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チラミン(Tyramine;4-hydroxy phenylethylamine,C8H11NO)は、生体内で芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼの作用によりチロシン(Tyr)から産生されるアミンで、フェネチルアミン誘導体の1つである。チラミンは、モノアミン神経伝達物質セロトニンノルアドレナリンアドレナリンヒスタミンドーパミンアセチルコリンなど)と構造が良く似ている。さまざまな食品に含有されており、高血圧発作の誘因となる化合物である[1]

チラミン
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識別情報
CAS登録番号 51-67-2
KEGG C00483
特性
化学式 C8H11NO
モル質量 137.179
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

目次

含有する食品編集

チラミンは、動物および植物に広く分布し、生体内の酵素により産生されるモノアミンである。モノアミンオキシダーゼ(Monoamine Oxidase, MAO)により代謝されて不活化する。また、食物中のタンパク質微生物により分解を受けることにより生じる腐敗アミンとしても産生される。チラミンを含む食品は、赤ワイン、熟成チーズチョコレートココアなどのカカオ製品、漬け物類、発酵食品、薫製魚、トリの肝臓、イチジクの一部[2]および柑橘類である[3]

作用機序編集

チラミンは交感神経細胞の神経終末からのノルアドレナリンの遊離を促進する。このノルアドレナリンはアドレナリン受容体のα1サブタイプに作用するため、血管収縮作用(収縮作用消失から拡張への反転)があり、血圧を上昇させ、片頭痛発作の誘因となりえる。心拍数の上昇の作用もある。ただ、短時間内に反復投与すると、チラミンの連続投与に対してノルアドレナリンの生合成が追いつかなくなり、神経終末から遊離できるノルアドレナリン分子が枯渇し作用が減弱する(このような作用の減弱化をタキフィラキシーと呼ぶ)。ココアには、血管収縮作用を有するチラミンが含まれているので、多量または濃厚なココアを飲んで数時間後にチラミンの血管収縮作用が消える際に、血管が拡張する反動で頭痛を引き起こすことがある[3]

さらに、チラミンに対して直接結合可能なGタンパク質共役受容体であるTA1受容体も同定されている。TA1受容体は脳や末梢組織に広く分布しており、主に神経伝達物質の機能調節に働いている。

生合成編集

チラミンは、チロシンデカルボキシラーゼによりチロシンから脱炭酸することにより生合成される[4]。チラミンはメチル化を受けてN-メチルチラミン英語版N,N-ジメチルチラミン英語版(ホルデニン)および N,N,N-トリメチルチラミン英語版(カンディシン)といったアルカロイドを生じる。

ヒトにおいては以下のように生合成される。

相互作用編集

パーキンソン病うつ病の治療に用いられるモノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)や、結核治療に使用されるイソニアジドは、チラミンを含むモノアミンの代謝に関与するモノアミン酸化酵素の働きを阻害する。モノアミン酸化酵素阻害薬を服用している間にチラミンを多量に摂取すると、致命的な高血圧が生じたり、重篤な肝障害を生じることがある[8]可逆性モノアミン酸化酵素A阻害薬(RIMA)では相互作用が軽減されているものの、依然として服用中のチラミン摂取には注意が必要である。

これは、まず腸管や肝臓に多く発現しているMAOAが阻害されたことによって、腸管から吸収されたチラミンが代謝されずにそのまま全身循環に乗ったことによって、通常では分解されているはずのチラミンに生体が曝されたことが1つ目の要因。さらに、その後もチラミンの代謝が肝臓などに発現しているMAOAが阻害され続けていることによって、チラミンが蓄積し、チラミン中毒に陥ったためである。

ところで既述の通り、チラミンを比較的多く含む食品の1つとして、チーズが知られている。そして、このモノアミン酸化酵素阻害作用のある薬物と、チラミン含有食品との相互作用は、チーズ効果(cheese effect)と呼ばれる。モノアミン酸化酵素(MAO)には、MAOAとMAOBの2種類が存在する [注釈 1] 。 チーズ効果の発生には、MAOBの阻害はさして大きな要因とはならず、むしろMAOAの阻害が重大な影響を及ぼすことが判っている [9] 。 つまり、パーキンソン病治療薬として使用されることのあるセレギリン英語版ラサギリン英語版のような選択的MAOB阻害薬を使用した時よりも、うつ病治療薬として使用されることのあるモクロベミド英語版のようなMAOAを阻害する作用の強い薬剤の使用によってチーズ効果は起こりやすい。

注釈編集

  1. ^ 参考までに、MAOBはヒトの中枢神経系の神経細胞などで多く発現していることも知られており、対して、MAOAはヒトの中枢神経系の神経細胞ではMAOBと比べると少ない。

出典編集

  1. ^ 井部明広、田村行弘、上村尚 ほか、市販味噌及び醤油中の不揮発性アミンの分析法及びその含有量 衛生化学 37巻 (1991) 5号 p.379-386, doi:10.1248/jhs1956.37.379
  2. ^ Kantor, D (2006年11月21日). “MedlinePlus Medical Encyclopedia: Migraine”. 2008年4月4日閲覧。
  3. ^ a b 片頭痛の病態と誘発因子
  4. ^ Tyrosine metabolism - Reference pathway, Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes (KEGG)
  5. ^ Broadley KJ (2010年3月). “The vascular effects of trace amines and amphetamines”. Pharmacol. Ther. 125 (3): 363–375. doi:10.1016/j.pharmthera.2009.11.005. PMID 19948186. 
  6. ^ “A renaissance in trace amines inspired by a novel GPCR family”. Trends Pharmacol. Sci. 26 (5): 274–281. (2005年5月). doi:10.1016/j.tips.2005.03.007. PMID 15860375. 
  7. ^ “The endogenous substrates of brain CYP2D”. Eur. J. Pharmacol. 724: 211–218. (2014年2月). doi:10.1016/j.ejphar.2013.12.025. PMID 24374199. "The highest level of brain CYP2D activity was found in the substantia nigra ... The in vitro and in vivo studies have shown the contribution of the alternative CYP2D-mediated dopamine synthesis to the concentration of this neurotransmitter although the classic biosynthetic route to dopamine from tyrosine is active. ... Tyramine levels are especially high in the basal ganglia and limbic system, which are thought to be related to individual behavior and emotion (Yu et al., 2003c). ... Rat CYP2D isoforms (2D2/2D4/2D18) are less efficient than human CYP2D6 for the generation of dopamine from p-tyramine. The Km values of the CYP2D isoforms are as follows: CYP2D6 (87–121 μm) ≈ CYP2D2 ≈ CYP2D18 > CYP2D4 (256 μm) for m-tyramine and CYP2D4 (433 μm) > CYP2D2 ≈ CYP2D6 > CYP2D18 (688 μm) for p-tyramine" 
  8. ^ 石井賢二、飲食物とクスリの相互作用(ヘッドライン:食品の科学) 化学と教育 52 巻 (2004) 11 号 p. 746-749, doi:10.20665/kakyoshi.52.11_746
  9. ^ Monoamine oxidase inhibitors and the cheese effect

関連項目編集