デイビッド・パターソン (計算機科学者)

研究者

デイビッド・アンドリュー・パターソン(David Andrew Patterson、1947年11月16日 - )は、アメリカ合衆国計算機科学者である。1976年からカリフォルニア大学バークレー校(UCB)の計算機科学教授を務めていた。2016年、パターソンは40年近く勤めたUCBを退職し、Googleのディスティングイッシュドエンジニアに就任することを発表した[2][3]。現在は、RISC-V財団の理事会の副委員長[4]とUCBの名誉教授も務めている。

デイビッド・パターソン
生誕 (1947-11-16) 1947年11月16日(77歳)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 イリノイ州エバーグリーンパーク
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
研究機関 カリフォルニア大学バークレー校
出身校 カリフォルニア大学ロサンゼルス校
博士論文 Verification of Microprograms[1] (1976年)
博士課程
指導教員
David F. Martin
Gerald Estrin
博士課程
指導学生
Garth A. Gibson
David Ungar
主な業績 RISC
RAID
Network of Workstations
主な受賞歴 チューリング賞 (2017)
チャールズ・スターク・ドレイパー賞 (2022)
プロジェクト:人物伝
テンプレートを表示

パターソンはRISCプロセッサの設計において先駆的な研究で有名である。RISCという用語を作り、バークレーRISC英語版プロジェクトを指揮した[5]。2018年現在、新しいチップの99%はRISCアーキテクチャを採用している[6][7]。また、Randy Katz英語版と共同でRAIDストレージを開発したことでも有名である[8]

コンピューター・アーキテクチャに関する著書(ジョン・ヘネシーとの共著である)は、コンピュータ科学の教育で広く読まれている。パターソンは、ヘネシーとともに、RISCを共同で開発した業績により、2017年のチューリング賞を受賞した。

経歴

編集

イリノイ州エバーグリーンパーク英語版出身のデイビッド・パターソンは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で学士号(1969年)、修士号(1970年)、Ph.D.(1976年)を修得した(指導教授はDavid F. MartinとGerald_Estrin英語版である)[9]

研究

編集

ヘネシーとともにRISC (Reduced Instruction Set Computer) の有効性を定量的に[10]示し、RISCをマイクロプロセッサのアーキテクチャにおける一大潮流とした。RISCという語を提案したのも彼であるとされる[11]。1980年から、Carlo H. Sequin英語版とともにバークレーRISC英語版プロジェクトを指揮し、レジスタ・ウィンドウと呼ばれる手法を導入した。バークレーRISCは、SPARCプロセッサなどの設計に影響を与えた。また、Randy Katz英語版Garth Gibson英語版との共同研究で、RAIDを開発した[8][12]。ネットワークで接続されたワークステーション群でコンピュータ・クラスターを構成するNetwork of Workstations(NOW)も開発している。

過去のポジション

編集

UCB計算機科学部門の部門長とComputing Research Association英語版の長を務めた後、2003年から2005年までアメリカ大統領の情報技術諮問委員会の委員も務め、2004年から2006年までは、ACMの会長を務めた[13]

2011年まで行われた RAD Lab(Reliable Adaptive Distributed systems)プロジェクト[14]、2010年まで行われた RAMP(Research Accelerator for Multiple Processors)プロジェクト[15]に関与した。2013年には、Par Lab(Parallel Computing Laboratory)[16]とAMP Lab(Algorithms, Machines, and People Laboratory)[17]に所属して研究を行っていた。

受賞歴

編集

ACMやIEEEから数々の賞を受賞しており、IEEEフェロー、全米技術アカデミー会員にも選ばれた。2005年、C&C賞をジョン・ヘネシーと共に受賞。シリコンバレー工学の殿堂入りも果たしている。2004年、C&C賞を受賞。2006年、アメリカ芸術科学アカデミー全米科学アカデミーの会員にも選出され、Computing Research Association から Distinguished Service Award を授与された。

2007年東京工科大学カーネギーメロン大学の推薦及び選考により、片柳コンピュータ科学賞片柳優秀研究賞を授与された。また、同年コンピュータ歴史博物館およびアメリカ科学振興協会のフェローに選ばれた。

2008年、ACM Distinguished Service Award[18]とACM-IEEE Eckert-Mauchly Award[19] を受賞し、その後も様々な賞を受賞している。

2018年3月21日ジョン・ヘネシーとともに、RISCの開発により、2017年度のACMチューリング賞を受賞した[20]。受賞理由は、「マイクロプロセッサ業界に永続的な影響を与えるコンピュータアーキテクチャの設計と評価への体系的で定量的なアプローチ("a systematic, quantitative approach to the design and evaluation of computer architectures with enduring impact on the microprocessor industry")に対する先駆的な業績」である[21]。2022年チャールズ・スターク・ドレイパー賞を受賞した[22]

有名なPh.D.の学生

編集

パターソンの下で博士号を取得した有名な人物には、以下のような人々がいる[23]

重要な著作

編集

書籍

編集

パターソンは7冊の共著を執筆しており、コンピューター・アーキテクチャに関するJohn L. Hennessyとの共著である、Computer Architecture: A Quantitative Approach(6つの版があり、最新版はISBN 0128119055である)とComputer Organization and Design RISC-V Edition: the Hardware/Software Interface(5つの版があり、最新版はISBN 978-0128122761である)が特に有名である。これらの本は、1990年以来、大学院および学部の授業で広く教科書として使用されている[要出典]。最新の本はアンドリュー・ウォーターマン英語版とのオープン・アーキテクチャー英語版に関する共著で、RISC-V: The RISC-V Reader: An Open Architecture Atlas (1st Edition)ISBN 978-0999249109)である。

  • パターソン、ジョン・ヘネシーComputer Architecture: A Quantitative Approach ISBN 0-12-370490-1
    • 富田眞治 他訳、『コンピュータ・アーキテクチャ』日経BP社、1992年。ISBN 4-8222-7152-8
  • パターソン、ジョン・ヘネシー、Computer Organization and Design: the Hardware/Software Interface ISBN 1-55860-604-1
    • 成田光彰 訳、『コンピュータの構成と設計 第2版(上)』日経BP社、1999年。ISBN 4-8222-8056-X
    • 成田光彰 訳、『コンピュータの構成と設計 第2版(下)』日経BP社、1999年。ISBN 4-8222-8057-8

論文

編集

脚注

編集
  1. ^ デイビッド・パターソン - Mathematics Genealogy Project
  2. ^ People of ACM - David Patterson”. www.acm.org. 2016年1月20日閲覧。
  3. ^ https://research.google.com/pubs/105290.html
  4. ^ Board of Directors - RISC-V Foundation”. 2017年8月3日閲覧。
  5. ^ Milestones in computer science and information technology by Edwin D. Reilly 2003 ISBN 1-57356-521-0 page 50
  6. ^ “Computer Chip Visionaries Win Turing Award”. The New York Times. (2018年3月21日). https://www.nytimes.com/2018/03/21/technology/computer-chips-turing-award.html 
  7. ^ John Hennessy and David Patterson will receive the 2017 ACM A.M. Turing Award” (英語). www.acm.org. 2018年3月21日閲覧。
  8. ^ a b David Patterson: Biography”. Computer History Museum (2007年). 2018年3月24日閲覧。
  9. ^ Patterson, D. A., "Verification of Microprograms," Technical Report No. UCLA-ENG-7707, UCLA Computer Science Department, January 1977.
  10. ^ 「定量的に」ということは、共著書『Computer Architecture: A Quantitative Approach』のサブタイトルにあらわれている。
  11. ^ Milestones in computer science and information technology by Edwin D. Reilly 2003 ISBN 1-57356-521-0 page 50
  12. ^ Linda Null; Julia Lobur (14 February 2014). The Essentials of Computer Organization and Architecture. Jones & Bartlett Learning. p. 512. ISBN 978-1-284-15077-3. https://books.google.com/books?id=GKgxDwAAQBAJ&pg=PT512 
  13. ^ CRA Service Awards 2006”. archive.cra.org. 2015年6月10日閲覧。
  14. ^ RAD Lab
  15. ^ RAMP: Research Accelerator for Multiple Processors
  16. ^ Par Lab: Parallel Computing Laboratory
  17. ^ AMP Lab: Algorithms, Machines, and People Laboratory
  18. ^ ACM Distinguished Service Award
  19. ^ ACM-IEEE Eckert-Mauchly Award
  20. ^ “Computer Chip Visionaries Win Turing Award”. The New York Times. (2018年3月21日). https://www.nytimes.com/2018/03/21/technology/computer-chips-turing-award.html 
  21. ^ John Hennessy and David Patterson will receive the 2017 ACM A.M. Turing Award” (英語). www.acm.org. 2018年3月21日閲覧。
  22. ^ David A. Patterson DRAPER PRIZE
  23. ^ David Patterson's PhD Students”. 2017年8月3日閲覧。

参考文献

編集

外部リンク

編集