モビリティリゾートもてぎ

サーキットを含むモビリティテーマパーク
ツインリンクもてぎから転送)

モビリティリゾートもてぎMobility Resort Motegi)は、栃木県芳賀郡茂木町にあるモビリティテーマパーク1997年8月より「ツインリンクもてぎ(Twin Ring Motegi)」の名称で営業開始[1]。四輪のSUPER GTや、二輪のロードレース世界選手権日本グランプリ(もしくはパシフィックグランプリ)が開催されるサーキットを併設している。2022年3月より「モビリティリゾートもてぎ」に名称を変更した[2]

日本の旗 モビリティリゾートもてぎ
概要


地図
所在地 日本の旗 栃木県芳賀郡茂木町桧山120-1
座標 北緯36度32分00秒 東経140度13分37秒 / 北緯36.53333度 東経140.22694度 / 36.53333; 140.22694座標: 北緯36度32分00秒 東経140度13分37秒 / 北緯36.53333度 東経140.22694度 / 36.53333; 140.22694
運営会社 ホンダモビリティランド株式会社
営業期間 1997年8月 -
収容人数 98122席
主なイベント ロードレース世界選手権
SUPER GT
スーパーフォーミュラ
オーバルコース
コース長 1.5mile (2.414 km)
ラップレコード 0'25.463 (1999年)
ジル・ド・フェラン
ウォーカー・レーシング英語版CART
ロードコース
コース長 4.801 km
コーナー数 14
ラップレコード 1'29.757 (2021年)
野尻智紀
TEAM MUGENスーパーフォーミュラ
北ショートコース
コース長 982 m
ラップレコード 36.340 (2000年)
B.VROOMEN
COMER S.p.A (CIK-FIA
テンプレートを表示

概要 編集

本田技研工業(Honda・ホンダ)が鈴鹿サーキットに次いで建設した、2つ目のサーキットオーバルトラックロードコースの2つのコース(周回路)を併設し、両方を同時に運用できる世界初のサーキット施設である[3]1989年に開発を開始し[4]、1997年8月に営業が開始された[1]。1998年には本田技研工業創立50周年記念イベント「ありがとうフェスタinもてぎ」が開催された[5]

運営の「株式会社ツインリンクもてぎ」はホンダの100%子会社「株式会社ホンダモビリティワールド」が前身となる。その後、鈴鹿サーキットを運営する「株式会社鈴鹿サーキットランド」と合併した新会社「ホンダモビリティランド株式会社」が運営を行っている[6]

現在はレジャー&リゾート施設となっており、サーキットの他に、遊園地ホテルがある。

2022年3月1日より名称を「モビリティリゾートもてぎ」に変更した[2]

サーキット 編集

オーバルコース 編集

日本国内初の完全舗装の本格的オーバルトラック[注釈 1]であり、インディカードラッグレースなどのアメリカンモータースポーツイベントで主に使用することが想定されていた。しかし、東日本大震災によるダメージにより、それ以降は自動車レースイベントでは使用されなくなっている(後述)。ツインリンクもてぎ時代のコース名称は「スーパースピードウェイ」であったが、規模的には1.5マイル(約2.414 km)の中型オーバルである。

直線長はフロント、バック共に1,969フィート(600 m)。バンク角は全ターン10度[4]。バンク角が浅い上に1 - 2ターンに比べると3 - 4ターンがきつく、1.5マイル級オーバルコースとしては珍しくシフトダウンが必要になる。コースレイアウト自体はマディソン・インターナショナル・レースウェイを参考にしている。

ホンダが1994年からエンジンマニュファクチャラーとしてインディカーに参戦したのを契機に、「F1の鈴鹿、インディカーのもてぎ」という位置付けをされていた。1998年から2002年にかけてはCARTシリーズ、2003年から2011年はインディカー・シリーズの日本ラウンドが開催された。また、1998年と1999年にはストックカーレースのNASCARの日本ラウンドが開催された(初年度はエキシビジョン)。スーパー耐久でも「オーバルバトル」と銘打って使用されたが、オーバルでのクラッシュ時に対応した衝撃吸収構造などが、使用する車体に設けられていない関係から、コース上に仮設シケインを設けていた[7][8]

しかし、日本国内ではアメリカ流のオーバルレースが普及していないため、ロードコースに比べると使用頻度は少なかった。1998年には無限童夢と共同でオーバル走行可能なフォーミュラカー「童夢・ML」を開発したが、プロトタイプのテストのみに終わった。

さらに、2011年の東日本大震災でコース上に段差が生じレース開催が不可能な状況となり[9]、その後は暫定的な路面修復工事までしか施工されておらず[10]、レース等の走行イベントはほとんど行われていない。イベント走行[11]以外では自転車やマラソンのコースとして利用され、大型イベント時には臨時の駐車スペースとして使用されている[12]

ホームストレート部分はロードコース用ピット施設とロードコースの外側に、オーバル用ピットレーンとオーバルコースが並列し、大外にグランドスタンドという配置になっているため、ロードレースにおいて観客席とコースの距離が離れてしまうという問題がある。そのため、オーバルコースのホームストレート上に仮設スタンドを組んだり(通称「1コーナー席」)、オーバルコースの一部を「アリーナエリア」として一部の観客に開放したりしている。2014年以降のMotoGP日本グランプリとSUPER GT最終戦ではオーバルコースのピットレーン部分に「ビクトリースタンド」と呼称した仮設スタンドを設け、より間近で観戦できるようにしたほか、オーバルコース上にはホスピタリティエリアを設けている[9][13]

ロードコース 編集

 
オーバルコースとロードコース

全長4.8 km[14]のテクニカルサーキット。直線と直線をタイトな中低速コーナーで結んだ「ストップ・アンド・ゴー(stop-and-go)」レイアウトを採用している[15]

国際格式のサーキットとして、二輪のロードレース世界選手権 (MotoGP) パシフィックGPが2000年に始まり、2004年より鈴鹿に代わって日本GPの開催地として定着している。国内ではスーパーフォーミュラSUPER GT全日本ロードレース選手権など様々なイベントが行われている。自転車レースではコースを逆走する[16]

コースはオーバルのインフィールド区間からオーバルの外周部に出て、最後にまた内側に戻るレイアウトで、2か所の立体交差(アンダーブリッジ)でオーバルの下を通過する。インフィールド区間は3本の直線および、第1・第2コーナー(45R・45R)、第3・第4コーナー(30R・70R)というふたつの複合ヘアピンからなり、ほぼ平坦である。第5コーナー(30R)を曲がると、最初の立体交差(ファーストアンダーブリッジ)をくぐり、徐々に上り勾配となる。

130RからS字(60R - 70R)とつながる中速セクションを通過し、V字コーナー(30R)で減速。短い直線を経てヘアピンコーナー(30R)で再び減速。ここの脱出速度がコース最長のダウンヒルストレート(760 m)の最高速につながる。高低差30 mを一気に駆け下った先の90°コーナーは、ブレーキング勝負のポイントとなる。2つめの立体交差(セカンドアンダーブリッジ)をくぐり、最終のビクトリーコーナー(30R)を切り返すとホームストレートに戻る。

ショートカット[要曖昧さ回避]路面を利用することにより東コース、西コースのショートコースとしても利用できる。

西コース(1.49 km[14]
 
西コースのレイアウト図
ホームストレートから第1・2コーナーを通過したあと、第3コーナー手前からショートカットを通り、ビクトリーコーナーに合流してホームストレートに戻る[17]
東コース(3.42 km[14]
 
東コースのレイアウト図
ダウンヒルストレートの前半部分に東ピット施設とコントロールラインがある。セカンドアンダーブリッジ通過後、ショートカットを通り、第4コーナー手前に合流する[17]

北ショートコース 編集

全長982 mのショートコース[14]。主にレーシングカートミニバイクのコースとして使用[18]

ダートトラック 編集

2012年5月末で閉鎖された。全長200 m、400 mのダートオーバルコース[19]ダートトラックレースのコースとして使用されていた。現在ではコース中央部に花が植えられている。

マルチコース 編集

20,000平方メートルの多目的コース[14]モタードレースジムカーナライディングスクール他イベントなどで使用。

コースレコード 編集

オーバルコースではジル・ド・フェランが1999年にCARTで記録した0'25.463が最速タイムとなっている。ロードコースにおける主要カテゴリのコースレコードは以下の表の通りである[20]

カテゴリ タイム ドライバー/ライダー 車両 樹立年月日
スーパーフォーミュラ 1'29.757 野尻智紀 ダラーラ・SF19 2021年10月16日
SUPER GT GT500 1'35.194 牧野任祐 ホンダ・NSX-GT 2022年11月5日
GT300 1'44.798 木村偉織 ホンダ・NSX GT3 2022年11月5日
MotoGP 1'43.198 ホルヘ・マルティン ドゥカティ・デスモセディチ 2023年9月30日

なおショートコース等を含めた全コース全クラスのコースレコードについては、公式サイトのリザルトページに記載されている。

パーク 編集

モビリティがテーマの遊園地

アトラクション 編集

  • 巨大ネットの SUMIKA - 日本最大級の屋内ネットアスレチック
  • 森感覚アスレチック DOKIDOKI - 木登り型空中アスレチック
  • 迷宮森殿 ITADAKI - 5階建ての森の立体迷路
  • オフロードアドベンチャーDEKOBOKO - ハイパワーマシンを操って障害物コースを走破
  • モトレーサー - バイクの限界に挑んで最速タイムにチャレンジ
  • ドリフトS - ドリフトマシンでコーナーを攻める
  • 森の教習所 - 交通ルールを学びながらライセンスカードを入手
  • モーターサイクルトレーニング - 3歳からチャレンジできるバイク
  • モトツーリング - 親子で楽しめるツーリング
  • ぶんぶんスクーター - みつばちに乗ってお花畑へ
  • ワイルドレーサー - 森のレースに参戦してバトル
  • おさんぽでんでん - かたつむりに乗って葉っぱの上を散歩
  • ドリームカート - オリジナルレーシングカートでアタック

ハローウッズ 編集

自然と親しむことができる体験施設で、ファミリーキャンプや木工クラフト、 アウトドアクッキングをはじめ、四季を通じて楽しめる自然体験プログラム(予約制のものもあり)が用意されている。東京ドーム9個分の敷地の中に、どんぐり広場、樹冠タワー、水生生物研究所、カフェなどの施設もある。

アトラクション 編集

  • フリーウォーク
  • メガジップライン つばさ
  • 森のジップライン ムササビ
  • 森のファミリーウォークTEKUTEKU
  • どんぐりの森 ガイドウォーク
  • 森のクラフト

モビリティリゾートもてぎホテル 編集

 
モビリティリゾートもてぎホテル

場内にあるホテル。マルシェラン(レストラン)、登谷(里山懐石)、ブルーノート(ラウンジ)、のぞみの湯(大浴場)などがある。宿泊予約は専用のインターネット予約ページ、または電話で受け付けている。

上記以外の場内施設 編集

 
ホンダコレクションホール
(2007年4月撮影)

ホンダを初めとした国内外、2輪、4輪の市販車、競技車を展示・動態保存する「ホンダコレクションホール」や、安全運転トレーニング施設「交通教育センターもてぎ (TECM)」を備えている。場内では無料巡回バスが運行されている。

イベント 編集

主なモータースポーツイベント 編集

 
2008年インディジャパン300マイル

モータースポーツ以外のイベント 編集

交通アクセス・宿泊 編集

宿泊施設としては、上述のホテルツインリンクがあるが、レース開催日は関係者の宿泊が中心となる。茂木町及び近隣の真岡市益子町にもホテルや民宿はあるが数が少なく、MotoGPSUPER GTのビッグレース開催時は、栃木県茨城県の県庁所在地である宇都宮市水戸市のホテルも、一般客の宿泊者が多くなる。

震災の影響 編集

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震東日本大震災)の影響を受け1か月ほど営業休止となった。4月16日に一部施設を除き営業を再開。しかしロードコースや観戦席が破損した為、コースの再舗装や縁石の入れ替えなどの改修工事を施す必要があり、MotoGP(ロードレース世界選手権)やスーパー耐久などのレースイベント開催日程を延期した。

6月15日に改修工事が完了し、7月2日からの全日本ロードレース選手権にてイベントも含めた震災前と同様の営業再開となるが、同年のインディジャパン300については「オーバルコースの地盤に沈下・隆起が発生しており、コースの安全性や改修費用の問題がある」ことを理由にオーバルでの開催を断念し、ロードコースでの開催に変更された[22]。この際、ロードコースのピットはチームごとに1つ割り当てられるヨーロッパ式で、インディカーでは使用できないため、オーバルのピットをロードコースと連結して使用することになった。インディカー・シリーズの開催は同年までとなり、翌2012年以降はインディカーシリーズのカレンダーから除外され、オーバルコースでの自動車レースは開催不能のままとなっている。

同年8月に行われたトライアル世界選手権日本グランプリでは、福島第一原子力発電所事故による放射性物質の飛散状況を理由に、アルベルト・カベスタニー英語版など一部のライダーが来日を拒否し欠場した。また同年10月に行われたMotoGPの日本グランプリでも、バレンティーノ・ロッシホルヘ・ロレンソなどの有力ライダーが、一時同様の理由でレース参戦をボイコットする意向を表明した[23]。ただし最終的にボイコットの意向は撤回された。

周辺施設 編集

関連項目 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 未舗装も含めれば多摩川スピードウェイが国内初となる

出典 編集

  1. ^ a b Racing on 249.
  2. ^ a b 人と自然とモビリティの共生をテーマに向き合い続けて25年 2022年3月1日、「モビリティリゾートもてぎ」として新たなステージへ”. ホンダモビリティランド株式会社. 2022年3月1日閲覧。
  3. ^ 高桑元 1996, p. 14.
  4. ^ a b 高桑元 1996, p. 11.
  5. ^ 「ホンダ創立50周年記念: ありがとうフェスタinもてぎ」『オートスポーツ』第35巻第21号、三栄書房、1998年11月、42-49頁。 
  6. ^ 会社沿革|企業情報|ホンダモビリティランド株式会社”. www.honda-ml.co.jp. 2022年10月5日閲覧。
  7. ^ オーバルバトルとは?”. 株式会社モビリティランド. 2010年12月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年10月17日閲覧。
  8. ^ 「もてぎスーパー耐久 オーバルバトル」を11月27日開催”. Car Watch. 2017年7月17日閲覧。
  9. ^ a b “もてぎレースの魅力拡大”. 読売新聞. (2015年2月4日). http://www.yomiuri.co.jp/local/tochigi/feature/CO004124/20150204-OYTAT50000.html 2016年10月17日閲覧。 
  10. ^ 『【全国編 北関東②】 ツインリンクもてぎにて』”. 新潟発 土木史見聞録. 2022年9月24日閲覧。
  11. ^ “ツインリンクもてぎで琢磨が走った!オーバルコースで凱旋ラン/ホンダサンクスデー”. auto sports. (2017年12月3日). http://www.as-web.jp/overseas/186252?all 2018年10月25日閲覧。 
  12. ^ 【ブログ】まるで初夏のもてぎで、オーバルコースの駐車場から徒歩チャレンジ/スーパーGT現地観戦レポート(前編)”. autosport web (2020年11月12日). 2021年4月12日閲覧。
  13. ^ もてぎビクトリースタンドは必見! SGTなら迫力増!?”. AUTO SPORT web(株式会社サンズ) (2014-1015). 2016年10月17日閲覧。
  14. ^ a b c d e コースガイド|モビリティリゾートもてぎ”. 2022年6月4日閲覧。
  15. ^ 技術情報|サーキット情報|ツインリンクもてぎ”. 株式会社ホンダ・レーシング. 2016年10月24日閲覧。
  16. ^ 第16回 もてぎ7時間エンデューロ 秋 2019”. ツインリンクもてぎ (2019年). 2021年4月12日閲覧。
  17. ^ a b ロードコース(PDF) ツインリンクもてぎ(2021年4月12日閲覧)
  18. ^ Racing on 249, p. 65.
  19. ^ Dirt Track” (PDF). 2013年3月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月4日閲覧。
  20. ^ コースレコード”. ホンダモビリティランド株式会社. 2022年9月23日閲覧。
  21. ^ 予約制直通シャトルバス「もてぎGPエクスプレス」 モビリティリゾートもてぎ 2023年8月30日閲覧
  22. ^ インディジャパンの開催コース変更について - モビリティランド・2011年6月3日
  23. ^ ロッシ10月日本GP来日ボイコットか - 日刊スポーツ・2011年6月5日

参考文献 編集

  • 高桑元「新世代の複合サーキット (ツインリンク)」『自動車技術』第50巻第6号、自動車技術会、1996年、9-15頁。 
  • 「ツインリンクもてぎ 完璧スーパーガイド」『Racing on』第12巻第16号、三栄書房、1997年8月、57-72頁。 

外部リンク 編集