ダイダイ(橙、学名:Citrus aurantium)は、ミカン科ミカン属常緑樹、およびその果実柑橘類に属する。正月の飾りや鏡餅に乗せるのでよく知られる。

ダイダイ
Citrus aurantium.jpg
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ムクロジ目 Sapindales
: ミカン科 Rutaceae
: ミカン属 Citrus
: ダイダイ C. aurantium
学名
Citrus aurantium L.[1][2]
和名
ダイダイ(橙)
英名
Bitter orange

名称編集

和名ダイダイは、一つの株に数年代の果実がついていて見られる特徴から、「代々栄える」の意味で「ダイダイ」と呼ばれるようになったとされる[3][4]。また、「回青橙」とも呼ばれる[5]

特徴編集

インドヒマラヤが原産[3]日本へは中国から渡来した[6][4]。また、ヨーロッパへも伝わり、ビターオレンジとして栽培されている。

日本では静岡県伊豆半島和歌山県田辺市が主産地。その多くは正月飾り用であったが、近年は消費が落ち込んでいたため、ポン酢などに加工されるようになった。

高さ4 - 5メートル (m) になる常緑小高木[3]にはがある。花期は初夏(5 - 6月)[3]。枝の先に1輪から数輪の5弁ある白い花が咲き[3]に果実が黄熟する。果実の色は橙色と呼ばれる。葉柄は翼状になっており、葉身との境にくびれがある[4]。果実は直径7 - 8センチメートル (cm) になり、冬を過ぎても木から落ちず、そのまま木に置くと2 - 3年は枝についている[4]。冬期は橙黄色となるが、収穫せずに残しておくと翌年の夏にはまた緑色に色づき、再び冬が来るとその実は橙黄色になる[3][4]

利用編集

 
鏡餅に飾られたダイダイ

11 - 12月ころに熟した果実を採集して利用する。果汁として料理に利用したり、薬用にもする[3]。また、果実は鏡餅、お供え物に使用する[3]

果実には、リモネンを主成分とする精油糖分クエン酸リンゴ酸ヘスペリジンナリンギンなどのフラボノンビタミンAB群・Cなどを含んでいる[3]。果皮には、リモネン、シトラルなどを成分とする精油や、配糖体カロチンキサントフィルペクチン脂肪油フラボノイド、ビタミンA・B群・Cなどを含んでいる[3]。ダイダイの精油には、ヒトの胃液の分泌を高める健胃作用があり、皮膚につけば血行促進作用がある[3]。精油以外の成分は滋養保健効果があるといわれている[3]

食料編集

酸味苦味が強いため、直接食するのには適さない。マーマレードおよび調味料として利用される。果汁は酸味が強く風味がいいことからポン酢の材料としても好まれる[7]

飲料編集

北欧では、クリスマスのときに飲む温めたワインの「グロッグ」にダイダイを用いる。スウェーデンのレシピの特徴は使うスパイスの種類にあり、起源は風味の落ちたワインを調味するためである[8]。またあらかじめ干しぶどうを湯で戻し、アーモンドとともに小さなグラスに入れて準備しておいて、供する時にそこにホットワインを注ぐ点はスウェーデンならではという。グラスがとても小さい背景に家々を回ってふるまってもらう、この国の伝統的なグロッグ・パーティーの習わしがある[8]

薬用編集

漢方では、果実を縦に4つ切りして、果実の皮を採集して乾燥させたものを橙皮(とうひ)といい、日本薬局方にも収載され、去痰薬・健胃薬として用いられたり、橙皮チンキ、橙皮シロップ、苦味チンキなどの製薬原料にされている[3]。また、未熟果実を乾燥させたものを枳実(きじつ)といい、芳香性苦味健胃、去痰、排膿、緩下薬として用いられる。

民間療法で、食欲不振、消化不良、胃もたれに、橙皮を細かく刻んですり潰し、粉末状にしたものを1回量1 - 2グラムとして毎食後に服用する[3]ひびあかぎれなどには、生の果汁を塗るとよく、あらかじめ肌にすり込んでおけば予防に役立つと言われている[3]

ダイダイの皮と果実はシネフリンという化合物を含む[6]。これは生薬麻黄エフェドラ)に含まれる成分(エフェドリン)と類似の構造をもつ。交感神経副交感神経混合型興奮作用を有していることから、この成分を加工したものが「シトラス」という名称でアメリカでダイエット用の健康食品として使用されているが、エフェドラと同様の作用を示すことから、副作用報告も出ている[9][出典無効]。なお、「体脂肪を燃焼する」、「運動機能を向上させる」などの、ヒトでの有効性については、信頼できるデータが十分ではない[6]

精油編集

精油を採取した部分で呼び名が異なる。これらは香料として香水化粧品、食品等に使用される。アロマテラピーにも用いられる。

  • 果皮から圧搾法また水蒸気蒸留法で採取された精油はオレンジ油ビターオレンジ油橙油 と呼ばれる。
  • 枝葉を水蒸気蒸留して採取された精油は プチグレイン英語版 と呼ばれる。
  • 花を水蒸気蒸留して得た精油はネロリネロリ油橙花油。水蒸気蒸留の副産物としてオレンジ花水が得られる。温浸法(アンフルラージュ)または溶媒抽出して得た精油はネロリアブソリュート(ネロリAbsとも書く)、オレンジ花アブソリュート[10]と呼ばれる。花から採取する精油は高価である。

台木編集

ダイダイは耐寒性が強く、普通に植えた場合は枯れてしまう種類の柑橘類を接ぎ木で育てる時に根側をこれにすることで、寒い地域でも他の柑橘類を育てられるようになる[11]

文化編集

日本では、名前が「代々」に通じることから縁起の良い果物とされ、鏡餅などの正月の飾りに用いられる。 見かけはよく正月の飾りには使えるものの、食べるのに酸味と苦みが強いという特徴から、見掛け倒しの武将を指して「橙武者」と呼ぶことがある(薄田兼相など)。

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Citrus aurantium L.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年6月6日閲覧。
  2. ^ U.S. National Germplasm Resources System (英語版) に記載。 GRIN: “Citrus × aurantium L.”. アメリカ合衆国農務省 (2011年8月19日). 2017年10月2日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 田中孝治 1995, p. 149.
  4. ^ a b c d e 岡山理科大学総合情報学部生物地球システム学科 植物生態研究室のホームページ 植物雑学事典 ダイダイ
  5. ^ Yahoo Japan辞書 大辞林
  6. ^ a b c ダイダイ - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所
  7. ^ 全国地方野菜・地方果実図鑑
  8. ^ a b Duxbury, John. “[http://www.swedishfood.com/swedish-drink-recipes/178-glogg Mulled wine Glögg]” [スパイス入りホットワイン グロッグ] (英語). SwedishFood.com. 2017年10月8日閲覧。
  9. ^ 健康医療館「ダイダイ」の項
  10. ^ クリシー・ワイルドウッド 著 『アロマテラピーの精油でつくる自然香水』 高山林太郎 訳、フレグランスジャーナル社、1996年
  11. ^ ヘレナ・アトレー『柑橘類と文明 マフィアを産んだシチリアレモンから、ノーベル賞を取った壊血病薬まで』三木直子 訳、築地書簡株式会社、2015年、(ISBN 978-4-8067-1493-4)、45・59P。

参考文献編集

  • 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、149頁。ISBN 4-06-195372-9

関連項目編集

外部リンク編集