シラコスゲ(白子菅、Carex rhizopoda) はカヤツリグサ科の植物。花茎に単一の小穂だけをつけるスゲ属で、果胞は大きい。

シラコスゲ
シラコスゲ(成長の悪い個体)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
階級なし : ツユクサ類 commelinids
: イネ目 Poales
: カヤツリグサ科 Cyperaceae
: スゲ属 Carex
: シラコスゲ C. rhizopoda
学名
Carex rhizopoda Maxim.
全草
小穂

特徴 編集

柔らかな多年生草本。短いながら斜め上する根茎があり、大きな株を作る[1]。全体に鮮やかな緑色である。 葉は扁平で幅2-3(-5)mm、花茎より短い。

果実の成熟は4-6月。花茎は長さ20-50cm、断面は三角で、鋭い稜があり、縁はざらつく。小穂はその先端に一つだけ生じる。小穂は長さ1.5-4cmで、花茎よりやや太い。雄雌性で先端に雄花部があるが、ごく短く、幅が狭い。雌花鱗片は卵形、緑色で中肋があり、長さは果胞の約半分。果胞は長さ5-6mm、薄い膜質で緑色、細い脈がある。形は卵形で先端は次第に狭まって、やや反り返る長い嘴となる。果胞は花軸にほぼ沿ってつき、成熟しても開出しない。柱頭は三裂。

和名は埼玉県白子(現、和光市)で矢田部良吉が採集し、命名したことによる。

分布 編集

北海道から九州まで分布する。北海道では日高、胆振、渡島から知られる。他に、対馬からも知られている[2]。九州以南ではヤクシマ、種子島以南では発見されていない[3]。日本固有種であり、国外からは知られていない。

生育環境 編集

丘陵地から山間部の湿地に生える。綺麗な水のそばに生え、湧水源周辺に生えるものの代表として挙げられている[4]

分類 編集

小穂を一つしかつけないスゲは多くない。それらはほとんどが雄雌性であるが、多くは果胞が軸に対して立つか、成熟時に反り返る。その他様々な特徴でこの種は独特である。北村他(1986)はこれをヒゴクサ節に含め、マツバスゲなどと合わせるが、勝山(2005)はこの種のみでシラコスゲ節としている。なお、シラコスゲ節には世界に4種あり、他の2種は中国、1種はフィリピンから知られる[5]

出典 編集

  1. ^ 以下、主たる部分は佐竹他(1982)p.153
  2. ^ 勝山(2005)p.31
  3. ^ 玉城他(1970)p.5
  4. ^ 谷城(2007)p.206
  5. ^ X.-F. Jin(2009)

参考文献 編集

  • 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物 草本I 単子葉植物』,(1982),平凡社  p.179
  • 勝山輝男『日本のスゲ』(2005年、文一総合出版
  • 北村四郎村田源小山鐵夫『原色日本植物図鑑 草本編 (III)・単子葉類(改定49刷)』(1987年、保育社
  • 谷城勝弘、『カヤツリグサ科入門図鑑』、(2007)、全国農村教育協会
  • 玉城松栄・秋山茂雄・里見信生、1970。日本産スゲ属植物の分布(二)、金沢大学理学部付属植物園年報
  • X.-F. Jin, 2009. Carex yunyjana sp. nov. (Cyperaceae) from Zhejiang, China. Nordic J. of Botany 27:344-347