チャトラジ

4人制のボードゲーム(チェス類)
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8 a8 sy b8 py c8 black king d8 black king e8 black king f8 black upside-down bishop g8 black knight h8 black upside-down knight 8
7 a7 ny b7 py c7 black king d7 black king e7 black pawn f7 black pawn g7 black pawn h7 black pawn 7
6 a6 ey b6 py c6 black king d6 black king e6 black king f6 black king g6 black king h6 black king 6
5 a5 ky b5 py c5 black king d5 black king e5 black king f5 black king g5 black king h5 black king 5
4 a4 black king b4 black king c4 black king d4 black king e4 black king f4 black king g4 pr h4 kr 4
3 a3 black king b3 black king c3 black king d3 black king e3 black king f3 black king g3 pr h3 er 3
2 a2 pg b2 pg c2 pg d2 pg e2 black king f2 black king g2 pr h2 nr 2
1 a1 sg b1 ng c1 eg d1 kg e1 black king f1 black king g1 pr h1 sr 1
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チャトラジの開始配置。それぞれの軍団は色で区別される。

チャトラジ(chaturaji、別名: チョーパート choupat)は、4人制のボードゲームチェス類)である。チャトラジは「4人の王」を意味する。1030年頃に、ビールーニーの著作で初めて詳細に記述された[1]。元々これは運が左右するゲームだった。移動する駒はサイコロを振ることで決定していた。サイコロを使わない変種は19世紀の終わり頃までインドで行われていた。

歴史 編集

古代インドの叙事詩マハーバーラタ』にはチャトラジと思われるゲームについて言及がある[2]。しかしながら、言及されているゲームが本当にチャトラジのようなチェスと類似したゲームだったか、パチーシのようなレースゲームであったかは定かではない。

18世紀の終わり、ハイラム・コックスは、チャトラジはチャトランガに先行したゲームであり、したがって現代チェスの祖先である、とする説(後にコックス=フォーブス説として知られた)を提示した。19世紀末にダンカン・フォーブスがこの説を発展させ、さらにスチュワート・キューリンによって支持された[3]。しかしながら、この説は1913年にH・J・R・マレーによって否定され[1]、現代の学者はマレーを支持している。フォーブスによれば、このゲームは正確には2人制と同じく「チャトランガ」と呼ばれる。「チャトラジ」という用語はチェスのチェックメイトに相当するゲームにおける配置を指す[4]。フォーブスは、北と南(黒と緑)のプレーヤーが味方となり、東と西(赤と黄色)のプレーヤーと対戦すると考えていた[5]

ルール 編集

駒の動き 編集

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8                 8
7                 7
6                 6
5                 5
4                 4
3                 3
2                 2
1                 1
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小舟の動き。f6の小舟は×印の4つの升へ移動できる。

このゲームは図に示すように4つの異なる色の駒を使って行われる。それぞれのプレーヤーは後列に4つの駒とその前に4つの歩兵を持っている。後列の駒は「王」、「象」、「馬」、「小舟」(一部の文献では「船」)である。王はチェスのキング、象はチェスのルーク、馬はチェスのナイトの動きと同じである。小舟はシャトランジアルフィルと同じ動きであり、間のマスを飛び越えて斜めに2マス移動することができる。これは、古代のチェスのほとんどにおいて象(現代チェスのビショップの祖先)がこの動きを担当しているのとは異なっている。手番は盤上時計回りに渡る。

「歩兵」はチェスのポーンと同じように動くが、最初に2マス移動することはできない。4人のプレーヤーのポーンのそれぞれは、各プレーヤーの初期配置から予想される方向に盤上を移動し、敵の駒を捕まえる。例えば、g列からスタートする赤の歩兵は盤を左側に進み、a列で成る。また、歩兵の成りルールも異なっている。成るマスに到着した歩兵は同じ横列(あるいは縦列)から出発する駒(王も含む)に成らなければならず、また自分の同種の駒が捕えられた後にのみ成ることができる。

ボート・トライアンフ 編集

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8                 8
7                 7
6                 6
5                 5
4                 4
3                 3
2                 2
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ボート・トライアンフ・ルール。緑の小舟c3はe5へ移動することによってその他全ての小舟を捕えることができる。

小舟(ボート)が、上図に示すような状況で2×2マスを埋めたその他3つの小舟を飛び越えた時、それら全ての小舟を捕えることができる。このルール英語で「ボート・トライアンフ」と呼ばれる。

サイコロ 編集

それぞれの番が回って来た時に2個のサイコロを振る。通常は長方形の(4面)サイコロを使われた。プレーヤーは空中にサイコロを投げてそれを捕まえて、結果に影響を及ぼすことが許されていた。動かす駒はダイスの目によって決定された(棒サイコロには1と6はない)。

サイコロの目
2 小舟
3
4
5 歩兵または王

それぞれの番にそれぞれのサイコロに付き1回ずつ、計2回駒を動かすことができる。同じ駒を2回動かしてもよいし、異なる駒を動かしてもよい。また、動かすのは1回でもよく、全く動かさなくてもよい。

得点 編集

チェック(王手)あるいはチェックメイトはない。王は他の駒と同じように捕えられる。ゲームの目的はできるだけ多くの点を集めることである。点は以下の表に示すように相手の駒を捕えることで得られる。

点数
歩兵 1
小舟 2
3
4
5

自分の王が生きたまま、その他3人のプレーヤーの王を全て捕えたプレーヤーには54点が与えられる。この値は3つの軍の全ての駒の点数の合計に等しい。

脚注 編集

  1. ^ a b Murray
  2. ^ Mahabharata, Book 4, Section 1
  3. ^ Four-Handed Chaturanga by Jean-Louis Cazaux
  4. ^ Forbes, p. 18
  5. ^ Forbes, pp. 21–22

参考文献 編集

  • Duncan Forbes (1860), The History of Chess, W. H. Allen & Company.
  • Murray, H.J.R. (1913). チェスの歴史. Benjamin Press (originally published by Oxford University Press). ISBN 0-936317-01-9 

推薦文献 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集