原子爆弾解体新書〜ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム

U2のアルバム

原子爆弾解体新書〜ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム』(げんしばくだんかいたいしんしょ ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム、How to Dismantle an Atomic Bomb)は、アイルランドロックバンドU2の11枚目のスタジオ・アルバム2006年のグラミー賞において最優秀アルバム賞および最優秀ロック・アルバム賞を受賞した評価の高いアルバムである。

原子爆弾解体新書〜ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム
U2スタジオ・アルバム
リリース
録音 2003 - 2004年
ジャンル ロック
時間
レーベル アイランド(英)インタースコープ(米)
プロデュース スティーブ・リリーホワイトクリス・トーマスダニエル・ラノワブライアン・イーノ、ジャックナイフ・リー、ネリー・フーパー、フラッド、カール・グランヴィル
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 1位(英・全英アルバムチャート
  • 1位(米・Billboard 200
  • 4位(日本・オリコン
  • U2 アルバム 年表
    ザ・ベスト・オブU2 1990-2000
    (2002年)
    ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム
    (2004年)
    ザ・ベスト・オブU2 18シングルズ
    (2006年)
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    概要 編集

    タイトルはボーナストラックの「Fast Cars」の歌詞の一節から。Bombとは先年亡くなったボノの父親ボブ・ヒューソンのことである。[1]

    当初、クリス・トーマスをプロデューサーに迎えてセッションを行っていたが、満足するものが出来上がらず、スティーブ・リリーホワイト、ブライアン・イーノ、ダニエル・ラノワ、フラッド、ジャックナイフ・リー、ネリー・フーパーなどの一流プロデューサーを次から次に注ぎ込んでなんとか完成させた。[2]

    自ら先駆けとなったロックンロールリバイバル・ブームに乗っかったエッジのギターがギンギンに唸り、アダムとラリーのリズム隊がドタバタ忙しいロックアルバムで、当時ボノは「ファーストアルバムのつもりで作った」とか「The Whoの『Who's Next』を意識した」とか「BuzzcocksSiouxsie and the BansheesEcho & The BunnymenなどU2を作ったバンドを聴いていた」と発言しており、Black Rebel Motorcycle ClubYeah Yeah Yeahsなど当世のバンドの名前にも言及していた。[3]

    アルバムのセールスは900万枚を超え、再びグラミー賞を多数受賞して商業的にも批評的にも大成功し、日本でもっとも売れたU2のアルバムとなった……が、ボノは「曲は最高なのに部分が全体を超えていない」という趣旨のことを述べ[2]、音楽評論家のジョン・ウォーターズが「この20年もの間トップの座にあり、そこから滑り落ちまいとしているバンドによる、これといって特徴のないアルバム」という辛辣な評[4]があったからもわかるとおり、いまいち煮えきらない点があったのも事実。この頃からボノの政治活動が本格化し、レコーディングを休みがちだったことも一因かもしれない。

    なおアルバム製作中にフランスで本作のサンプルCDが盗まれ、ネット流出が心配される騒ぎが起こった。

    シングル曲「ヴァーティゴ」、「オリジナル・オブ・ザ・スピーシーズ」は、iPodのテレビCM曲として知られる。

    グラミー賞獲得歴 編集

    • 最優秀アルバム賞(2006年)
    • 最優秀ロック・アルバム賞(2006年)
    • 最優秀楽曲賞 - サムタイムズ・ユー・キャント・メイク・イット・オン・ユア・オウン(2006年)
    • 最優秀ロックパフォーマンス・グループ部門 - ヴァーティゴ(2005年)
    • 最優秀ロックパフォーマンス・グループ部門 - サムタイムズ・ユー・キャント・メイク・イット・オン・ユア・オウン(2006年)
    • 最優秀ロックソング部門 - ヴァーティゴ(2005年)
    • 最優秀ロックソング部門 - シティ・オブ・ブラインディング・ライツ(2006年)
    • 最優秀短編ミュージックビデオ賞 - ヴァーティゴ(2005年)

    収録曲 編集

    楽曲一覧 編集

    全作曲: U2。
    #タイトル作詞作曲・編曲プロデューサー時間
    1.ヴァーティゴボノジ・エッジU2スティーヴ・リリーホワイト
    2.ミラクル・ドラッグボノ、ジ・エッジU2リリーホワイト、カール・グランヴィルジャックナイフ・リー
    3.サムタイムズ・ユー・キャント・メイク・イット・オン・ユア・オウンボノU2クリス・トーマス、リリーホワイト、ネリー・フーパー
    4.ラヴ・アンド・ピース・オア・エルスボノ、ジ・エッジU2ブライアン・イーノダニエル・ラノワ、トーマス、リー、フラッド
    5.シティ・オブ・ブラインディング・ライツボノU2フラッド、トーマス、リー
    6.オール・ビコーズ・オブ・ユーボノU2リリーホワイト
    7.ア・マン・アンド・ア・ウーマンボノU2リー、リリーホワイト、グランヴィル
    8.クラムズ・フロム・ユア・テーブルボノU2リリーホワイト、リー
    9.ワン・ステップ・クローサーボノU2トーマス、ラノワ、リー
    10.オリジナル・オブ・ザ・スピーシーズボノU2リリーホワイト、リー
    11.ヤハウェボノ、ジ・エッジU2トーマス
    合計時間:
    イギリス、アイルランド、日本のボーナストラック
    #タイトル作詞作曲・編曲プロデューサー時間
    12.ファスト・カーズボノ、エッジ リリーホワイト
    合計時間:

    楽曲解説 編集

    • ミラクル・ドラッグ - Miracle Drug
      U2のメンバーの母校マウントテンプル・スクールの同窓生で、詩人・作家であるクリストファー・ノーランについての曲。彼は脳性麻痺をもって生まれたが、母親の愛情と献身的な介護によって、特製のコンピューターとキーボードで文字を打てるようになり、文才を発揮して、詩集や小説を著し、アイルランド最高の文学賞であるウィットブレッド賞を受賞した。2009年、異物を喉に詰まらせて、43歳の若さで亡くなった。[2]
      「With or Without You」と同じコード進行。「All That You Can't Leave Behind」のアウトテイク「Levitate」の一部が使われている。ボノとエッジの他、ラリーもコーラスに加わった「Numb」と並ぶ三人ヴォーカルの曲(でもラリーの声は聞こえない)。
      2004年イグアナ(スペイン)年間ベストシングル第35位
    • ラヴ・アンド・ピース・オア・エルス - Love and Peace or Else
      「All That You Can't Leave Behind」のアウトテイク。
    • ア・マン・アンド・ア・ウーマン - A Man and a Woman
      エンジニアがミキシングをしていたら、ボノがそれを気に入り、ベースギターを手に取って歌い始めて生まれた曲。エッジが弾いているアコースティック・ギターは別の曲から持ってきて、繋ぎ合わせたものである。ボノのヴォーカルにはThin Lizzyフィル・ライノットの影響があるのだという。ボノは「夏のニューヨークでポーチに座っているようなサウンドだ。僕はThe Clashマービン・ゲイを一つに繋ぎ合わせてみたかったんだ」と評している。曲のテーマは女性に対する忠誠とロマンスの再発見。[2]ボノは野放図なセックスなど退屈な代物で、1人の女性を愛するほうがずっとセクシーだという考え方の持ち主である。
      ツアーでは1度も演奏されたことがないが、ビル・クリントンの慈善事業と65歳の誕生日を祝うコンサートで、ボノとエッジによってアコギで演奏されたことがある。
    • クラムズ・フロム・ユア・テーブル - Crums from Your Table
      フランスの別荘で、ボノとエッジが酔っ払った状態で書いた曲で、最貧国が先進国に「テーブルの上のパン(Crumbs from Your Table)」、つまり経済援助をしてもらうために、平身低頭の姿勢でいなければならないことに怒っている。[2]Vertigoツアーで7回演奏された。
    • ワン・ステップ・クローサー - One Step Closer
      「All That You Can't Leave Behind」のアウトテイクで、丁度、近くに来ていたラノワにペダルスチールに加わってもらって、ボノとエッジはギターという編成でセッションして作った曲。ボノが父親のボブのために作った曲で、One Step Closerとは、ボノが「(瀕死の)父親は神を信じていると思うかい?」とノエル・ギャラガーに尋ねると、彼は「(神というものを理解できるところへ)一歩近づいているじゃないか」と答えたことが由来。ライナーノーツにはノエル・ギャラガーへの感謝の念が記されている。ボノは「The Velvet Undergroundから始まって、カントリーソングのようになった」と述べているが、エッジはグラム・パーソンズのようだと述べている。[2]ライブで演奏されたことは1度もない。
    • ヤハウェ - Yahweh
      レコーディングの前からエッジが構想を温めていた曲で、最初のテイクでボノがヴォーカルパートを付け加えたことにより、ドラマティックに発展。メンバーによれば、「書いた」のではなく「書かれた」曲の一つだそうだ。クリス・トーマスが去った後、、ラノワとリリーホワイトがプロデュースを担当し、ラノワなどはマンドリンまで採り入れようとしたが、完成作はトーマスプロデュース時のものとほとんど変わらないのだという。[2]
    • ファスト・カーズ - Fast Cars (英国盤・日本盤ボーナストラック)

    評価 編集

    イヤーオブ 編集

    • 2004年ローリングストーン年間ベストアルバム第7位[5]
    • 2004年ローリングストーン読者が選ぶ年間ベストアルバム第1位[6]
    • 2004年アンカット年間ベストアルバム第35位[7]
    • 2004年スピン年間ベストアルバム第29位[8]
    • 2004年NME年間ベストアルバム50第18位[9]
    • 2004年Qマガジン年間ベストアルバム第4位[10]
    • 2004年Mojoの読者が選ぶ年間ベストアルバム第9位[11]
    • 2004年ワード年間ベストアルバム第9位[12]
    • 2004年Humo(フランス)年間ベストアルバム第6位[13]
    • 2004年イグアナ(スペイン)年間ベストアルバム第29位[14]
    • 2004年スヌーザー年間ベストアルバム第7位[15]
    • 2004年IFPI・2004年ベストセラーアルバム第4位
    • 2006年グラミー賞最優秀アルバム賞
    • 2006年グラミー賞最優秀ロック・アルバム賞
    • 2006年メテオラ・ミュージック・アワード最優秀アイリッシュアルバム

    オールタイム 編集

    • 2006年BBCレディオ2が選ぶオールタイムベストアルバム第63位[16]
    • 2010年ローリングストーンが選ぶ00年代ベストアルバム100/ 68位[17]
    • 2010年Qマガジンが選ぶ21世紀のアーチスト&アルバム第33位[18]
    • 2011年Qマガジンが選ぶ人生のアルバム250第95位[19]

    脚注 編集

    1. ^ U2『HOW TO DISMANTLE AN ATOMIC BOMB』制作秘話:U2は自ら“核(atomic)の時代”を築く”. uDiscoverMusic | 洋楽についての音楽サイト. 2024年4月5日閲覧。
    2. ^ a b c d e f g U2 (著), 前 むつみ (監訳), 久保田 祐子 (翻訳)『U2 BY U2』シンコーミュージックエンタテイメント、2006年11月1日。
    3. ^ SNOOZER(スヌーザー) 2004年12月号
    4. ^ “Surrender to Peter Pan” (英語). The Guardian. (2004年12月6日). ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/music/2004/dec/06/popandrock.u2 2024年4月5日閲覧。 
    5. ^ Rocklist.net....Rolling Stone (USA) Lists Page 2...”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月5日閲覧。
    6. ^ Rocklist.net....Rolling Stone (USA) Lists Page 2...”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月5日閲覧。
    7. ^ Rocklist.net...Uncut Recordings Of The Year Lists  .....”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月5日閲覧。
    8. ^ Spin Magazine End Of Year Lists”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月5日閲覧。
    9. ^ Rocklist.net...NME End Of Year Lists 2004...”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月5日閲覧。
    10. ^ Rocklist.net...Q End Of Year Lists Lists  .....”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月5日閲覧。
    11. ^ Rocklist.net...Mojo End Of year Lists...”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月5日閲覧。
    12. ^ Rocklist.net...The Word Lists...”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月5日閲覧。
    13. ^ Rocklist.net...Humo - Albums of the year..”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月5日閲覧。
    14. ^ Rocklist.net....Iguana magazine Lists...”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月5日閲覧。
    15. ^ miz-to-abra. “SNOOZER年間ベストTOP10まとめ”. Tumblr. 2024年4月5日閲覧。
    16. ^ Rocklist.net...UK BBC Radio Lists...”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月5日閲覧。
    17. ^ Rocklist.net....Rolling Stone (USA) Lists Page 2...”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月5日閲覧。
    18. ^ Rocklist.net...Q Magazine Lists..”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月5日閲覧。
    19. ^ Rocklist.net... Q - 1001 Best Ever Songs...”. www.rocklistmusic.co.uk. 2024年4月5日閲覧。

    関連項目 編集