ステアーAUG (ドイツ語: Steyr AUG) は、オーストリアシュタイヤー・マンリヒャー (Steyr Mannlicher) 社がオーストリア軍向けに開発したアサルトライフルである。AUGはアルメー・ウニヴァザール・ゲヴェーア(Armee Universal Gewehr、軍用汎用小銃の意)の頭文字に由来する市販名。「ステアー」の表記の問題についてはこちらを参照。

ステアーAUG
AUG A1 407mm 03.jpg
AUG A1(407 mmバレル)
ステアーAUG
種類 軍用小銃
製造国  オーストリア
設計・製造 シュタイヤー・マンリヒャー
年代 1978年 - 現代
仕様
種別 アサルトライフル
口径 5.56 mm
銃身長 508 mm
使用弾薬 5.56x45mm NATO弾
装弾数 30発/42発(箱形弾倉
作動方式 ガス圧利用(ショートストロークピストン式)、ロータリーボルト
全長 790 mm
重量 3,600 g
発射速度 680 - 850発/分
銃口初速 940 m/秒
有効射程 300 m
歴史 
設計年 1970年代
配備先
関連戦争・紛争
バリエーション
  • AUG-A1
  • AUG-LMG
  • AUG-P
  • AUG-9mm
  • AUG-A2
  • AUG-A3
テンプレートを表示

シュタイアー・ダイムラー・プフ社のStG58[注釈 1]の後継として、1977年にオーストリア連邦軍歩兵用小銃にStG 77 (Sturmgewehr 77) の制式名で採用される。

SF的な外観を持つこのは、それまでの軍用銃と異なるいくつかの革新的試みがなされていた。

特徴編集

 
AUG(上)とC7(下)のプラスチック製マガジン
 
AUGのスコープ。スコープ上部にはアイアンサイトが付属する。

AUGは、トリガーより後方に機関部を配置するブルパップ方式を採用している。ブルパップ方式は、銃身長を短くすることなく全長を短くすることが可能で、弾丸の威力や命中精度を維持しつつ取り回しの良さを改善できるメリットがある。また、薬室をグリップより後方に配置したことで反動を効果的に抑え込むことができ、集弾性が向上する利点を持っている。

作動方式はショートストロークピストン式を採用しており、小型のガスピストンは銃身の右側に配置されている。ガスバルブは通常位置、ガス圧増加位置、ガス遮断位置の三段階で切り替えることができる。

ストックとグリップが一体となっているボディは強化プラスチックにより形成されている。それまで部分的にしか使用されなかったプラスチック部品を、撃鉄(ハンマー)や逆鉤(シア)を含めた機関部の部品にいたるまで大幅に取り入れており、軽量化も意識されている。一方で、全体の重量は3,600 gとそこまで軽量化に成功しているわけでもない。同時代に設計や運用された、小口径高速弾を使用し、ブルパップ構造でないM16AK-74と比べてもむしろ重いぐらいである[注釈 2]。しかしその分強度は高く、実験では10 tトラックに繰り返し轢かれた後も発射可能であったという記録がある。専用のマガジンにもプラスチックが採用されており、残弾数が確認できるよう半透明となっている。

ハンドガードはなく、ガスシステムブロックの下側にフォアグリップが取り付けられており、前方に折り畳むことが可能となっている。トリガー上部のクロスボルト式のボタンはセーフティであり、銃の左側面に突出させると射撃位置、右側面に突出させれば安全位置である。トリガーの引き加減(浅く引くことでセミオート、深く引くことでフルオート)でのみ発射モードを切り替えることができる。スコープ取り付け部の左側面にはコッキングハンドルがあり、引いて上方へひねるとボルト後退位置で固定することができ、閉鎖不良を起こしたボルトを手動で押し込むためのフォワードアシスト機能も持つ。

AUGの最大の特徴として、銃全体が7個ほどのモジュール・パーツで構成されており、銃身(ガスシステムブロックとフォアグリップ含む)もワンタッチで脱着することができる。モジュール・パーツを交換することにより、要求される様々な用途に応じた火器となり、兵士教育の短縮化・簡略化を可能としている。例えば、銃身をピストル弾用に、ボルト機構をブローバック用に交換すれば短機関銃に、621 mmの重銃身にバイポッド (二脚)、42発マガジンを取り付ければ軽機関銃相当の銃 (分隊支援火器) になる。このような運用の仕方はシステム・ウェポンと呼ばれ、AUGは実用化・普及に成功したシステム・ウェポンの先駆けのひとつといえる。

アイアンサイトの照門と照星の間隔が短くなる欠点[1]を解消するために、銃自体の携行ハンドルを兼ねる1.5倍率オプティカルスコープを標準装備することで照準精度を確保している。このスコープはスワロフスキーグループの光学機器メーカーが製造・供給している。スコープの視野は中央に小さな丸が描かれているシンプルなもので、この丸を射程300メートルにおいて高さ1.8メートルの標的に重ねれば、正照準となるように設定されている。スコープの上にはスコープが破損ないし汚れた時に使うための非常用アイアンサイトが用意されている。

左に構えた際に空薬莢が顔面に当たる欠点[2]については、右方向へ排莢するボルトを左方向へ排莢するボルトに交換し排莢口のカバーを付け替えることで薬莢の排出方向を左に変更することで対処できる。ただし戦闘中の状況によっては (負傷など)、右撃ちと左撃ちの切り替え (スイッチ) を状況によって素早く行うことが求められるため、(すなわち利き手は引き金を引くだけに用いるため、必ずしも利き手で銃把を握る必要はない) いかに容易に排出方向を変えられるといっても瞬間的な操作には対応できないという問題は残っている。

現在シュタイアー・マンリヒャー社はAUGの製造権を放棄しており、その後はナイフメーカーのマイクロテック・ナイフ (Microtech Knives) 社が製造権を買い取り、子会社のMSAR (マイクロテック・スモール・アームズ・リサーチ) 社を設立。ボルトフォワードアシストを追加し各部分を改良したバージョンのSTG-556シリーズを生産・販売をしていた (2015年倒産)。

バリエーション編集

 
AUG A2
 
AUG A3(初期型)
 
AUG 9mm
ステアーAUG F1
最初期のモデル。
ステアーAUG A1
最初期のモデルF1に少し変更がされたもの。携行ハンドルも兼ねる1.5倍率オプティカルスコープを標準装備している。使用弾薬5.56x45mm NATO弾 (SS109)。
ステアーAUG A2
オプティカルスコープを脱着可能にし、ピカティニー・レールを使用可能にしたモデル。スコープの形状やチャージングハンドルの形状が変更された
ステアーAUG A3
オーストラリア軍ニュージーランド軍からの要請で、NATO基準の光学システム(暗視装置など)を搭載できるようモジュールマウントを装着したA2の発展型。6.8×43mm SPCの使用テストが行われていたが、その後中止された。その後ボルト・ストップ機能を追加したモデルが主流となった。
ステアーAUG A3 M1
シュタイヤーアームズが製造するA3のセミオートモデル。
ステアーAUG A3 SF (またはAUG A2コマンドー)
オーストリア軍特殊部隊向けに開発されたモデル。オプティカルスコープにピカティニー・レールを搭載し、銃身長も16インチに変更されている。
ステアーAUG P
警察向けの短銃身カービンモデル。フルオート機能が廃されている。
ステアーAUG Pスペシャルレシーバー
P型に光学機器搭載用のマウントを装備したモデル。
ステアーAUG 9mm (またはAUG SMG、AUGパラ)
9mm弾を使用する短機関銃モデル。
ステアーAUG M203
銃身の下にM203 グレネードランチャーを取り付けたモデル。
ステアーAUG LSW
ステアーAUGのLSW(Light Support Weapon、軽支援火器)モデル。
ステアーAUG HBAR
重銃身を装備したHBAR (Heavy-Barreled Automatic Rifle、重銃身自動ライフル) モデル。多くの軽機関銃と違いクローズボルト方式。
ステアーAUG HBAR-T
HBARをもとにして作られた狙撃銃モデル。
ステアーAUG LMG
HBARをもとにつくられたLMG (Light machine gun、軽機関銃) モデル。オープンボルト方式。4倍率のオプティカルスコープがつけられている。
ステアーAUG LMG-T
Pスペシャルレシーバー同様のマウントが装着されたLMG。
ステアーAUG Z
オートマチック(連射)機構を取り除いたA2。民間用モデル。
ステアーUSR
米国財務省アルコール・タバコ・火器・爆発物取締局 (BATFE) による規制に対応したA2。
F88
オーストラリアライセンス生産されたモデル。銃剣の装着が可能。オーストラリア軍とニュージーランド軍が使用中。オーストラリア軍では改良型のEF88 (Enhanced F88) への更新を開始している。

クローン品編集

現在、既にAUGの特許は失効しており、シュタイアー社の許諾なしにクローン製造することが可能となった。

MSAR STG-556
アメリカのMSAR (マイクロテック・スモール・アームズ・リサーチ) 社がAUGのA1モデルをコピーし、小改良 (ボルト・ストップ機能追加など) を施した上でアメリカのニーズに合わせたもの。フルオート射撃が可能な軍・警察用モデルと、セミオート射撃限定の一般民間市場販売向けスポーティー・モデルの二種類が存在する。使用弾薬 (口径) は5.56x45mm NATO弾 (.223レミントン) であり、E3 モデルはM16系のSTANAG マガジンが流用可能となっている。最終モデルであるXM17 E4はSTG-556の次世代発展型として開発された。使用弾薬(口径)は基本の5.56x45mm NATO弾の他に7.62x39mm5.45x39mm6.8×43mm SPCがある (製造中止)。
TPD AXR
TPD (タクティカル・デザイン・デベロップメント) USA社がAUGをコピーし、STG-556と同様M16系STANAG マガジンを流用可能にしたものだが、こちらはA2モデルをコピーしたため照準器は付属せず、好みの物を取り付けられる(製造中止)。
使用弾薬(口径)は5.56x45mm、6.8×43mm SPCの二種類であり、それぞれの弾薬に適応する従来のAUG用マガジンもある。

使用国編集

登場作品編集

ステアーAUGの登場作品を表示するには右の [表示] をクリックしてください。

映画・テレビドラマ編集

007 オクトパシー
ソ連陸軍のオルロフ将軍に協力するKGB兵士短銃身タイプを使用。
S.A.S. 英国特殊部隊
シーズン3「エネミー・ライン」でSAS隊員が使用。
TIME/タイム
時間監視局(タイムキーパー)のエージェントが使用。
相棒
警視庁狙撃所属の日野警部補が使用。
ウォーキング・デッド
ウッドベリーの町長である、総督が主人公の住む刑務所を襲う際に携行している。
エクスペンダブルズ3 ワールドミッション
"ドク"がソマリアの港で使用。
オール・ユー・ニード・イズ・キル
アメリカ統合防衛軍の兵士がA1を所持する。
恋人はスナイパー
主人公の王凱歌(第1作目)と范火清(第2作目)が使用。
コマンドー
終盤にて、アリアス元大統領が主人公のジョン・メイトリックス大佐との一騎討ちで使用。
サイレント・トリガー
シューターがサプレッサーを装着したものを使用。
ザ・パッケージ/暴かれた陰謀
ソ連書記長の暗殺を企む狙撃兵トーマス・ボィエットが使用。分解可能かつコンパクトな狙撃銃として描写されている。
ザ・ラストシップ
シーズン2から登場する、オーストラリア海軍掃海潜水員支隊員のウルフ・テイラー上等兵曹がA3を使用する。
スペースバンパイア
SAS隊員が男のバンパイアへ発砲。
ダイ・ハード
テロリストの一員であるカールが使用。
ダイ・ハード/ラスト・デイ
アリクがEOTech ホロサイトM203 グレネードランチャーを装着したA3を、チャガーリンの手下がドットサイト、タクティカルライトを装着したA3を使用する。
ニキータ
主人公、ニキータが狙撃任務の際にサプレッサーを装備し、右撃ちモードで使用する。狙撃場所のホテルの部屋の各所にアセンブリーごとに分解され隠されたAUGを、アンヌ・パリロー扮するニキータがランジェリー姿のまま慣れた手つきで組み立て、任務を遂行する。
バトルランナー
政府側警備隊員やレジスタンスが所持するほか、終盤にレジスタンスからの借用で主人公も使用。
プレデター2
ロサンジェルス市警のSWATや、コロンビア系麻薬組織のギャングが使用。
ランド・オブ・ザ・デッド
ゾンビ側の主人公であるビッグ・ダディが傭兵から奪ったものを使用。
レモ/第1の挑戦
軍需産業が欠陥を隠蔽しつつ正式採用を企む小銃「AR60」として登場。
ロボコップ
デトロイト警察SWAT隊員の一部が使用。

アニメ・漫画編集

GS美神 極楽大作戦!!
美神麗子がA1を使用。
うぽって!!
あぐちゃんがA1を使用(あぐちゃん自身がA1の擬人化キャラでもある)。
エンジェル・ハート
アニメ第8話で冴羽獠狙撃に使用している。
代紋TAKE2
傭兵東京でのテロに使用。
ゴジラ S.P <シンギュラポイント>
こちら葛飾区亀有公園前派出所
第11話「中川君のお宅拝見」でテロリストの1人がAUG、第279話「燃える炎のロボット警官」で犯人がAUG Paraをそれぞれ使用。
ゴルゴ13
100巻「傑作・アサルトライフル」にてサビーヌ兄弟の兄が、SPコミックス104巻「バイオニック・ソルジャー」にてライリーが使用。
スプリガン
主人公のライバル、暁巌が使用。主人公のG3と好対照をなす。
特例措置団体ステラ女学院高等科C3部
鹿島そのらが使用。
『初音ミク アンソロジーコミック』
『ユンボル -JUMBOR』
ヨルムンガンド
A1をトージョとアールが、短機関銃モデルをバルメが使用。

小説編集

Fate/Zero
久宇舞弥が使用。アニメにも登場。
Op.ローズダスト
連続爆弾テログループ「ローズダスト」のスナイパーである真野留美が使用する。左利きのため、排莢口を左に設定している。

ゲーム編集

Hitman: Contracts
練習ステージおよび本編のファーストミッションなどで相手側の特殊部隊員や警護兵が使用。
Operation Flashpoint: Cold War Crisis
アメリカ軍陣営で使用可能なアサルトライフルとしてA1が登場する。
Paperman
Phantom -PHANTOM OF INFERNO-
ドライ対アイン戦でドライが使用。また、ドライの愛銃でもある。
PlayerUnknown's Battlegrounds
支援物資限定武器としてA3が登場。
Tom Clancy's The Division』、『Tom Clancy's The Division 2
「AUG A3 Para XS」「エンハンスド AUG A3P」の2種類が登場。いずれもボルトをブローバックボルト方式に変更し、9mmパラベラム弾使用のサブマシンガンとして登場。そのためマガジンも細くなっている。『2』では1同様サブマシンガン仕様のA3 Paraに加え、本来のアサルトライフル仕様の「AUG A3-CQC」が追加されている。
九龍妖魔學園紀
主人公の武器として使用可能。
『Warface』
A3が登場。
X operations
A1が登場。連射可能な武器の中で、唯一オプティカルスコープが付いている(機能が使える)。
カウンターストライク
「ブルパップ」の名称でA1が登場。1.5倍のズーム機能があり、遠距離射撃が可能。
コール オブ デューティシリーズ
CoD:MW2
軽機関銃としてAUG HBARが登場。
CoD:BO
アサルトライフルとしてA1が登場。しかし、ゲームの設定年代が1960年代なので本来は存在しない。
CoD:MW
サブマシンガンとしてAUG 9mmが登場。マルチプレイモードでは武器ランクを上げることで弾薬を5.56mmNATO弾に換装したりバレルを拡張するなどのカスタマイズが可能。
CoDモバイル
サブマシンガンとしてAGR-556という名前で登場。
スペシャルフォース2
アサルトライフルとしてA3が登場。
ソードアート・オンライン フェイタル・バレット
「ARBlueRose」の名称で登場。フォアグリップがない他、外見が若干アレンジされた架空銃である。ユージオが使用する。
バトルフィールドシリーズ
BFBC
MEC突撃兵の装備としてA3が登場する。
BFBC2
マルチプレイの突撃兵にてA3モデルを使用可能。
BF3
DLC「Close Quarters」にてA3が実装。
BF4
マルチプレイの突撃兵でA3を使用可能。
ブラック★ロックシューター THEGAME
PSS隊員が白いAUGを装備している(ACOGスコープ+逆ホロサイトと言う謎の照準器付き)。
メタルギアソリッド ピースウォーカー
アサルトライフルとして登場。
レインボーシックス ベガス
A3の初期型が登場。続編の『レインボーシックス ベガス 2』でもサブマシンガンの「AUG PARA」として登場。
レインボーシックス シージ
GSG-9のIQ及び新兵のアサルトライフルとしてA2が登場。また、GIGRのKAIDのサブマシンガンとしてPARAが「AUG A3」の名前で登場。
荒野行動
補給物資として登場
Bullet Force
AUG A3が使用可能
フォートナイト
バーストアサルトライフル(エピック、レジェンド)として登場。
補給物資、宝箱から手にいれることが出来る。

脚注編集

[脚注の使い方]

注釈編集

  1. ^ FN FALライセンス生産品であるが内部構造や細部の特徴などは西ドイツ仕様のG1に類似する。
  2. ^ ただし、後述する標準装備のオプティカルスコープなど、一概に比べられない点もある。

出典編集

  1. ^ Akira「FN P90」『月刊GUN』第42巻第13号、国際出版、2003年12月1日、 32頁、 雑誌02355-12、2019年8月18日閲覧。
  2. ^ Akira「FN P90」『月刊GUN』第42巻第13号、国際出版、2003年12月1日、 31頁、 雑誌02355-12、2019年8月18日閲覧。

関連項目編集

外部リンク編集