テレビ朝日アーク放送センター

テイクスタジオから転送)

テレビ朝日アーク放送センター(テレビあさひアークほうそうセンター)は、株式会社テレビ朝日が運営しているオフィス兼テレビスタジオである。東京都港区赤坂六本木にまたがる複合施設「アークヒルズ」内に立地している。

テレビ朝日アーク放送センター
TV Asahi Ark Broadcasting Center
テレビ朝日アーク放送センターの位置(東京都区部内)
テレビ朝日アーク放送センター
テレビ朝日アーク放送センターの位置(東京都内)
テレビ朝日アーク放送センター
テレビ朝日アーク放送センターの位置(日本内)
テレビ朝日アーク放送センター
情報
用途 テレビスタジオ
設計者 森ビル一級建築事務所・日建設計・入江三宅設計事務所[1]
施工 清水建設[1]
建築主 全国朝日放送株式会社
事業主体 株式会社テレビ朝日
管理運営 株式会社テレビ朝日
構造形式 鉄骨鉄筋コンクリート造 一部鉄筋コンクリート造[1]
敷地面積 10,830.51 m²
※(サントリーホールと共有)
建築面積 412.89 m²
延床面積 13,604.09 m²
階数 地上2階地下4階[1]
竣工 1985年昭和60年)9月
所在地 106-0032
東京都港区六本木一丁目1-1
座標 北緯35度39分59.5秒 東経139度44分26.1秒 / 北緯35.666528度 東経139.740583度 / 35.666528; 139.740583 (テレビ朝日アーク放送センター)
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概要 編集

 
アークカラヤン広場の地下がテレビ朝日アーク放送センター

六本木に約3ヘクタールに及ぶ土地を所有していたテレビ朝日は、1970年代末から社屋を建て替える構想を描いていた[2]。しかし、同地は住居地域に指定され六本木商店街とも近接し、テレビ朝日が望むような近代的なビルを建設するには、建ぺい率の問題から、用途地域指定を住居地域から商業地域へと変更することが必要で地権者との話し合いが必要だった[2]。また敷地南側の住宅地は窪地で、曲がりくねった急勾配の狭い道路は、消防車も入れず、消火には表通りからホースをひっぱるか、テレビ朝日敷地内から放水するしかない[3]。防災上、極めて危険な場所だった[3]

テレビ朝日は新社屋建設に関して、まず、港区に相談すると区は防災面で抱える問題点を含め周辺一帯の再開発を示唆した[2]。しかし、関係者と協議して土地の最も有効な方法を見つけ出し、建て替えに着手するには相当な時間が必要とされた。他方、マスターおよび一部のテレビスタジオに関しては、すぐに更新が迫られている時間的制約があった[2]

そうした中、朝日新聞時代に有楽町から築地への東京本社移転をまとめた田代喜久雄テレビ朝日副社長(のち社長)と、アークヒルズの再開発を進める森ビルとの間で接触が持たれ、新社屋建設について森ビルが協力を約束。アークヒルズの設計を急遽変更してもらい、六本木六丁目の再開発期間中の移転先として、アークヒルズ内にテレビスタジオを組み込むことが決まった[4]。スタジオに必要な面積をどうやって確保するかが課題となったが、スタジオ棟の約三分の二をアークヒルズのカラヤン広場の下に組み込み、地下にテレビスタジオを設けるという最適解を編み出した[5]。このテレビスタジオの土地建物を、六本木六丁目のテレビ朝日の敷地の一部と交換して、テレビ朝日と森ビルは一緒に「六本木六丁目地区第一種市街地再開発事業」(六本木ヒルズ)に進むことになった[6][7]

1985年9月28日に完成した「テレビ朝日アーク放送センター」は、地上2階地下4階で構成され、約600㎡のスタジオ(Aスタジオ)、約400㎡のスタジオが2つ(B・Cスタジオ)、さらに約250㎡のニューススタジオ(Nスタジオ)が配された[8]。ニューススタジオは、実際にニュースを制作している報道局との仕切りをなくし、報道部、政経部、社会部、外報部で取り囲む形とした[8]。また、壁面の一部をガラス張りにすることで、外部からもスタジオが見えるようにし、一般に開かれた”新しい報道”を目指した[8][注 1]

スタジオの稼動は9月28日からとなり、当日は『ANNニュースセブン』がアーク放送センターからの最初の番組となった[9]。アーク放送センターは主に報道と情報系生番組の制作で使用し、その他のバラエティ・音楽系などの番組は引き続き六本木センターを使用した。翌86年5月26日には、前月に竣工したアーク森ビルに本社機能も移転し、テレビ朝日本社ビルが完成までのおよそ17年間、本社機能を担った。

カラヤン広場は、社屋移転前まで『やじうまワイド』や『スーパーJチャンネル』など朝や夕方のニュース番組で天気予報などのロケ地として使われた。移転後の今日も『テレビ千鳥』などバラエティ番組のオープニング収録で広場が使われている。

再整備 編集

2003年(平成15年)9月29日にテレビ朝日が竣工した本社ビルに移転後、アーク放送センターは再整備工事に入り[注 2]、04年8月に子会社のテレビ朝日映像テイクシステムズが本社機能を移した。左上の看板部分は「10テレビ朝日」から「/tv asahi」・「VIVIA テレビ朝日映像」・「テイクシステムズ」に変更した。この際に1階の報道局に面していたニューススタジオはスタジオ機能を廃する形で閉鎖され、上記2社の事務所フロアに改装・供用されている。残った3つのスタジオは近代化工事を施した上でテイクシステムズ管理下の貸スタジオ(愛称「テイクスタジオARK」)として再オープンさせた。この時期は、テレビ朝日(系)以外の番組収録にも使用された。また、収録用スタジオへと変更される際に、テレビ朝日の現本社にある主調整室との接続を外しており、同スタジオの設備のみで生放送を行うことはできなくなっているが、スタジオ運用の都合上、まれに単発番組の生放送を行う場合もあることや、緊急時のバックアップを兼ねて、中継車を用意すれば現本社の主調整室と接続することが可能になっている[10]

2011年(平成23年)3月にテイクシステムズがテレビ朝日の完全子会社とされたとき、3つのスタジオは再びテレビ朝日の本社直轄に移行し、貸スタジオとしての運用は終了した[注 3]。現在は同局のバラエティ番組ドラマ番組の収録に特化し、事実上の「本社別館」として運用されている。これはテレビ朝日の現社屋にある汎用スタジオが実質3つしかなく、いずれも生放送の運用がありドラマ撮影に適したスタジオがないことも関係している[11]。これに伴い、神宮前の:BSビル(原宿コロンブスビル)にてBS朝日朝日ニュースター向けに使用していたスタジオは、13年秋までに閉鎖。また12月にテイクシステムズは、開局55周年記念プロジェクトの一環として建設されたEXタワーに移転し、代わって:BSビルから日本ケーブルテレビジョン(JCTV)が本社機能を移した[注 4]

2021年7月、ネット配信にも対応できるバーチャルスタジオ「ARK Streaming Studio」を開設。テレビ朝日映像が運営する。

スタジオ詳細 編集

Aスタジオ 編集

HD/SD対応・190坪

現在Aスタジオを使用する主な番組 編集

そのほかドラマ収録で活用[12]

以前Aスタジオを使用していた主な番組 編集

Bスタジオ 編集

HD/SD対応・120坪

テレビ朝日の歴代昼番組で使用。

現在Bスタジオを使用する主な番組 編集

以前Bスタジオを使用していた主な番組 編集

Cスタジオ 編集

HD/SD対応・125坪

現在Cスタジオを使用する主な番組 編集

以前Cスタジオを使用していた主な番組 編集

A・B・Cスタジオ共用番組 編集

その他 編集

以上の番組はアーク放送センターで収録されているが、A・B・Cスタジオのどれかを使用しているかは不明。

脚注 編集

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  1. ^ ただし、 1990年代中頃から六本木ヒルズへの移転直前の時期には既にガラス部をセットなどを建て込んで塞いでいたため、外部からスタジオを観る事は不可能になっていた。
  2. ^ ただし、2004年2月8日までアナログ放送に限っては引き続きアーク放送センターの主調整室から送出を続けていた。
  3. ^ 東京メディアシティ内にあるTBSNHK砧スタジオも、アーク放送センターとほぼ同様の経緯を辿っている
  4. ^ :BSビルに入居していたJCTVやBS朝日などテレビ朝日グループ各社は本社機能を六本木地区に移転し、同ビルは繊維専門商社・田村駒に売却。2014年11月28日より「田村駒東京本社ビル」に改称した

出典 編集

  1. ^ a b c d 「V テレビ朝日放送センター」『BE建築設備』第37巻第9号、建築設備綜合協会、1986年9月1日、54 - 56頁、NDLJP:3223879/38 
  2. ^ a b c d 『チャレンジの軌跡 new air, on air』p.219
  3. ^ a b 『ヒルズ 挑戦する都市』p.184
  4. ^ 『ヒルズ 挑戦する都市』p.184 - 185
  5. ^ 『ヒルズ 挑戦する都市』p.187 - 188
  6. ^ 『ヒルズ 挑戦する都市』p.185
  7. ^ 六本木六丁目地区第一種市街地再開発事業(完了)”. 港区 (2015年8月12日). 2019年11月15日閲覧。
  8. ^ a b c 『チャレンジの軌跡 new air, on air』p.225
  9. ^ 『朝日新聞』1985年9月28日夕刊、4版、14面。
  10. ^ テレビ朝日が3日間の“完全封鎖”でも放送を継続できる秘密とは? - アサ芸プラス(徳間書店)、2020年4月17日配信、2021年7月6日閲覧。
  11. ^ 『放送技術』2004年4月号及び5月号、2012年6月号などより。
  12. ^ 事例紹介』(プレスリリース)ソニービジネスソリューションhttp://www.sony.jp/products/Professional/BVM/sample/tv_asahi.html2013年1月12日閲覧 

参考文献 編集

  • 森稔『ヒルズ 挑戦する都市』(朝日新書朝日新聞出版、2009年。ISBN 4022733004
  • テレビ朝日社史編纂委員会編『チャレンジの軌跡 new air, on air』テレビ朝日、2010年。
  • 『放送技術』2012年6月号ほか

関連項目 編集

同所と同様の運用形態を取るスタジオ