バークホルデリア属(バークホルデリア, ブルクホルデリア属)はグラム陰性の非芽胞形成好気性の極鞭毛を持つ桿菌。バークホルデリア科の基準属である。属名はアメリカの植物病理学者ウォルター・バークホルダーに因む。かつてはシュードモナス属に分類されていたが1993年に再分類されて独立した。一部はその後さらに分類しなおされ、ラルストニア属やクプリビダス属、パンドラエア属に移っている。

バークホルデリア属
分類
ドメイン : 真正細菌 Bacteria
: プロテオバクテリア門
Proteobacteria
: βプロテオバクテリア綱
Beta Proteobacteria
: バークホルデリア目
Burkholderiales
: バークホルデリア科
Burkholderiaceae
: バークホルデリア属
Burkholderia
学名
Burkholderia
薮内英子 1993
下位分類(種)
  • B.アンビファリア
  • B.サッカリ
  • B.セパシア
  • B.マレイ
  • 類鼻疽菌

基準種はバークホルデリア・セパシア英語版(Burkholderia cepacia) 。エントナー・ドウドロフ経路で糖を酸化し、多彩な有機物を資化することができる。動植物に病原性を示す種が多く、ヒトに被害をもたらすこともある。

概要 編集

バークホルデリア属は広範囲の代謝的および生態学的特徴を持つ種を含んでいる[1]。種には、偏性好気性細菌、通性好気性細菌、および偏性嫌気性化学合成有機栄養細菌、光栄養細菌、偏性および通性化学合成無機栄養細菌、独立栄養生物の窒素固定菌、ならびに植物、動物およびヒトの病原体が含まれる。バークホルデリアバークホルデリア目のタイプ属である。バークホルデリア属には、厳密な呼吸代謝を伴う多様な種の化学合成有機栄養細菌が含まれる。すべての種は好気的に成長することができ、またいくつかは硝酸塩を電子受容体として嫌気的に成長し、そして多くの種は窒素を固定することができる。有機化合物、特に芳香族化合物に関するバークホルデリア種の代謝的多様性により、バークホルデリアバイオレメディエーションへの利用で関心が寄せられている。

バークホルデリア・セパシア 編集

バークホルデリア属の最も知られている種はバークホルデリア・セパシア英語版(Burkholderia cepacia) である。自然環境に常在する土壌細菌だが、日和見病原菌として呼吸器感染血流感染などを引き起こすことがあり、嚢胞性線維症患者において重大な肺疾患をもたらし死因となることもある。

また、塩化ベンザルコニウムなどの低水準消毒薬などに抵抗性を示し院内感染が報告されている[2]

  • Michael T. Madiganほか著、室伏きみ子、関啓子監訳『Brock微生物学』オーム社、2003年4月。ISBN 9784274024887NCID BA61734511 
  • 発酵研究所監修、大嶋泰治ほか編『IFO微生物学概論』培風館、2010年12月。ISBN 9784563078119NCID BB04312618 
  1. ^ M., Martinko, John; 1977-, Bender, Kelly S.; Hezekiah), Buckley, Daniel H. (Daniel; 1949-, Stahl, David Allan. Brock biology of microorganisms. ISBN 9780321897398. OCLC 857863493 
  2. ^ Y's Square:病院感染、院内感染対策学術情報 | セパシアによる薬剤汚染について”. 2020年5月9日閲覧。