チョウセンゴミシ

チョウセンゴミシ (朝鮮五味子、学名: Schisandra chinensis) は、マツブサ科マツブサ属に属する植物の1種である。落葉性つる性木本であり、雌雄異株、5–7月頃に黄白色の花をつける (右上図)。果実は赤い液果で房状につき (右下図)、五味子ごみし[注 1]とよばれて薬用 (滋養、強壮、鎮咳) に用いられる。日本を含むアジア北東部に分布する。

チョウセンゴミシ
Schisandra chinensis (17968236469).jpg
Omija.jpg
チョウセンゴミシの (上) と果実 (下)
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
: アウストロバイレヤ目 Austrobaileyales
: マツブサ科 Schisandraceae
: マツブサ属 Schisandra
: チョウセンゴミシ S. chinensis
学名
Schisandra chinensis (Turcz.) Baill.1868[1][2]
シノニム

特徴編集

落葉性つる性木本であり、つるは左巻き[3][4][5]互生し、長枝には互いに離れてつき、短枝にはまとまってつく[4][5] (下図1a, b)。葉身は倒卵形から楕円形、4–10 x 2–6 cm、先端は鋭尖頭、基部は広いくさび形、葉縁には5–16個の波状鋸歯がある[1][3][4][5]葉脈の側脈は3–7対[1][5]。葉の表面は黄緑色で無毛、葉脈の部分がくぼんでおり、裏面は淡緑色で葉脈上に毛がある[3][4][5] (下図1c)。葉柄は長さ 1–4 cm (葉身の長さの半分以下) であり、平滑[3][4][5][6]冬芽は長卵形、長さ 3–6 mm、葉痕は円形から半円形[4]

1a. 長枝と葉
1b. 短枝にまとまってついた葉 (つぼみをつけた花柄が伸びている)
1c. 葉: 表面 (左) と裏面 (右)

雌雄異株[注 2] (雄花雌花が別の個体につく)[4]。花期は5–7月、は短枝から生じた長さ 1–3 cm の花柄 (雌花の花柄の方が長い) の先につき、直径約 1 cm、芳香がある[1][3][4][6] (上図1b, 2a, b)。花被片は5–9枚、長楕円形 (4.5–10 x 1.1–4.2 mm)、黄白色[1][3][4]。雄花は4–7個の雄しべをもち、花糸が太く、は外向する[1][4][6] (下図2a)。花粉は6溝粒[6]。雌花は、丸い花托上についた14–40個の離生した雌しべをもつ (下図2b)。花柱は白色、子房は淡緑色で2個の胚珠を含む[1][3][4]。訪花者は多様であり、甲虫ハナバチなどが報告されている[7]。花托が花後に伸長するため、個々の果実は離れてブドウの房状の集合果になる[3][4] (右上図)。果実は液果、8–9月頃に赤熟し、大きさは不揃いであり (5–7.5 x 4–5 mm)、それぞれ1–2個の腎臓形の種子を含む[1][3][4] (下図2c)。種子の表面は平滑[3][4]染色体数は 2n = 24, 28[1][3][6]

分布・生態編集

北海道本州 (中部地方以北)、朝鮮半島中国北部、シベリア東部、沿海州アムールウスリーサハリンに分布する[2][3]

冷温帯林の林縁に生育する[4][5]

人間との関わり編集

3a. 市場の五味子 (韓国)
3b. 五味子茶

果実は五味子 (ゴミシ、朝鮮語:オミジャ、満州語:misu hūsiha) とよばれ[注 1]、生食用やジュース、五味子茶、五味子酒として利用される[9] (右図3a, b)。「五味子」の名は、甘味酸味辛み苦味、鹹(塩味)を持つことから名付けられ、植物そのものの名前ともなった[4]

五味子は日本薬局方生薬として収録され、鎮咳去痰作用、強壮作用などがあるとされる[9][10]精油成分としてシトラール、セスキテルペン類としてα-chamigreneなど、リグナン類としてschizandrinやgomisin A英語版などを含み[11]小青竜湯清肺湯人参養栄湯苓甘姜味辛夏仁湯杏蘇散などの漢方方剤に配合される[9][10]

長野県阿智村喬木村では、健康増進のためにチョウセンゴミシのつるを風呂に入れ、入浴する伝統の民間療法がある[12]

脚注編集

[脚注の使い方]

注釈編集

  1. ^ a b チョウセンゴミシのものを北五味子、近縁のサネカズラのものを南五味子とよぶこともある[8]
  2. ^ 本来は雌雄同株であるが、雌雄異株のように見えるとの記述もある[1]

出典編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p Saunders, R. M. (2000). Systematic Botany Monographs vol. 58. Monograph of Schisandra (Schisandraceae). The American Society of Plant Taxonomists. pp. 94–99. ISBN 0-912861-58-4 
  2. ^ a b c d e Schisandra chinensis”. Plants of the World online. Kew Botanical Garden. 2021年6月24日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l 大橋広好 (2015). “マツブサ属”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. pp. 50–51. ISBN 978-4582535310 
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 勝山輝男 (2000). “チョウセンゴミシ”. 樹に咲く花 離弁花1. 山と渓谷社. p. 389. ISBN 4-635-07003-4 
  5. ^ a b c d e f g 馬場多久男 (1999). “チョウセンゴミシ”. 葉でわかる樹木 625種の検索. 信濃毎日新聞社. p. 172. ISBN 978-4784098507 
  6. ^ a b c d e Flora of China Editorial Committee (2008年). “Schisandra chinensis”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年7月16日閲覧。
  7. ^ Saunders, R. M. (2000). Systematic Botany Monographs vol. 58. Monograph of Schisandra (Schisandraceae). The American Society of Plant Taxonomists. pp. 30–32. ISBN 0-912861-58-4 
  8. ^ 精選版 日本国語大辞典. “五味子”. コトバンク. 株式会社DIGITALIO. 2021年7月16日閲覧。
  9. ^ a b c チョウセンゴミシ”. 熊本大学薬学部 薬草園 植物データベース. 2021年7月16日閲覧。
  10. ^ a b ゴミシ”. 新常用和漢薬集. 公益社団法人東京生薬協会 (2017年3月1日). 2021年7月16日閲覧。
  11. ^ 竹谷孝一・木内文之・小松かつ子 (2017). パートナー生薬学 (改訂第3版). 南江堂. ISBN 978-4-524-40342-4 
  12. ^ 『信州の民間薬』全212頁中83頁医療タイムス社昭和46年12月10日発行信濃生薬研究会林兼道編集

外部リンク編集