ハリケーン・アレン

ハリケーン・アレン(Hurricane Allen)は、1980年に発生したカテゴリー5ハリケーンである。特にハイチに大きな被害をもたらし、多数の死者を出した。

ハリケーン・アレン
Hurricane Allen
カテゴリ5メジャー・ハリケーン (SSHWS/NWS)
Hurricane Allen Aug 7 1980 1730Z.jpg
ハリケーン・アレン(8月7日)
発生1980年7月31日
消滅1980年8月11日
最大風速1分平均: 190 mph (305 km/h)
最低気圧899 mbar (hPa); 26.55 inHg
死者269人
被害$15.7億(1980の米ドル
被害地域ウィンドワード諸島リーワード諸島プエルトリコハイチジャマイカケイマン諸島ユカタン半島メキシコアメリカ合衆国

概要編集

 
進路図

ハリケーン・アレンは、1980年8月1日にアフリカの西の海岸線付近で熱帯低気圧に発達してカーボベルデ型ハリケーンとなった。しかし、アメリカ国立ハリケーンセンター(NHC)は、熱帯低気圧がウィンドワード諸島の東およそ2,100kmの地点に達するまで24時間の間に何ら発達過程を発表しなかった。熱帯低気圧は、2日にはカリブ海方面に進みながら強力になり、「アレン(Allen)」と命名された。1980年に発生したハリケーンとしては最初に名前が付けられた。 NHCは、今後アレンが通過するであろう海域の海水温が高く、発達に必要な要件を満たしたと判断したが、プエルトリコ付近の北から冷たい空気が南下して、約72時間の間には発達しない可能性もあるとした。アレンはゆっくり移動するようになると予想されたが、時速27〜37kmの速度で西進した。3日には、NHCがプエルトリコ付近の冷たい空気が弱まり、アレンは今後より発達すると予測した。3日16時に風速155km/hが観測され、NHCはアレンをハリケーンに分類した。しかし後の分析の結果では、16時間前の前日の深夜には既にハリケーンに昇格していたという。アレンは4日の深夜、バルバドス首都ブリッジタウンの北西およそ61kmの海上でメジャー・ハリケーンとなった。また6時間後にはセントルシアの南およそ13kmを通過した。以後2時間でアレンはカテゴリー4になり、この日の午後には中心気圧946hPaを記録した。5日の深夜になる少し前に、中心気圧は924hPaになり1979年ハリケーン・デイビッド英語版と同じ数値となった。5日には、プエルトリコの南の海上でカテゴリー5になった。これは当時、北大西洋で発生したハリケーンの中では最も早い日時にカテゴリー5になったとして記録を残したが、25年後の2005年には、ハリケーン・エミリーが7月16日にカテゴリー5となり、この記録が更新された。このときアレンの中心気圧は911hPaを記録しており、カリブ東部では最も低い中心気圧の記録となった。また、NHCの予測に反して10時間後に35hPa気圧が低下した。アレンの中心は、ジャマイカとイスパニョーラ島の間をカテゴリー4の勢力で通過した。ハイチとジャマイカの山の間を通りながら衰弱したアレンは、島から遠ざかると再びカテゴリー5になり、一日の間勢力が維持された。キューバとメキシコのユカタン半島の間を通過中に中心気圧が899hPaが記録されている。アレンはこの時まで、カリブ海のどの島にも上陸せずに西に移動していた。再びカテゴリー4にやや弱まったが、メキシコ湾に進入すると、3回目となるカテゴリー5に達した。この勢力は一日の間維持され、中心気圧は909hPaで少し高まったが、それでもなお非常に強い勢力を保った。その後アレンは11日に消滅した。

記録編集

アレンは、大西洋で発生したハリケーンの中では勢力が過去5番目に強く、また一生の間にカテゴリー5の勢力であった期間が3度も存在した稀なハリケーンであった。また、前述のように、当時北大西洋のハリケーンとしては史上最も早い日時にカテゴリー5となり、2005年のハリケーン・エミリーが7月16日にカテゴリー5になるまでこの記録は破られなかった。

最強烈の大西洋ハリケーン
順位 ハリケーン 中心気圧 (hPa)
1 ウィルマ(Wilma) 2005年 882
2 ギルバート(Gilbert) 1988年 888
3 レイバー・デー(Labor Day) 1935年 892
4 リタ(Rita) 2005年 895
5 アレン(Allen) 1980年 899
6 カミーユ(Camille) 1969年 900
7 カトリーナ(Katrina) 2005年 902
8 ミッチ(Mitch) 1998年 905
ディーン(Dean) 2007年
10 マリア(Maria) 2017年 908

被害編集

アレンによる被害は特にハイチで大きく、総死者数269人のうち220人がハイチで死亡している。

国別の被害状況
死者数 (人) 被害額 出典
  バルバドス 0 600万ドル [1]
  ケイマン諸島 0 - [2]
  キューバ 3 -
  ドミニカ共和国 7 4700万ドル
  グレナダ 0 530万ドル
  グアドループ 1 - [2]
  ハイチ 220 4億ドル [1][3]
  ジャマイカ 8 1億ドル [1]
  マルティニーク 0 6800万ドル
  メキシコ 0 - [3]
  セントルシア 6 2億3500万ドル [1]
  セントビンセント・グレナディーン 0 1,630万ドル
  アメリカ合衆国 6 6億3千万ドル [3][4]
オフショア(Offshore) 17 6000万ドル [3]
合計 269 15億7,000万ドル

被害の様子編集

その他編集

「アレン(Allen)」という名前はこのハリケーン限りで使用中止となり、「アンドリュー(Andrew)」という名前に変更されたが[5]、この名前も1992年ハリケーン・アンドリューでの使用を最後に引退となったため、最終的には「アレックス(Alex)」という名前に置き換えられた。

脚注編集

  1. ^ a b c d Lawrence, Miles B; Pelissier, Joseph M (July 1, 1981). “Atlantic Hurricane Season of 1980”. Monthly Weather Review (American Meteorological Society) 109 (7): 1567–1582. Bibcode1981MWRv..109.1567L. doi:10.1175/1520-0493(1981)109<1567:AHSO>2.0.CO;2. 
  2. ^ a b National Hurricane Center. Hurricane Allen Tropical Cyclone Report Page 5 (Report). National Oceanic and Atmospheric Administration. http://www.nhc.noaa.gov/archive/storm_wallets/atlantic/atl1980-prelim/allen/prelim05.gif 2012年12月6日閲覧。. 
  3. ^ a b c d National Hurricane Center. “Hurricane Allen Tropical Cyclone Report Page 6”. National Oceanic and Atmospheric Administration. 2008年12月14日閲覧。
  4. ^ Hebert, Paul J; Taylor, Glenn; National Hurricane Center (January 1983). The Deadliest, Costliest, and Most Intense United States Hurricanes of This Century (and Other Frequently Requested Hurricane Facts) (NOAA Technical Memorandum NWS TPC-18). United States National Oceanic and Atmospheric Administration's National Weather Service. p. 5. オリジナルのDecember 3, 2012時点におけるアーカイブ。. https://www.webcitation.org/6CcbwRKHS?url=http://www.aoml.noaa.gov/general/lib/lib1/nhclib/nwstechmemos/techmemo18.pdf 2012年12月2日閲覧。. 
  5. ^ Gadsden Times - Google ニュース アーカイブ検索”. news.google.com. 2020年8月21日閲覧。