ジャーマン・シェパード・ドッグ
ジャーマン・シェパード(ドイツ語: Deutscher Schäferhund 英: German Shepherd Dog)は、ドイツ原産の犬種。「ドイツの牧羊犬」という意味であるが、本種が牧羊犬として使役されたことはない[要出典]。日本国内ではシェパードと呼称されることも多い。
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別名 |
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愛称 |
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原産地 | ![]() | |||||||||||||||||||||||||||
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イヌ (Canis lupus familiaris) |
この犬種は知的で忠誠心と服従心に富み、訓練を好む性格から種々な作業犬として訓練され、災害救助犬・軍用犬・警備犬・警察犬・麻薬探知犬など特殊訓練を必要とする作業犬として活用されている。また、ラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバーと同様、介助犬または補助犬(盲導犬)としても活躍している。飼育下における平均寿命は10-12年。
歴史編集
元闘犬として使われていたマスティフが元となったアラノ・エスパニョールに、ポインターとハウンドが混ざったと考えられている[1]。
1880年代後半に、マックス・フォン・シュテファニッツという人物がドイツで優秀な軍用犬を作出することを計画し、各地の作業犬種の調査を行なった[注釈 1]。この調査によって軍用犬として最も適していた牧畜犬のジャーマン・シェパード・ドッグが選択され、種犬・台雌として使用された。これによって繁殖と改良を加えて1899年に完成された犬種が現在のジャーマン・シェパード・ドッグである。
ジャーマン・シェパード・ドッグの誕生後、それまでジャーマン・シェパード・ドッグと呼ばれていた犬種は、原種のといった旨を表すオールドという単語が冠せられオールド・ジャーマン・シェパード・ドッグと呼ばれるようになった。
体型編集
大柄な体に強靭な筋力を持っている。顔つきは精悍で鋭い。体毛はダブルコートの短毛が主体であるが、長毛の個体も存在する(ただし劣性遺伝子)。毛色は多種あるが、一般的なものはブラック&タン。他に均一なブラックやホワイトも存在する。また、ホワイトのものはホワイト・スイス・シェパード・ドッグという別犬種としても繁殖されている。
本種の平均的な体格は以下の通り[1]。
- 体高:牡:66〜73cm 牝:62〜68cm 体長は、体高より約10〜17%長い。
- 体重:40kg
性格編集
本種は育つ環境によって性格と性質が大きく異なる。
幼少期に正しく教育された個体は、力強い顎を持ちつつも従順であり、忠誠と服従の感情を表す。このためペットとして飼うことだけでなく、攻撃とリリース(噛み付くのをやめさせる)等の数々の命令をこなすことが可能となり、各分野での活動が行える。
反面、きちんと教育されなかった個体は、支配欲が強く非常に攻撃的な犬となり危険度が高い。このため成体の本種を再教育することは困難な作業となる。
高い忠誠心を持つため、警察犬や軍用犬としては非常に優秀であるものの、盲導犬としては使われない傾向にある。これはその高い忠誠心が仇となり、幼少期に飼い主と引き離される際、分離トラウマが発生することによるもの。
飼育上の注意編集
本種はブリーダーが正しく訓練したものでなければ、子供のいる家庭には向かない。
本種において、10〜15%程の確率で耳が完全に立ち上がらないものがいる。これらは friendly-tipped と呼ばれる疾患である。
確率は低いものの、尻尾が垂直に立ち肛門が露出する疾患がある。これらはドッグショーに出場する際には失格の対象となる。ただし家庭犬、使役犬としては何ら問題がない。
他の疾患としては、股関節や膝関節に傾斜があり、後ろ足がカーブしているため関節の病気になりやすいことが挙げられる。股関節・肘関節に異形成のない犬種(イースト・ジャーマン・シェパード・ドッグ)もあるが、各国ケンネル・クラブからは認可されていない。
他の健康問題としては、ヴォン・ヴィレブランド病と皮膚アレルギーがある。また、体質的に太りやすい。
健康上・精神衛生上の問題から、最低限でも1日2回、1時間程度の運動が必要となる。これを怠ると激しい作業に耐えうる体力・持久力を持て余し、ストレスの原因となる。
危険犬種(特定犬)としての扱い編集
一部自治体では、人に危害を加える恐れがある犬種として「特定犬」に指定されている。
ジャーマン・シェパード以外に特定犬として指定されている犬種として、土佐闘犬、秋田犬、紀州犬、ドーベルマン、グレートデーン、セント・バーナード、アメリカン・スタッフォードシャー・テリア(アメリカン・ピット・ブル・テリア)がある。
特定犬の飼い主のずさんな管理による咬傷事故が絶えない現状にも関わらず、一部自治体以外では、飼育・管理において具体的な規制がされていない現状である。
参考編集
- 1899年ドイツで軍人マックス・フォン・シュテファニッツが初登録している[注釈 1]。1920年代にオランダのブリーダーが、当犬種とオオカミを交配している。
- German Shepherd Dog は、ドイツ語の Deutscher Schäferhund(ドイチャー・シェーファーフント) を逐語訳したものである。さらに日本語に訳すとなると「ドイツ牧羊犬」である。中国語表示は「徳國牧羊犬」(徳國=ドイツ)。ドイツにはこの他にも牧羊犬種が存在するので、混乱が起こることがある。
- 第一次世界大戦時、ドイツ軍において伝令、弾薬運搬、陣地警備の軍用犬として使われていた。この犬の能力に感心したイギリスとアメリカの兵士が、家庭に連れて帰りペットとしたことが作業犬として人気を得ることとなる。イギリスでは大戦後の反独感情からAlsatian (アルサシアン、アルザス種の意)と呼ばれ、今でもイギリス、アイルランド、英連邦各国ではAlsatianの別名が一般的である。
- 日本では、第二次世界大戦以前から千葉県を中心に繁殖、供給されており、一般にもなじみ深い犬種であった。戦後の飼育ブームの中でも着目され、1950年時点の子犬の取引価格は1頭15000円から30000円と極めて高価なものであったが、飼育数は東京都内だけでも560頭を数えた[5]。現在も各警察において警察犬・警備犬として、自衛隊においては警備犬としてポピュラーな犬種である。
メディアに登場した有名なジャーマン・シェパード・ドッグ編集
メディアに登場した有名な本種個体を以下に挙げる。
- ジョン・F・ケネディが飼っていたクリッパー(Clipper)
- フランクリン・D・ルーズベルトが飼っていたメイジャー(Major:少佐の意)
- アドルフ・ヒトラーが飼っていたブロンディ(Blondi)
- ストロングハート - 1920年代の犬の映画に数多く出演したジャーマン・シェパード・ドッグ
- リンチンチン - 1920年代の犬の映画に数多く出演したジャーマン・シェパード・ドッグ。その子や孫も同名を継いで映画に出演した。
- ジョー・バイデンが飼っているチャンプとメイジャー(Champ and Major)
- テレビドラマ
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- 名犬リンチンチン
- 名犬ロンドン物語
- 刑事犬カール - カール号を演じたのは、クラッフォー・オブ・ツカサドール(通称ジル)
- REX〜ウィーン警察シェパード犬刑事〜
- テレビアニメ
ギャラリー編集
海上自衛隊で警備犬として活躍するブラックのシェパード
脚注編集
出典編集
- ^ a b 藤田, りか子、Willes, Renee 『最新 世界の犬種図鑑』誠文堂新光社、2015年2月、86頁。ISBN 978-4-416-61365-8。
- ^ “『"ジャーマン・シェパード・ドッグの歴史"と"マックス・フォン・シュテファニッツ"に関する資料』” (PDF) (英語). 2020年1月30日閲覧。
- ^ 日本放送協会 (2022年12月10日). “大型犬が5度目のかみつき 埼玉県上尾の組員逮捕|NHK 首都圏のニュース”. NHK NEWS WEB. 2022年12月12日閲覧。
- ^ 日本放送協会 (2022年12月12日). “大型犬 再び人にかみつく 飼い主の暴力団員逮捕 上尾|NHK 埼玉県のニュース”. NHK NEWS WEB. 2022年12月12日閲覧。
- ^ 「玩具にされてはかなワン」『日本経済新聞』昭和25年9月5日 3面
注釈編集
文献編集
- Hank Whittemore and Caroline Hebard 『災害救助犬が行く』新潮社、1998年、ISBN 4-10-210711-8
- グレーフェ・彧子『ドイツの犬はなぜ幸せか:犬の権利、人の義務』中央公論社、2000年、ISBN 4-12-203700-X
- 志摩 不二雄『軍犬ローマ号と共に:ビルマ狼兵団 一兵士の戦い』光人社、2006年、ISBN 4-7698-2511-0