ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス
『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』[1](Doctor Strange in the Multiverse of Madness)は、マーベル・コミックのキャラクター「ドクター・ストレンジ」をベースとする、2022年公開のアメリカ合衆国のスーパーヒーロー映画。監督はサム・ライミ、脚本はジェイド・バートレットとマイケル・ウォルドロン、出演はベネディクト・カンバーバッチ、エリザベス・オルセン、ベネディクト・ウォン、ソーチー・ゴメスら。『ドクター・ストレンジ』(2016年)の続編でシリーズ2作目、また「マーベル・シネマティック・ユニバース」の28作品目の作品。
ドクター・ストレンジ/ マルチバース・オブ・マッドネス | |
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Doctor Strange in the Multiverse of Madness | |
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監督 | サム・ライミ |
脚本 |
ジェイド・バートレット マイケル・ウォルドロン |
原作 |
スタン・リー スティーヴ・ディッコ 『ドクター・ストレンジ』 |
製作 | ケヴィン・ファイギ |
製作総指揮 | スコット・デリクソン |
出演者 |
ベネディクト・カンバーバッチ エリザベス・オルセン キウェテル・イジョフォー ベネディクト・ウォン ソーチー・ゴメス マイケル・スタールバーグ レイチェル・マクアダムス |
音楽 | ダニー・エルフマン |
撮影 | ジョン・マシソン |
編集 | ボブ・ムラウスキー |
製作会社 | マーベル・スタジオ |
配給 | ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ |
公開 |
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上映時間 | 126分 |
製作国 |
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言語 | 英語 |
前作 |
MCU スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021年) ドクター・ストレンジ ドクター・ストレンジ(2016年) |
次作 |
MCU ソー:ラブ&サンダー(2022年) |
あらすじ編集
ある禁断の呪文を使い、マルチバースへと接続してしまってから5ヶ月後のある夜。ドクター・スティーブン・ストレンジは、ある夢を見た。その夢の中でストレンジは謎の怪物から一人の少女を守っており、窮地に陥ったストレンジは少女から力を取り上げて怪物を倒そうとする。しかしすんでのところで怪物から致命傷を負わされてしまい、そして夢から覚めるのだった。その日はかつて恋仲であったクリスティーン・パーマーの結婚式。友人として参加していたストレンジだったが、突如現れた一つ目の怪物ガルガントスが暴れているのを確認すると、すぐさま対処に赴く。ガルガントスに捕らわれていたのは、前夜に夢で見た少女であった。
助けた少女の名前はアメリカ・チャベスといい、マルチバースを移動する能力を持っていると言う。彼女によると、ストレンジが見た前夜の夢は、夢ではなく他の宇宙で実際に発生した事実であり、謎の怪物に殺されたディフェンダー・ストレンジの遺体と一緒にこの宇宙に来たと主張し、その証拠としてディフェンダー・ストレンジの遺体をストレンジとウォンに見せる。ストレンジはビルの屋上のレンガの中に遺体を埋葬した後、アメリカをカマー・タージで守るようにウォンに依頼し、マルチバースの知識を豊富に持っていると考えられるワンダ・マキシモフの家に訪れる。
登場人物・キャスト編集
主な登場人物編集
- スティーヴン・ストレンジ / ドクター・ストレンジ
- 演 - ベネディクト・カンバーバッチ、日本語吹替 - 三上哲[2][3]
- 交通事故でキャリアを終えた後にマスターズ・オブ・ミスティック・アーツの魔術師となった元神経外科医。デシメーションの影響で5年間消滅していた間にマスターの座はウォンに引き継がれてしまった。
- 演じたカンバーバッチは、ストレンジのマルチバースにおける別のアイデンティティも演じる。
- ディフェンダー・ストレンジ
- アメリカ・チャベスと行動を共にしていたストレンジ。MCUの世界のストレンジとの違いは後ろ髪を結っていること。アメリカと共に謎の怪物から逃げているところを、ストレンジは夢として見ている。
- マルチバースの平和のためにアメリカから能力を取り上げようとしたところを怪物から致命傷を負わされ、最後の力を振り絞ってアメリカを逃がして絶命。その遺体はアメリカと共にMCUの世界にやってきたため、ストレンジによって埋葬される。
- スプリーム・ストレンジ
- 別の次元のストレンジ。MCUの世界のストレンジとの違いはショートヘアーで青色のマントを着けていること。サノスとの戦いで戦死し、地球を救った英雄としてサンクタム・サンクトラムの前には像が建てられている。
- シニスター・ストレンジ
- 別の次元のストレンジ。MCUの世界のストレンジとの違いは乱れたロングヘアーで長い髭を持つこと。3つの目を持ち、ストレンジの前に立ちはだかる。
- ワンダ・マキシモフ / スカーレット・ウィッチ
- 演 - エリザベス・オルセン、日本語吹替 - 行成とあ[2][3]
- カオス・マジックやテレパシーなどを使用できるアベンジャーズのメンバー。ウエストビューでの一件のその後、マルチバースに関する知識を持つ可能性を考慮され、ストレンジに協力を求められる。
- ウォン
- 演 - ベネディクト・ウォン、日本語吹替 - 田中美央[2][3]
- カマー・タージの書庫を管理・守護するマスターズ・オブ・ミスティック・アーツの魔術師でありストレンジの盟友。現在はマスターとしてストレンジより高い地位にある。
- クリスティーン・パーマー
- 演 - レイチェル・マクアダムス、日本語吹替 - 松下奈緒[2][3]
- ストレンジと一時期恋人関係だった救急救命医。新たなパートナーと出会っており、ストレンジを友人として結婚式に招待する。
- アメリカ・チャベス
- 演 - ソーチー・ゴメス、日本語吹替 - 鬼頭明里[4][3]
- 空間に星形の穴を開けて次元間を移動する能力を持つ少女。しかし、能力の制御が出来ておらず危機的状況にならなければ能力が発動できない。
その他の登場人物編集
- ニコデマス・ウエスト
- 演 - マイケル・スタールバーグ、日本語吹替 - 志村知幸[3]
- クリスティーンの同僚の医師で、ストレンジの元同僚で友人。ストレンジと共にクリスティーンの結婚式に出席する。
- トミー・マキシモフ
- 演 - ジェット・クライン、日本語吹替 - 上野黎也[3]
- ワンダが妊娠から僅か2日で出産した双子の一人。現実の存在ではなくワンダが魔術で産み出した空間「ヘックス」でしか生きられないため、ウェストビューでの一件の後にビリーやヴィジョンと共に消滅する。
- ビリー・マキシモフ
- 演 - ジュリアン・ヒルヤード、日本語吹替 - 宮岸泰成[3]
- ワンダが妊娠から僅か2日で出産した双子の一人。トミーと同様に彼もまた現実の存在ではない。
- ハミヤ
- 演 - トポ・ウェルネスニーロ
- カマー・タージの左前腕が欠損している老魔術師。
- ダニエル・ドラム
- 演 - マーク・アンソニー・ブライトン
- ニューヨークのサンクタム・サンクトラムの主を務め、カエシリウスに倒された魔術師。
- ウィーゼル
- 演 - チャーリー・ノートン
- カマー・タージの魔術師。
- サラ
- 演 - シェイラ・アティム、日本語吹替 - 弘松芹香[3]
- マスターズ・オブ・ミスティック・アーツの魔術師。
- リントラ
- 声 - アダム・ヒューギル、日本語吹替 - 越後屋コースケ[3]
- 強大な魔力を持つ超次元惑星ラヴァール出身の牛の獣人の魔術師。ミノタウロスのような風貌をしているが、性格は温厚。
- チャーリー
- 演 - アコ・ミッチェル
- クリスティーンの結婚相手。
- ガルガントス
- 触手を持つ1つ目の緑色の怪物。自身を透明化する能力を持つ。アメリカ・チャベスを捕まえるためにMCUの世界のニューヨークで暴れまわる。
- 権利問題のため本作では似た容姿を持つネイモアの敵の名前で登場となる。
イルミナティ編集
- スプリーム・ストレンジの次元アース838におけるヒーローチームで同次元にはアベンジャーズが存在せず、サノスとの闘いは本チームが請け負っている。
- バロン・カール・モルド(マスター・モルド)
- 演 - キウェテル・イジョフォー、日本語吹替 - 小野大輔[2][3]
- 前作のラストで行方をくらまし、今は魔術師を狩る敵となった元カマー・タージの魔術師。
- 本作ではスプリーム・ストレンジが活動していた世界のバロン・モルドとして登場。スプリーム・ストレンジ亡き後、マスターの座を継承している。MCUの世界のストレンジが訪れた際は友と呼び迎え入れる。
- チャールズ・エグゼビア / プロフェッサーX
- 演 - パトリック・スチュワート、日本語吹替 - 麦人
- テレパシー能力を持ったミュータント。X-MENの代表的存在であり、ミュータントの学校で教授をしている。今作ではイルミナティのリーダー的存在として登場したが、20世紀フォックス制作のX-MENシリーズと同じプロフェッサーではなくイルミナティがいる世界のプロフェッサーとして登場。他のイルミナティのメンバーがストレンジをスプリーム・ストレンジと同様危険な存在と決めつける中、唯一ストレンジ本人の人となりを見て(読んで)、信用してチャンスを与えようとした。
- ペギー・カーター / キャプテン・カーター
- 演 - ヘイリー・アトウェル、日本語吹替 - 園崎未恵
- スティーブ・ロジャースではなくペギー・カーターがファーストアベンジャーズになった世界のペギー。ディズニープラス配信アニメシリーズの『ホワット・イフ...?』で彼女の物語が描かれたが、プロフェッサーと同様、今作では原典アニメとは無関係のイルミナティがいる世界のキャプテン・カーターとして登場した。
- マリア・ランボー / キャプテン・マーベル
- 演 - ラシャーナ・リンチ、日本語吹替 - 花藤蓮
- キャロル・ダンヴァースではなく、彼女の親友マリア・ランボーがキャプテン・マーベルになった世界のマリア。MCUの標準世界では指パッチンで消滅しなかったが、5年の間に病気によって命を落としている事が『ワンダヴィジョン』で明かされた。今作ではイルミナティがいる世界のキャプテン・マーベルとして登場。
- リード・リチャーズ / ミスター・ファンタスティック
- 演 - ジョン・クラシンスキー、日本語吹替 - 星野貴紀
- ファンタスティック・フォーのリーダー。体を伸ばしたり縮めたり自在に変化させる能力を持つ。本作には登場しなかったが結婚し子供もいる。
- ブラッカガー・ボルタゴン / ブラックボルト
- 演 - アンソン・マウント、日本語吹替 - 不明
- テリジェンの霧を守るインヒューマンズの王。破壊力を持った声を武器に戦うため、普段は声を発さず、手話でやりとりする。MCUの世界のブラックボルトとは考え方も全く逆である。
- ウルトロン・セントリー
- 声 - ロス・マーカンド、日本語吹替 - 武田太一(警備長)、松田裕市(衛兵)
- 銀色の人型ロボット。MCUの世界ではウルトロンがチタウリの技術を流用して軍勢として作ったロボット。ソコヴィアでの一件で全て破壊されたが、今作ではイルミナティの警護ロボットとして登場。
カメオ出演編集
- ピザ・パパ
- 演 - ブルース・キャンベル、日本語吹替 - 江原正士[3]
- ピザボールの屋台売り。映画本編とポストクレジットシーンに登場。
- 演じているキャンベルは今作の監督サム・ライミと昔からの友人でありライミの他作品でもカメオ出演をしている。
- クレア
- 演 - シャーリーズ・セロン、日本語吹替 - 甲斐田裕子
- ミッドクレジットシーンに登場。
- 右手に発現させた武器で空間を斬り裂き別次元の世界へ移動出来る。ストレンジをインカ―ジョン修復の新たな物語に誘う。
製作編集
企画編集
2019年7月20日に開催されたサンディエゴ・コミコン2019でのマーベル・スタジオの発表会で、今作の製作が発表された。前作に引き続きスコット・デリクソンが監督を務める他、ストレンジ役のカンバーバッチに加えてワンダ・マキシモフ役でエリザベス・オルセンが出演することが明かされた。また、今作の全米公開日が2021年5月7日に決定したことも合わせて発表された。
プリプロダクション編集
2019年10月、ベネディクト・ウォンがウォン役で復帰することが明らかとなった。加えて、脚本執筆作業にジェイド・バートレットが参加していると報じられた。
2020年1月、監督を務める予定だったスコット・デリクソンが今作の製作から降板したことが発表された。マーベル・スタジオは降板の理由について、「創造上の相違」と説明しており、デリクソンは製作総指揮としてクレジットされる。
2月、デリクソンの後任監督としてサム・ライミが契約交渉中であることが判明した。その後、ライミ本人が監督を務めることを認めた。同月、今作の脚本にマイケル・ウォルドロンが就任したことが明らかとなった。
4月、マーベル・スタジオは新型コロナウイルスの蔓延による影響で映画公開スケジュールを見直し、今作の公開日も2021年11月に延期されたことが発表された。その後、さらに公開日が2022年3月25日に延期された。
6月、キウェテル・イジョフォーがモルド役で復帰することが判明した。
12月、レイチェル・マクアダムスがクリスティーン役で復帰することが判明した。
撮影編集
2020年11月初旬頃からイギリスで今作の撮影が開始された。しかし、2021年1月にイングランド全域に発令されたロックダウンの影響で撮影がストップしたことをワンダ役のオルセンが明らかにした。3月、カンバーバッチは今作の撮影が再開し、順調に作業が進んでいることを明らかにした。4月、主要撮影が終了間近であることが判明。9月には、再撮影が行われていたことが明らかとなった。さらに、11月から年末にかけて大規模な再撮影が計画されていることが判明した。
ポストプロダクション編集
2021年10月、今作の公開日が2022年5月6日に再び延期されたことが発表された。
公開編集
全米では2022年5月6日に公開予定。日本ではそれに先駆けて同年5月4日に公開された[5]。
上映禁止編集
2022年4月、サウジアラビアとエジプトで5月5日から公開を予定していた今作の上映が禁止となったと報じられた。サウジアラビアでは「LGBTQに関する」理由のため上映禁止となったとされており、今作に登場しているアメリカ・チャベスの両親が同性愛者の設定であることが原因とされている[6]。
脚注編集
- ^ “ウォルト・ディズニー・カンパニー、ダイレクト・トゥー・コンシューマサービスの有料会員数が1億3700万人を突破、これまでのガイダンスを破り、2024年までに有料会員数の目標を3億〜3億5000万人に引き上げ|企業情報|ディズニー公式”. ディズニー公式. 2021年8月10日閲覧。
- ^ a b c d e “「ドクター・ストレンジMoM」吹替に三上哲、松下奈緒、行成とあ、田中美央、小野大輔”. 映画ナタリー (ナターシャ). (2022年3月31日) 2022年3月31日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l “ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス -日本語吹き替え版”. ふきカエル大作戦!! (2022年5月6日). 2022年5月6日閲覧。
- ^ “鬼頭明里「ドクター・ストレンジ」新作吹替でMCU初登場のアメリカ・チャベスを担当”. 映画ナタリー (ナターシャ). (2022年4月7日) 2022年4月7日閲覧。
- ^ “「ドクター・ストレンジMoM」全米より2日早い5月4日に公開決定”. 映画ナタリー (ナターシャ). (2022年1月7日) 2022年1月7日閲覧。
- ^ Ritman, Alex (2022年4月22日). “‘Doctor Strange in the Multiverse of Madness’ Banned in Saudi Arabia (Exclusive)” (英語). The Hollywood Reporter. 2022年4月24日閲覧。
外部リンク編集
- ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス|映画|マーベル公式
- Doctor Strange in the Multiverse of Madness - IMDb(英語)
- Doctor Strange (@doctorstrangeofficial) - Instagram