鄭 凱文(ジェン・カイウェン、1988年7月26日 - )は、台湾中華民国)の台南市出身のプロ野球選手投手)。現在はCPBL中信兄弟に所属している。

鄭 凱文
Cheng Kai-Wen
中信兄弟 #19
2014年7月18日
基本情報
国籍 中華民国の旗 中華民国台湾
出身地 台南市
生年月日 (1988-07-26) 1988年7月26日(35歳)
身長
体重
176 cm
80 kg
選手情報
投球・打席 右投右打
ポジション 投手
プロ入り 2009年
初出場 NPB / 2009年4月26日
CPBL / 2014年3月25日
最終出場 NPB / 2013年6月27日
年俸 月給60万台湾元(2021年)
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)
国際大会
代表チーム チャイニーズタイペイの旗 チャイニーズタイペイ
五輪 2008年
WBC 2009年2013年
鄭 凱文
各種表記
繁体字 鄭 凱文
簡体字 郑 凯文
拼音 Zhèng Kǎiwén
注音符号 ㄓㄥˋㄎㄞˇㄨㄣˊ
和名表記: てい がいうん
発音転記: ジェン・カイウェン
英語名 Cheng Kai-Wen
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獲得メダル
男子 野球
チャイニーズタイペイの旗 チャイニーズタイペイ
アジア競技大会
2014

経歴 編集

プロ入り前 編集

台湾台南市出身。南英商工在学中の2005年AAAアジア野球選手権チャイニーズタイペイ代表として出場。また、文化大在学中の2008年ハーレムベースボールウィークにチャイニーズタイペイ代表として出場した。北京オリンピックでは8月14日の対日本戦で最後の投手として登板し、2/3イニングを投げて3四死球、2被安打、2失点だった。

阪神時代 編集

 
阪神タイガース時代
(2012年8月17日、明治神宮野球場)

2009年3月に開催された第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)チャイニーズタイペイ代表候補にも挙げられた中、同年2月3日、阪神タイガースの春季キャンプにおいて入団テストを受け、キレのあるストレートと多彩な変化球が評価されて合格[1]。3月4日に正式契約が発表された。登録名は「ジェン・カイウン」。第2回WBCの初戦の対韓国戦では、1/3イニングでノックアウトされた李振昌の後をついで、1イニング2/3を無失点に抑えた。

シーズンでは4月26日の対広島東洋カープ戦で一軍初登板し、6回を無失点に抑えたが直後にスコット・アッチソンが勝ち越しを許し、勝ち負けはつかなかった。その後、中継ぎで数試合登板したが安定感を欠き、二軍降格。7月に一軍昇格したが、結果を残せず再び二軍降格となった。下柳剛福原忍の不振で先発不足だった球団事情から、再び先発要員として一軍昇格し、9月20日の対広島戦で3度目の先発。味方の大量点に守られ、7回を2失点に抑えてプロ初勝利を挙げた。その後は中継ぎに回り、敗戦処理での登板が増えた。

2010年、4月9日に一軍昇格したが、1試合に登板したのみで4月15日に登録抹消となり、その後昇格することはなかった。

2011年1月28日、登録名を本名の「鄭凱文」に変更した。開幕は二軍スタートとなり、ウエスタン・リーグでは好調を見せ連続無失点の登板を続けていたが、外国人4選手が一軍で揃って活躍していたため昇格機会がなかった。前半戦最後の9連戦である7月16日の対横浜DeNAベイスターズ戦で前半戦の登板機会を終えたランディ・メッセンジャーとの入れ替わりでシーズン一軍初昇格・初先発登板し、6回2/3を投げ2失点に抑え、加えて味方の大量援護もあり664日ぶりに一軍での勝利を挙げた[2]。その後、外国人枠の関係から二軍落ちし、7月30日の対に再び一軍で先発したが、3回2失点で降板し翌日二軍落ちした。

2012年9月21日に第3回WBC予選のチャイニーズタイペイ代表に選出された[3]。9月29日に戦力外通告を受けた[4]。11月には第3回WBC予選前にキューバ代表との国際親善試合である「サンダーシリーズ」のチャイニーズタイペイ代表に選出された[5]

DeNA時代 編集

2012年12月25日に横浜DeNAベイスターズ育成選手として契約を結んだ[6]

2013年1月14日に第3回WBC本戦のチャイニーズタイペイ代表メンバーに選出された[7]。シーズンでは2月26日にDeNAの支配下選手登録が発表された[8]オープン戦では1試合ながら先発で登板し、6回を2失点の成績を残した。この好投が評価され、開幕後3月31日の対中日ドラゴンズ戦で先発。しかし、3回持たず、6失点と大荒れで翌日に二軍降格となった。再昇格後の5月22日、対福岡ソフトバンクホークス戦で先発として登板したが、初回に3与四球後、松田宣浩に満塁本塁打を打たれて敗戦投手となった。11月に台湾で開催された「2013 BASEBALL CHALLENGE 日本 VS チャイニーズ・タイペイ」のチャイニーズタイペイ代表に選出された[9]。しかし同月19日に、球団から来季の契約をしないことが発表された[10]

中信兄弟時代 編集

2013年11月28日、中信兄弟からドラフト1巡目で指名され入団[11]

2014年3月に1試合に投げ1失点(自責点0)で完投勝利、5月には5試合3勝1敗、防御率2.23で2度の月間MVPを獲得した[12]。最終的には22試合に登板して11勝3敗、防御率2.48の成績で最多勝最優秀防御率の2冠を獲得した[13]。特に義大ライノズ戦に強く、9試合に登板して8勝、防御率2.01の成績を残した[14]。また9月に開催された仁川アジア競技大会のチャイニーズタイペイ代表に選出され、同大会では準優勝に貢献した。

2015年は昨年に続き2桁勝利をマークした[15]

2016年は38試合に投げ9勝8敗、防御率4.53を記録した。

2017年はシーズンの防御率トップ10の内、上位8名は外国人投手であり、その中で台湾人の1位が鄭であった[16]

2018年はシーズンオフに「ENEOS 侍ジャパンシリーズ2018」に出場した[17]

2019年はリーグ最多の65試合に投げ11勝3敗を記録し、ゴールデングラブ賞を獲得した。中継ぎ登板のみでのゴールデングラブ賞を獲得はCPBL史上初の出来事であった[18]

2020年は54試合に投げ15ホールド、防御率3.11を記録した。また新荘体育場野球場での登板に限っては、13回と2/3を投げ無失点と好相性だった。台湾シリーズ第1戦目では3ランを被弾し敗戦投手[19]、第4戦目でも失点を喫しシリーズ防御率13.50を記録した[20]

2021年はチームの先発投手不足により、先発へ再転向することになった[21]。3月14日の富邦ガーディアンズ戦で4年ぶりの先発を務めるも、1回2/3を7失点(自責点4)で敗戦投手となった[22]。同月21日の統一ライオンズ戦では7回2失点(自責点0)で2017年7月13日以来、1347日ぶりの先発登板で勝利投手となった[23]。9月には3試合に投げ3勝、防御率1.29をマークし月間MVPを獲得した。

選手としての特徴 編集

 
投球フォーム

元はスリークォーターから最速151 km/hの速球と鋭いスライダーのほか、ツーシームシュート)やチェンジアップなども投げる[24]

2011年シーズンから、腕の位置を下げ、サイドスローに近いスリー・クォーターの投球フォームに変更した[25]

詳細情報 編集

年度別投手成績 編集





















































W
H
I
P
2009 阪神 13 3 0 0 0 1 1 0 0 .500 137 31.1 39 4 6 0 0 18 1 0 20 19 5.46 1.44
2010 1 0 0 0 0 0 0 0 0 ---- 4 1.0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0.00 2.00
2011 3 2 0 0 0 1 0 0 0 1.000 46 10.2 14 1 2 0 1 5 0 0 4 4 3.38 1.50
2012 10 0 0 0 0 0 0 0 1 ---- 48 11.0 10 1 4 0 0 6 0 0 3 3 2.45 1.27
2013 DeNA 6 5 0 0 0 0 2 0 0 .000 98 21.0 27 4 11 0 1 11 1 0 17 17 7.29 1.81
2014 中信 22 22 1 0 0 11 3 0 0 .786 625 152.2 150 6 27 0 9 108 4 0 54 42 2.48 1.16
2015 16 16 3 2 1 10 4 0 0 .714 446 103.0 113 5 24 0 4 77 2 0 46 40 3.50 1.33
2016 38 20 0 0 0 9 8 1 5 .529 635 145.0 175 9 32 0 9 114 4 0 86 73 4.53 1.43
2017 35 15 0 0 0 5 8 0 6 .385 546 125.2 148 11 29 1 5 87 6 0 75 64 4.58 1.41
2018 56 0 0 0 0 4 5 1 16 .444 284 64.2 71 5 12 2 3 55 3 0 38 30 4.18 1.28
2019 65 0 0 0 0 11 3 1 14 .786 274 65.0 68 1 9 10 0 39 1 0 24 21 2.91 1.18
2020 54 0 0 0 0 1 3 2 15 .333 232 55.0 59 2 11 0 2 42 0 0 21 19 3.11 1.27
2021 22 21 0 0 0 12 7 0 0 .631 552 130.0 15 11 18 0 4 90 4 0 67 59 4.08 1.30
NPB:5年 33 10 0 0 0 2 3 0 1 .400 333 75.0 91 10 24 0 2 40 2 0 44 43 5.16 1.53
CPBL:8年 308 94 4 2 1 63 41 6 56 .605 3594 841.0 935 50 175 13 36 612 24 0 411 348 3.72 1.32
  • 2020年度シーズン終了時
  • 各年度の太字はリーグ最高

年度別守備成績 編集



投手












2009 阪神 13 1 7 1 0 .889
2010 1 0 0 0 0 ----
2011 3 0 2 0 0 1.000
2012 10 1 0 0 0 1.000
2013 DeNA 6 1 3 0 1 1.000
2014 中信 22 5 22 0 3 1.000
2015 16 10 16 1 2 .963
2016 38 15 20 0 4 1.000
2017 35 13 20 2 2 .943
2018 56 2 8 1 1 .909
2019 65 4 19 0 6 1.000
2020 54 2 11 0 0 1.000
NPB 33 3 12 1 1 .938
CPBL 286 51 116 4 18 .977

タイトル 編集

CPBL

表彰 編集

CPBL

記録 編集

投手記録
NPB
CPBL
  • 初登板・初先発登板・初勝利・初完投勝利:2014年3月25日、対義大ライノズ1回戦(新荘体育場野球場)、9回無失点
  • 初奪三振:同上、1回表に黃智培から三振
  • 初完封勝利:2015年5月30日、対義大ライノズ16回戦(澄清湖棒球場)、9回無失点
  • 初ホールド:2016年7月14日、対義大ライノズ23回戦(澄清湖棒球場)、7回裏に3番手で救援登板、1回無失点
  • 初セーブ:2016年9月13日、対義大ライノズ34回戦(新竹市立中正野球場)、9回表に3番手で救援登板、1.1回2失点
打撃記録
NPB
  • 初安打:2009年4月26日、対広島東洋カープ6回戦(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)、4回表に篠田純平から中前安打
その他の記録
CPBL

背番号 編集

  • 64 (2009年 - 2010年)
  • 40 (2011年 - 2012年)
  • 117 (2013年 - 同年2月25日)
  • 62 (2013年2月26日 - 同年末)
  • 19 (2014年 - )

登録名 編集

  • ジェン・カイウン(2009年 - 2010年)
  • 鄭凱文(2011年 - )

登場曲 編集

代表歴 編集

脚注 編集

注釈 編集

出典 編集

  1. ^ 阪神がWBC台湾代表の鄭凱文と契約 日刊スポーツ、2009年3月4日
  2. ^ 鄭凱文664日ぶり白星!阪神連敗ストップ サンケイスポーツ、2011年7月16日
  3. ^ 2012 WBC資格賽中華隊28人名單最後確認 CPBL公式サイト (中国語) (2012年9月21日) 2015年3月28日閲覧
  4. ^ 来季の選手契約について”. 阪神タイガース公式サイト (2012年9月29日). 2012年9月29日閲覧。
  5. ^ WBC 資格賽《賽前組訓熱身賽》球員出賽參考名單 (中国語) 2015年4月19日閲覧
  6. ^ 鄭凱文選手獲得のお知らせ”. 横浜DeNAベイスターズ公式サイト (2012年12月25日). 2012年12月26日閲覧。
  7. ^ 2013 WBC中華隊28人名單 CPBL公式サイト (中国語) (2013年1月14日) 2015年3月28日閲覧
  8. ^ 支配下登録および背番号変更のお知らせ”. 横浜DeNAベイスターズ公式サイト (2013年2月26日). 2013年2月26日閲覧。
  9. ^ 2013 BASEBALL CHALLENGE 日本 VS チャイニーズ・タイペイ チャイニーズ・タイペイ 選手一覧 野球日本代表 侍ジャパン公式サイト 2015年3月29日閲覧
  10. ^ 2014年度選手契約について”. 横浜DeNAベイスターズ公式サイト (2013年11月19日). 2013年11月19日閲覧。
  11. ^ 鄭凱文有備而來 首日練投100球”. 兄弟エレファンツ (2014年2月10日). 2014年2月10日閲覧。
  12. ^ 中職/3月投打MVP 鄭凱文、林泓育當選 | ETtoday運動雲 | ETtoday新聞雲” (中国語). sports.ettoday.net. 2014年4月1日閲覧。
  13. ^ 中華職棒大聯盟全球資訊網 The Official Site of CPBL 中華職業棒球大聯盟公式サイト、2014年12月16日閲覧。
  14. ^ 個人成績表 - 球員個人紀錄 中華職業棒球大聯盟公式サイト、2014年12月16日閲覧。
  15. ^ 元阪神の鄭凱文、2年連続2桁勝利達成/台湾プロ野球 | 芸能スポーツ | 中央社フォーカス台湾 MOBILE”. japan.cna.com.tw. 2015年7月24日閲覧。
  16. ^ STATS 數據統計 中華職業棒球大聯盟公式サイト、2017年11月20日閲覧。
  17. ^ 侍ジャパン対戦台湾代表に元阪神ジェン・カイウンら - プロ野球 : 日刊スポーツ”. nikkansports.com. 2018年10月15日閲覧。
  18. ^ 聯合新聞網 (20191029T210007Z). “中職/純後援奪金手套 鄭凱文歸功春訓、日職鍛鍊 | 聯合新聞網:最懂你的新聞網站” (中国語). 聯合新聞網. 2019年10月29日閲覧。
  19. ^ 自由體育 (2020年10月31日). “台灣大賽》「輸在我的調度!」 丘總談第10局讓鄭凱文續投 - 自由體育”. 自由時報電子報. 2020年10月31日閲覧。
  20. ^ 中華職棒大聯盟全球資訊網 The Official Site of CPBL”. www.cpbl.com.tw. 2020年11月8日閲覧。
  21. ^ 自由時報電子報 (2021年2月26日). “鄭凱文回先發 「助」解輪值荒 - 自由體育”. 自由時報電子報. 2021年2月26日閲覧。
  22. ^ 索沙7局好投 富邦本季首戰10:6勝兄弟”. www.cpbl.com.tw. 2021年3月14日閲覧。
  23. ^ 鄭凱文睽違1347天先發勝投 兄弟擊敗獅隊 | 運動 | 中央社 CNA” (中国語). www.cna.com.tw. 2021年3月21日閲覧。
  24. ^ 阪神「台湾の佑ちゃん」緊急リストアップ 日刊スポーツ、2009年1月28日
  25. ^ 2011年の年男 阪神タイガース『週刊ベースボール』2012年1月9.16日号、ベースボール・マガジン社、2012年、雑誌20443-1/9.16, 61頁。

関連項目 編集

外部リンク 編集