バッジエンジニアリング
バッジエンジニアリング(Badge engineering)は、自動車業界において兄弟車・姉妹車を別の販売網で売るために商品名やエンブレム、いわゆる車名やブランド名のバッジを変えて販売する手法。
自動車におけるOEMでありリバッジ(Rebadge)ともいう[1]。また、このような車種をリバッジモデルまたはバッジモデルという[1]。
概要編集
多くの自動車ブランドを擁するアメリカ合衆国のビッグスリーや、イギリスのBMC(現在は消滅)、フランスのルノー、日本ではトヨタ自動車やその子会社などに多く見られる。実際にはバッジのみならず、ブランド毎の「伝統」や「価格差」を表現するため、また、販売国の嗜好を反映させるために、ラジエーターグリルや、時には灯火類(前照灯や尾灯)まで含めた変更がなされている。
日本では1970年頃から登場し、主に販売チャネルの多さや、傘下のダイハツ工業や日野自動車との結びつきが強いことから、トヨタ自動車が得意としている。最近ではディーラー網の統廃合などで乗用車については減りつつある。
一方、各社の合理化により、生産車種を絞る傾向にある昨今の風潮のなかで、乗用車大手が小型トラックなど、商用車のラインナップをそろえる際に多用されるようにもなっている。代表的な車種に、いすゞ自動車、日産自動車、マツダ、UDトラックス(旧:日産ディーゼル工業)の4社間における系列を超えたエルフの供給関係がある。また、乗用車においてもある特定のジャンルのラインナップ強化は必要と認識しているものの事情(自社開発を断念せざるを得ない理由がある、グループに近似した未発売の車種がある[2]、そのジャンルがそのメーカーの苦手分野である[3]、各種規制等から販売上の有利・不利がある[4]、製品の販路拡大が望める[5]など)により外部から供給する場合もある。変わった事例としてはダイハツ・メビウスやいすゞ・コモのようにその市場の特性から、ある特定の市場にのみ異なる名称が与えられるケースもある。
更に近年では2代目日産・クリッパー[6]やUD・カゼットのケースのように「A車のOEM元であったB車がC車のOEMとなり、その結果A車がC車のOEMとなる」という二重OEMとでも言うべき状況まで発生している。
ダッジ・スプリンター |
バッジエンジニアリングの一覧編集
トヨタ自動車編集
メイン車種 | OEM車種 | 概要 |
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トヨタ・カムリ(6代目以降) | ダイハツ・アルティス | |
トヨタ・コースター | 日野・リエッセII | 現在は両車共エンジンは日野製・車体は岐阜車体製[7] |
トヨタ・プリウスα | ダイハツ・メビウス | |
トヨタ・プロボックス/サクシード | マツダ・ファミリアバン(10代目以降) | |
トヨタ・ライトエーストラック | ダイハツ・デルタ750(セブンハーフ) |
日産自動車編集
メイン車種 | OEM車種 | 概要 |
---|---|---|
日産・ADバン | スバル・レオーネバン(4代目~5代目) | |
マツダ・ファミリアバン(7代目~9代目) | ||
三菱・ランサーカーゴ(2代目) | ||
日産・ADワゴン | マツダ・ファミリア(7代目) | |
日産・NV350キャラバン | いすゞ・コモ | |
三菱ふそう・キャンターバン | 日本未発売 | |
日産・セレナ | スズキ・ランディ | |
いすゞ・エルフ100 | ||
三菱ふそう・キャンターガッツ |
スズキ編集
ダイハツ工業編集
メイン車種 | OEM車種 | 概要 |
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ダイハツ・アトレー | スバル・ディアスワゴン | |
ダイハツ・タント | スバル・シフォン | |
ダイハツ・ミライース | スバル・プレオプラス | |
トヨタ・ピクシスエポック | ||
ダイハツ・ムーヴ | スバル・ステラ(2代目以降) | |
ダイハツ・ムーヴコンテ | トヨタ・ピクシススペース | |
ダイハツ・ハイゼット | スバル・サンバー(7代目以降) | |
トヨタ・ピクシストラック/ピクシスバン |
本田技研工業編集
メイン車種 | OEM車種 | 概要 |
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ホンダ・アコード(セダン) | いすゞ・アスカ(3~4代目) | |
ホンダ・クイントインテグラ(セダン) | ローバー・416i | 画像 |
ホンダ・ドマーニ | いすゞ・ジェミニ(4~5代目) | |
ホンダ・トルネオ | いすゞ・アスカ(4代目) |
富士重工業(現・SUBARU)編集
メイン車種 | OEM車種 | 概要 |
---|---|---|
スバル・レガシィ(初代セダン) | いすゞ・アスカCX(2代目アスカ) | |
スバル・レオーネエステートバン(3代目) | いすゞ・ジェミネットII |
いすゞ自動車編集
メイン車種 | OEM車種 | 概要 |
---|---|---|
いすゞ・エルガ | 日野・ブルーリボンII | |
いすゞ・ビッグホーン | スバル・ビッグホーン | |
いすゞ・フォワード | UD・コンドル(5代目) |
日野自動車編集
メイン車種 | OEM車種 | 概要 |
---|---|---|
日野・デュトロ | トヨタ・ダイナ | |
トヨタ・トヨエース(7代目~8代目) |
三菱ふそうトラック・バス編集
メイン車種 | OEM車種 | 概要 |
---|---|---|
三菱ふそう・キャンター | 日産・NT450アトラス | |
UD・カゼット |
ルノー編集
メイン車種 | OEM車種 | 概要 |
---|---|---|
ルノー・キャプチャー | ルノーサムスン・QM3 | 日本未発売 |
ルノー・トラフィック | 日産・NV300 | 日本未発売 |
フィアット・タレント | ||
三菱・エクスプレス |
ルノーサムスン自動車編集
メイン車種 | OEM車種 | 概要 |
---|---|---|
ルノーサムスン・SM5 | ルノー・サフラン(2代目) | 日本未発売 |
ルノー・ラティテュード/サフラン(3代目) | ||
ルノーサムスン・SM3 | ルノー・スカラ(初代) | 日本未発売 |
日産・アルメーラクラシック | ||
ルノー・フルエンス(2代目) | ||
ルノーサムスン・XM3 | ルノー・アルカナ | 日本未発売 |
ダチア編集
メイン車種 | OEM車種 | 概要 |
---|---|---|
ダチア・ロガン | ルノー・ロガン | 日本未発売 |
日産・アプリオ | ||
ダチア・ダスター | ルノー・ダスター | 日本未発売 |
日産・テラノ |
オペル編集
メイン車種 | OEM車種 | 概要 |
---|---|---|
オペル・インシグニア | ボクスホール・インシグニア | 日本未発売 |
ビュイック・リーガル | ||
ホールデン・コモドア |
ビュイック編集
メイン車種 | OEM車種 | 概要 |
---|---|---|
ビュイック・ラクロス | GM・アルフェオン | 日本未発売 |
シボレー編集
メイン車種 | OEM車種 | 概要 |
---|---|---|
シボレー・クルーズ(2代目) | ホールデン・クルーズ | 日本未発売 |
脚注編集
- ^ a b OEM 日刊カーセンサー
- ^ いすゞ・ジェミニやGM大宇・ラセッティのようにグループの世界戦略車として仕向け地別にブランドや名称を変えて販売されるケースもある。
- ^ かつてCAFE基準が定められた際、アメリカのメーカーが日本車を自社ブランドで販売することがあった。
- ^ ジオやアスナの各車種はいすゞ、大宇自動車などの生産する輸入車であったがアメリカ車(GM車)と見なされたため関税が掛からず、廉価な設定となった。
- ^ 時に、トヨタ・デュエットや日産・オッティのように、本家(左記の事例では、それぞれダイハツ・ストーリアと三菱・eK)より姉妹車の方がメーカーのネームバリューや販売力の差などにより多く売れるという逆転現象が起こることもある。
- ^ 元々クリッパーは三菱・ミニキャブ(/タウンボックス)のOEMだったが、当のミニキャブ自体がスズキ・キャリイのフルチェンジを機にキャリイ/エブリイのOEMに切り替わった。その結果、クリッパーもキャリイ系のOEMとなり、キャリイ系は元来そのOEMだったマツダ・スクラムと並び日本車でまれに見る4兄弟車種となった。
- ^ 2016年12月までトヨタ車体製。
- ^ MiEV電気自動車を除く