シナノキ(科の木、級の木、榀の木、Tilia japonica)は新エングラー体系クロンキスト体系ではシナノキ科APG体系ではアオイ科シナノキ属落葉高木日本特産種である。

シナノキ
シナノキ
神奈川県愛甲郡清川村(2006年6月4日)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : バラ類 rosids
: アオイ目 Malvales
: アオイ科 Malvaceae
亜科 : Tilioideae
: シナノキ属 Tilia
: シナノキ T. japonica
学名
Tilia japonica
(Miq.) Simonk.
和名
シナノキ
英名
Japanese Lime
シナノキの葉と樹皮

長野県の古名である信濃は、古くは「科野」と記したが、シナノキを多く産出したからだともいわれている。

特徴編集

日本特産で、北海道本州四国九州に分布し、山地に生える[1]落葉広葉樹の高木で[1]、幹の直径は1メートル (m) 、樹高は20 (m) 以上になる。樹皮は暗褐色で表面は薄い鱗片状で縦に浅く裂けやすい。

互生し、長さ6 - 9センチメートル (cm) 、幅5 - 6 cmで先のとがった左右非対称の心円形。葉縁には鋭い鋸状歯がある[1]には鮮やかな緑色をしているが、には黄色に紅葉する。

花期は初夏(6 - 7月)[1]葉腋から集散花序を下向きに出して、淡黄色の小さなをつける[1]。花は花序から花柄が分枝して下に垂れ下がる。花序の柄にはへら形の苞葉をつけるのが特徴である[1]果実はほぼ球形で、直径5ミリメートル (mm) の実には灰褐色の毛が密生する[1]になって熟すと花序とともに落ちる。

利用編集

材はベニヤ、樹皮の繊維和紙の原料になる[1]。花からは良質な蜂蜜が採れる[1]

樹皮は「シナ皮」とよばれ、繊維が強く主にロープの材料とされてきたが、近年合成繊維のロープが普及したため、あまり使われなくなった。大型船舶の一部では未だに使用しているものがある。1990年代頃から、地球環境を見直す意味でなどと共にロープなどへの利用が見直されている。古くはこの木の樹皮をはぎ、ゆでて取り出した繊維で布を織り榀布(科布=しなぬの・しなふ)、まだ布、まんだ布と呼び、衣服なども作られた[2]アイヌは衣類など織物を作るためシナノキの繊維を使った。現在でもインテリア小物などの材料に使われる事もある[2]

木部は白く年輪が不明瞭で、柔らかく加工しやすいが耐久性に劣る。合板割り箸マッチの軸、鉛筆材、アイスクリームへら、木彫りの民芸品などに利用される。ラワンを芯材としたシナ合板(シナベニヤ)と呼ばれる合板の化粧面(表面)に多く利用され、芯材もシナとしたものは区別してシナ共芯合板またはシナ合板共芯(ともしん)と呼ぶ。

また、花からは良質のが採取できるので、花の時期には養蜂家がこの木の多い森にて採蜜を営み、菩提樹の蜂蜜として製品化するところもある[3][4]

シンボルなど編集

近縁種編集

シナノキは日本特産種だが、シナノキ属ボダイジュの仲間)はヨーロッパからアジアアメリカ大陸にかけての冷温帯に広く分布している。

ヨーロッパではセイヨウシナノキ(セイヨウボダイジュ)がある。

シューベルトの歌曲『リンデンバウム』(歌曲集『冬の旅』、邦題『菩提樹』)で有名。

また、スウェーデン国王アドルフ・フレデリック1757年に、「分類学の父」と呼ばれる植物学者カール・フォン・リンネ貴族に叙した際に、姓としてフォン・リンネを与えたが、リンネとはセイヨウシナノキのことであり、これは家族が育てていたことに由来するものである。

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e f g h i 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 80.
  2. ^ a b 小学館・日本大百科全書(ニッポニカ)、世界大百科事典内言及(織物); 平凡社・世界大百科事典第2版. 角山幸洋(ニッポニカ): “榀布とは— 榀布(読み)しなぬの” (日本語). コトバンク. 朝日新聞. 2020年12月18日閲覧。
  3. ^ 菩提樹(シナノキ、リンデン)のはちみつ” (日本語). ハチミツとミトコンドリア. 2020年12月18日閲覧。
  4. ^ ぼだいじゅ(シナ)蜂蜜”. komoribee.com. 小森養蜂場. 2020年12月18日閲覧。

参考文献編集

  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、80頁。ISBN 4-522-21557-6

関連項目編集

関連資料編集

  • 中島良和、杉谷俊明、田中睦夫、藤井聰「蜂蜜中のトレハルロースの存在」『日本食品工業学会誌』第37巻第7号、ISSN 0029-0394、社団法人 日本食品科学工学会、1990年、554-558頁。doi:10.3136/nskkk1962.37.7_554NAID 130003967770
  • 真坂一彦、佐藤孝弘、棚橋生子「養蜂業による樹木蜜源の利用実態 :—北海道における多様性と地域性—」『日本森林学会誌』第95巻第1号、ISSN 1349-8509、日本森林学会、2013年、15-22頁。doi:10.4005/jjfs.95.15NAID 130003369355
    • 真坂一彦、佐藤孝弘、棚橋生子「養蜂業による樹木蜜源の利用実態―北海道における多様性と地域性―」『日本森林学会大会発表データベース』第124号、日本森林学会、2013年、706頁。doi:10.11519/jfsc.124.0.706.0NAID 130005048870
  • 真坂一彦「養蜂業における北海道の森林蜜源の利用実態と将来展望」『農業および園芸』第91巻第5号、ISSN 0369-5247、養賢堂、2016年5月、518-533頁、NAID 40020834244

外部リンク編集