ダニエル・エバンス
ダニエル・"ダン"・エバンス(Daniel "Dan" Evans, 1990年5月23日 - )は、イギリスの男子プロテニス選手。イングランド・バーミンガム出身。ATP自己最高ランクはシングルス22位、ダブルス52位。ATPツアーシングルスで1勝を挙げている。身長175cm、体重75kg。右利き、バックハンド・ストロークは片手打ち。
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![]() 2022年モンテカルロ・マスターズでのダニエル・エバンス | ||||
基本情報 | ||||
愛称 | ダン(Dan) | |||
国籍 |
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出身地 |
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生年月日 | 1990年5月23日(33歳) | |||
身長 | 175cm | |||
体重 | 75kg | |||
利き手 | 右 | |||
バックハンド | 片手打ち | |||
ツアー経歴 | ||||
デビュー年 | 2006年 | |||
ツアー通算 | 1勝 | |||
シングルス | 1勝 | |||
ダブルス | 0勝 | |||
生涯獲得賞金 | 5,837,162 アメリカ合衆国ドル | |||
4大大会最高成績・シングルス | ||||
全豪 | 4回戦(2017) | |||
全仏 | 2回戦(2022) | |||
全英 | 3回戦(2016・19・21) | |||
全米 | 4回戦(2021) | |||
4大大会最高成績・ダブルス | ||||
全豪 | 2回戦(2021) | |||
全仏 | 2回戦(2019・20) | |||
全英 | 1回戦(2014・16・19) | |||
全米 | 3回戦(2016) | |||
国別対抗戦最高成績 | ||||
デビス杯 | 優勝(2015) | |||
ATP杯 | ベスト8(2020) | |||
キャリア自己最高ランキング | ||||
シングルス | 22位(2021年9月27日) | |||
ダブルス | 52位(2021年4月26日) | |||
2023年5月21日現在 |
選手経歴編集
ジュニア時代編集
バーミンガムのホール・グリーン地区で電気技師の父親と看護師の母親のもとで生まれた。7歳のときにスカッシュを父親と初めてしてから地元のスカッシュクラブに通うようになった。同じラケットスポーツであることからテニスにも興味を持ち、本格的にテニスを始めることになった。次第にテニスの才能を発揮して13歳のときにラフバラーに移り住み、アカデミーでトレーニングを始める。
2006年 プロ転向編集
ヨーロッパの16歳以下のランキングでトップになり、プロ転向を果たした。
2009年 グランドスラム初出場編集
2009年ウィンブルドン選手権でワイルドカードをもらいグランドスラム初出場を果たす。1回戦で第12シードのニコライ・ダビデンコに敗れた。
2013年 グランドスラム3回戦進出編集
2013年全米オープンでは第11シードの錦織圭を6-4, 6-4, 6-2で破り、グランドスラム初勝利を果たす。さらに2回戦でバーナード・トミックに勝利し、トミー・ロブレドとの3回戦まで進出した。
2015年 デビス杯初優勝編集
デビスカップ2015ではデビスカップイギリス代表として準決勝に出場し、優勝メンバーの1人となった。
2016年 グランドスラム3回戦進出編集
2016年全豪オープンで予選を通過し全豪初出場。1回戦で第18シードのフェリシアーノ・ロペスに敗れた。ウィンブルドン選手権では1回戦でヤン=レナルト・シュトルフを破り、地元ウィンブルドンで初勝利を上げた。さらに2回戦で第30シードのアレクサンドル・ドルゴポロフを破り3回戦に進出。3回戦では世界ランク3位のロジャー・フェデラーに4-6, 2-6, 2-6で敗れた。全米オープンでは2回戦で第27シードのアレクサンダー・ズベレフを破り3年ぶりに3回戦に進出。3回戦では世界ランク3位のスタン・ワウリンカにマッチポイントを握るも6-4, 3-6, 7-6(6), 6-7(8), 2-6で敗れた。
2017年 グランドスラム4回戦進出編集
シドニー国際では準々決勝で世界ランキング8位のドミニク・ティームを破ると、準決勝でアンドレイ・クズネツォフに勝利し、自身初のツアーの決勝進出。決勝でジレ・ミュラーに敗れ、準優勝。その好調さのまま挑んだ全豪オープンでは2回戦で世界ランキング7位のマリン・チリッチに3-6, 7-5, 6-3, 6-3で勝利。3回戦でも第27シードのバーナード・トミックに勝利し、自身初のグランドスラム4回戦進出。4回戦で第12シードのジョー=ウィルフリード・ツォンガに7-6(4), 2-6, 4-6, 4-6で敗れたが、大会後に世界ランキング45位なり、トップ50入り。さらに3月6日付のランキングで自己最高の41位を更新。
BNPパリバ・オープンでは錦織圭に2回戦敗退。マイアミ・オープンでは初戦敗退。モンテカルロ・マスターズでは同胞のカイル・エドマンドに初戦敗退。マドリード・オープンではロビン・ハーセに初戦敗退。BNLイタリア国際ではイジー・ベセリーに初戦敗退。全仏オープンでは初戦敗退。2017年6月に禁止薬物のコカインに陽性反応を示し、ドーピング違反で資格停止処分を受けることになった[1]。本人は使用を認めている。
2018年 ツアー復帰編集
2017年6月に禁止薬物使用により、ツアーにおける大会出場資格停止処分を受け、2018年4月18日にその停止処分が解除となった。その後はATPチャレンジャーツアーをメインにツアー復帰。5月1日に開催されたグラスゴー・チャレンジャーでは予選通過するも、初戦敗退。5月末のラフバラー・チャレンジャーでも予選3戦を突破して2回戦敗退。
6月のノッティンガム・チャレンジャーでは決勝進出をするも、決勝でアレックス・デミノーに敗れて、準優勝。クイーンズ・クラブ選手権ではATPツアー・250シリーズに参戦して、1回戦でアドリアン・マナリノに敗れた。ウィンブルドン選手権では予選2回戦で敗退。8月のバンクーバー・オープンではATPチャレンジャーツアーで優勝を果たした。年間最終ランキングは192位。
2019年 ツアー2度の決勝進出編集
全豪オープンでは1回戦で伊藤竜馬を7-5, 6-1, 7-6(8)のストレートで破り、2回戦では第3シードのロジャー・フェデラーに7-6(5), 7-6(3), 6-3のストレートで敗退。カンペール・チャレンジャーではATPチャレンジャーツアー準優勝。デルレイビーチ・オープンではATPツアー2度目の決勝に進出。決勝ではラドゥ・アルボットに敗れ、準優勝。BNPパリバ・オープンではスタン・ワウリンカに初戦敗退。マイアミ・オープンでは2回戦でデニス・シャポバロフに敗れた。
BNLイタリア国際では1回戦でキャスパー・ルードに初戦敗退。全仏オープンではフェルナンド・ベルダスコに3-6, 7-6(4), 3-6, 2-6で初戦敗退したが、その後は2週連続でATPチャレンジャーツアーで優勝を果たした。ウィンブルドン選手権では3回戦でジョアン・ソウザに4-6, 6-4, 5-7, 6-4, 4-6のフルセットで敗れた。
ロジャーズ・カップでは2回戦でラファエル・ナダルに敗れた。ウエスタン・アンド・サザン・オープンでは予選敗退。全米オープンでは3回戦ではフェデラーに6-2, 6-2, 6-1のストレートで敗れた。デビスカップ2019ではベスト4入り。年間最終ランキングは42位。
2020年 ATP杯ベスト8編集
イギリス代表のエースとして新設されたATPカップに出場し、チームをベスト8まで導いた。
全豪オープンでは第30シードとして出場して、1回戦でマッケンジー・マクドナルドを3-6, 4-6, 6-1, 6-2, 6-3のフルセットで破り、2回戦では西岡良仁に4-6, 3-6, 4-6のストレートで敗れた。ドバイ・テニス選手権ではベスト4入りするも、準決勝でステファノス・チチパスに敗れた。その後は新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響でツアーが中断された。
ツアー再開後のウエスタン・アンド・サザン・オープンでは1回戦でアンドレイ・ルブレフを破るも、2回戦でミロシュ・ラオニッチに敗れた。第23シードとして迎えた全米オープンでは1回戦でチアゴ・ザイボチ・ヴィウチを破るも、2回戦ではコランタン・ムーテに敗退。
BNLイタリア国際ではホベルト・ホルカシュに初戦敗退。第32シードとして迎えた全仏オープンでは錦織圭と1回戦で対決して、6-1, 1-6, 6-7(3), 6-1, 4-6のフルセットの末に初戦敗退。パリ・マスターズでワウリンカに初戦敗退して、シーズン終了。年間最終世界ランキング33位。
2021年 ツアー初優勝 マスターズダブルス準優勝編集
メルボルンで開催されたマリー・リバーオープンの決勝ではフェリックス・オジェ=アリアシムを6-2, 6-3で倒し、30歳にして悲願のツアー初優勝を果たし、幸先の良いスタートを切った。
全豪オープンでは第30シードとして出場するも、初戦で同胞のキャメロン・ノリーに4-6, 6-4, 4-6, 5-7で破れた。カタール・エクソンモービル・オープンでは2回戦で復帰明けのロジャー・フェデラーに敗れた。マイアミ・オープンのダブルスでは同胞のニール・スクプスキと組み、決勝進出。決勝ではマテ・パビッチ/ニコラ・メクティッチ組に敗れて、マスターズダブルス準決勝を果たす。
モンテカルロ・マスターズでは3回戦で世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチを6-4, 7-5のストレートで下す金星を挙げ、ベスト8入り。準々決勝ではダビド・ゴファンを破り、マスターズ1000初のベスト4入りを果たした。準決勝ではステファノス・チチパスに敗退。同大会のダブルスでもマイアミ・オープンに続いて決勝進出。決勝では同じくパビッチ/メクティッチ組に敗れて、マスターズダブルス2連続で準優勝を果たす。
マドリード・オープンでは3回戦でアレクサンダー・ズベレフに敗れた。BNLイタリア国際ではテイラー・フリッツに初戦敗退。全仏オープンでは第25シードとして出場するも、1回戦でミオミル・キツマノビッチに敗れた。第22シードで迎えたウィンブルドン選手権では3回戦でセバスチャン・コルダに3-6, 6-3, 3-6, 4-6で敗れた。
全米オープンでは第24シードとして出場し、初の4回戦進出。4回戦ではダニール・メドベージェフに敗れたが、大会後に世界ランキング22位を更新。BNPパリバ・オープンでは2回戦で錦織圭を破ったが、3回戦でディエゴ・シュワルツマンに敗れた。パリ・マスターズでは初戦でアレクサンダー・ブブリクに敗れた。年間最終ランキングは25位。
2022年 マスターズベスト4編集
ATPカップでは単複ともに5戦全勝する活躍を見せるもラウンドロビン敗退。
第24シードとして迎えた全豪オープンでは1回戦でダビド・ゴファンを6-4, 6-3, 6-0のストレートで破る。2回戦のアーサー・リンダークネッシュ戦は相手が試合前に棄権。3回戦では第9シードのフェリックス・オジェ=アリアシムに4-6, 1-6, 1-6のストレートで敗退。BNPパリバ・オープンでは3回戦でラファエル・ナダルに敗退。マイアミ・オープンでは2回戦で西岡良仁に敗れた。
モンテカルロ・マスターズとマドリード・オープンでは3回戦進出するも、それぞれダビド・ゴファンとアンドレイ・ルブレフに敗れた。BNLイタリア国際ではニコロズ・バシラシビリに初戦敗退。全仏オープンでは第29シードとして出場し、全仏初勝利を飾った。2回戦ではマイケル・イマーに3-6, 6-3, 2-6, 3-6で敗れた。
6月のノッティンガム・チャレンジャーでは優勝。ウィンブルドン選手権では第28シードで出場するも、1回戦敗退。ナショナル・バンク・オープンではマスターズ10002度目のベスト4入りを果たし、準決勝でパブロ・カレーニョ・ブスタに5-7, 7-6(7), 2-6で敗退。さらにダブルスではジョン・ピアースと組み、自身3度のマスターズダブルス準優勝を果たした。第20シードとして迎えた全米オープンでは3回戦で第15シードのマリン・チリッチに6-7(11), 7-6(3), 2-6, 5-7で敗れた。パリ・マスターズでは2回戦でステファノス・チチパスに敗れた。年間最終ランキングは27位。
2023年 グランドスラム3回戦進出編集
全豪オープンでは第25シードとして出場し、3回戦で第5シードのアンドレイ・ルブレフに4-6, 2-6, 3-6のストレートで敗れた。
人物編集
エバンスは「英国テニス界の悪童」や「甚だしいほどの才能の無駄遣い」と評されてきた。
コート外での軽率な行動により、負けることもあった。18歳のときには2008年ウィンブルドン選手権ジュニアの部に出場していたが、試合前からクラブで酒を飲んで豪遊した結果、その日の夜に出場したダブルスの試合に敗退し、ペアにも迷惑をかけた。
当時のコーチは「試合で勝つための可能性はあるが、軽率な行動や考えの甘さが彼をダメにさせている」と言及していた。次第にエバンスは「夜に出歩く飲んだくれ」と悪評が広まった。しかし、エバンス自身はこれに対して自己管理はできていると述べていた。
2014年、StuartDuguid氏は「アンディ・マレーのような他のイギリスのトップ選手とは別者として認識されている。エバンスは少し変わっている。神経質で、何をしでかすかわからない。謎に包まれている」とエバンスを評価した。
プレースタイル編集
どのサーフェスでも安定しており、戦術的かつ柔軟性があり、どのスキルもバランスの取れた選手であり、バックハンドのスライスショットを多用するカウンターパンチャー。
堅実なグランドストロークをするが、相手を圧倒する程のパワーがないのが弱点。バックのストロークは8割スライスショットを多用する。そのスライスショットを攻守ともに使い分けて、相手のリズムを崩す。浅いスライスやドロップショットを打ち、相手を前に誘き寄せて、パッシングを放つ。ネットプレーも上手く、スライス&ボレーも駆使する。
ラケットはウィルソンプロスタッフを使用。グリップテープはトーナグリップを愛用。シューズはNIKEを使い続けていたが、他にもアディダスやアシックスのシューズも履いている。
ウェアは最初はアディダス、後にNIKEを着用していたが、2017年に契約が切れた。2019年はイタリアのアパレルブランドであるYOXOYのウェアを着用。2020年からはイギリスのアパレルブランドLukeRoper(Luke1977)のウェアと契約している。
ATPツアー決勝進出結果編集
シングルス: 3回 (1勝2敗)編集
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結果 | No. | 決勝日 | 大会 | サーフェス | 対戦相手 | スコア |
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準優勝 | 1. | 2017年1月14日 | シドニー | ハード | ジレ・ミュラー | 6–7(5), 2–6 |
準優勝 | 2. | 2019年2月25日 | デルレイビーチ・オープン | ハード | ラドゥ・アルボット | 6–3, 3–6, 6–7(7–9) |
優勝 | 1. | 2021年2月7日 | マリー・リバーオープン | ハード | フェリックス・オジェ=アリアシム | 6–2, 6–3 |
デビスカップ編集
優勝 (1)編集
年 | イギリスチーム | ラウンド/相手 |
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2015年 | アンディ・マリー ジェームズ・ウォード ダニエル・エバンス カイル・エドマンド ジェイミー・マリー ドミニク・イングロット |
1R: イギリス 3–2 アメリカ QF: イギリス 3–1 フランス SF: イギリス 3–2 オーストラリア FN: ベルギー 1–3 イギリス |
シングルス成績編集
4大大会シングルス編集
- 略語の説明
W | F | SF | QF | #R | RR | Q# | LQ | A | Z# | PO | G | S | B | NMS | P | NH |
W=優勝, F=準優勝, SF=ベスト4, QF=ベスト8, #R=#回戦敗退, RR=ラウンドロビン敗退, Q#=予選#回戦敗退, LQ=予選敗退, A=大会不参加, Z#=デビスカップ/BJKカップ地域ゾーン, PO=デビスカップ/BJKカッププレーオフ, G=オリンピック金メダル, S=オリンピック銀メダル, B=オリンピック銅メダル, NMS=マスターズシリーズから降格, P=開催延期, NH=開催なし.
大会 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 通算成績 |
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全豪オープン | A | LQ | A | A | A | LQ | A | 1R | 4R | A | 2R | 2R | 2R | 3R | 6-6 |
全仏オープン | A | A | A | A | A | LQ | A | A | 1R | A | 1R | 1R | 1R | 2R | 1-5 |
ウィンブルドン | 1R | LQ | 1R | A | LQ | 1R | LQ | 3R | A | LQ | 3R | NH | 3R | 1R | 6-7 |
全米オープン | LQ | A | A | A | 3R | LQ | A | 3R | A | A | 3R | 2R | 4R | 10-5 |
大会最高成績編集
大会 | 成績 | 年 |
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ATPファイナルズ | A | 出場なし |
インディアンウェルズ | 3R | 2021, 2022 |
マイアミ | 2R | 2019, 2021, 2022 |
モンテカルロ | SF | 2021 |
マドリード | 3R | 2019, 2022 |
ローマ | 2R | 2023 |
カナダ | SF | 2022 |
シンシナティ | 2R | 2020 |
上海 | Q2 | 2019 |
パリ | 2R | 2022 |
オリンピック | A | 出場なし |
デビスカップ | W | 2015 |
ATPカップ | QF | 2020 |
ダブルス成績編集
大会最高成績編集
大会 | 成績 | 年 |
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ツアーファイナルズ | A | 出場なし |
インディアンウェルズ | 2R | 2023 |
マイアミ | F | 2021 |
モンテカルロ | F | 2021 |
マドリード | 2R | 2021, 2023 |
ローマ | 2R | 2023 |
カナダ | F | 2022 |
シンシナティ | 2R | 2020 |
上海 | A | 出場なし |
パリ | 2R | 2021, 2022 |
オリンピック | A | 出場なし |
デビスカップ | W | 2015 |
ATPカップ | QF | 2020 |
脚注編集
- ^ “テニス=世界50位エバンズに処分、コカイン使用認める”. ロイター. (2017年6月24日)