ハチャル・フンデサ暴動

ハチャル・フンデサ暴動(はちゃるふんでさぼうどう)は、2020年6月30日から2020年7月2日の三日間にわたってエチオピアオロミア州で発生した暴動である。オロモ人歌手のハチャル・フンデサ英語版 (ሀጫሉ ሁንዴሳ)が2020年6月29日に殺害されたことを皮切りに暴動が発生し、主にアディスアベバシャシャマネ英語版ジンマなどで過激化した。この暴動により少なくとも239人もの人々が殺害され、それと同時にハチャルの殺害に抗議する非暴力運動が海外でも展開されている。

ハチャル・フンデサ暴動
Hachalu Hundessa riots
日時2020年6月30日 – 2020年7月2日
場所エチオピアオロミア州、主にアディスアベバシャシャマネ英語版ジンマなど
原因オロモ人歌手のハチャル・フンデサ英語版の殺害
手段
結果
死傷者数
死者239+[1]

背景 編集

暴動の契機となったハチャル・フンデサはエチオピアで人気を博していた歌手であった。彼の歌には政治批判的なものが多く2016年エチオピア抗議デモ英語版では、彼の歌がオロモ人の民族主義の象徴として描かれハチャルはますます有名になっていった[2]。オロモ人はアムハラ人と共にエチオピアの二大民族であるが政治的権力はアムハラ人の方が大きく、またアムハラ人による差別に長年苦しんできた[3]。 2020年6月29日夜、ハチャルはアディスアベバ南部のゲラン (Gelan)のマンション街で何者かにで撃たれた[2][4]。ティルネシュ北京総合病院 (Tirunesh Beijing General Hospital)に搬送されるもハチャルは銃創が原因で死亡した[5]。ハチャルの死亡後、何千ものファンがハチャルが移送された病院に押し寄せたため、アディスアベバ市街では警察が病院の外に群がっていた群衆を四散させるために催涙ガスを使用した。これに対し群衆の一部はタイヤに火を付けるなどをして警察の"不当な扱い"に対して抗議し、市内のいくつかの地域では銃声も聞こえたと報告されている。ハチャルの遺体はその後彼の故郷であるアンボ英語版に移送される予定だったが、途中ジャワル・モハメド英語版やベケレ・ゲルバ (Bekele Gerba)といった抗議者によってハチャルの遺体が奪い去られアディスアベバに移送され埋葬された。

暴動 編集

オロモ人ミュージシャンであるハチャルの死は、エチオピアに以前から存在したオロモ人による公民権運動を更に活発化させ、エチオピア中に怒りや憤りが広がった。2020年6月30日ハチャルの死後、抗議デモ参加者はオロミア州とアディスアベバ市街の通りを占拠し、ハチャルの死を深く嘆き"ハチャルの正義"を要求するデモを行った[6]。 オロモ人活動家らは同年5月から6月にかけて行われたアメリカ合衆国ジョージ・フロイド抗議運動と今回のハチャルの殺害事件をなぞらえて論じていたが、これに対してそのような主張は意味のないものであり、民族運動において暴力を行使するための口実に過ぎないと批判する者も出た。6月30日、青年活動家らがアディスアベバ市街一帯にある公共施設や商業施設で暴動を起こし、商店が略奪される事件が起きた。また同日、市内において爆発が三度にわたって起き、容疑者と爆発に巻き込まれた一般市民が殺害された事件も起きた[7]。警察との戦闘も相次ぎ、7人の市民と3人の警官が石で殴られたり、銃で撃たれたり、一連の爆発事件によって犠牲となった[7]アダマの抗議デモでは、9人のデモ参加者が殺害され[8]、一般市民75人が怪我を負う事態となった。アンボでは3人の警官と78人の市民、うち9人の市民が保安部隊によって大混乱の中ハチャルの葬儀中に殺された[9]。犠牲者の中にはハチャルのおじもいた[10]

影響 編集

6月30日午前9時、混乱を招くということでインターネットがエチオピア中で遮断された[11]。メディアオーナーで活動家でもあるジャワル・モハメド英語版フェイスブックにて"やつらはハチャルを殺しただけではなく、オロモ民族の心をまたもや殺した!!我々を殺してみるがよい、だがオロモ人は絶対に屈しない、絶対に!!"とハチャルの殺害に悲憤慷慨した[12]

脚注 編集

  1. ^ "Ethiopia arrests suspects over Haacaaluu Hundeessaa killing", Al Jazeera. July 10, 2020. Retrieved July 11, 2020.
  2. ^ a b “Deadly protests erupt after Ethiopian singer killed”. BBC News. (2020年6月30日). https://www.bbc.com/news/world-africa-53233531 
  3. ^ “暴動で100人死亡 民族活動家の歌手射殺に抗議―エチオピア”. 時事通信社. (2020年7月4日). https://web.archive.org/web/20200704125928/https://www.jiji.com/jc/article?k=2020070400322&g=int 
  4. ^ “歌手で活動家の男性殺害、その後の抗議デモで81人死亡 エチオピア”. CNN. (2020年7月3日). https://www.cnn.co.jp/world/35156255.html 
  5. ^ Lethabo (2020年6月30日). “Hachalu Hundessa Death, Dead - Hachalu Hundessa Died, Killed, Wife, Wiki, Bio”. Latest News South Africa. https://www.latestnewssouthafrica.com/2020/06/30/oromo-music-star-hachalu-hundessa-reportedly-killed/ 
  6. ^ Context and Updates on Current Issues in Ethiopia” (英語). Embassy of Ethiopia, London (2020年7月8日). 2020年7月20日閲覧。
  7. ^ a b Fantahun, Arefaynie (2020年7月3日). “Addis Ababa in the aftermath of assassination of singer Hachalu”. Ethiopia Observer. https://www.ethiopiaobserver.com/2020/07/03/addis-ababa-on-the-aftermath-of-assassination-of-singer-haacaaluu/ 2020年7月6日閲覧。 
  8. ^ Dahir, Abdi Latif (2020年6月30日). “Hachalu Hundessa, Ethiopian Singer and Activist, Is Shot Dead”. The New York Times. https://www.nytimes.com/2020/06/30/world/africa/ethiopia-hachalu-hundessa-dead.html 
  9. ^ “A musician’s murder sparks mayhem in Ethiopia”. The Economist. (2020年7月5日). https://www.economist.com/middle-east-and-africa/2020/07/05/a-musicians-murder-sparks-mayhem-in-ethiopia 2020年7月6日閲覧。 
  10. ^ Ghedamu, Tefera; Feleke, Bethlehem; Adebayo, Bukola (2020年7月2日). “Slain Ethiopian activist and singer buried as 81 killed in protests”. CNN. https://www.cnn.com/2020/07/02/africa/ethiopian-singer-buried-protests-intl/index.html 2020年7月6日閲覧。 
  11. ^ “エチオピア、歌手殺害で騒乱 81人死亡”. フランス通信社. (2020年7月2日). https://www.afpbb.com/articles/-/3291460 
  12. ^ “Ethiopian singer Hachalu Hundessa shot dead in Addis Ababa”. Al Jazeera. (2020年6月30日). https://www.aljazeera.com/news/2020/06/popular-ethiopian-singer-hachalu-hundess-shot-dead-addis-ababa-200630071931911.html 

注釈 編集

外部リンク 編集