ダイハツ・ミゼットII

日本の軽量貨物自動車

ミゼットII(ミゼット ツー、Midget II)は、1996年から2001年までダイハツ工業から製造・販売されていた軽貨物自動車である。

ダイハツ・ミゼットII
K100型
1996年4月販売型 Bタイプ
1996年4月販売型 Rタイプ
(アルミホイールはノンオリジナル)
概要
販売期間 1996年4月 – 2001年7月
ボディ
乗車定員 1名(MT車)/2名(AT車)
ボディタイプ 2ドアセミキャブオーバー
トラック(ピック)
3ドアセミキャブオーバー型
ライトバン(カーゴ)
エンジン位置 フロント
駆動方式 後輪駆動
パワートレイン
エンジン EF-CK型 (前期型)
直3 SOHC キャブレター 660cc
EF-SE型 (後期型)
直3 SOHC EFI 660cc
最高出力 EF-CK型
23kW(31ps)4,900rpm
EF-SE型
24kW(33ps)/4,900rpm
最大トルク EF-CK型
50N・m(5.1kg・m)/3,200rpm
EF-SE型
51.0N・m(5.2kg・m)/4,000rpm
変速機 3速AT
4速MT
前:マクファーソンストラット
後:リジッドアクスルリーフスプリング
前:マクファーソンストラット
後:リジッドアクスルリーフスプリング
車両寸法
ホイールベース 1,840mm(同上)
全長 2,895mm(ピックアップトラック 後期型の数値)
全幅 1,335mm(同上)
全高 1,650mm(同上)
車両重量 580kg(同上)
その他
最大積載量 150kg
ブレーキ 前輪:ツー・リーディング式ドラム
後輪:リーディング・トレーリング式ドラム
系譜
先代 ミゼット
(MP型系:三輪自動車
後継 既存の9代目ハイゼットに統合
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概要 編集

高度経済成長期1957年8月から1972年1月まで販売された軽貨物三輪自動車(オート三輪)「ミゼット」の名前を受け継いだ軽貨物モデルである[1]

初代ミゼットと同様に小口配達に特化しており、車体の大きさは全長2,790mm、全幅1,335mm、全高1,705mmで、当時の軽自動車規格の上限値(全長3,300mm、全幅1,400mm、全高2,000mm)を大幅に下回り、360cc時代の軽自動車規格(全長3,000mm、全幅1,300mm、全高2,000mm)に当てはめても幅員が35mm上回る程度で、最小回転半径は3.6m。スペースの関係からスペアタイヤボンネットに装着し、ヘッドライトとフロントホイールのフェンダーがボディの外側に大きくはみ出した愛嬌のある外観が特徴的である。当初は乗員1名の軽トラックモデルのみが製造されたが、後にライトバンスタイルの「カーゴ」や、2人乗りモデルが誕生した。

当初から少量生産車として企画され、ダイハツ本社池田工場内に新設された専用施設ミゼット工房において手作業で組み立てが行われた。コストの低減を図るため、既存の軽貨物自動車である8代目ハイゼット(S100型系)と多くの部品を共用する。エンジンもハイゼットと共通だが、ボディが軽量であることから燃料消費率はハイゼットの半分程度であった。尚、テールランプはスズキ・キャリイの流用である。本車種廃止後、ミゼット工房はエキスパートセンターと改名し、廃止翌年の2002年に登場したコペンの生産工場へ改造されている。

その特徴的なコンセプトから、生産終了・販売終了から20年を過ぎた現在もなお個性的な軽自動車モデルの一つとして取り上げられることも少なくない[2][3]

歴史 編集

型式 K100P/100C型(1996年-2001年) 編集

  • 1993年 - 第30回東京モーターショーに参考出品。
  • 1995年 - 第31回東京モーターショーに参考出品。
  • 1996年4月5日 - 発売
    • キャッチコピーは「ミゼットを飼おう」、および「夢は大きいよ。」。ちなみに当時オンエアされたテレビCMはミゼットIIがライオンに襲われたり、スカンクをかけられたりするなどと全体を通しコミカルな内容だった。
    • トラック型・1人乗り・最大積載量150kg・4速MT仕様のみが存在。
    • 廉価型のBタイプ、標準型のDタイプ、ドレスアップが施されたRタイプが用意された。
    • 全長2,790mm(Rタイプは2,865mm)・全幅1,295mm・全高1,650mm。ホイールベースは1,840mm。
    • エンジンは、全車型とも直列3気筒659cc・ロッカーアーム式SOHCEF-CK型。燃料供給はキャブレターを使用し、最高出力31馬力、最大トルク5.1kgmで、触媒コンバーターは装着されていない。10・15モード燃費は15.8km/L。
    • タイヤおよびホイールは全車10インチ[注釈 1]ブレーキは全車総輪ドラムブレーキ(前輪・2リーディングドラム、後輪・リーディングトレーリングドラム)を採用[注釈 2]
    • 左側ドアのガラスウィンドウは、非開閉式であった。
    • 計器類は速度計燃料計のみで水温計(または水温表示灯)すら付いていない。なお速度計は120km/hスケールである(一般的な軽自動車は140km/hスケール)
 
1997年1月販売型 ミゼットII カーゴ
(Dタイプ)
  • 1996年9月
    • 車体色の追加がある。
    • 限定車としてRリミテッドが登場する。
  • 1997年1月
    • 箱型の荷室を設けたバン型の「カーゴ」Dタイプ・Rタイプを追加。キャッチコピーは「ふたりで飼おう。」、および「夢がふくらむ。」。従来からのトラック型は「ピック」として区別される。
    • トランスミッションを3速AT仕様とし、シフトレバーをコラムシフトにすることで2人乗りを実現したモデルが、カーゴ・ピックのDタイプ・Rタイプに設定された。燃料消費は、10・15モード 15.0km/L。
    • 3AT・ピックRタイプのAC付車に触媒コンバーターが追加される。
    • カーゴはピックよりも全長・全幅を40mm、全高を55mm拡大し、全長2,830mm(Rタイプは2,905mm)・全幅1,335mm・全高1,705mm。
    • 2人乗りの設定が出来たために、ピックの左側ドアのガラスウィンドウも非開閉式から、カーゴ同様の手回し式レギュレーター付きガラスウィンドウに変更された。
  • 1997年10月
    • ピックおよびカーゴのDタイプ・2人乗り・3速AT車を元に、ツートーン塗装が施され、革巻きハンドル・プロテインレザー張りシートなどを装備した特別仕様車「アメリカンカスタム」が発売される。
  • 1998年09月
    • 特別仕様車だった「カスタム」が通常モデルとして設定され、Rタイプが廃止される。
    • Dタイプ・カスタムはエアコンが標準装備となるなどの、仕様変更も行われた。
  • 1999年9月
    • 1998年10月に施行された、軽自動車規格の改定および衝突安全基準の強化に適合させるために1年遅れでマイナーチェンジを行う。車体前面にあったスペアタイヤを運転席背後の荷台(ピック)・荷室(カーゴ)に移動。マイナーチェンジ前にスペアタイヤが設置されていた場所には、ダイハツCIマーク付きのボタンの様な凹型のカバーが装着されている。楕円Dマークがついたのはこの時が初めてである。
    • 前バンパーを大幅に延長し、衝突吸収構造を採り入れることで安全基準を満たした。全長は105mm拡大され、ピックで2,895mm、カーゴは2,935mmとなった。
    • テールランプは前期のものをベースに、丸が3つ並ぶ専用デザインのミゼットⅡオリジナルのテールレンズとなった。配列は前期と同じである。
    • 衝撃吸収ハンドル・運転席シートベルトへのフォースリミッター機構追加、8インチブレーキブースターを全車に採用し、2人乗り・3速AT車には運転席エアバッグがオプション設定された。
    • エンジンおよびギア比の変更(若干のハイギアード化)により燃費を改善。当時は低燃費自動車の優遇税制が適用された。
    • カスタムの特徴でもあったナルディ製 革巻きハンドルはウレタン、プロテインレザー張りシートは布張りになった。
    • 平成10年アイドリング規制への適合を含む自動車排出ガス規制の強化に伴い、エンジンがEFIDLIを採用したEF-SE型に変更された。10・15モード燃費 20.0km/L(4速MT車)、18.0km/h(3速AT車)。
  • 2001年6月
    • 生産終了。在庫対応分のみの販売となる。
  • 2001年7月[4]
    • 販売終了。ダイハツの軽商用車は9代目(S200型系)ハイゼットシリーズと5代目(L700/710系)ミラバンのみとなる。その後ミラバンは7代目まで続いたが、2018年に生産・販売を終え、ハイゼットシリーズに一本化された。

構造 編集

基本的に1人乗り 4速MT、2人乗り3速AT の設定であるが、1人乗りモデルでもトランスミッション関連部品の改造により、変速レバーのコラムシフト化と助手席追加による2人乗りの4速MT車化、さらには部品追加により4速MTを5速MTにできたりと改造の幅も広い。

これは走行系の部品を7代目(S80型系)および8代目(S100型系)、9代目(S200型系[注釈 3])ハイゼットと共用しているために可能な技である。5速MTにすることによって燃料消費が従来の4速MTより向上する可能性もある。

車名の由来 編集

実質的な先代モデルのミゼット(英語の「超小型」を意味する "midget" から)に由来。ミゼットの2代目ということで命名された。

ミゼットIII/ミゼットIV 編集

ダイハツ・ミゼットIII
(ショーモデル専用のため市販なし)
ボディ
乗車定員 3名
ボディタイプ 2ドアセミキャブオーバーセダン
エンジン位置 フロント
駆動方式 後輪駆動
パワートレイン
エンジン EF-CK型
直3 SOHC キャブレター 660cc
最高出力 23kW(31ps)4,900rpm
最大トルク 50N・m(5.1kg・m)/3,200rpm
変速機 3速AT
前:マクファーソンストラット
後:リジッドアクスル+リーフ式サスペンション
前:マクファーソンストラット
後:リジッドアクスル+リーフ式サスペンション
車両寸法
ホイールベース 1,900mm
全長 2,995mm
全幅 1,335mm
全高 1,650mm
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ダイハツ・ミゼットIV
(ショーモデル専用のため市販なし)
ボディ
乗車定員 4名
ボディタイプ 4ドアセミキャブオーバーセダン
エンジン位置 フロント
駆動方式 後輪駆動
パワートレイン
エンジン EF-CK型
直3 SOHC キャブレター 660cc
最高出力 23kW(31ps)4,900rpm
最大トルク 50N・m(5.1kg・m)/3,200rpm
変速機 3速AT
前:マクファーソンストラット
後:リジッドアクスル+リーフ式サスペンション
前:マクファーソンストラット
後:リジッドアクスル+リーフ式サスペンション
車両寸法
ホイールベース 1,840mm
全長 2,795mm
全幅 1,335mm
全高 1,705mm
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1995年開催の第31回東京モーターショーに、ミゼットIIとともに参考出品された乗用版。前1席+後ろ2席のトライアングルシートポジションと、非対称ドア(右が前席、左が後席のアクセス用)を特徴としていた。こちらは市販に至らなかった。

このシートレイアウトはフットスペースの確保がしやすく、パッセンジャーの視界が広くなる等のメリットがあり、1990年代にBMW・Z13をはじめ盛んに試作検討されたが、量産されたものはなかった。

このほか、1997年開催の第32回東京モーターショーに既存のミゼットIIカーゴをベースにほぼそのまま乗用版に改められたミゼットIVも参考出品されたが、上記のミゼットIII同様、市販に至らなかった。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ タイヤは全車145/95R10 79/77Lのサイズのラジアルタイヤを用いる。
  2. ^ ちなみに1993年の第30回東京モーターショーに参考出品されたプロトタイプのミゼットIIでは12インチのタイヤ(135SR12のサイズのラジアルタイヤ)とホイールが、前輪側のブレーキにはディスクブレーキがそれぞれ用いられていた。
  3. ^ ただしトラックのみ。

出典 編集

  1. ^ モデルヒストリー / ミゼットII”. ダイハツ工業 U-CATCH. 2020年4月19日閲覧。
  2. ^ 林眞人 (2019年11月12日). “【こんな車もう出ない!?】驚くほどの超個性派!! エポックメイキングな軽自動車 5選”. ベストカーweb. 講談社ビーシー. 2020年4月19日閲覧。
  3. ^ よくぞ作った! 奇抜すぎる個性的な軽自動車5選”. くるまのニュース. メディア・ヴァーグ (2020年3月22日). 2020年4月19日閲覧。
  4. ^ ミゼットII(ダイハツ)のカタログ”. リクルート株式会社 (2020年1月6日). 2020年1月6日閲覧。

関連項目 編集