ダイハツ・ZM型エンジンは、ダイハツ工業が生産していた軽自動車エンジンの一つである。

ダイハツ・ZM型エンジン
生産拠点 ダイハツ工業
製造期間 1966年 - 1981年
タイプ 2サイクル直列2気筒
ピストンリードバルブ
排気量 0.36L
テンプレートを表示

概要 編集

1966年にフェロー向けのエンジンとして初登場した軽自動車用360ccエンジンであり、後にはハイゼットにも搭載された[1]

基本仕様は2サイクル水冷直列2気筒ピストンリードバルブ、内径62.0mm×行程59.0mm、総排気量356ccであり、元々は1960年にハイゼット用エンジンとして新開発されていた空冷2サイクル直列2気筒のダイハツ・ZL型エンジンをベースに水冷化したものである。潤滑系統は、MP5型ミゼットZD型2サイクル空冷単気筒エンジンで実績のあった「オイルマチック」分離給油方式をZL型に引き続き採用[2]2ストロークオイルオイルポンプによってエンジン各部に個別供給される。燃料供給装置はキャブレターで、ツインキャブレターの高性能エンジンもフェローマックス向けにラインナップされていた。

ZM型はダイハツが軽自動車向けに開発した最後の2ストローク機関であり、1973年の昭和48年排出ガス規制施行以降、年々強化されていく自動車排出ガス規制によって他社が2ストローク機関の使用を諦めていく中で、スズキLJ50型エンジンと共に昭和50年排出ガス規制[3]をクリアした。しかし、昭和50年暫定規制の施行に先立つ1976年1月には軽規格が550ccに拡大し、ダイハツも後継エンジンである4サイクル550ccのダイハツ・AB型エンジンを市場投入。軽乗用車のフェローマックスでは1976年一杯はZM型も併売されていたものの、翌1977年のマックスクオーレではAB型に完全移行した。ただし、排ガス規制の緩い軽商用車のハイゼットでは、550cc規格を運転出来ない軽限定免許ユーザーに配慮して1981年8月までZM型エンジン搭載車を継続販売していた[4]

ZM型は日本国内に於いては生産が停止されて久しいエンジンであるが、東南アジアにはミゼットの車体と共に多くのZM型エンジンが輸出され、タイラオスでは三輪タクシートゥクトゥクのエンジンとして引き続き生産されている。

系譜 編集

  • ZL型(1960-1966年) → ZM型(1966-1981年)

バリエーション・搭載車種 編集

ZM 編集

  • 1966年-1981年
  • シングルキャブレター
  • 最高出力 23ps/5,000rpm
  • 最大トルク 3.5kg-m/4,000rpm
  • 圧縮比 9.0:1
L37D型フェロー[5]
S36/37型ハイゼット[6]
S38型ハイゼット(24 PS (18 kW)、排ガス規制対応)[7]

ZM6 編集

  • 1970年-?
  • シングルキャブレター
  • 最高出力 26ps/5,500rpm
  • 最大トルク 3.5kg-m/4,500rpm
  • 圧縮比 9.0:1
L37型ハイゼットピックアップ
L37PB型フェローバギィ[8]

ZM5 編集

  • 1970年-1972年
  • ツインキャブレター
  • 最高出力 40ps/7,200rpm
  • 最大トルク 4.1kg-m/6,500rpm
  • 圧縮比 11.0:1
L38型フェローマックスSS[9]

ZM4 編集

  • 1970年-1972年
  • シングルキャブレター
  • 最高出力33ps/6500rpm
  • 最大トルク3.7kg-m/5500rpm
L38型フェローマックスパーソナル、スタンダード、デラックス、カスタム、ハイカスタム [10]

ZM9 編集

  • 1971年-1972年
  • ツインキャブレター(71年7月-72年3月)[11]
  • シングルキャブレター(72年3月-72年10月)
  • 最高出力 40ps/7,200rpm
  • 最大トルク 4.1kg-m/6,500rpm
  • 圧縮比 11.0:1
L38型フェローマックスハードトップGXL、SL[12][13]

ZM8 編集

  • 1971年-1972年
  • シングルキャブレター
  • 最高出力 33ps/6,500rpm
  • 最大トルク 3.7kg-m/5,500rpm
  • 圧縮比 10.0:1
L38型フェローマックスハードトップGL、TL[12][13]

ZM13 編集

  • 1972年-1975年
  • シングルキャブレター[11]
  • 最高出力37ps/6500rpm
  • 最大トルク4.1kg-m/6000rpm(排ガス規制対応)
  • 圧縮比9.0:1
L38型フェローマックスSS、S、ハードトップGSL、SL [14]

ZM12 編集

  • 1972年-1976年
  • シングルキャブレター
  • 最高出力31ps/6000rpm
  • 最大トルク3.7kg-m/5000rpm(排ガス規制対応)
  • 圧縮比9.0:1
L38型フェローマックス、ハードトップGHL、GL、TL、L [14]

脚注 編集

  1. ^ ダイハツ・ハイゼットキャブ
  2. ^ 日本の自動車技術240選 - ダイハツオイルマチック
  3. ^ 正確には2サイクル軽乗用車向けに1年間の猶予期間を置き、1976年4月より正式適用された昭和50年暫定規制である。
  4. ^ 4代目 ハイゼット
  5. ^ 旧車DATA フェロー
  6. ^ DAIHATSU HIJET VAN Std (S37VS)
  7. ^ (Japanese) (brochure) 省エネルギー時代にこたえるダイハツ [Daihatsu responds to the age of energy saving], Osaka, Japan: Daihatsu Motors, (June 1980), p. 5, 10850 ① 200.55.6. OK 
  8. ^ 旧車DATA フェローバギー
  9. ^ 日本のスポーツ車 1960~1990 - 第33回 ダイハツ フェローMAX・SS(L38型)1970年7月
  10. ^ 前期型セダンの諸元
  11. ^ a b フェローMAXとは?
  12. ^ a b ハードトップ'71年7月版カタログ
  13. ^ a b 1972 三海堂『フェローMAXの整備』ダイハツ自動車販売株式会社サービス部/サービス課編 5-6頁
  14. ^ a b 後期型ハードトップの諸元

リンク 編集