Β-シトステロール
構造式
IUPAC名スチグマスタ-5-エン-3β-オール
分子式C29H50O
分子量414.707
CAS登録番号19044-06-5
融点140 °C

β-シトステロール (β-sitosterol) は、植物ステロールの一種で、コレステロールに類似した化学構造をもつ。室温では白色で蝋状の固体である。

動植物への分布 編集

幅広い陸生植物に含有されており、例えばノコギリパルメットアボカドカボチャ種子、カシューナッツ大豆米糠小麦胚芽コーン油クコの実、ペカンピジウムシーバックソーンなどにも含まれている。

利用 編集

  • 陸生植物体には存在するが単細胞の藻類にはほとんどみられないことから、サンプル中に含まれる陸生植物由来の有機物の量を示す生物マーカーとして利用される。
  • 経口摂取されると、コレステロールより先に胆汁酸と結合することによってでのコレステロール吸収を抑えることにより、血中のコレステロールを減少させる作用を持つことから、米国では単独でまたは他の植物ステロールと共に、脂質異常症の治療に用いられることがある。日本では、β-シトステロールを含有する油含有食品が、特定保健用食品として「コレステロールが高めの方に適する」などの表示の許可を取得している。
  • ヨーロッパでは良性の前立腺肥大症の治療に用いられることがある。また、ヨーロッパでは前立腺癌乳癌の治療に用いられることもある。これらにおける作用機序はよくわかっていない。
  • β-シトステロールを含むノコギリパルメット抽出物が男性型脱毛症の治療に有効であったとする米国の研究もある[1]
  • 抗炎症作用目的での利用

生合成 編集

β-シトステロールは、植物においてメバロン酸経路から生成されるC15ファルネシルピロリン酸2単位が縮合して生成されるC30スクアレンからさらに環化など一連の反応によりC30シクロアルテノールなどの中間体を経由して生合成されるC29植物ステロールの一つである[2][3]

摂取 編集

食品中のβシトステロール含有
食品中のβシトステロール含量(抜粋)[4]
食品名 含有量
(mg/100g)
キャノーラ油(高オレイン酸) 426
マーガリン 275
サラダオイル(大豆油) 172
アーモンド(ロースト) 118
マカデミアナッツ(ロースト) 107
アボカド 76
くるみ 64
トルティーヤチップス 61
マヨネーズ 48
たまご(オムレツ) 12

参考文献 編集

  1. ^ Prager N, Bickett K, French N, Marcovici G (2002). “A randomized, double-blind, placebo-controlled trial to determine the effectiveness of botanically derived inhibitors of 5-alpha-reductase in the treatment of androgenetic alopecia”. Journal of alternative and complementary medicine 8 (2): 143–52. doi:10.1089/107555302317371433. pmid 12006122. 
  2. ^ A Disch, A Hemmerlin, T J Bach, M Rohmer (1998). “Mevalonate-derived isopentenyl diphosphate is the biosynthetic precursor of ubiquinone prenyl side chain in tobacco BY-2 cells”. Biochem. J. 331 (2): 615–621. pmid 9531505. 
  3. ^ W. Zhou, W. D. Nes (2003). “Sterol methyltransferase2: purification, properties, and inhibition”. Arch Biochem Biophys. 420 (1): 18-34. doi:10.1016/j.abb.2003.08.029. pmid 14622971. 
  4. ^ Foods, by content of Beta-sitosterol”. 2020年10月11日閲覧。

外部リンク 編集

関連項目 編集