ゼメリング鉄道(ゼメリングてつどう、Semmering Railway)は、オーストリアの首都・ウィーンの南西にあるゼメリング峠を通る、ヨーロッパで最初に国際標準軌間を採用した山岳鉄道鉄道全体が世界遺産に登録されている。

世界遺産 ゼメリング鉄道
オーストリア
2016年頃のゼメリング鉄道
2016年頃のゼメリング鉄道
英名 Semmering Railway
仏名 Ligne de chemin de fer de Semmering
登録区分 文化遺産
登録基準 (2), (4)
登録年 1998年
公式サイト 世界遺産センター(英語)
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概要 編集

グロッグニッツ駅から途中ゼメリング駅を経由し、ミュルツツーシュラーク駅に至る[1]。他の山岳鉄道同様、走行時の地勢の険しさや高低差も特筆に値する。ヨーロッパで最初に国際標準軌間を採用した山岳鉄道であり、鉄道自体も今なお稼働している。走行距離は全長41.825キロ、高低差は460メートルになる。建設期間は1848年から1854年までの6年間である[2]

ゼメリング鉄道の設計者カール・リッター・フォン・ゲーガは機関車の構造に最新の技術を用いることで、急勾配やカーブを克服した。軌道上には、14のトンネル、16の高架橋、100を超える石橋に11の鉄橋がある。また、土木工事(トンネル掘削・橋梁架構など)に際しては、自然との調和が重要な課題とされており、このことが世界遺産登録について大きく評価された。

ゼメリング鉄道を含む路線は、首都・ウィーンと、オーストリア南部の都市(グラーツクラーゲンフルトフィラッハ)・国外の都市(イタリアヴェネツィアスロベニアの首都・リュブリャナクロアチアの首都・ザグレブ)とを結ぶ、オーストリア連邦鉄道 (ÖBB) の重要幹線の一つである。このためゼメリング鉄道は、開業時とは異なり電化こそされているものの、開業から150年以上が経過し、世界遺産に登録された現在でも現役であり、上記の都市を結ぶ特急列車が1時間間隔で通過するほか、イタリアの首都・ローマとを結ぶ夜行列車や、多数の貨物列車も通過する。

2027年以降の開業を目指してゼメリング鉄道のバイパスとして「ゼメリング・ベース・トンネル」を建設中である。完成後はウィーンと南部の都市グラーツ間の所要時間が約30分短縮されるほか、現在の路線では勾配のため複数の機関車を連結(重連)して運転している重量貨物列車を機関車1両で運行できるようになるという[3]

 
1116形機関車によるÖBB-Railjetが走る

登録基準 編集

この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。

  • (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
  • (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。

脚注 編集

  1. ^ 『世界で一番美しい山岳鉄道』エクスナレッジ、2015年、51頁。ISBN 978-4-7678-2045-3 
  2. ^ 建設コンサルタンツ協会『Consultant』編集部『土木遺産 世紀を越えて生きる叡智の結晶 ヨーロッパ編』ダイヤモンド社、2005年、133頁。ISBN 978-4-478-89018-9 
  3. ^ “オーストリアの長大鉄道トンネル工事が開始…世界遺産登録路線のバイパス”. Response.jp. (2014年1月15日). https://response.jp/article/2014/01/15/214931.html 

関連項目 編集

外部リンク 編集