シンモラ (Sinmore) またはシンマラ(Sinmara)[1] は、北欧神話に登場する、炎の巨人スルトの伴侶の女性である。 詩『フョルスヴィーズルの言葉』だけがシンモラの存在の証拠になっている。その中で彼女は3回言及され、伝説的な武器レーヴァテインの保管者として説明される。 彼女の名の語源についての学術的な仮説が提唱されている。

語源 編集

名前「Sinmara」の語源はよく知られていない。 後半部の要素「mara」は、「(night)mare」と同一の可能性が示唆されているが、前半部の「Sin-」の要素は不明である。一説では、sindr古ノルド語で「燃え殻」の意)と関連していると考えられているが[2]ルドルフ・ジメックは、「sin」が「sindr」に関連する可能性はないと述べる一方で、「色に関する意味深長な解釈」を挙げ、このことが炎の巨人の妻に当てはまる点に注目し「より適切な解釈は『青白い(night)mare』である」と推理している[3]

ヴィクトル・リュードベリ英語版は次のような提案をしている。すなわち、「Sinmara」が、「腱」を意味する「sin」と、動詞「marja」(Vigfussonの辞書を援用[4])に関連があることに注目し、「不具の人」を意味する「mara」とで構成されるというのである。 そしてリュードベリは、名前「Sinmara」がつまり「腱を傷つけることによって不具にする者」を意味すると結論づけた[5]

『フョルスヴィーズルの言葉』 編集

フョルスヴィーズルの言葉』(『スヴィプダグルの言葉(en)』の部)の、シンモラに言及される3つのスタンザの1番目において、シンモラはスルトとともに引き合いに出される[6]。第2の引用元では、フョルスヴィーズルは英雄スヴィプダグルに次のような事を話す。すなわち、シンモラは箱の中に武器レーヴァテインを保管し、9つの頑丈な錠を掛けている (なお翻訳元では「Sinmara」は「Sinmora」と英語化されて書かれている)。

"レーヴァテインはそこにある、
ロプトルーンによって、以前、死の扉の前で作った。
シンモラによってそれはレーギャルン(Lægjarn)の箱の中に横たえられ、
9つの錠がそれをしっかりと留める。"[7]

フョルスヴィーズルはスヴィプダグルに次のように話した。シンモラがスヴィプダグルに武器レーヴァテインを与えることを承諾する前に、スヴィプダグルはシンモラに「輝く」を持ってこなければならない、そうすれば彼女はスヴィプダグルにレーヴァテインを与えるだろう。 [8]

脚注 編集

  1. ^ 他に、SinmöruSinmoeraSinmora等の綴りがある。
  2. ^ Simek (2007:285) Gutenbrunnerを援用 (1940).
  3. ^ Simek (2007:285).
  4. ^ リュードベリの著作『Teutonic Mythology』のアンダーソン(Anderson)による英訳においては語「maim」(不具にする)が与えられている。そしてGudbrand Vigfussonによる(1874年)『An Icelandic-English Dictionary Based on the MS. Collections of the Late Richard Cleasby』、この辞書は424ページの「Merja」の項目の中で「傷がつく、潰れる」と説明している。
  5. ^ Rydberg (2004:518).
  6. ^ ベロウズ(Bellows) (2004:243).
  7. ^ 翻訳元はBellowsの英訳 (2004:245).
  8. ^ Bellows (2004:246).

参考文献(英語版) 編集

関連項目 編集