バグダッド・カフェ

バグダッド・カフェ』(原題:Out of Rosenheim、英題:Bagdad Café) は、 1987年制作の西ドイツ映画

バグダッド・カフェ
Out of Rosenheim
監督 パーシー・アドロン英語版
脚本 パーシー・アドロン
エレオノーレ・アドロン
製作 パーシー・アドロン
エレオノーレ・アドロン
製作総指揮 デートリッヒ・フォン・ワツドルフ
出演者 マリアンネ・ゼーゲブレヒト
CCH・パウンダー
ジャック・パランス
音楽 ボブ・テルソン英語版
主題歌 ジェヴェッタ・スティール英語版コーリング・ユー英語版
撮影 ベルント・ハインルドイツ語版
編集 ノルベルト・ハーツナードイツ語版
配給 アメリカ合衆国の旗 アイランド・ピクチャーズ
日本の旗 KUZUIエンタープライズ
公開 西ドイツの旗 1987年11月12日
日本の旗 1989年3月4日
上映時間 91分(オリジナル版)
108分(再編集版)
製作国 西ドイツの旗 西ドイツ
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
ドイツ語
興行収入 アメリカ合衆国の旗 $3,587,303
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概要編集

アメリカ合衆国の砂漠地帯にあるダイナーガソリンスタンドモーテル「バグダッド・カフェ」に集う人々と、そこに現れたドイツ人旅行者の女性の交流を描いた、大人のためのファンタジーの趣がある作品。

ジェヴェッタ・スティール英語版が歌うテーマ曲「コーリング・ユー英語版」は、第61回アカデミー賞歌曲賞にノミネートされたほか、映画公開後も多数の歌手によりカバーされるヒット曲となった。

数回にわたり、再上映のための新編集版が製作されている(後述)。

日本では1989年に東京都のミニシアターシネマライズ」で初公開され、同館では数か月にわたりロングランヒットし、当時の日本国内におけるミニシアターブームを代表する一作となった。

ストーリー編集

モハーヴェ砂漠を貫く幹線道路。ドイツから旅行に来た夫婦がラスベガスを目指す中、レンタカーの中で喧嘩を始め、妻・ジャスミンは車を降り、自分の荷物を持って飛び出してしまう。

ジャスミンが重いトランクを引きずって歩き続けた先には、砂漠の中に孤立したように存在する、さびれたダイナー兼ガソリンスタンド兼モーテル「バグダッド・カフェ」があった。その店ではちょうど、女主人・ブレンダが、仕事をしない夫を怒鳴り散らし、追い出したところだった。モーテルの部屋を借りたジャスミンは、部屋の壁に飾られた、2つの太陽(幻日)が輝く空を描いた風景画に魅了される。われに返り、着替えようとトランクを開けるが、そこに入っていたのは夫の着替えや生活用品だった。持ってきたのは自分のトランクだったが、荷物を詰め間違えていたのだった。部屋の掃除に入ったブレンダは、男ものの服やひげ剃りなどが部屋に広げられているのを見て不審を抱く。

暇をもてあましたジャスミンは、勝手に店の大掃除をしたり、赤ん坊をあやしたりするうち、バグダッド・カフェの店員のようにふるまうようになり、少しずつブレンダの警戒を解いていきつつ、カフェに集う人々とも打ち解けていく。また、夫の荷物の中に入っていた手品練習セットで遊ぶうち、手品の腕前が上達し、カフェの客に披露すると、評判が評判を呼んで、かつて閑古鳥が鳴いていた店は、マジックショーを上演するダイナーとして大繁盛となる。

ある夜、地元の保安官が店に現れ、ジャスミンにビザの期限切れと労働許可証の不所持をただし、ドイツへの帰国を命じる。ジャスミンが去ったバグダッド・カフェには、人々が寄り付かなくなった。

しばらくのち。バグダッド・カフェにふたたびジャスミンが現れた。カフェの人々とジャスミンは、再会を喜び合った。これまでのようにマジックショーを上演する日々を送る中、ジャスミンの部屋を、店の常連客の老画家・ルディがたずねる。ルディはジャスミンの部屋にある風景画の作者で、画家とモデルとして頻繁に会ううちに、惹かれ合うようになっていた。ルディは「再会できてうれしいが、このままではふたたびビザの問題が起こる。アメリカ市民と結婚すれば問題は回避できる」と告げる。それは不器用な結婚の申し出だった。ジャスミンは「イエス。ブレンダと相談するわ」と返答した。

登場人物編集

ジャスミン・ムンシュテットナー[1]
本作の主人公。自身では「ヤスミン」と名乗る(ドイツ語では子音Jが硬口蓋接近音となるため)。ドイツ・バヴァリア州ローゼンハイムからアメリカにやってきた旅行者の中年女性。夫いわく、「太ったドイツ人の女」。バグダッド・カフェのモーテルに住み着き、店の手伝いや、常連客のルディの絵のモデルをするようになる。ひどく濃いコーヒーを好む。ビザの問題のため一時帰国したのち、すぐに舞い戻る。
ブレンダ
バグダッド・カフェの女主人。ジャスミンがやってきた頃には、子育てと店の経営難のために常に機嫌が悪く、誰に対しても怒鳴り散らしていた。ジャスミンと打ち解け、笑顔を取り戻す。
カヘンガ
バグダッド・カフェの店員。客がいないときは常に、カウンターの後ろでハンモックを吊って眠りこけている。
フィリス
ブレンダとサルの娘。ダンスが得意で、マジックショー上演時はダンスで観客を盛り上げる。
サル・ジュニア(サロモ)
ブレンダとサルの息子。ピアノに熱中していて、常にカフェの中に置かれたピアノを弾いている。ブレンダに注意されたときや、カフェの外にいるときは、鍵盤の形にかたどられた板の上に指を這わせていた。マジックショー上演時は伴奏を担当。ジャスミンがドイツから来たと知って、バッハの祖国であることから憧れを抱く。
赤ん坊
名前は不明。ブレンダが世話をしていたが、物語の中盤でサロモの子供であることが明らかにされる。
ルディ・コックス
バグダッド・カフェのそばにトレーラーハウスを設置し、絵を書いて暮らしている老人。かつてはハリウッドで映画美術の仕事をしていた。光の輝きが2つ横に並んだモチーフを好み、それを図案化したものを自身の作品の署名の代わりとしている。ジャスミンはそのマークを自分の入れ墨にした。
デビー・ベビー
女入れ墨師。モーテルの一角に店を開き、カフェの常連のトラック運転手などに入れ墨を施している。ほとんど台詞を発しないが、物語の終盤、突如カフェの人々に「仲がよすぎるわ」とだけ告げ、旅に出た。
エリック
カフェとモーテルの間の空き地にテントを張って住み着いている若者。ブーメランで遊んだり、フィリスに勉強を教えたりして過ごしている。
サル
ブレンダの夫。注文したコーヒーマシンをいつまでも取りに行かず、代わりに砂漠で魔法瓶(ジャスミンの忘れ物)を拾って帰ったことでブレンダの怒りを買い、店を追い出された。その後しばらくは、高台に停めた自動車に寝泊まりしながら、双眼鏡越しにバグダッド・カフェを観察するだけの日々を送っていた。やがてブレンダと和解する。
ムンシュテットナー氏
ジャスミンの夫。嗅ぎたばこを常用している。ジャスミンを探すため、ジャスミンより先にバグダッド・カフェにたどり着いたが、店の異様な雰囲気に圧倒され、すぐに立ち去った。これ以降一切登場せず、言及もされない。
アーニー
地元の保安官。先住民系で、2本の三つ編みに束ねた長髪がトレードマーク。不法滞在者となったジャスミンに帰国を命じた。

キャスト編集

製作編集

ロケーション編集

撮影はカリフォルニア州ニューベリースプリングス英語版で行われた。「バグダッド」は同名の中東の都市のことではなく、当地の地名(en:Bagdad, California)である。

撮影に使われたカフェ部分の建物は、実際にダイナーとして営業していた店舗を用いた。撮影終了後、店は映画と同じ店名の「バグダッド・カフェ」に改められ、多くの観光客が訪れる名所となっている[2]

再編集版編集

1994年には、オリジナル版に17分の未公開カットを追加した『バグダッド・カフェ 完全版』がリバイバル上映された。この『バグダッド・カフェ 完全版』の画面比率をビスタサイズ(1.66:1)からワイドスクリーンサイズ(2.35:1)にカットし、色調などを再調整した『バグダッド・カフェ 完全版 デジタル・ニューマスター』が映像ソフト化され、日本では2003年4月25日にDVDとして発売された。

2008年には、パーシー・アドロン英語版監督が全てのカットの色と構図を調整し直した『バグダッド・カフェ ニュー・ディレクターズ・カット版』が製作され、カンヌ国際映画祭で上映された。日本でも、初公開から20周年を迎えた2009年12月5日よりユーロスペースシネ・ヌーヴォほかで全国順次公開された。

受賞編集

他媒体版編集

脚注編集

  1. ^ 表記は日本語字幕に基づく。Münchgstettnerはより正確に音写した場合「ミュンヒシュテットナー」とするのが妥当である。
  2. ^ Bagdad Cafe (ニューベリー・スプリングス) の口コミ トリップアドバイザー

外部リンク編集