デ・ハビランド シービクセン
シービクセン
デ・ハビランド シービクセン (de Havilland Sea Vixen) は、イギリスの航空機メーカー、デ・ハビランド社が開発したイギリス海軍の全天候艦上戦闘機である。デ・ハビランド社における番号はDH.110。
概要編集
元々、デ・ハビランドが第二次世界大戦終了直後に開発された戦闘機バンパイアの発展型であるベノムの主翼形状を直線翼から後退翼に変更し、全天候能力を付与した機体として空軍の発注で開発が開始された。
機体の特徴として、胴体が二分されている双胴型であり、操縦席は機体の中心軸から、やや左にずれた位置に据えられていた。これは、全天候能力の要であるレーダーを操作するレーダー手の座席空間を確保するための配置であった。
この機体は「雌狐」を意味するビクセンと命名され1951年に初飛行し、空軍が配備することを決定した。ところが翌年、ファーンボロー国際航空ショーでデモ飛行中のビクセンが空中分解を起こし、墜落。観覧していた民間人を含む29人の犠牲者を出す大惨事(ファーンボロー航空ショー墜落事故)を引き起こし、空軍は契約をキャンセル、ビクセンの不採用を決定し、代わりにグロスター社が開発したジャベリンを採用した。
しかし、海軍がビクセンに興味を示し、航空母艦で使用する艦上戦闘機として導入することに決めた。当初は同じ海軍機である艦上攻撃機のバッカニアと同様に本機も海賊を表すパイレートにする予定だったが、空軍に採用される予定だったビクセンに則りシービクセンと命名され、艦上で運用するための改良を加えられた[1]。
派生型編集
- ビクセン:陸上機型、空軍に発注されるもキャンセルされる。
- シービクセン FAW.1:52機配備された初期型。他に生産された機体はFAW.2に改修。
- シービクセン FAW.2:92機配備。部品を改修して8.9Gまで耐えられるようにした型式。レッドトップAAMの運用能力を付与。
- シービクセン D3:4機のFAW.2を改造した無人標的機型。
空母イーグルに着艦するシービクセン
仕様編集
現存する機体編集
少数が生産されたのみであるが、原形を保った機体が多く残されている。太字は状態が比較的良いもの。
- FAW.1 XJ481 - 艦隊航空兵器博物館所蔵。主翼が折り畳まれた状態で保存されている。
- FAW.1 XJ482 - ノーフォーク並びにサフォーク航空博物館。主翼が展開されており状態も良好。
- FAW.2 XJ490 - クイーンズランド航空博物館。主翼は当初展張されていたが、現在は折り畳まれた状態である。
- FAW.2 XJ494 - ブランティングソープ飛行場。主翼は当初展張されていたが、現在は折り畳まれた状態である。
- FAW.2 XJ560 - ニューアーク航空博物館。主翼が展張されており塗装もきちんと施されている。
- FAW.2 XJ565 - デ・ハビランド・エアクラフト・ヘリテージ・センター。主翼が展張されているものの一部塗装が剥げ落ちている。
- FAW.2 XJ571 - ハレット財団博物館。主翼が折り畳まれた状態であり周囲には座席や整備員を模したマネキンが配置されている。
- FAW.2 XJ580 - タングミア航空博物館。主翼が展張されており兵装類も再現するなど状態は非常によい。
- FAW.2 XN685 - ミッドランド航空博物館。主翼が展張されておりパイロンも再現するなど状態は非常によい。
- FAW.2 XP919 - ブライス・バレー・アビエーション・コレクション。全体的に腐食が進んでいて主翼も畳まれており状態は悪い。
- FAW.2 XS576 - 帝国戦争博物館。主翼は折り畳まれおり主脚は縮んでいる。
- FAW.2 XS590 - 艦隊航空兵器博物館。主翼は折り畳まれているが塗装は良い。
- TT.2 XS587 - ガトウィック航空博物館。標的曳航機型に改造されていたものであるが主翼は展張されている。
- D.3 XP924 - フライ・ネイビー・ヘリテージ・トラスト。無人標的機型として改造された機体だが再度戦闘機型に戻された。
脚注編集
- ^ 『世界の傑作機 No.177 デ・ハビランド シービクセン』文林堂、2017年