バリー・ジェンキンス
バリー・ジェンキンス[1][2](英: Barry Jenkins、1979年11月19日[3] - )は、アメリカ合衆国の映画監督・脚本家である。現在はロサンゼルスに拠点を置いており、"Medicine for Melancholy" (en) (2008年)や、アカデミー賞をはじめとして多くの映画賞を獲得した『ムーンライト』(2016年)などの作品で知られる[4]。社交クラブアルファ・ファイ・アルファのメンバーでもある。
バリー・ジェンキンス Barry Jenkins | |||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2009年撮影 | |||||||||||||||||||||||||||
生年月日 | 1979年11月19日(45歳) | ||||||||||||||||||||||||||
出生地 | アメリカ合衆国、フロリダ州マイアミ | ||||||||||||||||||||||||||
職業 | 映画監督、脚本家 | ||||||||||||||||||||||||||
活動期間 | 2003年 - 現在 | ||||||||||||||||||||||||||
主な作品 | |||||||||||||||||||||||||||
監督・脚本 『ムーンライト』 『ビール・ストリートの恋人たち』 製作・製作総指揮 『17歳の瞳に映る世界』 『aftersun/アフターサン』 | |||||||||||||||||||||||||||
|
幼少期から大学まで
編集ジェンキンスは1979年にフロリダ州マイアミのリバティ・シティで生まれた[5][6]。年長のきょうだいが3人いる。父親はジェンキンスが12歳の時に亡くなったが、彼が自分の実の子どもではないと考え、亡くなる前にジェンキンスの母親とは別居していた[7]。子ども時代を通じて、ジェンキンスは母親と別居して別の女性に育てられ、混み合ったアパートで暮らした。彼はマイアミ・ノースウェスタン高等学校に入学し[8][3]、フットボールクラブでプレイした。高校卒業後はフロリダ州立大学に進んだ[9]。
キャリア
編集2000年代:初期の作品
編集ジェンキンスは、2008年の映画 "Medicine for Melancholy" (en) でデビューした[10]。作品は低予算・自主制作の長編映画で、ワイアット・シナク、トレイシー・ヘギンズ(英: Tracey Heggins)が主演した[10]。作品は批評家の間で好評となった[9]。
この作品の成功を受け、ジェンキンスは「スティーヴィー・ワンダーとタイム・トラベル」(英: Stevie Wonder and time travel)を題材にした長編英雄映画(フォーカス・フィーチャーズ制作)、ジェイムズ・ボールドウィンの小説『ビール・ストリートに口あらば』の翻案を手掛けたが、どちらも制作には至らなかった[9][11]。彼は大工として働き、広告会社 Strike Anywhere を共同設立した[9]。2011年には、貧民街の高級住宅地化を扱ったSF短編映画 "Remigration" の脚本・監督を担当した。ジェンキンスはこの後、HBOの番組『LEFTOVERS/残された世界』の脚本家になったが、「ほとんど上手く行かなかった」と語っている[9]。
2016年:『ムーンライト』の躍進
編集2016年、ジェンキンスは、タレル・アルヴィン・マクレイニーと脚本を共著し、8年ぶりの新作映画『ムーンライト』を監督した[9]。映画はマクレイニー・ジェンキンス双方の出身地だったマイアミ・リバティ・シティで撮影され[12]、2016年9月にテルライド映画祭で初上映されると、批評家に絶賛され、様々な映画賞を受賞した[13][14]。『ニューヨーク・タイムズ』のA・O・スコットは、「『ムーンライト』は黒人の身体の気高さ、美しさ、脆さ、そして黒人の生命の存在・肉体的問題を強調している」と述べた[15]。『バラエティ』誌では、「サウス・フロリダでの幼少期を活き活きと描いたバリー・ジェンキンスの描写は、彼の人生における3つのステージを再考するもので、現在のアフリカ系アメリカ人の経験について豊かな洞察を提供してくる」と書かれた[16]。『アトランティック』誌のデイヴィッド・シムズは、「他の偉大な映画と同じように、『ムーンライト』は明確かつ徹底的だ。アイデンティティに関する物語だ——登場人物について考えたことを、観客によく考えるようにも求める、聡明で骨の折れる仕事でもある」と述べた[17]。
作品は多くの映画賞を受賞し、その中にはゴールデングローブ賞 映画部門 作品賞 (ドラマ部門)や[18][19]、アカデミー作品賞も含まれている[20]。ジェンキンス・マクレイニーはアカデミー脚色賞も受賞したほか、第89回アカデミー賞ではアカデミー監督賞を含めた8部門にノミネートを受けた[21][22]。
2017年 - 現在
編集ジェンキンスは『ムーンライト』の次回作として、コルソン・ホワイトヘッドの小説 "The Underground Railroad" (en) を原作にしたシリーズと、クラレッサ・シールズの人生を基にした戯曲を制作中である[23][24]。
『TRUE DETECTIVE』のシーズン4の製作総指揮を務めた[25]。
作品
編集映画
編集年 | 題名 | 備考 | 出典 |
---|---|---|---|
2008 | メランコリーの妙薬 Medicine for Melancholy |
監督・脚本 | [26] |
2016 | ムーンライト Moonlight |
||
2018 | ビール・ストリートの恋人たち If Beale Street Could Talk |
監督・脚本・製作 | |
2020 | 17歳の瞳に映る世界 Never Rarely Sometimes Always |
製作総指揮 | |
2022 | aftersun/アフターサン Aftersun |
製作 | |
2024 | ライオン・キング:ムファサ Mufasa: The Lion King |
監督 | [27] |
受賞とノミネート
編集脚注
編集注釈
編集- ^ 英: New Directors Competition
- ^ 『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』との共同受賞。
- ^ 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』との共同受賞。
出典
編集- ^ “作品賞はバリー・ジェンキンス監督の「ムーンライト」受賞作読み間違いで混乱も”. 産経新聞 (2017年2月27日). 2017年3月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月12日閲覧。
- ^ “映画『ムーンライト』にアカデミー賞を──ある映画人のオープンレター”. WIRED (2017年2月27日). 2017年3月12日閲覧。
- ^ a b “Miami plays a starring role in the glorious ‘Moonlight’”. マイアミ・ヘラルド (2016年10月21日). 2017年3月13日閲覧。
- ^ Rothman, Michael (February 26, 2017). “'Moonlight' wins best picture after 'La La Land' mistakenly announced”. ABC News February 27, 2017閲覧。
- ^ Keegan, Rebecca (2016年9月4日). “Telluride Film Festival audiences take a shine to Barry Jenkins' 'Moonlight'”. ロサンゼルス・タイムズ. 2017年3月13日閲覧。
- ^ Cusumano, Katherine (2016年10月25日). “Meet Ashton Sanders, the Breakout Star of "Moonlight"”. W. 2017年3月13日閲覧。
- ^ Stephenson, Will (2016年10月4日). “Where’s The Next Film, Barry?”. The Fader. 2017年3月13日閲覧。
- ^ “Barry Jenkins”. Miami Northwestern Senior High School (2017年3月). 2017年3月13日閲覧。
- ^ a b c d e f “Barry Jenkins Slow-Cooks His Masterpiece”. The Fader. October 22, 2016閲覧。
- ^ a b “In Barry Jenkins’s First Movie, a Short-Term Romance Leads to Big Questions”. The New York Times (January 29, 2009). October 22, 2016閲覧。
- ^ “To give birth to 'Moonlight,' writer-director Barry Jenkins dug deep into his past”. Los Angeles Times. October 27, 2016閲覧。
- ^ VanityFairのツイート(837163324806578176) - 2017年3月13日閲覧。
- ^ Hammond, Pete (September 1, 2016). “Telluride Film Festival Lineup: ‘Sully’, ‘La La Land’, ‘Arrival’, ‘Bleed For This’ & More”. Deadline.com. September 1, 2016閲覧。
- ^ Buchanan, Kyle (October 21, 2016). “Moonlight’s Barry Jenkins on Directing One of the Best Films of the Year” October 22, 2016閲覧。
- ^ Scott, A. O. (October 20, 2016). “‘Moonlight’: Is This the Year’s Best Movie?”. The New York Times. ISSN 0362-4331 January 9, 2017閲覧. "“Moonlight” dwells on the dignity, beauty and terrible vulnerability of black bodies, on the existential and physical matter of black lives."
- ^ Debruge, Peter (September 3, 2016). “Film Review: ‘Moonlight’” (英語). Variety January 9, 2017閲覧. "Barry Jenkins' vital portrait of a South Florida youth revisits the character at three stages in his life, offering rich insights into the contemporary African-American experience."
- ^ Sims, David. “'Moonlight' Is a Film of Uncommon Grace” (英語). The Atlantic January 12, 2017閲覧. "Like all great films, Moonlight is both specific and sweeping. It’s a story about identity—an intelligent, challenging work that wants viewers to reflect on assumptions they might make about the characters."
- ^ Berman, Eliza. “'Moonlight' Wins Golden Globe for Best Picture, Drama”. TIME.com. January 9, 2017閲覧。
- ^ a b “ゴールデングローブ賞発表 「ラ・ラ・ランド」が史上最多7部門を受賞”. 映画.com (2017年1月9日). 2017年3月13日閲覧。
- ^ “Oscars 2017: 'Moonlight' wins best picture in a wild ending”. USAトゥデイ. 27 February 2017閲覧。
- ^ Opam, Kwame (January 24, 2017). “Oscar nominations 2017: Moonlight and La La Land will go head-to-head at the Academy Awards”. The Verge. February 5, 2017閲覧。
- ^ “2017年 第89回 アカデミー賞特集 全部門ノミネート・作品賞”. 映画.com. 2017年3月13日閲覧。
- ^ “‘Moonlight’ Filmmaker Barry Jenkins Will Write Script For Fact-Based Female Boxer Coming-of-Age Drama”. Indiewire.com (October 7, 2016). 2017年3月13日閲覧。
- ^ Mike Fleming Jr (2016年10月7日). “‘Moonlight’s Barry Jenkins To Script Story Of First American Female Gold Medal Boxer Claressa ‘T-Rex’ Shields”. 2017年3月13日閲覧。
- ^ “‘True Detective’: Jodie Foster To Star In Season 4 Of HBO Anthology Series, Marks First Major Adult TV Role”. Deadline. 2022年5月27日閲覧。
- ^ “メランコリーの妙薬”. ぴあ映画生活. 2019年9月13日閲覧。
- ^ “『ライオン・キング』続編の監督、『ムーンライト』のバリー・ジェンキンスに決定”. cinemacafe.net (2020年9月30日). 2023年10月28日閲覧。
- ^ Awards for Medicine for Melancholy (2008) - IMDb - 2017年3月13日閲覧。
- ^ “2009 SAN FRANCISCO FILM CRITICS CIRCLE AWARDS”. The San Francisco Film Critics Circle (2009年12月14日). 2017年3月13日閲覧。
- ^ a b Walsh, S.M. (2017年2月26日). “Barry Jenkins: 5 Fast Facts You Need to Know”. Heavy. 2017年3月13日閲覧。
- ^ “2008”. Gotham Independent Film Awards. 2017年3月13日閲覧。
- ^ “インディペンデント・スピリット賞 - 2008年・第24回”. allcinema. 2021年3月2日閲覧。
- ^ LIM, DENNIS (2009年1月21日). “Examining Race and a Future Beyond It”. ニューヨーク・タイムズ. 2017年3月13日閲覧。
- ^ “The 2009 Spirit Award Nominations”. IFC film news. IFC (2008年12月2日). 2008年12月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月13日閲覧。
- ^ “Los Angeles Film Festival - 2008”. IMDb. 2017年3月13日閲覧。
- ^ Awards for Moonlight (2016) - IMDb - 2017年3月13日閲覧。
- ^ Dove, Steve (2017年1月28日). “Oscar Nominations 2017: View the Complete List of Nominees”. Oscars.org. Academy of Motion Picture Arts and Sciences. 2017年3月13日閲覧。
- ^ “2017”. Oscars.org. Academy of Motion Picture Arts and Sciences. 2017年3月13日閲覧。
- ^ “第89回アカデミー賞ノミネート発表!「ラ・ラ・ランド」が最多14ノミネート”. 映画.com (2017年1月24日). 2017年3月13日閲覧。
- ^ “【第89回アカデミー賞総括】前代未聞の結末「ムーンライト」が大逆転で作品賞!”. 映画.com (2017年2月27日). 2017年3月13日閲覧。
- ^ “Winners & Nominees 2017”. ゴールデン・グローブ賞. 2017年3月15日閲覧。
- ^ “英国アカデミー賞ノミネート発表「ラ・ラ・ランド」が最多11部門”. 映画.com (2017年1月11日). 2017年3月15日閲覧。
- ^ “『ラ・ラ・ランド』英国アカデミー賞で最多5部門を受賞”. cinemacafe.net (2017年2月14日). 2017年3月15日閲覧。
- ^ “EE British Academy Film Awards Winners in 2017”. BAFTA. 2017年3月15日閲覧。
- ^ Miller, Neil (2016年12月15日). “2016 Austin Film Critics Awards Nominees”. オースティン映画批評家協会. 2017年3月13日閲覧。
- ^ Austin Film Critics (2016年12月29日). “2016 Awards”. オースティン映画批評家協会. 2017年3月13日閲覧。
- ^ “Moonlight”. シカゴ国際映画祭. 2017年3月13日閲覧。
- ^ “The 2016 Chicago Film Critics Association Award Nominees”. シカゴ映画批評家協会. 2017年3月13日閲覧。
- ^ “2016 Chicago Film Critics Awards”. AwardsDaily.com (2016年12月15日). 2017年3月13日閲覧。
- ^ Jorgenson, Todd (2016年12月13日). “DFW Film Critics Name ‘Moonlight’ Best Film of 2016”. ダラス・フォートワース映画批評家協会. 2017年3月13日閲覧。
- ^ Cox, Gordon (2016年10月20日). “Gotham Awards Nominations: ‘Manchester by the Sea’ Leads With Four”. Variety. 2017年3月13日閲覧。
- ^ Setoodeh, Ramin (2016年10月20日). “‘Moonlight’ Sweeps the Gotham Awards, Winning Best Film”. Variety. 2017年3月13日閲覧。
- ^ D'Alessandro, Anthony (2016年11月22日). “Spirit Awards Nominations: ‘Moonlight’, ‘American Honey’, ‘Manchester’ & ‘Jackie’ Rally”. Deadline.com. 2017年3月14日閲覧。
- ^ “インディペンデント・スピリット賞のノミネートが発表”. 映画.com (2016年11月30日). 2017年3月14日閲覧。
- ^ “「ムーンライト」インディペンデント・スピリット賞6冠に輝く!”. 映画.com (2017年2月26日). 2017年3月14日閲覧。
- ^ “42nd Annual”. ロサンゼルス映画批評家協会. 2017年3月15日閲覧。
- ^ “NATIONAL BOARD OF REVIEW ANNOUNCES 2016 AWARD WINNERS”. ナショナル・ボード・オブ・レビュー (2016年11月). 2017年3月15日閲覧。
- ^ “全米映画批評家協会賞は「ムーンライト」が作品賞&監督賞含む4冠”. 映画.com (2017年1月10日). 2017年3月15日閲覧。
- ^ “2016 Awards”. New York Film Critics Circle Awards. ニューヨーク映画批評家協会. 2017年3月15日閲覧。
- ^ “San Francisco Film Critics Circle Nominations!”. AwardsDaily.com (2016年12月9日). 2017年3月15日閲覧。
- ^ “2016 SAN FRANCISCO FILM CRITICS CIRCLE AWARDS”. サンフランシスコ映画批評家協会 (2016年12月10日). 2017年3月15日閲覧。
- ^ “2017 Writers Guild Awards Nominees & Winners”. 全米脚本家組合. 2017年3月15日閲覧。
- ^ “Critics' Choice Awards: The Complete Winners List”. ハリウッド・レポーター (2016年12月11日). 2017年3月15日閲覧。
- ^ “DGA Film Nominees Revealed; Nate Parker Scores First-Time Director Nom”. ハリウッド・レポーター. (2017年1月11日) 2017年3月15日閲覧。
- ^ Petski, Denise (2016年9月1日). “BFI London Film Festival Unveils 2016 Lineup”. Deadline.com. 2017年3月15日閲覧。
- ^ “60th BFI London Film Festival announces 2016 awards winners”. 英国映画協会 (2016年10月17日). 2017年3月15日閲覧。
- ^ Anderson, Erik (2017年8月12日). “TIFF16: Moonlight and Jackie Set for Toronto International Film Festival Platform”. awardswatch. 2017年3月15日閲覧。
- ^ “Announcing the TIFF '16 Award Winners”. トロント国際映画祭 (2016年9月18日). 2017年3月15日閲覧。
- ^ “The 2016 WAFCA Awards”. ワシントンD.C.映画批評家協会 (2016年12月5日). 2017年2月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月15日閲覧。
- ^ “Washington D.C. Area Film Critics Association Nominations!”. AwardsDaily.com (2016年12月3日). 2017年3月15日閲覧。
- ^ Lee, Ashley (2016年12月5日). “'La La Land' Named Best Film by Washington D.C.-Area Film Critics”. ハリウッド・レポーター 2017年3月15日閲覧。
外部リンク
編集- Barry Jenkins - オールムービー
- Barry Jenkins - IMDb
- バリー・ジェンキンス - allcinema
- バリー・ジェンキンス - 映画.com
- バリー・ジェンキンス - KINENOTE
- バリー・ジェンキンス (@bandrybarry) - X(旧Twitter)
- Macnab, Geoffrey (2017年2月15日). “Moonlight's Barry Jenkins interview: 'This was so personal for me'”. インデペンデント. 2017年3月15日閲覧。