シャンク!!ザ・レイトストーリー

シャンク!!ザ・レイトストーリー』は、角川スニーカー文庫より発売されたライトノベル。作者は秋田禎信。全2巻。『ザ・スニーカー角川書店)』2002年12月号から2004年12月号まで連載された。 続編(実質的な三、四巻)として書き下ろしの『シャンク!! ザ・ロードストーリー』が存在する。

シャンク!!ザ・レイトストーリー
ジャンル ハイ・ファンタジー
小説
著者 秋田禎信
イラスト 依澄れい
出版社 角川書店
レーベル 角川スニーカー文庫
刊行期間 2002年12月 - 2004年12月
巻数 全2巻
テンプレート - ノート

ストーリー 編集

100年前の「暗黒時代」からの教訓として魔法が禁忌となった世界。そこでは魔法に関わるものは全て「正教会(せいきょうかい)」により処分され、もはや世界には魔法使いは存在しないとまで言われていた。しかし、正教会の力の及ばない場所では未だに魔法使いは存在し、各々が究極の魔法「不死秘宝」に到達するため、日々研究を続けていた。そして、世界にはそういった魔法使いの隠れ家を突き止め、そこから魔法を盗む「秘儀盗賊(ひぎとうぞく)」と呼ばれる者達もいた。秘儀盗賊の少年、「シャンク・アーバロン」はある目的を果たすため、猫の姿をした魔法使い「ブリアン」と共に不死秘宝を求め各地を旅しているのだが、彼らは行く先々で様々な騒動に巻き込まれてしまう。

キャラクター 編集

シャンク・アーバロン
主人公。「秘儀盗賊」として「不死秘宝」を探しているが、「秘儀盗賊」としての能力はそれほどでもない。バネ式拳銃「スプリング・ガン」や「炸裂弾」などを使うことが多いが、実は類まれな殺人剣「神流」(しんりゅう)の剣士。「剣士」としての能力は高く、その才能は師であるイスラールや、最強の秘儀盗賊であるゴダードも認めるほどが、「神流」は特殊な剣なので基本的には使用しない。「不死秘宝」にこだわるように見えるがそれには理由がある。
基本的にお人好しで正義感が強く、魔法使いの害悪を見過ごせない人物。また、他のメンバーの非常識・ボケに対応する突っ込み気質な面もあり、対応しきれずに叫ぶこともある。ブリアンとは口喧嘩もしょっちゅうであるが、非常に信頼している。
彼の纏う白いマントはいつぞやに倒した魔法使いの品物であり、優れた防御能力を有する。
ブリアン
シャンクの相棒でもある魔法使い。「不死秘法」に失敗したため呪いを受け黒猫の姿になっている。普段は呪いのせいで大した魔法を使うことができないのだが、その正体は、「真性の魔法使い」とも「ムーン・ウォーカー」とも呼ばれる「魔女」であり、シャンクに姿を見られないという条件下でのみ、短時間ではあるが呪いに逆らって元の姿に戻ったり、命じるだけで相手を殺すことができるほどの強大な力を持っている。呪いを解くため12人いるとされる「不死者(イモータル)」の一人でもある母親、「月光館のミンシストル」を探している。猫扱いされることが嫌い。
シャンクに関しては「自分がいないと何も出来ない」といいつつも、非常に気にかけ愛している。しかし、その呪いやプライド高い性格も相まって素直な面を見せることはあまりない。また、猫扱いされることを非常に嫌うが、緊張すると無意識に猫っぽい行動をとってしまうことも。
どむーん
ある魔法使いに囚われていた「魔力結晶」で少女の姿をしている。理解しづらい言葉遣いをする。その身は魔力そのものであり、彼女がその気になれば魔法に匹敵するほどのパワーを発揮する。記憶を失っており、自分の名前さえ思い出せない。どむーんという名前は「魔力結晶」の通称「スプレッド・ムーン」の略。ブリアンと付け髭がお気に入り。作中でも不条理なまでの力を持つが、性格が性格なので悪意を以て何かをなそうとすることはない。
ベロ
付け髭に人格を封じ込んだ「暗黒時代」の魔法使い。付け髭をつけた人物に憑依し、一定時間その身を乗っ取ることができるのだが、魔法使いや魔力結晶など、魔法に精通した者にはあまり長時間憑くことができず、付け髭になったことで力のほとんどを失ってしまった。どむーんが付け髭を手放さないため大体はどむーんの体を借りて現れる。うんちく好きで知識も豊富だが、話す内容は生前の自慢話や無駄話、眉唾の情報であることが多い。
魔法使い故に一般の倫理で生きてはいないものも、現代文化にあっさり馴染むなど他の魔法使いに比べて庶民的。とぼけた性格だが魔法使いとしてはそれなりの力量を本来持っているようで、頭も回る方。
ミーティー
「秘儀盗賊団カーニバル」に所属する少女。「秘儀盗賊」としては平均的な能力を持ち、居合いの腕もかなりのもの。だが、調子に乗りやすい性格のため空振りすることが多く、どちらかといえばトラブルメーカー。「『秘儀盗賊団』の幹部にまで上りつめて、優雅に過ごす」ことが夢らしい。現在はしたっぱで毎月ノルマに悩まされている。あまり常識的な発言は見られないが、秘儀盗賊としてはシャンクよりも正統派で知識も豊富。
ゴダード・ハルクマン
現在は「カーニバル」で上納金の取立て係をしているが、昔は「正騎士殺し」と呼ばれていた伝説の「秘儀盗賊」。「正教会」の手配書の上位に名を連ね、動きがとりづらくなったため盗賊稼業からは身を引いた。が、未だにその剣の腕は凄まじい。本人曰く、確実に殺すため獲物を3回斬る主義。ミーティー曰く「人を見ても何対何で分断するかしか考えない親父」。ミアキス家以外の人間で、生きている状態で「神流」の剣を正確に知る数少ない一人。知っている理由は、シャンクの師であるイスラールの父と戦い勝利しているから。
オロボイ
「秘儀盗賊」に情報や道具を売る「秘儀商人」。ぼさぼさ頭に眼鏡に妙な髭と、如何にもな胡散臭さを発する人物。シャンクも彼の店の常連客だが、情報は信憑性が薄いらしい。魔法使いという語句を使うことを嫌がり、かなり口汚い呼称でごまかそうとしている。
カイク・ウェイン
シャンク達の前に現れた謎の少年。飄々としているが抜け目なく、また自信を隠そうともしない。自作の最新式連続発射火薬式拳銃を愛用するほか、ナイフの扱いや身のこなしもかなりのもの。「本当に強い魔法使い」に雇われているらしい。
シアシスターナ・ミアキス
正教会によって処罰された貴族、ミアキス家の生き残りにして現当主。シャンクの主でもある。呪いにより命を吸われ続けており、彼女を救う為にシャンクは不死秘法を探している。作中で描写はされていないが、本編終了時に呪いは解けているので元の姿に戻れていると思われる。
イスラール・ディーモンス
かつてミアキス家に仕えていた神流の剣士。シャンクの師でもある。幽体となった魔法使いに体をのっとられ、シャンクの手によりその生涯を終えた。
正騎士
魔法に関わる者を断罪する魔法使い殺しのエキスパート達。神に捧げるのは左腕のみだが僧職の者と同じ戒律の中で生きている。魔法使いに関わる者には容赦がなく、物証がなくとも荒っぽい尋問を行うことを厭わない。また、基本的には集団行動で相手を圧倒する戦法を好む。現在では形骸化している面もあるという。
魔法使い(シーカー)
正教会の力が及ばない地で「不死秘法」を求める者たち。研究のためにはどんな非道も意に介さない。個々で力の源流が異なり、己の方法こそが「不死秘法」に至ると信じている。また、魔法を己のためにしか使わないことが特徴であり、同じ魔法使い同士でも術の取り合いになるため連携することはなく、個人主義。
不死者(イモータル)
「不死秘法」を実現したという者達。「永遠の賢者ガンバンワロウン」「魔神エルブダリモス」「真言の司書キリル」「名前無きメスシーソ」「枕の王サーリバンゲストール」「深海よりスクライス」「ただ千日の生者キジャス」「強者エルパイン」「パルクライツ森のアワー」「獣人バリオ」「麗しきハールーモーン」「月光館のミンシストル」。この12人いるらしいが、現在は全員行方不明になっている。

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シャンク!!ザ・ロードストーリー
ジャンル ハイ・ファンタジー
小説
著者 秋田禎信
イラスト つたえゆず
出版社 角川書店
レーベル 角川スニーカー文庫
刊行期間 2005年7月 - 2006年3月
巻数 全2巻
テンプレート - ノート

『シャンク!!ザ・レイトストーリー』の続編。イラストレーターは、つたえゆずに変更されている。全2巻。 前作と異なり、短編集ではなく一本のストーリーで構成されている点が異なる。

ストーリー 編集

シャンク達は相変わらず「不死秘宝」をもとめて各地を旅していた。「不死秘宝」に繋がる強力な魔法使いを探すうちに一向はまたしても厄介な場所に足を踏み入れてしまう。死者をよみがえらせる「古木の森」。そして、魔女が住むという「月光館」へと……。

キャラクター 編集

※今作から登場するキャラクターのみ説明する。

ドラサルバ
意思を持った大妖樹。「甦りの種」を使って死者を甦らせ、操る。12人いるという「不死者」のひとり「パルクライツ森のアワー」の同属らしい。
エキータ
古木の魔法使いに仕える巫女。古木から借りた魔力でシャンク達の行く手を阻む。
グレイニン
死の領域に長けた魔法使い。月光館を支配し、「不死秘法」への到達を目論む。女性と見まごうような美青年であり、ブリアンと過去に何らかの因縁を持っている。「カイク・ウェイン」の雇い主。
シンシアルータ
黒猫ブリアンの正体である月光館の魔女。強力な施術が為された装身具を身に纏い、桁違いの魔力を使う。
ミンシストル
シンシアルータの母親の魔女。シンシアルータを上回る魔力を持ち、「不死秘法」を達成したと言われている。他の「不死者」と同様に、現在は行方不明になっている。どのような人物であったかは作中で語れることはあまりないが、シンシアルータはかなり慕っていた模様。

用語 編集

暗黒時代
賢者ガンバンワロウンが不死を実証してから始まった呪われた時代のこと。
不死を求め、あらゆる魔法使いが手段を選ばず非道な実験を繰り返し全世界が荒廃。正教会により魔法使いの大半が討伐されることで終わりを告げた。
スプレッド・ムーン
魔力の経路「ムーンウォーク」から零れ落ちた純度の高い魔力が大気に触れ固化した「魔力結晶」のこと。
一つ一つに名前があり、それを唱えれば己の魔力として使用可能。時折、自然物、生物の姿を真似ることがあるという。
不死秘宝
境地に達した魔法使いのみがなしえると言われる究極の秘術。
不死秘宝を得た者はいかなる世界のいかなる力にも脅かされること無く無限永久に行き続けるという。最初にこれに到達したガンバンワロウンには「世界を滅ぼす」といわれている。作中でもその原理がいかなるものであるかは明言されていないが、グレイニンとベロによってある見解が述べられている。
不死者
完全なる不死を体現したといわれる魔法使い達。12人いると伝えられるが全員が行方不明となっているため、正確なことは不明。
魔法を越えた力を持つといわれる。魔法使い達は彼らの存在を信じ、正教会はその存在を否定している。
1.「永遠の賢者ガンバンワロウン」
2.「魔神エルブダリモス」
3.「真言の司書キリル」
4.「名前無きメスシーソ」
5.「枕の王サーリバンゲストール」
6.「深海よりスクライス」
7.「ただ千日の生者キジャス」
8.「強者エルパイン」
9.「パルクライツ森のアワー」
10.「獣人バリオ」
11.「麗しきハールーモーン」
12.「月光館のミンシストル」
魔女
魔力そのものと契約した魔法の始原より存在している、最古の魔法使いの一族。魔女の一族のみが魔女を産むという。
魔女の誓いを守ってさえいればありとあらゆる魔法を使える。いかなるものも作り出し、いかなるものも消すことが出来る。持ちえる力には個人差はあるものの魔法を越えた不死者に次ぐ力を持つといっても過言ではない。
魔法
本作で魔法使いたちが使う力。同作者による他作品の魔法との関連はない。
基本的に魔法使いごとにその理論・原理・力の源は違っており、様々なものから力を借りて魔法を行使する。例外なく魔力を利用する技能であり、また魔力との意志疎通には他者の思念の妨害が入らないことが条件となる。そのため、作中では魔法使いは直に悪意あるものに触れられると魔法が使えなくなる、という弱点を抱えている。
ムーンウォーカー
真性の魔法使いのことを指す呼び名。
かつては魔女をさす言葉だったが今ではこの名で呼ばれる魔法使いがかなり多くなっている。魔力の経路「ムーンウォーク」の存在を知っているだけの者、強大になり魔女に近い力をもつ者のことを含めて言う。
ムーンウォーク
比喩的な表現として全ての魔力は月から世界に零れ落ちると言われ、その魔力の流れる経路のこと。
この経路から引く魔力は大抵の魔法使いが使う魔力とは力の純度が違い、魔女や魔女に近い力を持った者でなければここから力を引くことは出来ない。ムーンウォークの果てには魔力が無限に湧き出る「究極の源泉」があるといわれ、ここまで魔力の流れをたどった者だけが不死を達成できるという。
特別な鱗を持つ獣。獣の王。
魔法使いの呼び出す怪物は多数存在するが、その中でもかなり上位に君臨する存在。竜印という特殊な模様を持つ鱗はほとんどの武具(とりわけ鋼のもの)をはじき返し、歌・岩・毒・火のいずれかの弱点しか受け付けないという。竜は鱗の色や模様によって秋竜(金)、春竜(茶色)といった種別があるらしく、種類によって弱点が異なるらしい。竜は同族に害なすもの許さず、同族を殺した者などには殺印という一種の目印となる呪いをかけ、すべての竜が出会うたびに襲い掛かってくる。この呪いは猫と異なり、直接相対した相手にしかかからない模様(数は無関係)。亜種に竜鱗カモノハシなどがいる。
すさまじい戦闘力を誇るが、最大の特徴として「竜の吐息」と呼ばれる攻撃を持つ。これは、全身の熱と肺にある息すべてを同時に吐きだすことで、岩すら炎上させるほどの超高熱の風を叩きつけるものである。その一撃は火に弱いとされる秋竜のものでさえ、水気の多い大樹を炭化させるほどの威力を誇る。