ハード・バップ
ハード・バップ(Hard bop)は、モダン・ジャズの一種。ニューヨークなどのアメリカ東海岸で、1950年代に始まり1960年代まで続いた演奏スタイルである。アフロアメリカンのジャズサウンド・スタイルの一つ。のちにこのスタイルを刷新しようとしたジャズマンたちが、ソウル・ジャズ、フリー・ジャズなどを生み出していった。
ハード・バップ | |
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アート・ブレイキー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズ(1960年) | |
様式的起源 | ゴスペル音楽、ブルース、ワーク・ソング、R&B、黒人霊歌 |
文化的起源 |
1940年代後半 アメリカ合衆国 |
使用楽器 | サクソフォーン、トロンボーン、トランペット、ギター、ダブルベース、ベース、ドラム、ピアノ、オルガンなど |
派生ジャンル | |
関連項目 | |
本文参照 |
歴史
編集「ビバップの発展過程での揺り戻し」「クール・ジャズやウエストコースト・ジャズ」のソフトなサウンドを嫌った黒人ジャズメンが創造した[1]」「黒人のブルースフィーリングを熱く押し出したもの」と様々な形容がなされている。
1950年代後半、モダン・ジャズ・カルテット、アート・ブレイキー、マイルス・デイヴィスのグループらによって確立された(ジャズ評論家行方均によれば、アート・ブレイキー『バードランドの夜』〈1954年〉をハードバップの誕生アルバムとしている)。ハードバップの特徴は、ビバップのように、コード進行に乗せた、あるいはコード分解によるアドリブといった基本は一緒だが、それよりも特にソロのアドリブ演奏で、ホットでハードドライビングしながらも、メロディアスに洗練された演奏スタイルにあるといわれる。しかし、よりフレーズが重要視されるため、メロディーとして成立しない音を音階から外さざるをえず、同じコードを使用しても、使えない音が出てくることが多い。そのためビバップよりも、融通性のないメロディーやフレーズになりやすいという側面を持つ。
1950年代中頃、ビバップは激化したアドリブ演奏によって、より難解で本能的な音楽と化していた。それに加え、1955年のチャーリー・パーカーの死も重なり、一般大衆ファンはビバップから徐々に離れはじめていた。その中でハードバップは、メロディアスで聴きやすいと同時に、演奏者の個性や情熱を表現することができ、大衆性と芸術性の共存を可能にした[2]。これはジャズにおける一種の到達点となり、ブルーノート・レコード(1500番台、4000番台)を筆頭に数多くのアルバムが作られた。一般大衆から愛好家まで、多くのファンから支持を集め、1960年代半ばまでのジャズ黄金期を支えた。
また、ハード・バップの一部は、アフロ・キューバン、ラテン音楽の要素、とりわけルンバやマンボ等を取り入れて、ラテン・ジャズへと発展していった。特にハード・バップで演奏されるものはアフロ・キューバン・ジャズといわれることが多い。
代表的なアーティスト
編集- マイルス・デイヴィス (1926年-1991年)
- ジョン・コルトレーン
- ホレス・シルヴァー
- マックス・ローチ (1924年-2007年)
- アート・ブレイキー (1919年-1990年)
- チャールズ・ミンガス
- ジョン・ルイス (1920年-2001年)
- クリフォード・ブラウン (1930年-1956年)
- リー・モーガン (1938年-1972年)
- ソニー・ロリンズ (1929年-)
- ジョニー・グリフィン (1928年-2008年)
- エルヴィン・ジョーンズ (1927年-2004年)
- ポール・チェンバース (1935年-1969年)
- トミー・フラナガン (1930年-2001年)
脚注
編集参考文献
編集- 細川周平、後藤雅洋、村井康司、寺島靖国、小川隆夫、加藤総夫、柳沢てつや、北里義之、大村幸則、瀧口秀之、西島多恵子、山下泰司、黒田京子、桜井圭介、上野俊哉、米田栄、田辺秀樹、高橋順一、川竹英克、田村和紀夫、大宅緒、高見一樹、島原裕司、柴俊一『新版 ジャズを放つ』洋泉社、1997年、22頁。ISBN 4896912500。