーは台車が存在する車体が存在しない車体(フローティング車体)を挟み込むという編成を組む連接車で、最大7車体まで組成可能である他、軌間も最小900 mm、最大1,495 mmまで対応している。最初に製造されたグラーツ市電ドイツ語版向け車両を除いた特徴として、車内に段差が存在しない100 %超低床電車でありながら台車に車軸や枕ばねが設置されている事が挙げられ、車輪も直径を抑えた小径車輪が用いられている。これは100 %超低床電車としては世界初の構造で、グラーツ市電向け車両のような車軸がない独立車輪式台車を用いた場合と比較して騒音や振動が抑制される他、線路の摩耗も抑えられるため施設のメンテナンスコストが削減される効果もある。一方で車軸が存在するため台車が存在する車体の床上高さが高くなっており、車内には緩やかなスロープが存在する。主電動機は台車側梁の外側に搭載されている[1][2][3][4][5][7][8][9]

鋼製の構体リベットを用いて組み立てられ、前面は繊維強化プラスチックが使われている。また外板も繊維強化プラスチックが採用されている他、前面窓・側窓は強度を増した強化ガラスとなっており、衝突事故などの車体破損時の乗務員や乗客の安全が確保されている。また、側窓は顧客の要望に基づき、太陽光の差し込みを抑制した着色ガラスとする事も可能である。屋根には冷暖房双方に対応した空調装置が設置されており、これを含めた電気機器はドイツマンハイムにあるボンバルディアの工場で生産されている[3][4]

運用・導入都市編集

最初の車両となる「シティランナー(Cityrunner)」はオーストリアグラーツグラーツ市電ドイツ語版)向けに製造が行われ、1998年に発注後2001年から営業運転を開始した。続いて同年からオーストリアリンツリンツ市電)向けに車軸付き台車を用いた「シティランナー2(Cityrunner 2)」の製造が始まり、以降同形式を基にした車両が「フレキシティ・アウトルック」というブランド名でヨーロッパ各国やカナダトルコなど世界各地に向けて展開が行われている。製造はオーストリアウィーンベルギーブリュッセルドイツバウツェンにあるボンバルディアの工場で行われているが、カナダトロントトロント市電)向けの車両については同国オンタリオ州にある各工場(サンダーベイ、キングストン)で生産が実施されている。また発注両数が少ない場合はボンバルディア側で車体や部品を生産し各路面電車事業者の車両基地で最終組み立てを行う形も取られている[8][4][10][5][7]

シティランナー(→フレキシティ・アウトルック)が導入された、もしくは今後導入される予定の都市は以下の通りである[4][10]

シティランナー/フレキシティ・アウトルックC 導入都市一覧
都市 編成 運転台 両数 備考・参考
イタリア パレルモ 5車体連接車 両運転台 17両 [10][11]
オーストリア インスブルック 5車体連接車 両運転台 62両(予定) 2002年に32両、2015年に30両を発注[6][12][13]
リンツ
(リンツ市電)
7車体連接車 片運転台 33両 詳細は「シティランナー (リンツ市電)ドイツ語版」を参照
「シティランナー」、軌間900mm
2002年から営業運転開始[1][14]
29両 詳細は「シティランナー (リンツ市電)ドイツ語版」を参照
「シティランナー2」、軌間900mm
2011年から営業運転開始[15]
リンツ
(ペストリングベルク鉄道)
3車体連接車 両運転台 4両 「マウンテンランナー(Mountainrunner)」、軌間900mm[10][16][17]
グラーツ
(グラーツ市電ドイツ語版)
5車体連接車 片運転台 18両 「シティランナー」
独立車輪式台車を採用[10][5][8][18][19]
カナダ トロント
(トロント市電)
5車体連接車 片運転台 204両 軌間1,495mm
トロント市電の規格に合わせた設計変更を実施[10][7]
スイス ジュネーヴ 7車体連接車 両運転台 39両 [10][20]
スペイン アリカンテ
バレンシア
5車体連接車 両運転台 44両 [10][21]
ドイツ アウクスブルク 7車体連接車 片運転台 27両 [10][22]
クレーフェルト 5車体連接車 両運転台 31両 [10][23][24]
トルコ エスキシェヒル
(エストラム)
5車体連接車 片運転台 23両 [10][25]
フランス マルセイユ
(マルセイユ・トラム)
5車体連接車 両運転台 30両 [10][26][27]
7車体連接車 6両
ベルギー ブリュッセル
(ブリュッセル市電)
5車体連接車 両運転台 150両 詳細は「ブリュッセル首都圏交通T3000形」、「T4000形電車」を参照
[10][28][29]
7車体連接車 70両
5車体連接車 79両(予定) 「TNG(New Generation Tram)」
2020年以降に営業開始予定[30][31]
7車体連接車 11両(予定)
ポーランド ウッチ 5車体連接車 片運転台 15両 [10][32]

ギャラリー編集

関連項目編集

 
ユーロトラム
フランスストラスブール

脚注編集

[脚注の使い方]

注釈編集

出典編集

  1. ^ a b c d e f 服部重敬「特集 新潟トランシス part4 欧州のGT低床車 世界初の全低床車としての登場から現在まで」『路面電車EX 2017 vol.10』、イカロス出版、2017年10月20日、 44-45頁、 ISBN 978-4802204231
  2. ^ a b c d 服部重敬「欧州のLRV 最新事情」『路面電車EX vol.13』、イカロス出版、2019年6月20日、 87頁、 ISBN 9784802206778
  3. ^ a b c d e FLEXITY Trams”. Bombardier. 2015年10月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月1日閲覧。
  4. ^ a b c d e f Marek Graff (2015/7-8). “Nowy tabor tramwajowy w Polsce”. TTS Technika Transportu Szynowego (Instytut Naukowo-Wydawniczy "TTS" Sp. z o.o): 55. https://yadda.icm.edu.pl/baztech/element/bwmeta1.element.baztech-b6a4adc0-b1a1-43b7-8650-28c3efcbc459/c/Graff_Nowy.pdf 2020年9月1日閲覧。. 
  5. ^ a b c d Street-Tram "Cityrunner" Graz, Österreich (PDF)”. Bombardier. 2020年9月1日閲覧。
  6. ^ a b c Günter Denoth (2010-11-29). Die Innsbrucker Straßenbahnen und Lokalbahnen. Auf Schienen unterwegs. Sutton Verlag GmbH. pp. 8. ISBN 978-3866806955 
  7. ^ a b c d John Thompson (2020年1月27日). “TTC Flexity Order Completed–Finally”. RailwayAge. 2020年9月1日閲覧。
  8. ^ a b c Harry Hondius (2002-7/8). “Rozwój tramwajów i kolejek miejskich (2)”. TTS Technika Transportu Szynowego (Instytut Naukowo-Wydawniczy „SPATIUM” sp. z o.o): 46. http://yadda.icm.edu.pl/yadda/element/bwmeta1.element.baztech-article-BGPK-0638-3066/c/Hondius.pdf 2020年9月1日閲覧。. 
  9. ^ Bombardier. Vorzüge der neuen Straßenbahn für Linz und des innovativen Wartungskonzeptes (Report). pp. 4. https://www.schienenfahrzeugtagung.at/download/PDF2011/12-Frisch-Schreder.pdf 2020年9月1日閲覧。. 
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n Bombardier. Vorzüge der neuen Straßenbahn für Linz und des innovativen Wartungskonzeptes (Report). pp. 5. https://www.schienenfahrzeugtagung.at/download/PDF2011/12-Frisch-Schreder.pdf 2020年9月1日閲覧。. 
  11. ^ FLEXITY Outlook – Palermo, Italy”. Bombardier. 2015年10月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月1日閲覧。
  12. ^ FLEXITY Outlook – Innsbruck, Austria”. Bombardier. 2015年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月1日閲覧。
  13. ^ FLEXITY Outlook / Flexcare - Innsbruck, Austria”. Bombardier. 2020年9月1日閲覧。
  14. ^ FLEXITY Outlook – Linz, Austria”. Bombardier. 2015年10月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月1日閲覧。
  15. ^ FLEXITY Outlook / FlexCare - Linz, Austria”. Bombardier. 2020年9月1日閲覧。
  16. ^ Bombardier to Supply 23 FLEXITY Outlook Trams to Linz, Austria”. Bombardier (2009年7月3日). 2020年9月1日閲覧。
  17. ^ Jacek Pudło (2012-11 -26). “Silniki VEM w tramwajach VEM”. InfoTram. 2020年9月1日閲覧。
  18. ^ FLEXITY Outlook - Graz, Austria”. Bombardier. 2015年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月1日閲覧。
  19. ^ Bombardier’s Flexity from Vienna on test in Graz”. Urban Transport Magazine (2019年10月28日). 2020年9月1日閲覧。
  20. ^ FLEXITY Outlook – Geneva, Switzerland”. Bombardier. 2015年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月1日閲覧。
  21. ^ FLEXITY Outlook – Valencia and Alicante, Spain”. Bombardier. 2015年10月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月1日閲覧。
  22. ^ FLEXITY Outlook – Augsburg, Germany”. Bombardier. 2015年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月1日閲覧。
  23. ^ Stadtwerke Krefeld orders 19 low-floor trams”. Kiepe. 2020年9月1日閲覧。
  24. ^ Another twelve low-floor tramcars for Krefeld”. Kiepe (2013年5月). 2020年9月1日閲覧。
  25. ^ FLEXITY Outlook Light Rail System – Eskisehir, Turkey”. Bombardier. 2015年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月1日閲覧。
  26. ^ FLEXITY Outlook – Marseille, France”. Bombardier. 2015年10月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月1日閲覧。
  27. ^ World rolling stock market May 2012”. RailwayGazette International (2012年5月23日). 2020年9月1日閲覧。
  28. ^ FLEXITY Outlook – Brussels, Belgium”. Bombardier. 2015年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月1日閲覧。
  29. ^ Bombardier and Brussels Transport Company (STIB) Celebrate the Completion of the World’s Largest Single-Vehicle Tram Fleet”. Bombardier (2015年5月17日). 2020年9月1日閲覧。
  30. ^ Bombardier Wins Contract to Provide up to 175 FLEXITY Trams to Brussels Transportation Company”. Bombardier (2018年4月25日). 2020年9月1日閲覧。
  31. ^ Keith Barrow (2019年5月24日). “Brussels orders more New Generation Trams from Bombardier”. Bombardier. 2020年9月1日閲覧。
  32. ^ FLEXITY Outlook – Lodz, Poland”. Bombardier. 2015年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月1日閲覧。
  33. ^ Porto Light Rail Project, Portugal”. Railway Technology. 2020年9月1日閲覧。

外部リンク編集