シンガポールグランプリ
シンガポールグランプリ(シンガポールGP, 英語:Singapore Grand Prix)は、シンガポールで行われる自動車レース。2008年以降はF1世界選手権の1戦として、「マリーナベイ・ストリート・サーキット」で行われている。
マリーナ・ベイ市街地コース | |
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レース情報 | |
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周回 | 61 |
コース長 | 5.063 km (3.146 mi) |
レース長 | 308.706 km (191.906 mi) |
開催回数 | 21 |
初回 | 1966年 |
最多勝利 (ドライバー) |
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最多勝利 (コンストラクター) |
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最新開催(2022年): | |
ポールポジション |
![]() フェラーリ 1:49.412 |
決勝順位 |
1. ![]() レッドブル-RBPT 2:02:20.238[注 1] 2. ![]() フェラーリ +2.595s 3. ![]() フェラーリ +10.305s |
ファステストラップ |
![]() メルセデス 1:46.458 |
概要編集
シンガポールGPのルーツは1961年に行われたオリエント・イヤーGPに始まる。翌年はマレーシアGPに改称され、1965年にシンガポールが独立するとシンガポールGPとなり、1973年まで開催された。当時はフォーミュラ・リブレ[注 2]のレースとして、トムソン・ロード・サーキット (Thomson Road Grand Prix circuit) で開催されていた。
アジア5番目のF1開催編集
2007年5月、シンガポール政府が2008年からF1シンガポールGPを開催することを発表した[1]。初年度の2008年のレースは、シンガポール最大の通信企業シンガポール・テレコムをタイトル・スポンサーシップに、「シングテル・シンガポール・グランプリ」として9月26日に開幕、決勝は9月28日に開催された。
アジアでのF1グランプリの開催は、日本(日本GP(1976年に初開催。1977年でいったん中止され、1987年から再開)、パシフィックGP(1994年と1995年に日本で開催))、マレーシア(1999年に初開催、2017年をもって終了)、バーレーン(2004年に初開催)、中華人民共和国(2004年に初開催)に次いで5カ国目[注 3]となる。
モナコグランプリと同様に観光客誘致の目玉とされており、経済効果は毎年1億4,000万~1億5,000万シンガポールドル(約89億円~約96億円)[2]。開催費用の60%をシンガポール政府が負担している[2]。当初は5年契約で、その最後となる2012年には2017年までの契約更新が発表され[3]、2017年には開催契約が2021年まで延長されている[4]。2020年・2021年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催中止となった[5]。開催契約は2021年末で終了したが、契約更新を前提に2022年の暫定カレンダーに載せられていた。F1は2022年1月27日に開催契約を7年延長したとを発表し、2028年まで開催されることになった[6]。
市街地コース編集
シンガポールの中心地のマリーナ湾岸地域に特設された、反時計回りの約5キロの市街地サーキット「マリーナベイ・ストリート・サーキット」で開催される。同コースは、他の多くの市街地サーキット同様に、その殆どを一般の道路を一時的に閉鎖して使用している。ヘルマン・ティルケによって提案されたコンセプトを元に[7]、オーストラリアグランプリでアデレード市街地コースも設計したKBR, Inc.が詳細設計を行った[8]。
一般道路をサーキットとして使用しているためか、路面がかなりバンピーである。マシン底部にはスキッドブロックと呼ばれる木製ブロックが装着されているが、その状態でも火花が車体後方から見えたほど。また、ピットレーン入り口がコーナーのエイペックスと重なるため危険との意見がドライバーから出された。
コース内やコース周辺には、ザ・フラトン・シンガポールやパン・パシフィック・ホテル、コンラッドなどの多くの高級ホテルや、マーライオンやエスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイなどの観光名所、香港上海銀行やシティグループなどのオフィスビルが林立している。
エスケープゾーンが狭くセーフティカーが入り易い[注 4]ため、ドライレースでも2時間前後のレースになることが多い。2012年のレースではドライレースとしては1991年アメリカグランプリ以来21年ぶりに2時間を超えるレースとなった。2014年・2015年のレースにおいても、2時間を超えるレースとなった。2017年は降雨により初のウエットレースとなり、さらにセーフティカーの出動もあったため当初予定の61周から3周満たない58周で2時間を超えてレース終了となった。2022年もレース前の降雨によって開始が1時間5分遅れ[9]、2017年同様ウエットレースでセーフティカーの出動もあったため、2周少ない59周で2時間を超えたためレース終了となっている[10]。
ナイトレース編集
F1人気の中心地であるヨーロッパで日中にテレビ中継が行われるよう、F1では初めてのナイトレースとして開催されており、土曜日の予選は現地時間21時(2011年までは22時)、日曜日の決勝は現地時間20時10分(2017年までは20時)[11]より開始される。コースサイドに1600基の投光器が32m間隔で配置され、サッカースタジアムの約4倍といわれる照度でドライバーの視界をかせぐ。総電力需要は318万ワット。
ヨーロッパとの時差がある上に、通常のイベントとはタイムスケジュールが異なることから、身体面の調節が必要となる。また、赤道付近のシンガポールは夜間でも高温・多湿なコンディションとなり、コーナー数の多い市街地コース、長いレース時間という条件も相まって「1年間で最もタフなレース」(ニコ・ヒュルケンベルグ)となる[12]。ドライバーズミーティングにおいて、選手側からレース距離の短縮が要請されたこともあった[13]。
前座レース編集
前座レースとして、フェラーリ・チャレンジ・アジアパシフィック選手権とポルシェ・カレラカップの2つのレースが開催される。なおこれらのレースの予選はF1の予選終了後の夜10時頃から行われる。
過去の結果編集
F1世界選手権として開催された2008年以降の結果について記載する。
年 | 決勝日 | ラウンド | サーキット | 勝者 | コンストラクター | 結果 |
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2008 | 9月28日 | 15 | シンガポール | フェルナンド・アロンソ | ルノー | 詳細 |
2009 | 9月27日 | 14 | シンガポール | ルイス・ハミルトン | マクラーレン-メルセデス | 詳細 |
2010 | 9月26日 | 15 | シンガポール | フェルナンド・アロンソ | フェラーリ | 詳細 |
2011 | 9月25日 | 14 | シンガポール | セバスチャン・ベッテル | レッドブル-ルノー | 詳細 |
2012 | 9月23日 | 14 | シンガポール | セバスチャン・ベッテル | レッドブル-ルノー | 詳細 |
2013 | 9月22日 | 13 | シンガポール | セバスチャン・ベッテル | レッドブル-ルノー | 詳細 |
2014 | 9月21日 | 14 | シンガポール | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 詳細 |
2015 | 9月20日 | 13 | シンガポール | セバスチャン・ベッテル | フェラーリ | 詳細 |
2016 | 9月18日 | 15 | シンガポール | ニコ・ロズベルグ | メルセデス | 詳細 |
2017 | 9月17日 | 14 | シンガポール | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 詳細 |
2018 | 9月16日 | 15 | シンガポール | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 詳細 |
2019 | 9月22日 | 15 | シンガポール | セバスチャン・ベッテル | フェラーリ | 詳細 |
2020 | 新型コロナウイルス感染症の世界的流行により中止 | |||||
2021 | ||||||
2022 | 10月 | 2日17 | シンガポール | セルジオ・ペレス | レッドブル-RBPT | 詳細 |
優勝回数(ドライバー)編集
(2回以上)
回数 | ドライバー | 優勝年 |
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5 | セバスチャン・ベッテル | 2011, 2012, 2013, 2015, 2019 |
4 | ルイス・ハミルトン | 2009, 2014, 2017, 2018 |
3 | グレアム・ローレンス | 1969, 1970, 1971 |
2 | フェルナンド・アロンソ | 2008, 2010 |
- 太字は2022年のF1世界選手権に参戦中のドライバー。
- ピンク地はF1世界選手権以外で開催された年。
優勝回数(コンストラクター)編集
(2回以上)
回数 | コンストラクター | 優勝年 |
---|---|---|
4 | メルセデス | 2014, 2016, 2017, 2018 |
フェラーリ | 1970, 2010, 2015, 2019 | |
レッドブル | 2011, 2012, 2013, 2022 | |
2 | マクラーレン | 1969, 2009 |
- 太字は2022年のF1世界選手権に参戦中のコンストラクター。
- ピンク地はF1世界選手権以外で開催された年。
優勝回数(エンジン)編集
(2回以上)
回数 | メーカー | 優勝年 |
---|---|---|
5 | フォード * | 1966, 1967, 1968, 1969, 1971 |
メルセデス | 2009, 2014, 2016, 2017, 2018 | |
4 | ルノー | 2008, 2011, 2012, 2013 |
フェラーリ | 1970, 2010, 2015, 2019 |
- 太字は2022年のF1世界選手権に参戦中のメーカー。
- ピンク地はF1世界選手権以外で開催された年。
- * コスワースが製造。
脚注編集
注釈編集
- ^ レース前の降雨によりウエットコンディションとなった影響で2時間ルールが適用され、59周でレース終了。“6台リタイアの大波乱レース。ペレスがルクレールを抑えきり優勝、フェルスタッペンは7位【決勝レポート/F1第17戦】”. auto sport web (2022年10月3日). 2022年10月3日閲覧。
- ^ 国際自動車連盟 (FIA)や開催国の自動車レース統括団体(ASN)において、公認車両規則が定められていない車両のこと。
- ^ その後、韓国とインドでもF1が開催されたが、いずれも早期に開催を終えている。
- ^ 2008年のF1初開催以来、セーフティカーが出動しなかったレースは一つもない。
出典編集
- ^ "F1シンガポールGP開催決定‐市街地で初の夜間レース". シンガポール経済新聞.(2007年5月11日)2013年7月4日閲覧。
- ^ a b "F1シンガポール・グランプリ、2017年まで開催で合意 次回のチケットを9月30日まで早期割引で販売". AsiaX News.(2012年9月23日)2013年7月4日閲覧。
- ^ "【速報】シンガポールGP、2017年まで契約延長を発表". TopNews.(2012年9月22日)2013年7月4日閲覧。
- ^ “F1シンガポールGP、開催契約を延長。2021年までの継続が確定”. AUTOSPORTweb (2017年9月15日). 2017年9月16日閲覧。
- ^ “F1、シンガポールGP中止を正式発表。3つの代替戦候補について検討中”. ヤフースポーツ (2021年6月5日). 2021年6月5日閲覧。
- ^ “F1、マリーナベイ市街地コースでのシンガポールGP開催契約を7年延長”. Fomula1-Data (2022年1月27日). 2022年1月31日閲覧。
- ^ “Singapore News - Singapore to host F1 Grand Prix next year”. Channel NewsAsia. 2007年5月18日閲覧。
- ^ “Expect more thrills than in Valencia”. thesundaytimes. (2008年8月31日)
- ^ “F1シンガポールGP、豪雨に見舞われスタートディレイが決定”. amotorsport.com (2022年10月3日). 2022年10月3日閲覧。
- ^ “6台リタイアの大波乱レース。ペレスがルクレールを抑えきり優勝、フェルスタッペンは7位【決勝レポート/F1第17戦】”. auto sport web (2022年10月3日). 2022年10月3日閲覧。
- ^ “F1、各レース開始時間を刷新。欧州では多くが15時10分決勝スタートに”. motorsport.com (2018年2月2日). 2018年2月3日閲覧。
- ^ "シンガポールGPプレビュー". GPUpdate.net.(2012年9月19日)2013年7月4日閲覧。
- ^ "F1ドライバー、シンガポールGPの距離短縮を希望". TopNews.(2012年9月23日)2013年7月4日閲覧。
関連項目編集
- モータースポーツ
- サーキットの一覧
- F1選手権レースの一覧
- ザ・フロート@マリーナ・ベイ - コースがスタジアム内部を通過する。