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概要編集

光文社より2007年3月に単行本、2009年10月に光文社文庫が刊行された。

死体なき殺人事件の捜査を進める中で、相矛盾する証言が立ちはだかる。全5章から構成され、作品のカギを握る高岡賢一と三島耕介のモノローグを章の冒頭に挿入する。前作『ストロベリーナイト』で派手な事件を扱ったため、本作では地味な事件を扱うというコンセプトの元で執筆され、スティングの楽曲「The Soul Cages」からインスパイアされている[1]。そのため本作では著者なりの解釈による「父性」が主題となっており[1]、劇中では事件の当事者と自分の事を大切に思う父親の想いを知った姫川、そして、本作では事実上の準主役であり一人息子を想う日下の心情と登場人物それぞれに「父性」と関わる場面に焦点が当てられている[2]

2012年、姫川玲子シリーズを原作としたフジテレビ系列連続テレビドラマ『ストロベリーナイト』で、第9話から最終話まで前中後編にわたり3話分かけて、2019年に同じく姫川玲子シリーズを原作としたフジテレビ系連続テレビドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』で、第2話から第3話まで前後編にわたり2話分かけてそれぞれ映像化された。

あらすじ編集

多摩川の土手に放置されたワンボックス軽自動車の荷台から、成人男性の左手首が発見された。指紋鑑定により、工務店経営者の高岡賢一の手首と判明する。また通報により、高岡が賃貸人になっていた同じ区内にある工務店のガレージに致死量を超えた大量の血痕が発見され、死体なき殺人事件として捜査が開始される。

第一発見者である三島耕介は高岡の工務店で働いていたが、彼の父親は9年前に建設現場で転落死していた。一方、耕介と付き合っていた中川美智子に聞き込みを行った玲子は、彼女の父もまた、2か月前に建設現場で事故死していたことを知る。そして、2人の父親は共通して多額の借金を抱え込み、同じ会社「木下興業」で建設作業員となっていた。捜査を進める中で、「木下興業」の裏で暗躍しているゼネコン「中林建設」の存在が明らかになる。

玲子たちは、高岡の過去を調べるため実家付近への聞き込みを行うが、得られたのは相次いで矛盾した証言だった。そして、高岡をよく知る人間によってこれまでの事実が覆されてしまう。被害者とされていた高岡賢一は実は全くの別人であった。

登場人物編集

姫川班編集

姫川 玲子
警視庁捜査一課殺人犯捜査十係(姫川班)主任 警部補
菊田 和男
巡査部長。玲子の部下。
石倉 保
巡査部長。玲子の部下。
湯田 康平
巡査長。玲子の部下。
葉山 則之
巡査長。玲子の部下。本作より大塚の後釜として登場

警視庁編集

日下 守
捜査一課殺人犯捜査十係(日下班)主任 警部補。
今泉 春男
警視庁捜査一課殺人犯捜査十係係長 警部
橋爪 俊介
捜査一課管理官 警視
國奥定之助
東京都監察医務院監察医
井岡 博満
蒲田署配属 巡査長。

「木下興業」関係者編集

高岡 賢一
被害者。建設業・「高岡工務店」を経営。三島耕介の父親が死亡した当時、「中林建設」に勤務しており、同じ現場にいた。彼を引き取り親代わりとなって仕事を教え込ませる。6年前に独立。誠心誠意仕事に励んでいると評判で、特に耕介のミスにも責任をもって対応していた。耕介とは親子以上の関係を築いていたが、父親の友達を装ってまで彼に接近したのには理由があった。
三島 耕介
20歳。「高岡工務店」に勤務。9年前、父親を転落事故で亡くし、その後、品川区の児童養護施設「品川慈徳学園」に入る。小学生当時、貧しい生活を送り、いじめられたこともあったが、養護施設では上級生のいじめにもいろいろ抵抗していた。養護施設を出る直前に高岡に会い、子供のように育てられた。高岡のことを「おやっさん」と呼び、慕っていた。
中川 美智子
19歳。美容専門学生。その傍ら、ファミリーレストラン・ロイヤルダイナーでバイトをしている。母親はすでに他界、父親も建設現場で事故死している。
戸部 真樹夫
41歳。「中林建設」から「木下興業」に出向してきた総務係長。工事現場に似つかわない格好で入ったり、女遊びが盛んで若い女にも手を出すなど、トラブルを多く持ち込む。
三島 忠治
三島耕介の父。「木下興業」で勤務していた9年前に建設現場で転落死した。妻と離婚後、酒を飲んでは耕介には暴力をふるっていたことがある。当時1000万円以上の借金を抱えていた。
沢井 雄司
ガス器具会社の人事担当。12年前、「中林建設」の策略によって店の立ち退きを余儀なくされた「蕎麦屋」の息子。当時の高岡をよく知る人物。
内藤 君江
49歳。北千住で居酒屋を経営している。
内藤 和敏
13年前の事故で重傷を負った君江の弟で、その1年後に建設中のビルで自殺した。この事故で妻を亡くし、子供が全身麻痺のけがを負った。

脚注編集

  1. ^ a b 『ダ・ヴィンチ』2012年2号、151頁での著者の作品解説より
  2. ^ 文庫版あとがきより

外部リンク編集