ティグレ州(アムハラ語: ትግራይ ክልል)は、エチオピア北部の州[3]。日本外務省ではティグライ州と表記される[4]。ティグレ州はTigray Region(アムハラ語: ትግራይ ክልል)の誤訳である。ティグレ人(Tigre people)は主にエリトリアやスーダンに住むティグレ語(Tigre)を話す民族であり、エチオピアやエリトリアに住むティグライ語(Tigringa)を話すティグライ人(Tigrayans)とは異なる[5]。 面積は8万4722km²で、2015年の人口は505万6000人。 人口密度は59.7人/km²。 州都はメックエル(メケレとも[6])。

ティグレ州

ትግራይ ክልል
アクスム
ティグレ州の旗
ティグレ州の公式印章
印章
国内におけるティグレ州の位置
国内におけるティグレ州の位置
エチオピアの旗 エチオピア
州都 メケレ
面積
 • 合計 41,409.95km2
  [1]
人口
(2015)
 • 合計 6,960,003[2]
ISO 3166コード ET-TI
シミエン山地

地理編集

歴史編集

アクスム王国の故地である。

1995年民族ごとに州が再編された際、旧ティグライ州をほぼ引き継ぐティグライ人を中心とする地域で作られた。

1998年、州内のバドメの街の帰属を巡ってエチオピア・エリトリア国境紛争が起きた。2000年に停戦が成立し、国際連合エチオピア・エリトリア派遣団(UNMEE)の本部が州都メックエルに設置された。2008年、UNMEEは活動を終了した。

2020年8月、ティグレ州で予定されていた総選挙が新型コロナウイルスの感染拡大を理由に延期された。しかし州議会は選挙を9月9日に強行し[7]、エチオピア政府との間の軋轢が増した(2020年ティグレ州議会選挙英語版)。同年11月、政府側は州議会与党のティグレ人民解放戦線が政府軍の基地を攻撃したとして開戦を宣言[8]。空爆を含めた攻撃が開始され、多数の市民が犠牲になった[9]ティグレ戦争英語版)。また政府は同州に6か月間の非常事態宣言を発令し、インターネットや電話など通信インフラの制限が実施された[4]

戦争が激化すると住民が国境を越えて隣国スーダンガダーレフ州カッサラ州に流出、2020年11月15日までに2万人を超える住民が難民化した[10]

行政区画編集

6つの県と1つの特別県からなる。県の名称は、州中心部から見た方角を示している。

領土問題編集

エリトリア編集

北を接するエリトリアとは、バドメ周辺の国境未画定地域を巡る争いが行なわれていた。

アムハラ州編集

南を接するアムハラ州とは、1995年の州再編を発端とした2ヶ所(ミイラバウィ県、ラヤ地域)の領土問題を抱える[11]

ミイラバウィ県はそれまでアムハラ人が多く住むベゲムデル州英語版に属していたが、1995年にベゲムデル州がアムハラ州へ改められた際に旧ベゲムデル州北部(現在のミイラバウィ県)のWelkaitTsegedeといった地域はティグレ州へ移管された。この決定を現地のアムハラ人は非難し、アムハラ州への帰属を要求する活動を始めた。

ラヤ地域はティグレとアムハラに挟まれた地域で、ラヤ・アゼボ郡ラヤ・コボ郡からなる。1995年以前はアゼボ郡が旧ティグレ州、コボ郡はアムハラ人が多く住む旧ウォロ州英語版に属していたが、1995年の州再編でアゼボ郡は全域が新ティグレ州に、コボ郡はティグレとアムハラの両州で分割することになった。旧コボ郡のうち、ティグレ州に帰属した地域は新アゼボ郡、アムハラ州に帰属した地域は新コボ郡となった。この旧コボ郡の分割によって州境は1995年以前よりも南に移動し、アムハラ人は領土を削られた格好になった。ティグレ州のラヤ地域では州政府による強制同化政策が行われたとされ、住民はアムハラ州への帰属を要求するようになった[12][13]

この2地域はアムハラ人民族主義者によって「ティグレ人が不法に併合した地域」として盛んに宣伝された。そして2020年11月にティグレ戦争が始まると、アムハラ州の治安部隊はティグレ州に侵入しこれらの地域を支配下に置いた。占領地ではアムハラ州から来た公務員や治安維持部隊による統治が行われており、ティグレ州旗はアムハラ人の民族主義を表した旗に取り替えられるなど、併合の既成事実化を進めている[14][15]。一方で占領地ではティグレ人住民に対して迫害が行なわれており、2021年3月10日にアメリカ合衆国国務長官アントニー・ブリンケンはこれを「民族浄化」と呼びアムハラ州を非難した[16]。なおエチオピア政府はこの事実上の併合に対して、正式の発表はまだ行っていない[17]

住民編集

人口推移編集

民族編集

宗教編集

世界遺産編集

出身者編集

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ 2011 National Statistics Archived 2013年3月30日, at the Wayback Machine.
  2. ^ Population and Housing Census - 2007”. FDRE Population Census Commission. 2016年9月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年10月6日閲覧。
  3. ^ 資源開発環境調査・エチオピア連邦民主共和国-独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構,{{{1}}} (PDF) ,P6,2011-02-08閲覧。
  4. ^ a b エチオピアにおける最近の情勢について(外務報道官談話)”. 外務省 (2020年11月6日). 2020年11月14日閲覧。
  5. ^ Skutsch, Carl (2013-11-07) (英語). Encyclopedia of the World's Minorities. Routledge. ISBN 978-1-135-19388-1. https://books.google.com/books?id=yXYKAgAAQBAJ&q=tigre+population+sudan&pg=PA1200 
  6. ^ エチオピア:北部ティグライ州における軍事衝突の発生に伴う注意喚起”. 外務省 (2020年11月4日). 2020年11月14日閲覧。
  7. ^ Ethiopia's Tigray region defies PM Abiy with 'illegal' election”. France 24 (2020年9月9日). 2020年11月14日閲覧。
  8. ^ エチオピア、戦闘で数百人死亡=関係筋”. ロイター (2020年11月10日). 2020年11月13日閲覧。
  9. ^ エチオピア北部の紛争地で多数の市民虐殺か アムネスティ”. CNN (2020年11月13日). 2020年11月13日閲覧。
  10. ^ エチオピア人約2.5万人、戦闘逃れスーダンに流入”. AFP (2020年11月16日). 2020年11月22日閲覧。
  11. ^ Tigray’s border conflicts explained”. Passport Party (2020年11月11日). 2021年3月31日閲覧。
  12. ^ The Rayan people want an end to rule by Tigray”. Ethiopia Insight (2019年2月22日). 2021年3月31日閲覧。
  13. ^ TPLF Accused of Engaging in Forced Assimilation of Raya People”. Ezega News (2020年9月4日). 2021年3月31日閲覧。
  14. ^ Ethiopia's Tigray conflict revives bitter disputes over land”. フランス24 (2020年12月30日). 2021年3月31日閲覧。
  15. ^ In Pictures: Inside Humera, a town scarred by Ethiopia’s war”. アルジャジーラ (2020年11月23日). 2021年3月31日閲覧。
  16. ^ Blinken: Acts of 'ethnic cleansing' committed in Western Tigray”. CNN (2021年3月10日). 2021年3月31日閲覧。
  17. ^ Ethiopia’s Amhara region rejects charge of ‘ethnic cleansing’ in Tigray”. Arab News (2021年3月12日). 2021年3月31日閲覧。
  18. ^ = City Population(閲覧日:2016年9月4日)
  19. ^ Abeba Aregawi: a new champion in new colours” (2013年8月15日). 2013年12月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月12日閲覧。

関連項目編集