Nuts

かつての日本の企業
トップボーイから転送)

株式会社Nuts(ナッツ)は、かつて医療関連事業などを展開していた日本の企業。

株式会社Nuts
Nuts Inc.
種類 株式会社
市場情報
東証JQ 7612
1999年9月 - 2020年10月3日
本社所在地 日本の旗 日本
106-0044
東京都港区東麻布3-3-1
アイザック東麻布4階
設立 1977年8月25日
(三高産業株式会社)[1][2]
業種 卸売業
法人番号 6010401050975
事業内容 コンテンツ事業、アミューズメント事業、アライアンス事業、医療関連事業
代表者 破産管財人 澤田和也[1][2][3]
資本金 54億9402万1234円[1][2][3]
発行済株式総数 85,762,020株[3]
売上高 連結:1億2128万8000円
単体:1億2128万8000円
(2019年3月末日現在)[3]
経常利益 連結:△9億3718万1000万円
単体:△9億2551万5000円
(2019年3月末日現在)[3]
純利益 連結:△10億559万7000万円
単体:△10億64万8000円
(2019年3月末日現在)[3]
純資産 連結:8億5502万2000円
単体:8億6400万円
(2019年3月末日現在)[3]
総資産 連結:13億8665万5000円
単体:13億8617万3000円
(2019年3月末日現在)[3]
従業員数 6人
(2020年9月16日現在)[2][3]
決算期 3月31日
主要株主 長谷川隆志 5.99%
(2020年3月31日現在)[3]
主要子会社 株式会社JBプランニング
株式会社ヴィデビムス
特記事項:2020年9月16日破産手続開始決定。2023年4月13日法人格消滅。
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概要 編集

1977年8月に三高産業株式会社として設立[2][4]。当初は建築、包装資材などに利用される塩化ビニール製品の販売を手掛けていたが、1980年代からビデオソフト・レコードのレンタル事業の他にも[1][2]ファミコンブームにより「トップボーイ」の屋号でゲームソフト販売店事業にも進出[4][5]。ゲームソフト販売店事業に関しては、最盛期には150店舗まで拡大した[1][2][4]。1998年7月に商号を株式会社トップボーイへ変更した[1][2][4]。1999年9月には株式の店頭公開(現:ジャスダック)を果たした[4]。家庭用ゲーム機市場の成長と共に業績を伸ばし、2002年3月期には、約131億8200万円の売り上げがあった[2][5]

2003年6月に商号を株式会社コモンウェルス・エンターテインメントへ再度変更[2]。しかし、株式の店頭公開後はゲームソフト販売店市場自体が翳りを見せ、コモンウェルス・エンターテインメントにおけるゲームソフト販売店事業の売上も、2003年3月期の約73億円から、2005年3月期は約27億円と大幅に落ち込んだ。このためコモンウェルス・エンターテインメントは、2005年8月にゲームソフト販売店事業から撤退した[5][6]。新規事業としてインターネットカフェの運営やパチンコパチスロ関連事業などを手掛けるデジタルコンテンツ事業部門とキャラクター事業部門を立ち上げた[1][2][4]。以降はパチンコホールからゲームセンターへの転換に伴うクレーンゲームの供給や、パチスロの七号転用機改造なども行っていたが、各事業とも不振が続き[4]、2016年3月期以降は4期連続で最終赤字を計上した[1][2]。さらにはゴーイングコンサーン注記銘柄の常連となった他[4]債務超過を回避するため、増資を繰り返した他、株主や経営陣も変遷を繰り返した[4]

2016年9月に商号を株式会社Nutsへ再度変更[2][4]。2017年から医療施設向けの運営コンサルティング事業に業態転換したが、業績回復には至らなかった[1][4]。2019年3月期の連結売上高も1億2128万円と、ピーク時の70分の1にまで落ち込んだ他、販売管理費も10億円を超え、多額の損失を被ることになった[4]。しかし2019年6月以降、会員制医療施設の会員権販売の売上高が伸び、計5億6300万円に達したことなど好調な業績を公表。後に、この情報は経営陣が新株予約権の行使促進や株価をつり上げる目的で行った虚偽の発表であったことが明らかにされており、2021年6月23日、東京地検特捜部は実質経営者ら4人を金融商品取引法違反(偽計)の疑いで逮捕している[7]

Nutsは、2020年2月1日にアミューズメント事業をメイクイーストへ譲渡した[8]。メイクイーストへ事業譲渡後も、日本アミューズメント産業協会におけるAMマシン事業部の正会員資格は保持していた。

こうした中、2020年2月に証券取引等監視委員会により金融商品取引法違反(偽計)の嫌疑で強制調査を受けたと同時に信用が失墜[1][2][4][9]。同年4月には監査法人元和から帳簿上8億円あるはずの現金が50万円しかなく、預金と合わせても250万円しかないとの指摘を受けた[2][10]。このため、監査法人元和は、同年4月24日にNutsとの契約を解除した[2][11]

2020年8月13日に一時会計監査人に監査法人アリアを選任[2][12]。同年9月に提出期限を迎える2020年3月期の有価証券報告書を提出した上で、株主総会を開催する予定であったが[1][2]、資金不足により監査法人アリアへの報酬の支払いが不可能となった他、有価証券報告書の提出も不可能となった[1][2]。このため、監査法人アリアは同年9月7日にNutsとの契約を解除した[2][13]

2020年9月16日に取締役が東京地方裁判所へ破産を申請。同日付で破産手続開始決定を受けた[1][2]。負債総額は5億1000万円。

破産手続開始当日に公表された外部調査委員会の報告書では、「コーポレート・ガバナンスが不全に陥ったことによる杜撰な内部体制」と断罪した他[4]、偽計や現金差異、不適切な資金流出を行っていたことが明らかとなった[5]。破産手続開始決定の開示も、21時30分という異例の展開となった[4]

上場していたジャスダック市場も、同年10月3日に上場廃止となった[14]。加盟していた日本アミューズメント産業協会も退会した。東京証券取引所に上場している企業で、破産手続による上場廃止は、2013年9月に上場廃止となったワールド・ロジ以来、7年1か月ぶりとなった。

子会社であった株式会社JBプランニングも、2021年1月27日に東京地方裁判所から破産手続き開始決定を受けた。JBプランニングの破産管財人は、Nutsとは別の弁護士が選任された[15]

東京地検特捜部は2021年6月23日に、元実質経営者のA、元社長のB、金融ブローカーのCとDを金融商品取引法違反(偽計)の疑いで逮捕した[16]。容疑は、2019年6月から12月にかけて、株価を上昇させるなどの目的で、Nutsが開設した会員制医療施設の売り上げが実際は計2000万円だったにもかかわらず、計5億6000万円以上である虚偽のIR情報を7回にわたって公表したというもの。同年7月13日、特捜部は4人を偽計の罪で起訴した[17]

Nutsの経営破綻は、度重なる商号変更や業態転換、純資産の毀損を度重なる増資で穴埋めし膨れ上がった資本金、継続企業の前提の注記を受け、監査法人の変更などを行い、最終的に経営破綻に至ったいわゆる「ハコ企業」の典型的な例といえる[4][5]

Nutsは2023年4月13日に法人格が消滅した[18]

沿革 編集

  • 1977年8月25日 - 三高産業株式会社として設立。
  • 1998年7月 - 商号を株式会社トップボーイへ変更。
  • 1999年9月 - 株式を店頭公開(現:ジャスダック)。
  • 2003年6月 - 商号を株式会社コモンウェルス・エンターテインメントへ変更。
  • 2005年8月31日 - ゲームソフト販売店事業から撤退。
  • 2016年9月 - 商号を株式会社Nutsへ変更。
  • 2020年
    • 2月 - アミューズメント事業をメイクイーストへ譲渡。証券取引等監視委員会から金融商品取引法違反(偽計)の疑いで強制調査を受ける。
    • 4月、監査法人から帳簿上8億円あるはずの現金が50万円しかなく、預金と合わせても250万円しかないとの指摘を受ける。
    • 9月16日 - 東京地方裁判所から破産手続開始決定を受ける。
    • 10月3日 - ジャスダック上場廃止
  • 2021年
    • 6月23日 - 東京地検特捜部が、元社長や元実質経営者など4人を金融商品取引法違反(偽計)の疑いで逮捕。
    • 7月13日 - 東京地検特捜部が4人を金融商品取引法違反(偽計)の罪で起訴。
    • 12月7日 - 東京地方裁判所にて、元実質的経営者に懲役2年2月(執行猶予3年)、金融ブローカーには懲役2年(執行猶予3年)の判決[19]
  • 2023年4月13日 - 法人格消滅。

脚注 編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m TSR速報 (株)Nuts東京商工リサーチ 2020年9月16日
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 倒産・動向速報記事 株式会社Nuts帝国データバンク 2020年9月17日
  3. ^ a b c d e f g h i j 破産手続開始の申立て及び破産手続開始決定に関するお知らせ Nuts 2020年9月16日
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p データを読む 【取材の周辺】典型的“ハコ企業”(株)Nuts、流転の末に破産東京商工リサーチ 2020年10月2日
  5. ^ a b c d e 現金が帳簿上で8億円なのに実際は50万円。Nutsは新興上場企業破産の典型パターンニュースイッチ 2020年10月25日
  6. ^ 店舗運営事業の営業廃止及び特別損失の発生並びに業績予想の修正についてコモンウェルス・エンターテインメント 2005年7月22日
  7. ^ 「ナッツ」元社長ら逮捕 虚偽情報開示の疑い―東京地検”. 時事通信 (2021年6月23日). 2021年6月23日閲覧。
  8. ^ 事業譲渡契約締結に関するお知らせ Nuts 2020年1月27日
  9. ^ Nuts代表ら強制調査 監視委、虚偽情報開示の疑いで日本経済新聞 2020年3月2日
  10. ^ 会計監査人からの報告事項及び外部調査委員会の調査目的の追加に関するお知らせNuts 2020年4月13日
  11. ^ 公認会計士等の異動に関するお知らせNuts 2020年4月28日
  12. ^ 一時会計監査人の選任に関するお知らせ Nuts 2020年8月13日
  13. ^ 一時会計監査人からの通知に関するお知らせNuts 2020年9月10日
  14. ^ 上場廃止等の決定:(株)Nuts東京証券取引所 2020年9月16日
  15. ^ (株)JBプランニング(東京)/破産手続き開始決定JC-net.2021年2月10日
  16. ^ 虚偽情報開示疑いで会社役員ら4人逮捕産経新聞 2021年6月23日
  17. ^ 「ナッツ」元社長ら起訴 虚偽情報開示―東京地検 時事通信 2021年7月13日
  18. ^ 株式会社Nuts国税庁法人番号公表サイト
  19. ^ 元実質経営者ら2人に有罪 「ナッツ」虚偽情報開示―東京地裁”. 時事通信 (2021年12月7日). 2021年12月12日閲覧。

外部リンク 編集