ナマケモノ
有毛目ナマケモノ亜目の動物
ナマケモノ(樹懶)は、哺乳綱異節上目有毛目ナマケモノ亜目 (Folivora) の総称。ミユビナマケモノ科とフタユビナマケモノ科が現生し、他にいくつかの絶滅科がある。
ナマケモノ亜目 | |||||||||||||||||||||
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![]() ノドチャミユビナマケモノ Bradypus variegatus
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Folivora Delsuc, Catzeflis, Stanhope, and Douzery, 2001 | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ナマケモノ | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Sloth | |||||||||||||||||||||
科 | |||||||||||||||||||||
ほか |
概要編集
- 名前・身体
- そのゆっくりとした動作から「怠け者」という呼び名がついた。英語名の Sloth も同じく、怠惰やものぐさを意味する。体長は約41-74センチメートル。四肢は長く、前肢のほうが後肢より長く発達している。長い鉤爪を持ち、これを木の枝に引っ掛けてぶら下がっている。
- 生態
- 南アメリカ、中央アメリカの熱帯林に生息する。生涯のほとんどを樹にぶら下がって過ごす。食事や睡眠から交尾、出産までも樹にぶら下がったままで行う。主食は葉や新芽など。また自毛に生えた苔も食用とする。週に1回程度、樹上から降り、地上で排便、排尿を行う。
- 擬態
- 日中は頭を前脚の間に入れ、枝に張り付くようにして丸くなって眠るため、遠目には樹の一部のように見える。これがジャガー、ピューマなどの捕食者から身を守る擬態となっている。また、年齢を重ねた個体の被毛には藻類が生えることもあり、これも樹皮への擬態の一部となる。
- 捕食者
- 機敏に動くことができない上、非社会性動物であることから、オウギワシには簡単に捕食されてしまう。パナマのバロ・コロラド島での観察では、オウギワシの獲物の内、重量にして50%以上がナマケモノであった[1]。
- 泳ぎ
- ミユビナマケモノ科は地上での動作は遅いが、泳ぎは上手である。これは生息地のアマゾン近辺では雨季と乾季があり、雨季には生息地が洪水にさらされることもしばしばあるため、泳ぐ技術を身につけていない個体は生存できないからである。ただしフタユビ科は泳ぐ時に頭が水上に出ないため泳げない。
- 食事
- 16世紀にヨーロッパに初めて紹介された当初は、餌を全く摂らず、風から栄養を摂取する動物だと考えられていた[2]。しかし実際には1日に10gほどの植物を摂取している[3]。
- 外気に合わせて体温を変化させることにより代謝を抑えている。つまり、現生哺乳類では珍しい変温動物である[4]。このことや前述のように行動も遅いため基礎代謝量が非常に低く[5]、ごく少量の食物摂取でも生命活動が可能となっている。なおよく似た生態・体重であるコアラは恒温動物であり、その日当たり摂食量は500g以上[6]とナマケモノより多い。
- 人間との関係
- 非常にストレスに弱い上に変温動物である性質上、温度変化に非常に敏感で、飼育環境を高温多湿に保つ必要があるため、一般家庭で飼育することは困難[7]。
分類編集
現生ナマケモノはミユビナマケモノ科とフタユビナマケモノ科の2科に分類され、5種がいる。双方の科の生息域は重なっていることが多い。
- ミユビナマケモノ科 Bradypodidae - 前後両足の指が3本であり、小さな尾をもつ。通常哺乳類の頸椎は7個であるが、ミユビナマケモノ科の頸椎は9個ある。首を270度回転させることができるため、体を動かさずに周りの葉を食べることができる。体長50-60センチメートル。中央・南アメリカの森林地帯に生息している。長く太い鉤爪を持ち、セクロピアの木の葉などを食べる。
- フタユビナマケモノ科 Megalonychidae - 前足の指が2本、後足の指が3本であり、尾は全くないか、わずかな痕跡があるのみである。頸椎はホフマンナマケモノで6個、フタユビナマケモノで7個である。双方を外見で判別することは困難であり、しばしば、X線撮影で頸椎の数を調べることで判別している。ミユビナマケモノ科に比べ、気性が荒く動作もすばやい。体長60-64センチメートル。中央・南アメリカの森林地帯に生息する。鋭い鉤爪を使い木の葉や木の実を食べる。地上には滅多に下りない。
脚注編集
- ^ Janeene M. Touchton, Yu-Cheng Hsu, & Alberto Palleroni (2002). “Foraging ecology of reintroduced captive-bred subadult harpy eagles (Harpia harpyja) on Barro Colorado Island, Panama”. ORNITOLOGIA NEOTROPICAL 13: 365–379.
- ^ 川崎悟司、「絶滅したふしぎな巨大生物」、株式会社PHP研究所、2011年、p199より。
- ^ “「寒さ」と「暑さ」 人間が弱いのはどっち”. 日本経済新聞. (2016年6月20日) 2020年12月3日閲覧。
- ^ S. W. Britton, W. E. Atkinson. 1938. Poikilothermism in the Sloth.Journal of Mammalogy 19:94-99.
- ^ P. F. SCHOLANDER, RAYMOND HOCK, VLADIMIR WALTERS, and LAURENCE IRVING. 1950. ADAPTATION TO COLD IN ARCTIC AND TROPICAL MAMMALS AND BIRDS IN RELATION TO BODY TEMPERATURE, INSULATION, AND BASAL METABOLIC RATE. The Biolgical Bulletin 99:259-271.
- ^ Burnie David, Animal, 2001, DK, ISBN 978-1-7403-3578-2
- ^ SNSに惑わされるな、飼うとヤバい動物10種(1/4ページ) ナショナルジオグラフィック日本版 2019.02.03 (2020年8月8日閲覧)