ネヴァーマインド
『ネヴァーマインド』(Nevermind)は、アメリカ合衆国のロックバンド、ニルヴァーナの2枚目のアルバム。アルバムはビルボードにおいてナンバー1となり、驚異的な売り上げを示した。シアトルのローカルバンドに過ぎなかったニルヴァーナを全米トップの人気バンドへと押し上げ、グランジ/オルタナティヴ・ロックムーブメントを全米に広げた。カートの自殺によるバンド解散後もアルバムは売れ続け、2013年までに全世界で3,000万枚を超えている[3]。
『ネヴァーマインド』 | ||||
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ニルヴァーナ の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 |
1990年 - 1991年 ノースハリウッド | |||
ジャンル |
グランジ オルタナティヴ・ロック | |||
時間 | ||||
レーベル | DGC | |||
プロデュース | ブッチ・ヴィグ | |||
専門評論家によるレビュー | ||||
チャート最高順位 | ||||
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ゴールドディスク | ||||
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ニルヴァーナ アルバム 年表 | ||||
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音楽・音声外部リンク | ||||
Nevermind - YouTube |
経緯編集
アルバム『ネヴァーマインド』は、1990年から1991年にかけて録音された。プロデューサーはブッチ・ヴィグ[* 1]、ミキサーはアンディ・ウォレスがそれぞれ担当。より広い層にアピールするようボーカル/ギターを強調し、またラジオオンエアの際によりクリアに聴こえるように中音域に音を集めたミックスとなった。また、ヒット曲「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」から始まる楽曲もメジャー市場を意識したものからアンダーグラウンド寄りのものまでバランスよく収録されている。因みにこのようにそれまでのアンダーグラウンド重視からポップな曲作りが行われるようになったのはゲフィン・レコードとの契約時の「トップ30にパンクを入れる」という発言などからカートがこのアルバムをヒットさせることを意識していたことが理由として挙げられる[4]。
影響と評価編集
アルバムはヘヴィメタルファンからロック/ポップのファンまで幅広いリスナーを獲得するに至った。
このアルバムはベストセラーとなり、ニルヴァーナは一躍トップバンドの仲間入りを果たしたが、メジャー市場を意識した作りは後のニルヴァーナの活動に影を落としてしまうこととなる。特にボーカルのカート・コバーンは完成当初は、サウンドプロダクションも含め非常に気に入っていたものの[7]、この成功を快くは思っておらず、1993年のインタビューでは「今では全く聴いていない」と語るなど、度々本アルバムを嫌悪・否定するような発言を繰り返している。このカートの態度は、後にアンダーグラウンドへと回帰した『イン・ユーテロ』を生むこととなった。
訴訟編集
ジャケットには生後4か月のスペンサー・エルデン(Wikidata)が全裸で1ドル札を見ながらプールを泳いでいる姿が写されているが、この写真が児童ポルノに当たるとして2021年8月にスペンサーはニルヴァーナを提訴した[8]。スペンサーは17歳の頃に「たくさんの人に僕の裸を見られたと思うと、ゾッとするよ。僕は世界一のポルノ俳優になった気分さ」とも語っている[9]。しかしながら、スペンサーは同アルバムの10周年、20周年、25周年に合わせ、水着を着た状態でオマージュを撮影している[8][10]。裁判所は10年の時効を大幅に超えているとし棄却しているが、スペンサーは再提訴を繰り返している[11][12][13]。
チャート編集
ビルボード200において1位を獲得、また数々の批評家達からその年のベスト・アルバムに選出された。
RIAAにより、ゴールド、プラチナアルバムとして認定。しかしながら、保守的なグラミー賞には候補にも上らなかった。
2020年、「ローリングストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500」に於いて6位。これは、90年代以降のアルバムの中で最高位となる。
収録曲編集
※特筆のない限りは、いずれも全作詞・作曲:カート・コバーン。
- スメルズ・ライク・ティーン・スピリット "Smells Like Teen Spirit" (Cobain/Grohl/Novoselic) – 5:02
- イン・ブルーム "In Bloom" (Cobain) – 4:15
- カム・アズ・ユー・アー "Come as You Are" (Cobain) – 3:39
- ブリード "Breed" (Cobain) – 3:04
- リチウム "Lithium" (Cobain) – 4:17
- ポリー "Polly" (Cobain) – 2:56
- 「レイプ犯から見た風景を歌った反レイプソング[14]」である。
- テリトリアル・ピッシングス "Territorial Pissings" (Cobain) – 2:23
- ドレイン・ユー "Drain You" (Cobain) – 3:44
- ラウンジ・アクト "Lounge Act" (Cobain) – 2:37
- ステイ・アウェイ "Stay Away" (Cobain) – 3:33
- 元々は「Pay To Play」という楽曲で歌詞も異なっていた。こちらのバージョンは「ウィズ・ザ・ライツ・アウト」などに収録されている他、ブートレッグとしても出回っている。
- オン・ア・プレイン "On a Plain" (Cobain) – 3:17
- サムシング・イン・ザ・ウェイ "Something in the Way" (Cobain) – 3:51
- 1990年に作成された曲。この曲は、「カートが、住む家がなく『underneath a bridge(橋の下)』で寝泊りしていた時期に作成された」という噂が存在するが、ジャーナリストのCharles R. Crossは著書の中で、そのようは事実はなかったであろうと否定している[15]。
- 2022年公開[* 3]の映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の予告編および本編にこの曲が使用された[16]。
- エンドレス・ネームレス(ヒドゥン・トラック) "Endless, Nameless" - 6:44
20thアニヴァーサリー・エディション[17]
デラックス・エディション
DISC1:2011年最新リマスターによるオリジナル・アルバム+Bサイズ(ネヴァーマインドからのシングルB面収録曲)
- スメルズ・ライク・ティーン・スピリット "Smells Like Teen Spirit"
- イン・ブルーム "In Bloom"
- カム・アズ・ユー・アー "Come as You Are"
- ブリード "Breed"
- リチウム "Lithium"
- ポーリー "Polly"
- テリトリアル・ピッシングス "Territorial Pissing"
- ドレイン・ユー "Drain You"
- ラウンジ・アクト "Lounge Act"
- ステイ・アウェイ "Stay Away"
- オン・ア・プレイン "On a Plain"
- サムシング・イン・ザ・ウェイ "Something in the Way" [with "Endless, Nameless"]
- <THE B SIDES>
- イーヴン・イン・ヒズ・ユース "Even in His Youth"
- アニューリズム "Aneurysm"
- カームジョン "Curmudgeon"
- D-7(ライヴ・アット・ザ・BBC) "D-7"
- ビーン・ア・サン(ライヴ) "Been a Son" (Live)
- スクール(ライヴ) "School" (Live)
- ドレイン・ユー(ライヴ) "Drain You" (Live)
- スリヴァー(ライヴ)"Drain You" (Live)
- ポーリー(ライヴ)"Polly" (Live)
DISC2:ザ・スマート・スタジオ・セッション(プッチ・ヴィグのスタジオでのデモ)+ザ・ブームボックス・リハーサル(ラジカセ録音によるリハーサル)+BBCセッション
- イン・ブルーム(未発表) "In Bloom" (Previously unreleased)
- イモディアム(ブリード)(未発表) "Immodium (Breed)" (Previously unreleased)
- リチウム(未発表) "Lithium" (Previously unreleased)
- ポーリー(未発表ミックス) "Polly" (Previously unreleased mix)
- ペイ・トゥ・プレイ "Pay to Play"
- ヒア・シー・カムス・ナウ "Here She Comes Now"
- ダイヴ(未発表) "Dive" (Previously unreleased)
- サッピー(未発表)"Sappy" (Previously unreleased)
- <THE BOOMBOX REHEARSALS>
- スメルズ・ライク・ティーン・スピリット "Smells Like Teen Spirit"
- ヴァース・コーラス・ヴァース(未発表)"Verse Chorus Verse" (Previously unreleased)
- テリトリアル・ピッシングス(未発表)"Territorial Pissings" (Previously unreleased)
- ラウンジ・アクト(未発表)"Lounge Act" (Previously unreleased)
- カム・アズ・ユー・アー "Come as You Are"
- オールド・エイジ(未発表) "Old Age" (Previously unreleased)
- サムシング・イン・ザ・ウェイ(未発表)"Something in the Way" (Previously unreleased)
- オン・ア・プレイン(未発表) "On a Plain" (Previously unreleased)
- <BBC SESSION>
- ドレイン・ユー(未発表)"Drain You" (Live) (Previously unreleased)
- サムシング・イン・ザ・ウェイ(未発表) "Something in the Way" (Live) (Previously unreleased)
スーパー・デラックス・エディション
DISC3:ザ・デヴォンシャー・ミックス(ブッチ・ヴィグ・プロデュース+ミックスによるアルバム)
- スメルズ・ライク・ティーン・スピリット "Smells Like Teen Spirit"
- イン・ブルーム "In Bloom"
- カム・アズ・ユー・アー "Come as You Are"
- ブリード "Breed"
- リチウム "Lithium"
- テリトリアル・ピッシングス "Territorial Pissings"
- ドレイン・ユー "Drain You"
- ラウンジ・アクト "Lounge Act"
- ステイ・アウェイ "Stay Away"
- オン・ア・プレイン "On a Plain"
- サムシング・イン・ザ・ウェイ "Something in the Way"
DISC4:ライヴ・アット・ザ・パラマウント・シアター(91年の未発表コンサートのオーディオ)
- ジーザス・ダズント・ウォント・ミー・フォー・ア・サンビーム "Jesus Doesn't Want Me for a Sunbeam"
- アニューリズム "Aneurysm"
- ドレイン・ユー "Drain You"
- スクール "School"
- フロイド・ザ・バーバー "Floyd the Barber"
- スメルズ・ライク・ティーン・スピリット "Smells Like Teen Spirit"
- アバウト・ア・ガール "About a Girl"
- ポーリー "Polly"
- ブリード "Breed"
- スリヴァー "Sliver"
- ラヴ・バズ "Love Buzz"
- リチウム "Lithium"
- ビーン・ア・サン "Been a Son"
- ネガティヴ・クリープ "Negative Creep"
- オン・ア・プレイン "On a Plain"
- ブルー "Blew"
- レイプ・ミー "Rape Me"
- テリトリアル・ピッシングス "Territorial Pissings"
- エンドレス、ネームレス "Endless, Nameless"
DVD:ライヴ・アット・ザ・パラマウント・シアター+ミュージック・ビデオ4曲
- ジーザス・ダズント・ウォント・ミー・フォー・ア・サンビーム "Jesus Doesn't Want Me for a Sunbeam"
- アニューリズム "Aneurysm"
- ドレイン・ユー "Drain You"
- スクール "School"
- フロイド・ザ・バーバー "Floyd the Barber"
- スメルズ・ライク・ティーン・スピリット "Smells Like Teen Spirit"
- アバウト・ア・ガール "About a Girl"
- ポーリー "Polly"
- ブリード "Breed"
- スリヴァー "Sliver"
- ラヴ・バズ "Love Buzz"
- リチウム "Lithium"
- ビーン・ア・サン "Been a Son"
- ネガティヴ・クリープ "Negative Creep"
- オン・ア・プレイン "On a Plain"
- ブルー "Blew"
- レイプ・ミー "Rape Me"
- テリトリアル・ピッシングス "Territorial Pissings"
- エンドレス、ネームレス "Endless, Nameless"
<EXTRAS>
- スメルズ・ライク・ティーン・スピリット(ミュージック・ビデオ) "Smells Like Teen Spirit"
- カム・アズ・ユー・アー(ミュージック・ビデオ) "Come as You Are"
- リチウム(ミュージック・ビデオ) "Lithium"
- イン・ブルーム(ミュージック・ビデオ) "In Bloom"
クレジット編集
ニルヴァーナ
- カート・コバーン - ヴォーカル、ギター
- クリス・ノヴォセリック - エレクトリックベース
- デイヴ・グロール - ドラムス
ゲスト・ミュージシャン
- カーク・カニング - チェロ(「サムシング・イン・ザ・ウェイ」)
- チャド・チャニング - シンバル(「ポリー」)
技術スタッフ、アートワーク
- クレイグ・Doubet - アシスタント・エンジニアリング、ミキシング
- スペンサー・エルデン - カバー写真の幼児
- ロバート・フィッシャー - アートワーク、アート・ディレクション、デザイン、カバー・デザイン
- マイケル・レヴィン - 写真撮影
- ブッチ・ヴィグ - 共同プロデューサー、エンジニア
- アンディ・ウォレス - ミキシング
- ハウィー・ウェインバーグ - マスタリング
- カーク・ウェドル - カバー写真
オールタイム・ランキング編集
出版媒体(国) | ランキング名称 | 位 | 発表年度 |
---|---|---|---|
ブレンダー誌(米) (Blender) |
オールタイム・グレイテスト・アメリカンアルバム100 (The 100 Greatest American Albums of All time) |
9[18] | 2008 |
ローリング・ストーン誌(米) (Rolling Stone) |
90年代・グレイテストアルバム100 (The 100 Greatest Albums of the 90s) |
1[19] | 2019 |
ローリング・ストーン誌(米) (Rolling Stone) |
オールタイム・グレイテストアルバム500 (The 500 Greatest Albums of All Time) |
6[20] | 2020 |
ビルボード200(米) (Billboard 200) |
グレイテスト・オールタイム・ビルボード200アルバム (Greatest of All Time Billboard 200 Albums) |
118[21] | 2019 |
ビルボード200(米) (Billboard 200) |
オール92ダイヤモンド認定アルバム・批評ランキング (All 92 Diamond-Certified Albums Ranked from Worst to Best: Critic's Take) |
5[22] | 2016 |
脚注編集
注釈編集
出典注編集
- ^ Nirvana「Billboard 200」(Billboard)
- ^ NIRVANA-NEVERMIND(RIAA)
- ^ “未発表音源などを収録したニルヴァーナの『ネヴァーマインド』20周年記念盤が9月にリリース”. ロッキング・オン. (2011年7月27日)
- ^ 『CROSSBEAT SPECIAL EDITION 最新改訂版 ニルヴァーナ』(2011年、シンコー・ミュージックMOOK)
- ^ “高校生になった“ニルヴァーナの赤ちゃん”、現在の心境を吐露”. AFPBB. (2007年8月16日)
- ^ “ニルヴァーナ『Nevermind』25周年記念、米TIME誌がアルバムカヴァーの赤ちゃんの現在を取材”. amass. (2016年9月24日)
- ^ ブッチ・ヴィグ談。
- ^ a b Savage, Mark (2021年8月26日). “「ネヴァーマインド」の赤ちゃん、性的搾取でニルヴァーナを提訴 [Nirvana sued by the baby from Nevermind's album cover]”. BBC. オリジナルの2022年10月9日時点におけるアーカイブ。 2022年10月9日閲覧。
- ^ “高校生になった“ニルヴァーナの赤ちゃん”、現在の心境を吐露”. AFP. (2007年8月16日) 2022年10月9日閲覧。
- ^ “ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』の赤ん坊、リリースから25周年を記念して撮影を再現”. ニュー・ミュージカル・エクスプレス. (2016年9月26日). オリジナルの2022年10月9日時点におけるアーカイブ。 2022年10月9日閲覧。
- ^ “ニルヴァーナ、『ネヴァーマインド』の赤ん坊による訴訟が一旦棄却されたことが明らかに”. ニュー・ミュージカル・エクスプレス. (2022年1月5日). オリジナルの2022年10月9日時点におけるアーカイブ。 2022年10月9日閲覧。
- ^ “ニルヴァーナ、『ネヴァーマインド』の赤ん坊による訴訟で再び棄却を求める”. ニュー・ミュージカル・エクスプレス. (2022年2月1日). オリジナルの2022年10月9日時点におけるアーカイブ。 2022年10月9日閲覧。
- ^ “米バンド・ニルヴァーナのアルバム写真めぐる裁判、男性の訴え退けられる [Nirvana win lawsuit over 1991 Nevermind album cover]”. BBC. (2022年9月5日). オリジナルの2022年10月9日時点におけるアーカイブ。 2022年10月9日閲覧。
- ^ 久保憲司 『CROSSBEAT』(2007年4月号), 37頁
- ^ Charles R. Cross 『Heavier Than Heaven』(2001)
- ^ Daniel Kreps (2020年8月25日). “ニルヴァーナの楽曲が流れる『ザ・バットマン(原題)』最新予告編が初公開”. Rolling Stone Japan
- ^ ニルヴァーナ:ディスコグラフィー | NIRVANA:DISCOGRAPHY at the Wayback Machine (archived 2011-11-04)
- ^ “Dave's Music Database: Blender Magazine's 100 Greatest American Albums”. Dave's Music Database (2008年10月18日). 2023年3月8日閲覧。
- ^ “100 Best Albums of the '90s” (英語). Rolling Stone (2019年10月4日). 2023年3月8日閲覧。
- ^ “The 500 Greatest Albums of All Time” (英語). Rolling Stone (2020年9月22日). 2023年3月8日閲覧。
- ^ “Greatest of All Time Billboard 200 Albums” (英語). Billboard (2015年11月12日). 2023年3月8日閲覧。
- ^ Unterberger, Andrew (2016年9月29日). “All 92 Diamond-Certified Albums Ranked From Worst to Best: Critic’s Take” (英語). Billboard. 2023年3月8日閲覧。