シャーロック・ホームズ (1922年の映画)

シャーロック・ホームズ』(: Sherlock Holmesイギリスでは "Moriarty"(モリアーティ)としてリリース[注釈 3])は、1922年アメリカ合衆国で制作されたサイレント映画ミステリ映画・ドラマ映画で、シャーロック・ホームズジョン・バリモアジョン・H・ワトスンローランド・ヤング英語版が演じた[4]

シャーロック・ホームズ[1]
Sherlock Holmes
監督 アルバート・パーカー英語版
脚本 アール・ブラウン[注釈 1]
マリオン・フェアファックス英語版
原作 ウィリアム・ジレット
アーサー・コナン・ドイル
シャーロック・ホームズ英語版』(1899年)
製作 F・J・ゴッドソル[注釈 2]
出演者 ジョン・バリモア
ローランド・ヤング英語版
アンダース・ランドルフ英語版
ウィリアム・パウエル
ヘッダ・ホッパー
キャロル・デンプスター英語版
グスタフ・フォン・セイファーティッツ
撮影 J・ロイ・ハント英語版
配給 ゴールドウィン・ピクチャーズ
公開
  • 1922年3月7日 (1922-03-07)
日本の旗 1924年5月[1]
上映時間 109分
136 1/2分(1922年のオリジナル版)[2]
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 サイレント映画(英語インタータイトル付き)
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本編動画(1h 25m 28s)
映画の1シーンから

この映画はウィリアム・パウエル(クレジットはウィリアム・H・パウエル)とローランド・ヤングの銀幕デビュー作となり、アルバート・パーカー英語版が監督、アール・ブラウンとマリオン・フェアファックス英語版が脚本を務め、ウィリアム・ジレットが書いた1899年の同名戯曲英語版を元に、ゴールドウィン・ピクチャーズが制作した[5][6][7]。映画は長らく「失われた映画」と考えられてきたが[7]、1970年代半ばに再発見され、ジョージ・イーストマン博物館英語版で復元された[5]

あらすじ 編集

ケンブリッジ大学で学ぶアレクシス王子(演:レジナルド・デニー)は運動場の資金を盗んだ罪で糾弾される。彼の友人であるワトスン(演:ローランド・ヤング英語版)は、同級生のシャーロック・ホームズ(演:ジョン・バリモア)に助けを求めてみてはどうかと提案する。一方のホームズは、田舎で観察眼を磨いている間に転んで気絶する。通りかかったアリス・フォークナー(演:キャロル・デンプスター英語版)が彼を助け、ホームズは大喜びする。

事件を引き受けたホームズは、すぐにフォーマン・ウェルズ(演:ウィリアム・H・パウエル)に疑いを掛ける。やがてウェルズは、モリアーティ(演:グスタフ・フォン・セイファーティッツ)の手から逃れるため金を盗んだのだと告白した。実のところウェルズは、後々の計画のため身なりを整えて送り込まれた犯罪人の息子だった。興味を引かれたホームズはモリアーティと直接会い、図々しくもモリアーティを調査したいと頼み込むが、当然のように彼は協力を拒む。ホームズはワトスンに対し、モリアーティを止めることこそ人生の目標になったと知らせる。

一方、アレクシスのおじであるフォン・シュタルブルク伯爵(演:デイヴィッド・トレンス英語版)が、彼の兄弟2人が「自動車事故」で殺されたというニュースを携えてやって来る。アレクシスは皇太子となり、アリスの姉妹であるローズ・フォークナーと結婚できなくなる。心破れたローズは自殺する。

数年が経ち、ホームズはスコットランド・ヤードが手こずった難事件を解決したことで新聞紙に絶賛されるまでになっていた。ホームズはアリス・フォークナーの居場所を突き止めることに失敗していたが、再び2人の人生が交差するようになる。モリアーティは恐喝の種として、アレクシス王子がローズ・フォークナーへ送った恋文を探し求めていた。彼は困窮していたアリスを、「G・ネヴィル・チェトウッド」という人物の秘書として雇うが、チェトウッドの正体は、モリアーティの子分ジェイムズ・ララビー(演:アンダース・ランドルフ英語版)であった。アレクシス王子がホームズに事件を依頼すると、ローズの死には王子の責任があると考えていたホームズはこれを断るが、アリスが関係していると知ったことから考えを翻す。

ホームズはフォーマン・ウェルズを、ララビー家の新しい執事として潜入させる。策を講じたホームズは、アリスから手紙の隠し所を聞き出すが、ローズの敵討ちとしてアリスが手紙を出版しようとしていると知りながら、ホームズは奇妙にも1度手に入れた手紙をアリスへ返却する。彼はワトスンに対し、手紙がモリアーティをねぐらの外へ誘き出すおとりになるだろうと述べる。

モリアーティは、ホームズの絶え間ない追跡により自身が地下深くへと追い詰められていくことに不満を抱いていた。彼はアリスを、他人の始末に使っていた「ガス室」(a "gas chamber") へと連れて行く。ホームズは罠に掛かったと知りながら、何とかしてアリスを助け出す。

モリアーティはその後、宿敵を殺すため巨大組織を編成し、ホームズはこの挑戦を受けて立つ。モリアーティの子分は多くが警察に逮捕され、彼自身も変装して仕事をしようとしたところでホームズに確保される。最終的にホームズは、アリスとのハネムーン計画を立て始める。

キャスト 編集

再発見と復元 編集

 
ジョン・バリモアとローランド・ヤング

ジョージ・イーストマン博物館英語版所蔵のフィルムは、ケヴィン・ブラウンローウィリアム・K・エヴァーソン英語版が手掛けた復元作業に基づいており(計画の初期には、80代後半になっていたアルバート・パーカー英語版自身が手を貸した)、2001年にイーストマン博物館が行った再復元作業で、その後新たに見つかった断片を加えたものである[10][11]。1975年に行われた最初の復元作業についてエヴァーソンは、利用できる素材を、通して観られる形に再編成するのは途方も無い仕事だったとし、「数年前、この映画の現存する素材は全て何巻ものネガでしかなく、どのテイクも——どの場面も、ではなくどの『テイク』も——順不同に並んでいて、これに手がかりとしてフラッシュタイトルが付いている状態だった。[中略]そして脚本は多くの点で戯曲と異なっており、これが全てをまとめる作業を一層困難にした」[注釈 4]と述べている。

2001年の復元作業後、このフィルムは2009年にキノ・インターナショナル英語版からDVDとして発売されたが[14][15]、現在でも26分あまりの映像が行方不明のままである。キノ・インターナショナルは、2011年12月にBlu-ray Disc版を発売した[11]

関連項目 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 英: Earle Browne
  2. ^ 英: F.J. Godsol
  3. ^
    "It has been suggested that, although there may have been legal reasons, the mediocrity of so many of the earlier Holmes films was the deciding factor in releasing the film in Britain under the title of Moriarty."(法的には問題があったかもしれないが、イギリスでこの作品に『モリアーティ』という題が付けられて公開されたことの決め手は、それまでのホームズ映画の多くが凡庸な作品だったことにあるのではないかと示唆されている) — デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ英語版、"Holmes of the Movies: The Screen Career of Sherlock Holmes"、1978年[3]
  4. ^ "A few years ago all that existed of this film were rolls and rolls of negative sections, in which every take--not every sequence, but every take--were [sic] jumbled out of order, with only a few flash titles[12] for guidance [...] and a script that in many ways differed from the play, adding to the herculean task of putting it all together."[13]

出典 編集

  1. ^ a b シャーロック・ホームズ - allcinema - 2018年4月28日閲覧。
  2. ^ Pohle, Jr., Robert W.; Hart, Douglas C. (c.1977). Sherlock Holmes on the Screen: The Motion Picture Adventures of the World's Most Popular Detective. South Brunswick : A.S. Barnes. p. 94. ISBN 049801889X. OCLC 474980507 
  3. ^ Davies, David Stuart (1978). Holmes of the Movies: The Screen Career of Sherlock Holmes (1st edition ed.). Bramhall House. p. 28. ISBN 0-517-23279-0. OCLC 3624681 
  4. ^ Sherlock Holmes (1922)”. The AFI Catalog of Feature Films. アメリカン・フィルム・インスティチュート. 2018年4月29日閲覧。
  5. ^ a b Wood, Bret. “Sherlock Holmes (1922)”. ターナー・クラシック・ムービーズ. 2018年4月29日閲覧。
  6. ^ Endres, Stacey; Cushman, Robert (2009-06-01). Hollywood at Your Feet: The Story of the World-Famous Chinese Theater. Pomegranate Press. https://books.google.co.jp/books?id=CRiQCgAAQBAJ&pg=PT213&lpg=PT213 2018年4月29日閲覧。 
  7. ^ a b c McMullen, Kieran (2012-10-11). The Many Watsons. Andrews UK Limited. https://books.google.co.jp/books?id=xP66BAAAQBAJ&pg=PT105&lpg=PT105 2018年4月29日閲覧。 
  8. ^ William Powell”. ブリタニカ百科事典. 2018年4月29日閲覧。
  9. ^ The Films of Sherlock Holmes by Chris Steinbrunner and Norman Michaels c.1978 page 18(affirms John Willard, the playwright)
  10. ^ Bennett, Carl. “Progressive Silent Film List: Sherlock Holmes (1922)”. SilentEra.com. 2009年5月22日閲覧。
  11. ^ a b Bennett, Carl. “DVD Review: Sherlock Holmes (1922)”. SilentEra.com. 2009年11月22日閲覧。
  12. ^ "When the titles were made locally, the films were exported with flash titles, titles of just a few frames, and the distributor could insert the (local language) titles on the place where the flash title appeared." Restoration of Motion Picture Film, ed. Paul Read. Butterworth-Heinemann, 2000. p. 73
  13. ^ Everson, William K. (1975年9月25日). “Theodore Huff Memorial Film Society (program notes)” (PDF). New York University (nyu.edu). 2009年5月22日閲覧。
  14. ^ Sherlock Holmes”. Kino Lorber Theatrical. 2018年4月29日閲覧。
  15. ^ KEHR, DAVE (2009年7月9日). “The Great Profile’s Silent Faces”. ニューヨーク・タイムズ. 2018年4月29日閲覧。

外部リンク 編集