シャコ(蝦蛄[1]、青龍蝦、学名: Oratosquilla oratoria) は、甲殻類 軟甲綱 トゲエビ亜綱 口脚目シャコ目)シャコ科に属する節足動物の1種である。転じてシャコ目に属する種の総称にも使われる。寿司ダネなどになる食用種がよく知られる。地方名シャコエビ[1]ガサエビ[1]シャッパなど。

シャコ
Oratosquilla oratoria, back.jpg
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物Arthropoda
階級なし : 汎甲殻類 Pancrustacea
亜門 : 甲殻亜門 Crustacea
: 軟甲綱 Malacostraca
亜綱 : トゲエビ亜綱 Hoplocarida
: 口脚目 Stomatopoda
上科 : シャコ上科 Squilloidea
: シャコ科 Squillidae
: シャコ属 Oratosquilla
: シャコ O. oratoria
学名
Oratosquilla oratoria (De Haan1844)
和名
シャコ

特徴編集

 
シャコ(背側) 2018.8.13 那珂湊漁港
 
シャコ 2018.8.13 那珂湊漁港

分類上は甲殻類(甲殻亜門)のうちエビ類やカニ類などと同じ軟甲綱に属しているが、エビ類やカニ類は真軟甲亜綱、シャコ類は口脚亜綱に属している[2]。構造は他の甲殻類と同じく頭部、胸部、腹部に分かれており、シャコ類は頭部と胸部の前方4節を外骨格が覆う(エビ類やカニ類は頭部と胸部のすべてが外骨格に覆われている)[2]。外骨格に覆われた部分を背甲という[2]

体長は12~15cm前後。全長20cmに達することもある[1]。体型は細長い筒状で腹部はやや扁平。頭部から胸部はやや小さく、腹部の方が大きく発達する。頭部先端には二対の触角とよく発達した複眼が突き出す。

付属肢は19対ある(頭部付属肢5対、胸部付属肢8対、腹部付属肢6対)[2]。付属肢にはエビ・カニのような鋏を持たず、6-7個のトゲがある特徴的な1対の鎌のような捕脚を持つ(英名のmantis shrimp=カマキリエビの由来でもある)。頭部付属肢は前から第1触角、第2触角、大顎、第1小顎、第2小顎の5対である[2]。胸部付属肢は前から第1顎脚~第5顎脚と第1歩脚~第3歩脚の8対である[2]。食物を捕えるため鎌状になっているのは第2顎脚~第5顎脚で特に第2顎脚が発達している[2]。腹部付属肢は遊泳肢ともいい第1腹肢~第5腹肢の基部には鰓がある[2]。第6腹肢は他の腹肢とは位置や構造が著しく異なるため尾肢と呼んで区別する[2]。なお腹部後方に尾節という節のような構造があるが付属肢はなく真の体節ではない[2]。尾節は鋭いトゲのある尾扇と呼ばれる構造になっている。

円偏光の回転方向を識別できる[3]。ただし、これはこの種の特徴ではなく、少なくともシャコ属の数種に共通の特徴である[4]。円偏光に限定しなければ、偏光の視覚はシャコ科の広範囲と一部の頭足類に確認されている。

生態編集

シャコ類では最も北の海域に生息[1]。北はロシア沿海州から南は台湾にかけて分布[1]

内湾や内海の泥底や砂泥底に生息し、海底の砂や泥にU字形の巣穴を掘って生活する[1]。肉食性で、他の甲殻類魚類イソメゴカイなどの多毛類貝類などを強大な捕脚を用い捕食する。この捕脚による攻撃[5]は打撃を伴う強力なもので、カニの甲羅や貝殻を叩き割って捕食するほか、天敵からの防御や威嚇にも用いられる。飼育下においても捕脚の打撃で水槽のガラスにヒビが入ることがある。このような特性から、釣りや水揚げされた物を不用意に触ると大怪我をするので十分な注意が必要である。

環境の変化に強く、一時東京湾の汚染が進んだ時期には「東京湾最後の生物になるだろう」といわれていたこともあった[6]

食材としての利用編集

 
市場で売られているシャコ
 
シャコの握り寿司

エビよりもアッサリとした味と食感を持つ。旬は産卵期である春から初夏。秋は身持ちがよい(傷みにくい)。日本では、新鮮なうちに茹で、ハサミで殻を切り開いて剥き、寿司ダネとすることが最も多い。捕脚肢の肉は「シャコツメ」と呼ばれ、軍艦巻きなどにして食べられることが多く、一尾から少量しか取れない珍味。産地では、塩茹でにして手で剥いて食べたり、から揚げにすることが多い。産卵期の卵巣はカツブシと呼ばれて珍重されるため、メスのほうが値段が高い。また、ごく新鮮なうちに刺身として生食する場合もある。香港では、日本のものよりも大振りなものが多いが、素揚げにしてから、ニンニク唐辛子で味付けして炒める「椒鹽瀬尿蝦 ジウイム・ライニウハー」(広東語)という料理が一般的である。

シャコは死後時間が経つと、殻の下で酵素(本来は脱皮時に使われる)が分泌され、自らの身を溶かしてしまう。そのため、全体サイズの割に中身が痩せてしまっていることも多い。これを防ぐには、新鮮なうちに茹でるなどして調理してしまうことである。活きた新鮮なシャコは珍重されるが、勢いよく暴れる上に棘が多いため、調理時に手に刺さる場合があるので取り扱いには注意が必要である。

岡山県編集

  • ばら寿司 - 岡山県郷土料理であり、地域や時期によっては具材のひとつとしてシャコが用いられる。

青森県編集

青森県では花見にシャコを食べる風習がある。

地方名編集

江戸時代シャクナゲと言われていた。淡い灰褐色の殻を茹でると紫褐色に変わり、それがシャクナゲの花の色に似ていたところから付けられた名である。シャクナゲは石楠花、または石花と書き、シャクカがなまってシャコと呼ばれるようになった。シャク、シャクナギと呼ぶ地域もある。

北陸3県青森県ではガサエビ、福岡県筑後地方南部ではシャッパ、熊本県ではシャクとも呼ばれる。

「シャコエビ」などと呼ばれることもあるが、エビ類との分類学上の類縁は遠い(別にハサミシャコエビという種もいるが、エビ・カニの仲間である真軟甲亜綱の生物で、シャコ目ではない)。

また、地域によってはアナジャコも「シャコ」と呼ぶ場合もあるが、アナジャコは真軟甲亜綱に属し、シャコ目との類縁は遠い。

分類編集

シャコに近縁な種には以下のものがある。これらは少し前までは同じシャコ属とされていたが、20世紀末頃からそのうち数種が新たな2属に分類されるようになっている。なお、同じシャコと名のつく生物としてアナジャコが挙げられるが、近縁なわけではない。

系統やその他のシャコ類についてはシャコ目を参照。

脚注編集

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  1. ^ a b c d e f g 87.シャコ 北海道立総合研究機構、2017年5月26日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j 富川光、鳥越兼治. “食卓で学ぶ甲殻類のからだのつくり”. 広島大学. 2020年1月21日閲覧。
  3. ^ Tsyr-Huei Chiou et. al., Curr. Biol., 18, 429-434 (2008)
  4. ^ Chiou, Tsyr-Huei (2008), Polarization Signaling in Stomatopod Crustaceans and Cephalopod Mollusks, ProQuest 
  5. ^ しばしば 「シャコパンチ」 と称される。
  6. ^ 朝日新聞社編 『海の紳士録』P78 昭和37年刊